上 下
46 / 102
第4章 王宮生活<大祭準備編>

45、正式なお茶会<中>

しおりを挟む
 王妃様から「歓迎かんげい」という言葉をいただいた僕は、めていた息を少しだけ吐き出し、簡潔かんけつに自己紹介を行った。

「シルヴィス妃レンヤードと申します。
 王妃様の寛大かんだい御心おこころに感謝いたします。
 いたらぬ点は多々たたあるとは思いますが、本日はどうかよろしくお願いいたします」

 僕はそう言い終えると、あらためて礼を取った。

丁寧ていねい挨拶あいさつをありがとう、レンヤード。
 レイラ様もいらっしゃるし、ここで立ち話もなんだから、席へ案内するわ」

 王妃様がそう言われると、ひかえていた侍女じじょたちが一斉いっせいに出てきて、席に案内される。

 室内だけでも結構けっこう侍女じじょの数だ。

 どうりでレイラ様が、シルヴィス宮をおとずれて驚かれる訳だ。

 僕は、胃がキリキリしてきたが、ここで顔をしかめることはできない。

 ほおが少しピクピクしてきたが、なるべく笑顔をたもつようにつとめた。

 そんな中で、王妃様のお茶会は粛々しゅくしゅくと進行していく。

 席次せきじは、主賓しゅひんとなるレイラ様をかこむ形で、レイラ様の左となりが王妃様、右となりが僕、王妃様の左となりが顔立ちがハッキリとした、はなやかな印象の美女、僕の右となりは、多分僕より年下であろう、非常に可愛らしい印象の美少女が着席した。

「今回の茶会は、もうすぐ行われる神祭しんさい進捗しんちょく状況の確認を行うわ。
 すでに役割分担ぶんたんを振り終え、準備も終盤しゅうばんに差しかっているとはいえ、今後のことを考えたら、レンヤードもこの準備にぜひ参加してもらいたいとわたくしは思っているの。
 2人ともそれでいいかしら?」

 開始早々そうそう、レイラ様から忠告ちゅうこくされていたことが、さっそく起こった。

 僕はレイラ様の慧眼けいがんに深く感謝する。

 そうでなければ、僕はみっともなく動揺どうようあらわにして……自分の立場をかえりみず、王妃様の申し出を固辞こじしていたからだ。

 王妃様よりわれたお2人は、そろって返事をされる。

「「はい、王妃様」」

「2人とも同意どういしてくれてありがとう。
 あら、わたくしったら!
 レンヤードに、まだ2人の紹介をしていなかったわ。
 では、ローサからお願いできるかしら?」

 はい、と返事して、王妃様の左となりに座っていた、はなやかな印象の美女が挨拶あいさつのため、席を立った。

「レンヤード様、初めまして。
 シルヴィス様のすぐ下の弟君にあたり、かつて第8王子であったナラヴィスの妃、ローサと申します。
 以後いご見知みしりおきを」

 そう挨拶あいさつされると、ローサ様はお手本のような礼をされた。

 ローサ様といえば、サラの主人だよな……さすがだ

 立ち振る舞いはもちろん、サラが絶賛ぜっさんしたように、流行にうとい僕でさえ、頭の先から足元にいたるまで、洗練せんれんされたよそおいであると感じられる。

 確かに……僕とは別格べっかく

 そう心でつぶやいたせいであろうか、僕はつい頭を深くさげながら、こちらこそよろしくお願いします、と返してしまった。

「レンヤード、そなたのほうが、ローサより立場が上なのだ。
 そんなに簡単に頭を下げるではない」

 すかさず、となりのレイラ様から僕に指導が入り、室内から細波さざなみのようにクスクスと笑い声が起こった。

「そうですよ、レンヤード様、私よりレンヤード様のほうが立場が上なのです。
 名も呼び捨てて構いません。
 私のほうこそ、ご指導願いますわ」

 完璧な礼をきながら、ローサは皆と同じようにクスッと笑いながら、僕にそう言った。

不慣ふなれで申し訳ない……これからもよろしく頼むよ、ローサ」

 顔を上げてあらためて僕はげると、ローサは笑みを深くして返事をしてくれた。

「かしこまりました、レンヤード様」

 えざえとした目で僕を見つめ返しながら。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

金の野獣と薔薇の番

むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。 彼は事故により7歳より以前の記憶がない。 高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。 オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。 ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。 彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。 その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。 来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。 皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……? 4/20 本編開始。 『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。 (『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。) ※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。 【至高のオメガとガラスの靴】  ↓ 【金の野獣と薔薇の番】←今ココ  ↓ 【魔法使いと眠れるオメガ】

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。

偽物の僕は本物にはなれない。

15
BL
「僕は君を好きだけど、君は僕じゃない人が好きなんだね」 ネガティブ主人公。最後は分岐ルート有りのハピエン。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

処理中です...