39 / 85
第3章 王宮生活<始動編>
38、奇妙なお茶会<中>
しおりを挟む
「なんだ、なんだ、知り合いなのか?」
僕がクスクス笑っていると、金髪の男性から興味深げに声をかけられてしまった。
僕は慌てて体格の良い神官様から、目の前の男性へ視線を向け、簡単に経緯を説明した。
「以前、天気の良い日にブラっと散歩してた時に、あちらの庭園に水遣りの仕事をいただいた、ご縁がありまして……」
そう僕は答えると、ここのガラス窓からよく見える、見事な庭園を指差した。
僕の指先に誘われるように、皆が庭園へ一斉に目を向ける。
「最近、一段と輝いて見えるので、誰が手入れしているのかと気になってはいたのだが……そうか、そなただったのか」
感慨深げに、金髪の男性に言われるので、僕は嬉しさが込み上げてきて……誤魔化すように、へへへっと笑ってしまった。
一方、セリム様は、ちょっと意外そうに、体格の良い神官様へ話しかけられる。
「ロイ、お前が?」
「申し訳ありません。
あの時は地方から来たばかりの新入りだと、勘違いしており……一方的に命じてしまったのです」
ロイと呼ばれた神官様が、大きな身体を目いっぱい小さくして、心底申し訳なさそうに言うので、僕は急いで、お二人の会話へ入り込んで説明した。
「いえ、いいんです、侍女にも注意されたんですが、動きやすそうなこの服のデザインを僕が気に入ってしまい……ワガママを通して作ってもらったのが、勘違いさせてしまった原因でしょう。
それに、最近やっと体調が回復して元気になったのですが、何もやることがなく、少々暇を持て余しておりましたので、仕事をいただいて、逆に嬉しかったです。
ありがとうございました、ロイ様」
僕はそう言い終えると、ロイ様に向かって頭を下げた。
「そっ、そんな私ごときに……頭をお上げください」
ロイ様からそう言われると同時に、セリム様からも注意を受けた。
「ロイは私の副官だから、敬称は不要だ、レンヤード」
えっ、そうなの?
僕は慌てて、言い添える。
「申し訳ありません、私は、ずっと長らく病で伏せっておりまして……恥ずかしながら、宮中のことなど、何も存じ上げないのです」
そう、まずはセリム様がどういう方か知らないんだけど……このロイさんが部下だから……それなりに偉い方だよね?
ついでに、目の前にいる金髪の男性も、誰なのか気になるんだけど……今さら質問しにくい!
どうしよう?
色んな思いが脳内を駆け巡り……こめかみに汗が流れるのを気にしつつ、僕は正直に申し上げると、僕の心中を読んだかのように、目の前の男性から質問された。
「では、私のことも?」
「恐れながら……はい……存じ上げません」
僕は……もう……頭を下げつづけるしかない。
「はははははっ……だから、先ほど、私の茶の誘いを無視したのか!」
大笑いする男性に、これ以上誤解されないよう、僕は一度頭を上げ、必死に弁解した。
「あっ……あの……そのぉ……無視したのではなく……会話されていたのがセリム様だったので……面識がない私が同席するのも……不敬かと思い……」
軽くパニックを起こしている僕は、真っ赤になるやら、真っ青になるやらで、言葉もすんなり出てこない。
「ふっ……不敬だと……」
僕の言葉のどれがツボに入ったのか分からないが、金髪の男性は身体を折り曲げ、さらにクククッと笑い続ける。
「レンヤード様……この方は」
見かねたロイさんが、僕に声をかけようとした時、空気が急変した。
「言うな……このままでよい」
一瞬でピーンと緊張感が張り詰める。
まるで支配者の一声だ……もしかして……この方もアルファ?
僕の顔色がガラリと変化したのを見られて、張り詰めた空気が、すぐ緩められた。
何事もなかったように……それと意識されてだろうか、幾分声のトーンが楽しげなものに変わり、僕は男性から再び、声をかけられた。
「では、起きてる時には、初めましてだな。
私はアルフという。
先ほど無意識に覇気を出してしまい……申し訳なかった。
多分、そなたには感じ取れたと思うが……私はアルファだ。
だが、安心しろ、既に番である妻もいるし、かわいい子もいる」
「はぁ」
なんとも間抜けだが、僕はそう返事するしかなかった。
僕がクスクス笑っていると、金髪の男性から興味深げに声をかけられてしまった。
僕は慌てて体格の良い神官様から、目の前の男性へ視線を向け、簡単に経緯を説明した。
「以前、天気の良い日にブラっと散歩してた時に、あちらの庭園に水遣りの仕事をいただいた、ご縁がありまして……」
そう僕は答えると、ここのガラス窓からよく見える、見事な庭園を指差した。
僕の指先に誘われるように、皆が庭園へ一斉に目を向ける。
「最近、一段と輝いて見えるので、誰が手入れしているのかと気になってはいたのだが……そうか、そなただったのか」
感慨深げに、金髪の男性に言われるので、僕は嬉しさが込み上げてきて……誤魔化すように、へへへっと笑ってしまった。
一方、セリム様は、ちょっと意外そうに、体格の良い神官様へ話しかけられる。
「ロイ、お前が?」
「申し訳ありません。
あの時は地方から来たばかりの新入りだと、勘違いしており……一方的に命じてしまったのです」
ロイと呼ばれた神官様が、大きな身体を目いっぱい小さくして、心底申し訳なさそうに言うので、僕は急いで、お二人の会話へ入り込んで説明した。
「いえ、いいんです、侍女にも注意されたんですが、動きやすそうなこの服のデザインを僕が気に入ってしまい……ワガママを通して作ってもらったのが、勘違いさせてしまった原因でしょう。
それに、最近やっと体調が回復して元気になったのですが、何もやることがなく、少々暇を持て余しておりましたので、仕事をいただいて、逆に嬉しかったです。
ありがとうございました、ロイ様」
僕はそう言い終えると、ロイ様に向かって頭を下げた。
「そっ、そんな私ごときに……頭をお上げください」
ロイ様からそう言われると同時に、セリム様からも注意を受けた。
「ロイは私の副官だから、敬称は不要だ、レンヤード」
えっ、そうなの?
