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第6章 王宮生活<帰還編>

93、最強の理由(わけ)<前>※

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 快感におぼれ切った頭では、まともに考えることが難しい。

 だから、僕はそのままシルヴィス様に伝えた。

「さ……い……きょう?
 すみ……ません……考え……られ……ない」

 シルヴィス様は上体じょうたいを少し起こして、僕のひたいにご自分のひたいを重ね、鼻の頭同士をこすり合わす。

 そのまま、唇だけ動かされ、僕に問われた。

「そうか……考えられないか。
 では、考えられるように、オレが手伝ってもいいか?」

「は……い」

 ハァハァと荒い息を吐きながら答えた僕の頭の横に両肘りょうひじをついて、シルヴィス様はさらに身体からだを起こす。

「レン、オレと目を合わせろ」

 僕はヒートによる強い快感にさらわれているせいで、視点があちこちに飛び、なかなかシルヴィス様の目に焦点しょうてんを合わせられない。

 僕のひたいにかかった髪をき上げてくれつつ、シルヴィス様は辛抱しんぼう強く待ってくれた。

 カチリ

 ようやくシルヴィス様と目が合うと、不思議な音がした。

 幻聴げんちょうだと思っていたが、そのままずっとシルヴィス様の目を見続けていると、段々だんだん頭の中がスッキリしてきて、正気しょうきが戻ってくる。

 身体からだからも、徐々じょじょ興奮こうふんっていくような感じがした。

「何をしたんです?」

 つい先ほどまで、話すことが困難こんなんだったのがうそみたいに、僕はハキハキとしゃべることができる。

「まずは、どんな感覚か教えてくれ」

 そう言って、シルヴィス様は、僕のひたいに優しくキスを落とした。

「先ほどまで、興奮こうふんして意識もかすみがかっていて、話すことも困難こんなんでしたが、今は違います。
 頭の中が急激きゅうげきにハッキリしてきて、話すことも簡単にでき……身体からだの熱も下がってきて……例えるなら、まるでヒートが突然なくなったような……」

「さすがレンだ、その通りだ!
 オレには、ヒートテロは通用つうようしない。
 なぜならこのようにヒートをコントロールすることができるからだ。
 それが最強と呼ばれる理由だ」

 そう言って、シルヴィス様は、僕の唇にそっと口付けると、唇をって舌もからませてくる。

「あっ……ふぅ……ううぅ……んん」

 今はヒートによる興奮こうふん状態ではないので、口内こうない縦横じゅうおう無尽むじんに動き回る舌の熱が、やけに生々なまなましく感じる。

 しばらくの間、シルヴィス様の舌は散々さんざん僕の口内こうない蹂躙じゅうりんしていたが、やっと満足できたのか、ジュパッと音を立てて、ゆっくり引きかれた。

「ああっ……なぜっ?」

 僕の中では、もっとキスを続けて欲しくて出た言葉だったが、シルヴィス様は違う意味でとらえられたようだ。

「なぜ、最強の理由を話したのかって?
 それは……」

 シルヴィス様は言葉を途切とぎれさせると、僕の目を見つめたまま、僕の左あしだけを軽く折り曲げる。

 あな灼熱しゃくねつかすめた。

 まさか!

 本能的に僕の身体からだは逃げようとしたが、シルヴィス様の全身でガッチリ押さえつけられているため、全く動かない。

「やぁあぁ……ムリ……痛い……です」

 意図いとを感じ取っておびえ出した僕のほおをひとでし、シルヴィス様は、それはそれは優しい笑みを浮かべて宣言せんげんされた。

「なぁ、レン、つがう時はヒート状態じゃないとつがえなかったので仕方なかったが、今回は、ヒートの興奮こうふん状態ではなく、はっきり意識をたもったままでいて欲しい。
 誰に抱かれているのか、しっかり理解するんだ」

 今度こそあなの入口にかするだけではなく、きちんと熱がてられる。

「あつっ……やぁあぁあ」

 これから先の痛みを予測よそくして、僕の身体からだ強張こわばった。

「レン、傷つけたい訳ではないから、そんなにおびえないでくれ。
 少しだけ、ヒートを戻そう……オレはレンに、痛みを与えることは望んでない……ただ……」

 僕だけをうつしているシルヴィス様の瞳がキラリと一瞬輝いたと思ったら、ゆるやかに僕の身体からだに熱が戻ってきた。

「うわっ……あれ?」

 しっとりと肌が汗ばむほどまで身体からだの熱は上がってきたが、ヒート中のくるわしいあの高熱には全然およばない。

 込み上がる熱に驚いて、僕は思わず声を出したが、同時に疑問の声も出てしまう。

 それに今回はシルヴィス様から言われた通り、意識はハッキリして……自分がどのような状態に置かれているのか、しっかり認識にんしきできていた。

「まるで、頭と身体からだの状態が切り離されたような……」

 思わず僕がそうつぶやくと、シルヴィス様はっすら笑みを浮かべたあと、真顔まがおに戻ると、右手を僕のほおの横について、こう問いかけてきた。

「今、お前を抱いている男は誰だ?」
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