26 / 49
25
しおりを挟む
流石に長々と人間一人を乗せてると肩が凝る。途中からなぜか水瀬もむぎゅむぎゅと詰め始めたので、明日は筋肉痛になるかもしれない。
「あ~……ただいまー」
いつ考えても武藤様が待っている家とかいう響きやばい。別に俺を待っているわけではないが。
ともかく鍵を開けて家に帰れば、玄関の段階でなんだかいい匂いがした。
「おう、帰ったか」
昨日いろいろぶちまけたからか、武藤様の口から今日もいんのかよが出る事はなかった。今日もいます。
「オイ、砂! 作業してきたんなら着替えてこい」
「ええ? ちゃんと着替え……あ、靴下」
「脱げ!」
玄関開けて二秒でやらかし。もう終わりである。言い訳させてもらうと普段は髪の毛一本落とさないよう気をつけている。朝は本体が落ちているので意味はないのだが。
100均で300円だと思って買ったところ500円だったスリッパを履いて靴下を洗濯機に入れる。もう少し溜まったら回しておこう。
「ったく……オラ、ついでに手洗ってこい! はよ席付け」
「え、おれご飯作ってない」
「お前のは作るって言わねェんだよ、レンチンだ」
作るじゃん!
リビングの方からぶっきらぼうに投げられた命令を守り、手を洗って近くにあったタオルで拭いてリビングに行く。
と。
いつも武藤様が食べているテーブルの上。全く同じ料理がコピペして反転したみたいに二つ、向かい合っている。
「……お客さんでもくるの??」
「ンでだよ。ふざけてねぇで座れ」
……え!?
「有り余ってたからな。ジャーマンポテトとガレットだ。ビーフシチューもある。足りんかったら白米食え、そこので炊いた」
「うわでっけ炊飯器。じゃなくて、えっと」
「お前の食生活を数日見てたが、不健康すぎて吐き気がしてきた。俺が管理する」
そんなに??
お前の苦労をずっと見ていたぞ……の流れから誉められないことってあるんだ。じゃなくて。
嘘でしょ。武藤様の手料理!? 口に入る!?!? 誰の!?!? 俺の!?!?
イェーイ見てる~親衛隊ユニコーン!! 見るなッッッッ!!!!
「い、いいよ別に。ずっとこれで健康だったし~……」
「自分のスペックに依存してるだけだそれは。どんだけダメになれば気が済むんだお前は。際限を知れ」
「ごめん~……?」
恐る恐る武藤様の正面(武藤様の正面!?)に座れば、目の前に勢いよく深皿のサラダを置かれた。
「お前の生活には何もかも足りてねぇが、緑黄色野菜がカスほど足りてねぇ。食え」
「あ、はい」
武藤様って緑黄色野菜って言うんだ。
カトラリーの位置を見たら、幼児用の先の丸いフォークとかが用意されてあった。何? 赤ちゃんだと思われてる? 推しに赤ちゃん扱いされるのって何それ光栄。
「よし、手ェ合わせろ」
「いただきます……?」
「いただきます」
武藤様っていただきますって言うんだ。だんだん失礼な偏見になってきてる気がする。
まずはサラダを食べる。どっかで最初にサラダを食べると何かにいいと聞いたので、選択の余地がある時はサラダから食べることにしている。
まぁ言うて普通に野菜なので、緊張で味がしなくとも問題はないだろうと判断うまっ
「えっおいし。なに? どうして? 野菜なのに……?」
「ドレッシングって知らないか?」
「いつも生かマヨネーズだったから……ドレッシングすげー! 大人って感じ!」
大人の味だと思っていたドレッシングだが、さっぱりした旨味が噛めば噛むほど響いてきてとっても美味しい。ぱくぱく食べていると視線を感じて、慌てて他の料理も食べる。
次はメインのジャーマンポテトだ。ビーフシチューがあるせいでメインが何かわかんなくなってるけどジャーマンポテトがメインだ、たぶん。
まぁ、芋に関しては最近ずっと食べてるので今更新鮮味もうまっっ
「え……? これ、芋……? 俺の知ってる子……?」
「半分もうお前の知ってる芋ではねぇよ。ベーコンとか入れてるし。胡椒強めだし」
「おいしすぎる」
「良かったな」
信じて送り出した芋が美味しくなって帰ってきている。俺が知らんうちに送り出されてたので厳密には信じて送り出したわけではないけども。
「いいから集中して食え。俺様の料理がうめーのは当然だしな」
その言葉に甘え、無言で料理を平らげていく。ビーフシチューはコクがあって美味しいしガレットはチーズがめちゃくちゃ伸びてびっくりした。全部暑くてあったかくて美味しい。
ハフハフ言いながら食べていたら、いつの間にか食べ終えていた武藤様が台所へ向かう。
「ビーフシチューはおかわりもある」
あ~~~~♡♡♡♡
「さっぱりしたもんが欲しいだろ? ベリーソースをかけたヨーグルトもある」
「うぐ~~~~」
「抗うな抗うな。好きなだけ食え」
だ、ダメ人間になる……元々そうなのに……
ダメだぞ田中宗介!! このご厚意に甘えて仕舞えば、そしてこんな美味しいものを食べさせられ続けば俺はこの料理に依存してしまう。それだけはダメだ。
これは武藤様の気まぐれ。いつでも身を引けるように、面倒臭くないように
「明日の朝食は何がいい」
「めっちゃチーズかけたパン!!」
「引くほど伸びるやつでいいな」
こんなん勝てるわけないやろがい!!!!!!!!!
──ちなみに翌日は昼食も持たされた。もうわけわからん料理名のやつだったけど、めっちゃ美味しかった。
「あ~……ただいまー」
いつ考えても武藤様が待っている家とかいう響きやばい。別に俺を待っているわけではないが。
ともかく鍵を開けて家に帰れば、玄関の段階でなんだかいい匂いがした。
「おう、帰ったか」
昨日いろいろぶちまけたからか、武藤様の口から今日もいんのかよが出る事はなかった。今日もいます。
「オイ、砂! 作業してきたんなら着替えてこい」
「ええ? ちゃんと着替え……あ、靴下」
「脱げ!」
玄関開けて二秒でやらかし。もう終わりである。言い訳させてもらうと普段は髪の毛一本落とさないよう気をつけている。朝は本体が落ちているので意味はないのだが。
100均で300円だと思って買ったところ500円だったスリッパを履いて靴下を洗濯機に入れる。もう少し溜まったら回しておこう。
「ったく……オラ、ついでに手洗ってこい! はよ席付け」
「え、おれご飯作ってない」
「お前のは作るって言わねェんだよ、レンチンだ」
作るじゃん!
リビングの方からぶっきらぼうに投げられた命令を守り、手を洗って近くにあったタオルで拭いてリビングに行く。
と。
いつも武藤様が食べているテーブルの上。全く同じ料理がコピペして反転したみたいに二つ、向かい合っている。
「……お客さんでもくるの??」
「ンでだよ。ふざけてねぇで座れ」
……え!?
「有り余ってたからな。ジャーマンポテトとガレットだ。ビーフシチューもある。足りんかったら白米食え、そこので炊いた」
「うわでっけ炊飯器。じゃなくて、えっと」
「お前の食生活を数日見てたが、不健康すぎて吐き気がしてきた。俺が管理する」
そんなに??
お前の苦労をずっと見ていたぞ……の流れから誉められないことってあるんだ。じゃなくて。
嘘でしょ。武藤様の手料理!? 口に入る!?!? 誰の!?!? 俺の!?!?
イェーイ見てる~親衛隊ユニコーン!! 見るなッッッッ!!!!
「い、いいよ別に。ずっとこれで健康だったし~……」
「自分のスペックに依存してるだけだそれは。どんだけダメになれば気が済むんだお前は。際限を知れ」
「ごめん~……?」
恐る恐る武藤様の正面(武藤様の正面!?)に座れば、目の前に勢いよく深皿のサラダを置かれた。
「お前の生活には何もかも足りてねぇが、緑黄色野菜がカスほど足りてねぇ。食え」
「あ、はい」
武藤様って緑黄色野菜って言うんだ。
カトラリーの位置を見たら、幼児用の先の丸いフォークとかが用意されてあった。何? 赤ちゃんだと思われてる? 推しに赤ちゃん扱いされるのって何それ光栄。
「よし、手ェ合わせろ」
「いただきます……?」
「いただきます」
武藤様っていただきますって言うんだ。だんだん失礼な偏見になってきてる気がする。
まずはサラダを食べる。どっかで最初にサラダを食べると何かにいいと聞いたので、選択の余地がある時はサラダから食べることにしている。
まぁ言うて普通に野菜なので、緊張で味がしなくとも問題はないだろうと判断うまっ
「えっおいし。なに? どうして? 野菜なのに……?」
「ドレッシングって知らないか?」
「いつも生かマヨネーズだったから……ドレッシングすげー! 大人って感じ!」
大人の味だと思っていたドレッシングだが、さっぱりした旨味が噛めば噛むほど響いてきてとっても美味しい。ぱくぱく食べていると視線を感じて、慌てて他の料理も食べる。
次はメインのジャーマンポテトだ。ビーフシチューがあるせいでメインが何かわかんなくなってるけどジャーマンポテトがメインだ、たぶん。
まぁ、芋に関しては最近ずっと食べてるので今更新鮮味もうまっっ
「え……? これ、芋……? 俺の知ってる子……?」
「半分もうお前の知ってる芋ではねぇよ。ベーコンとか入れてるし。胡椒強めだし」
「おいしすぎる」
「良かったな」
信じて送り出した芋が美味しくなって帰ってきている。俺が知らんうちに送り出されてたので厳密には信じて送り出したわけではないけども。
「いいから集中して食え。俺様の料理がうめーのは当然だしな」
その言葉に甘え、無言で料理を平らげていく。ビーフシチューはコクがあって美味しいしガレットはチーズがめちゃくちゃ伸びてびっくりした。全部暑くてあったかくて美味しい。
ハフハフ言いながら食べていたら、いつの間にか食べ終えていた武藤様が台所へ向かう。
「ビーフシチューはおかわりもある」
あ~~~~♡♡♡♡
「さっぱりしたもんが欲しいだろ? ベリーソースをかけたヨーグルトもある」
「うぐ~~~~」
「抗うな抗うな。好きなだけ食え」
だ、ダメ人間になる……元々そうなのに……
ダメだぞ田中宗介!! このご厚意に甘えて仕舞えば、そしてこんな美味しいものを食べさせられ続けば俺はこの料理に依存してしまう。それだけはダメだ。
これは武藤様の気まぐれ。いつでも身を引けるように、面倒臭くないように
「明日の朝食は何がいい」
「めっちゃチーズかけたパン!!」
「引くほど伸びるやつでいいな」
こんなん勝てるわけないやろがい!!!!!!!!!
──ちなみに翌日は昼食も持たされた。もうわけわからん料理名のやつだったけど、めっちゃ美味しかった。
29
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
チャラ男は愛されたい
梅茶
BL
幼い頃優等生としてもてはやされていた主人公。しかし、母が浮気をしたことで親は離婚となり、父について行き入った中学校は世紀末かと思うほどの不良校だった。浮かないためにチャラ男として過ごす日々にストレスが溜まった主人公は、高校はこの学校にいる奴らが絶対に入れないような所にしようと決意し、山奥にひっそりとたつ超一流学校への入学を決める…。
きまぐれ更新ですし頭のおかしいキャラ率高めです…寛容な心で見て頂けたら…
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
生徒会長親衛隊長を辞めたい!
佳奈
BL
私立黎明学園という全寮制男子校に通っている鮎川頼は幼なじみの生徒会長の親衛隊長をしている。
その役職により頼は全校生徒から嫌われていたがなんだかんだ平和に過ごしていた。
しかし季節外れの転校生の出現により大混乱発生
面倒事には関わりたくないけどいろんなことに巻き込まれてしまう嫌われ親衛隊長の総愛され物語!
嫌われ要素は少なめです。タイトル回収まで気持ち長いかもしれません。
一旦考えているところまで不定期更新です。ちょくちょく手直ししながら更新したいと思います。
*王道学園の設定を使用してるため設定や名称などが被りますが他作品などとは関係ありません。全てフィクションです。
素人の文のため暖かい目で見ていただけると幸いです。よろしくお願いします。
平凡な俺、何故かイケメンヤンキーのお気に入りです?!
彩ノ華
BL
ある事がきっかけでヤンキー(イケメン)に目をつけられた俺。
何をしても平凡な俺は、きっとパシリとして使われるのだろうと思っていたけど…!?
俺どうなっちゃうの~~ッ?!
イケメンヤンキー×平凡
王道学園のハニートラップ兎
もものみ
BL
【王道?学園もの創作BL小説です】
タグには王道学園、非王道とつけましたがタイトルからも分かる通り癖が強いです。
王道学園に主人公がスパイとして潜入し王道キャラ達にハニートラップ(健全)して情報を集めるお話です。
キャラは基本みんなヤンデレです。いろんなタイプのヤンデレが出てきます。
地雷の方はお気をつけて。
以下あらすじです。
俺、幸人(ゆきと)はある人物の命令で金持ちの息子が集う男子校に大きな会社や財閥、組などの弱味を握るために潜入させられることになった高校一年生。ハニートラップを仕掛け部屋に潜り込んだり夜中に忍び込んだり、あの手この手で情報収集に奔走する、はずが…この学園に季節外れの転校生がやって来て学園内はかき乱され、邪魔が入りなかなか上手くいかず時にはバレそうになったりもして…?
さらにさらに、ただのスパイとして潜入しただけのはずなのにターゲットたちに本気で恋されちゃって―――――って、あれ?このターゲットたち、なにかがおかしい…
「ゆきとは、俺の光。」
「ふふ、逃げられると思ってるの?」
(怖い!あいつら笑ってるけど目が笑ってない!!やばい、逃げられない!)
こんな感じで、かなり癖のあるターゲット達に好かれてトラブルに巻き込まれます。ほんと大変。まあ、そんな感じで俺が終始いろいろ奮闘するお話です。本当に大変。行事ごとにいろんなハプニングとかも…おっと、これ以上はネタバレになりますね。
さて、そもそも俺にそんなことを命じたのは誰なのか、俺に"幸せ"は訪れるのか…まあ、とにかく謎が多い話ですけど、是非読んでみてくださいね!
…ふう、台本読んだだけだけど、宣伝ってこんな感じでいいのか?
…………あれ……え、これ―――――盗聴器?もしかしてこの会話、盗聴されて…
ーーーーーーーーーー
主人公、幸人くんの紹介にあったように、執着、束縛、依存、盗撮、盗聴、何でもありのヤンデレ学園で、計算高い主人公がハニートラップかましてセレブたちの秘密を探ろうとするお話です。ヤンデレターゲットVS計算高いスパイの主人公!!
登場人物みんなヤンデレでいろんなタイプのヤンデレがいますので、あなたの推しヤンデレもきっと見つかる!
無自覚副会長総受け?呪文ですかそれ?
あぃちゃん!
BL
生徒会副会長の藤崎 望(フジサキ ノゾム)は王道学園で総受けに?!
雪「ンがわいいっっっ!望たんっっ!ぐ腐腐腐腐腐腐腐腐((ペシッ))痛いっっ!何このデジャブ感?!」
生徒会メンバーや保健医・親衛隊・一匹狼・爽やかくん・王道転校生まで?!
とにかく総受けです!!!!!!!!!望たん尊い!!!!!!!!!!!!!!!!!!
___________________________________________
作者うるさいです!すみません!
○| ̄|_=3ズザァァァァァァァァァァ
男だけど女性Vtuberを演じていたら現実で、メス堕ちしてしまったお話
ボッチなお地蔵さん
BL
中村るいは、今勢いがあるVTuber事務所が2期生を募集しているというツイートを見てすぐに応募をする。無事、合格して気分が上がっている最中に送られてきた自分が使うアバターのイラストを見ると女性のアバターだった。自分は男なのに…
結局、その女性アバターでVTuberを始めるのだが、女性VTuberを演じていたら現実でも影響が出始めて…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる