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11 元副会長、電源を落とす。

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昼食も取らず寝入っていて、スマホのバイブに起こされた。
というか、起きる迄何度も鳴らされたとも言う。

誰からだろうと確認すると、伯父だった。


「…はい…?」

寝起きで声が掠れた。

『どうしたの!?
真面目が服着てるようなのんたんがお休みだなんて!!
そんなに具合いが悪いんだね?!?おじさん、さっき戻って来てね、のんたんのクラスに様子見に行こうとしたら体調不良でお休みしてるって聞いて!!もうびっくりしちゃったよ!!
急に環境変わっちゃって体がびっくりしちゃったのかなあ?
よし、おじさん今から』


ブツ切りした。


何時もなら適当にいなすが、今はこのテンションに付き合える程、メンタルに余裕が無い。
口を開けば、そもそも貴方の学園はどうなっているんだと責めるような事を言ってしまいそうだ。
日頃は構われ過ぎて面倒なだけの伯父だが、学園経営の手腕は素晴らしいのだなと尊敬もしていたのに。
母が前任者が倒れた代打での海外赴任の話が出て、言葉もままならない赴任先に着いて行けば受験に支障を来たす、何とか残って一人暮らしするしか、と考えた時、

是非ウチの学園に来なよ!勉強する環境抜群だよ!!受験のバックアップ体制充実してるよ!!

と誘われた時は正直悩んだ。
親戚が経営している学校だと特別扱いされそうで敬遠していたし、全寮制男子校という集団生活も自分には向かないと思った。
が、この状況となっては逆にそういう環境がある事が有り難いと思った。

なのに!
飛び込んでみたら、初っ端からメンタルゴリゴリに削られる事ばかりに遭遇する。


キツいが。

キツいんだが。


誘ってもらって感謝しているがこんな事になるとは思ってなかった。
いやもしかして、全寮制男子校という場所に対する覚悟が足りなかったと言われればそれ迄かも知れないが…知れないが!!
(※全寮制男子校に対する著しい誤認。)

そんな事を思い巡らせていると再びスマホが振動する。
電源を落とした。

今日くらいは放っといてくれ。

画面が真っ暗になったスマホを伏せて置いて、再び布団に潜った。
食欲も無い。夕飯も要らない気がする。
ゼリー飲料がいくつかあったし、もし腹が減っても何とかなる。
今日は明日の朝迄何もせず只こうしていよう。






コンコン、と遠くでノックの音がした。
数回続くそれに意識を引き戻されて、時間を確認すると午後7時30分を過ぎている。

今のノックは、と ぼんやりした頭で考えた。


「しの、飯。」

小さく聞こえるのは、やはりルプスの声だった。

少しばかり腹は減ってきたような気はするが、食事をしに外に出るような気にもなれない。
寝たふりをしてしまおう。
この最悪の気分の元凶になったルプスの顔を見るのも嫌だ。
見た目に騙されて気を許した自分が馬鹿だったのだ。
アイツは意識の無い相手を弄ぶケダモノなんだ。
これからは油断なんかしない。用心だ、用心。

そう思いながら布団を頭から被り直そうとした時、


「しの、昼も抜いただろ。
…食堂からもらってきたの、キッチンに置いとくから…食べてね。」

と小さな声が言った。

「俺、朝まで部屋から出ないようにする、から…。」


ルプスの声は消え入りそうに元気が無くて、何故か胸がちくりと痛んだ。

僕は被害者で悪くないのに、どうしてこんな気持ちになるのかわからない。


それから一時間程後、そっと部屋を出てみると、キッチンのカウンターの上には食事ののったトレイと、傍には手帳を1枚破ったような小さな紙に、

『ごめんなさい。
きらいにならないで。』

と、小学生のような字が平仮名だけで書いてあった。










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