僕は慌てて、言い添える。
「申し訳ありません、私は、ずっと長らく病で伏せっておりまして……恥ずかしながら、宮中のことなど、何も存じ上げないのです」
そう、まずはセリム様がどういう方か知らないんだけど……このロイさんが部下だから……それなりに偉い方だよね?
ついでに、目の前にいる金髪の男性も、誰なのか気になるんだけど……今さら質問しにくい!
どうしよう?
色んな思いが脳内を駆け巡り……こめかみに汗が流れるのを気にしつつ、僕は正直に申し上げると、僕の心中を読んだかのように、目の前の男性から質問された。
「では、私のことも?」
「恐れながら……はい……存じ上げません」
僕は……もう……頭を下げつづけるしかない。
「はははははっ……だから、先ほど、私の茶の誘いを無視したのか!」
大笑いする男性に、これ以上誤解されないよう、僕は一度頭を上げ、必死に弁解した。
「あっ……あの……そのぉ……無視したのではなく……会話されていたのがセリム様だったので……面識がない私が同席するのも……不敬かと思い……」
軽くパニックを起こしている僕は、真っ赤になるやら、真っ青になるやらで、言葉もすんなり出てこない。
「ふっ……不敬だと……」
僕の言葉のどれがツボに入ったのか分からないが、金髪の男性は身体を折り曲げ、さらにクククッと笑い続ける。
「レンヤード様……この方は」
見かねたロイさんが、僕に声をかけようとした時、空気が急変した。
「言うな……このままでよい」
一瞬でピーンと緊張感が張り詰める。
まるで支配者の一声だ……もしかして……この方もアルファ?
僕の顔色がガラリと変化したのを見られて、張り詰めた空気が、すぐ緩められた。
何事もなかったように……それと意識されてだろうか、幾分声のトーンが楽しげなものに変わり、僕は男性から再び、声をかけられた。
「では、起きてる時には、初めましてだな。
私はアルフという。
先ほど無意識に覇気を出してしまい……申し訳なかった。
多分、そなたには感じ取れたと思うが……私はアルファだ。
だが、安心しろ、既に番である妻もいるし、かわいい子もいる」
「はぁ」
なんとも間抜けだが、僕はそう返事するしかなかった。
97
お気に入りに追加
948
あなたにおすすめの小説
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
無自覚副会長総受け?呪文ですかそれ?
あぃちゃん!
BL
生徒会副会長の藤崎 望(フジサキ ノゾム)は王道学園で総受けに?!
雪「ンがわいいっっっ!望たんっっ!ぐ腐腐腐腐腐腐腐腐((ペシッ))痛いっっ!何このデジャブ感?!」
生徒会メンバーや保健医・親衛隊・一匹狼・爽やかくん・王道転校生まで?!
とにかく総受けです!!!!!!!!!望たん尊い!!!!!!!!!!!!!!!!!!
___________________________________________
作者うるさいです!すみません!
○| ̄|_=3ズザァァァァァァァァァァ
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
Tally marks
あこ
BL
五回目の浮気を目撃したら別れる。
カイトが巽に宣言をしたその五回目が、とうとうやってきた。
「関心が無くなりました。別れます。さよなら」
✔︎ 攻めは体格良くて男前(コワモテ気味)の自己中浮気野郎。
✔︎ 受けはのんびりした話し方の美人も裸足で逃げる(かもしれない)長身美人。
✔︎ 本編中は『大学生×高校生』です。
✔︎ 受けのお姉ちゃんは超イケメンで強い(物理)、そして姉と婚約している彼氏は爽やか好青年。
✔︎ 『彼者誰時に溺れる』とリンクしています(あちらを読んでいなくても全く問題はありません)
🔺ATTENTION🔺
このお話は『浮気野郎を後悔させまくってボコボコにする予定』で書き始めたにも関わらず『どうしてか元サヤ』になってしまった連載です。
そして浮気野郎は元サヤ後、受け溺愛ヘタレ野郎に進化します。
そこだけ本当、ご留意ください。
また、タグにはない設定もあります。ごめんなさい。(10個しかタグが作れない…せめてあと2個作らせて欲しい)
➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
➡︎ 『番外編:本編完結後』に区分されている小説については、完結後設定の番外編が小説の『更新順』に入っています。『時系列順』になっていません。
➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。
個人サイトでの連載開始は2016年7月です。
これを加筆修正しながら更新していきます。
ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。
王太子殿下は悪役令息のいいなり
白兪
BL
「王太子殿下は公爵令息に誑かされている」
そんな噂が立ち出したのはいつからだろう。
しかし、当の王太子は噂など気にせず公爵令息を溺愛していて…!?
スパダリ王太子とまったり令息が周囲の勘違いを自然と解いていきながら、甘々な日々を送る話です。
ハッピーエンドが大好きな私が気ままに書きます。最後まで応援していただけると嬉しいです。
書き終わっているので完結保証です。
偽物の番は溺愛に怯える
にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』
最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。
まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる