57 / 102
第4章 王宮生活<大祭準備編>
56、教会からの依頼<前>
しおりを挟む
近くの空いてる部屋に、ロイさんによって押し込まれた僕は、扉が閉まるなり、ロイさんに謝った。
「ロイさん、僕のせいで皆さんを足止めさせ、廊下の通行を妨げてしまったこと、大変申し訳ありませんでした」
僕がそう話を切り出すと、なぜかロイさんは、大きなため息を1つ、ついた。
「レンヤード様、謝る観点が間違ってます」
「えっ?その件じゃないとするなら、どの点がご迷惑でしたか?」
僕は困惑しながら、ロイさんに問い返す。
「まず、私のことは、レンヤード様との身分の関係上、ロイと呼び捨ててください。
迷惑とは思いませんでしたが、レンヤード様の存在は、一部の者を除き、まだ他の神官たちに紹介しておりません。
それなのに、いきなりレンヤード様が、皆の前で神力を使われたので驚きましたし、目撃した者たちが興奮して、大げさに騒ぎ出しそうな予兆を感じましたので、強制的にこの部屋へ、隔離させていただきました。
こちらこそ、何ら説明もなく、無断で行ってしまい、大変申し訳ありませんでした。
しかし、レンヤード様……いつから祝福ができるようになったのですか?」
ロイは近くのソファセットに僕に座るよう手で指し示しながら、僕に問いかけ続ける。
なので、僕も遠慮なくソファに座らせてもらいながら、正直に答えた。
「あの時、頭に浮かんできた言葉を、言っただけです」
僕の答えを聞いたロイは、一瞬黙り込み……そのまま無言で、片手で自身のこめかみを揉みながら、僕の対面にゆっくりと腰掛ける。
「レンヤード様もセリム様と同様、規格外の方だというのが、よく分かりました。
それで、レンヤード様、神力を使われたようですが、体調はいかがでしょうか?」
ロイが何をもって僕を規格外と言ったのかは後で聞くことにして、それよりも僕はロイに見せたいものがあった。
「今のところ、何ともありませんので、大丈夫です。
突然押しかけてきて申し訳ないのですが、まずはこれを見てください」
僕はそう言って、サラから受け取った用紙をロイに差し出す。
「拝見します……こっ、これは!」
「王妃様からの依頼で、供物の管理担当に、このたび僕がなりまして……この用紙は、前任者から引き継いだものですが、今回の大祭で用意する供物の数が記されています。
ご覧のように……今回は招待客を増やすということでしたので、この数では全く足りないのです。
これは、一大事だと思い、教会で唯一、僕の知り合いであるセリム様に、まず相談しようと思いました。
ですが、クローネに聞いたところ、今はご不在だとか。
それでも、早くこの事実を伝えなければと思い、クローネの助言により、副官であるロイに、面会を申し込みました」
ここまで言い終えて、僕はようやく、肩で息をついた。
「セリム様と私も、もちろん大祭に関わりますので、いち早くお話が聞けて良かったです。
それにしても、この数……これは、多分、例年の数量のままです。
確かに、今回は地方からも多数、招待されていますので……少なくとも、この倍の数は必要かと」
ロイは、顎に手を掛けながら、唸り出すように口にした。
「倍っ!本当ですか?
どうしよう……今から調達できるのかなぁ」
僕は目の前が暗くなったような気して、顔を両手で覆った。
その時、ロイから、朗報がもたらされる。
「供物の調達に関しては、ご安心ください。
既に用意してあります」
「本当?!」
「はい、実はこういったことは、過去にもありまして……」
ロイは少し言いにくそうに口籠っていたけど、今後もこのようなことはあっては困るので、思い切って僕は教えてもらうことにした。
「ロイさん、僕のせいで皆さんを足止めさせ、廊下の通行を妨げてしまったこと、大変申し訳ありませんでした」
僕がそう話を切り出すと、なぜかロイさんは、大きなため息を1つ、ついた。
「レンヤード様、謝る観点が間違ってます」
「えっ?その件じゃないとするなら、どの点がご迷惑でしたか?」
僕は困惑しながら、ロイさんに問い返す。
「まず、私のことは、レンヤード様との身分の関係上、ロイと呼び捨ててください。
迷惑とは思いませんでしたが、レンヤード様の存在は、一部の者を除き、まだ他の神官たちに紹介しておりません。
それなのに、いきなりレンヤード様が、皆の前で神力を使われたので驚きましたし、目撃した者たちが興奮して、大げさに騒ぎ出しそうな予兆を感じましたので、強制的にこの部屋へ、隔離させていただきました。
こちらこそ、何ら説明もなく、無断で行ってしまい、大変申し訳ありませんでした。
しかし、レンヤード様……いつから祝福ができるようになったのですか?」
ロイは近くのソファセットに僕に座るよう手で指し示しながら、僕に問いかけ続ける。
なので、僕も遠慮なくソファに座らせてもらいながら、正直に答えた。
「あの時、頭に浮かんできた言葉を、言っただけです」
僕の答えを聞いたロイは、一瞬黙り込み……そのまま無言で、片手で自身のこめかみを揉みながら、僕の対面にゆっくりと腰掛ける。
「レンヤード様もセリム様と同様、規格外の方だというのが、よく分かりました。
それで、レンヤード様、神力を使われたようですが、体調はいかがでしょうか?」
ロイが何をもって僕を規格外と言ったのかは後で聞くことにして、それよりも僕はロイに見せたいものがあった。
「今のところ、何ともありませんので、大丈夫です。
突然押しかけてきて申し訳ないのですが、まずはこれを見てください」
僕はそう言って、サラから受け取った用紙をロイに差し出す。
「拝見します……こっ、これは!」
「王妃様からの依頼で、供物の管理担当に、このたび僕がなりまして……この用紙は、前任者から引き継いだものですが、今回の大祭で用意する供物の数が記されています。
ご覧のように……今回は招待客を増やすということでしたので、この数では全く足りないのです。
これは、一大事だと思い、教会で唯一、僕の知り合いであるセリム様に、まず相談しようと思いました。
ですが、クローネに聞いたところ、今はご不在だとか。
それでも、早くこの事実を伝えなければと思い、クローネの助言により、副官であるロイに、面会を申し込みました」
ここまで言い終えて、僕はようやく、肩で息をついた。
「セリム様と私も、もちろん大祭に関わりますので、いち早くお話が聞けて良かったです。
それにしても、この数……これは、多分、例年の数量のままです。
確かに、今回は地方からも多数、招待されていますので……少なくとも、この倍の数は必要かと」
ロイは、顎に手を掛けながら、唸り出すように口にした。
「倍っ!本当ですか?
どうしよう……今から調達できるのかなぁ」
僕は目の前が暗くなったような気して、顔を両手で覆った。
その時、ロイから、朗報がもたらされる。
「供物の調達に関しては、ご安心ください。
既に用意してあります」
「本当?!」
「はい、実はこういったことは、過去にもありまして……」
ロイは少し言いにくそうに口籠っていたけど、今後もこのようなことはあっては困るので、思い切って僕は教えてもらうことにした。
152
お気に入りに追加
1,110
あなたにおすすめの小説
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
金の野獣と薔薇の番
むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。
彼は事故により7歳より以前の記憶がない。
高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。
オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。
ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。
彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。
その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。
来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。
皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……?
4/20 本編開始。
『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。
(『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。)
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】
↓
【金の野獣と薔薇の番】←今ココ
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる