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1 元副会長、王道学園副会長に遭遇。前編
しおりを挟む「こんなのおかしい!!」
口にしてしまってからハッとする。
自分の価値観と違うからと否定的な言葉を放ってしまった、と。
目の前には僕とややキャラの被っている感の否めない長身痩躯の眼鏡男子がいる。唯一且つ大きな相違点と言えば、僕の顔面偏差値はせいぜい50点くらいで彼が85~90といった所だろうか。(悲哀)
そして現在、僕は彼に壁ドンならぬ木ドンされている。
何故か。
それは僕が、ついさっきこの学園に編入生としてやって来て、普通に門を通過し、普通~に職員室のある校舎を目指して歩いていた時に遡る。
制服姿のかの眼鏡イメケンが、案内役と称し接触してきたのである。
聞けば同じ2年で生徒会執行部役員であるとの事。
まあそこは?僕としても慣れない校内をウロウロするよりは?助かるので?
なかなか気が利いているなと思いつつ、
「既にご存知のようですが、2年に編入して参りました佐藤 忍です。よろしくお願いします。」
と、丁寧に頭を下げた。
相手がどんな人物であれ、礼儀は大事だ。特に初対面では。
ところが、案内役眼鏡イメケンは…。
「……ふーん。君、面白い子だね。」
「……。」
出た。
噂の "おもしれ~女"発言。
僕は他人からは真面目そうと言われる外見だが、自分では普通だと思っているし世情に疎い訳でもないからそれくらいは知っている。
そして、大体こういう言葉を実際に使用する輩は、あまり近寄っちゃいけない、妙な人であると何となく思っていた。
同次元に存在していても、生きているステージが違う人種というのはいる。
しかし、と僕は考えた。
今しがたの自分の対応に、何か面白いところが果たしてあっただろうかと。
校門を入ってから今迄の一連の流れを脳内で反芻する。
「…………。」
いや、大丈夫だ。
僕は間違ってない。
完全に通常の対応だった。
自信を回復した僕は頷いて、眼鏡イメケンに向かって言った。
「ありがとうございます。」
取り敢えず、これだ。
こういう輩は悪戯に刺激しちゃ駄目だと、ばあちゃんが言ってたのを思い出したからだ。
「…うん。」
「では、職員室への案内をお願いします。」
僕は、敷地が広くてまあまあ遠い校舎に目をやりながら言う。何だかあまり余計な会話をしてはならない気がしたので早く事を進めたかったと言うか…。
すると眼鏡イメケンは、ヤレヤレ、みたいなポーズで困ったような表情を作ったので僕は少しイラッとした。
何だそれは。
「君、結構せっかちな子だね。」
「…いや、かれこれもう5分以上は此処にいますが…。」
そろそろ校舎に向かわねば時間が押してしまうじゃないか。
僕が彼の案内役としての適性に疑念を抱く前に任務の遂行をお願いしたい。
僕は眼鏡のブリッジを右手中指で押し上げて周囲を見渡した。
人気は無く、静かだ。
現在時刻は午前10時。授業中の筈だから当然だ。
それなのにこの眼鏡イメケンは授業はどうしたんたろうか。自習か?
それにしても向こうに聳える校舎に至る迄の木々の緑のアーチが美しい。その真ん中に真っ直ぐ通った白い道も、塵一つ、葉枝や石も落ちてない。よく手入れされているようだ。優秀な用務員さんを雇っているんだな…。
僕がその道に歩を進めると、後ろから追って来た眼鏡イメケンは僕が持っていたボストンバッグを持ち、
「これは私が手伝う。」
と言ってくれた。
なかなかの紳士っぷりだ。
けれど、僕はレディではない。
「いえ、そんな軽いものくらいは自分で。」
僕はバッグをやんわり奪い返すと、
「でも、ありがとう。」
と会釈をした。
眼鏡イメケンは肩を竦めるが、急に何かに気づいたように口を開いた。
「そう言えば自己紹介が未だだったよね。
生徒会役員って事しか。」
「そう言えばそうでしたね。」
僕は記憶を手繰る。
そうだな、確かに聞いてない。
「私は生徒会副会長の神薙 礼人だ。困った事があれば何時でも力になるから何時でも生徒会室に来ると良い。」
「ありがとうございます。ですがそれには及びません。」
僕は礼を言ってから頭を振った。
「多分、大丈夫です。
お気になさらず。」
一般生徒にわざわざ生徒会室迄行くような面倒事が起きる訳が無い。
万が一のいじめ問題とかも、管轄かは微妙だろうし。
それこそ物証を取って弁護士案件にする方が迅速な解決に導ける。
僕の家では加害者にかける情けは無い、がポリシーであるからして。
だが、眼鏡イケメン改め神薙は僕の、オキニナサラズ、に若干の戸惑いを見せた。
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