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第3章 王宮生活<始動編>
35、新たな出会い<後>
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それからというもの、本当にセリム様は、僕が命じられた庭園の水やりを終えて、奥まった場所にある、ちょっとだけ秘密めいたこの綺麗な教会に祈りを捧げるたびに、いつの間にか現れて、一緒に祈りを捧げてくれた。
大抵は、僕が先に来て祈りを捧げており、終わって振り返ると、僕の後ろでセリム様が跪いて祈りをささげているという、大変僕の心臓によろしくない、登場方法をされる。
僕は来ていただいたら、遠慮なく声をかけてくださいとお願いしているが、セリム様が聞き入れることもない。
それに祈りを終えられると、これまたサッサと帰られるので、僕とセリム様の交流は全くなかった。
セリム様がどういうお方なのか気にはなるが、本人に僕と話す意思がない以上、僕からはどうしようもなく……諦めてその状況を受け入れるしかない。
祈ることに特に固執している訳ではないが、何しろ今の僕はやることも、会う人もなく……要するに暇過ぎた。
それに、番であるシルヴィス様に長期間お会いできない状況は、やっぱり何だかゾワゾワして僕は落ち着かない。
時折忍び寄る、何とも言えない、得体の知れない不安感に呑み込まれそうになり……ぐっすり眠れない夜もある。
だから僕は、雨の日以外は、せっせとこの教会に通い詰めた。
それに祈ると、セリム様に語ったように心も身体もスッキリするため……僕にとって今や祈りは、大事な気分転換の一つになっていた。
さあ今日もいつものように祈ろうかと、この隠れ家みたいな教会の扉を開けると、いつもと何だか雰囲気が違った。
何だろう?と僕なりに警戒体制を取りながら、室内へ足を踏み入れる。
誰かいる?
セリム様の透明感とは違う……ここにいますよ!と主張する、意図的な迫力ある存在感を、僕はピリリとした皮膚体感で受け止めた。
自分なりに警戒しながら、さらに室内に進むと、例の全面ガラス張りの横にあるソファに、誰かが寝転んでいるのが見てとれる。
今の時刻は昼過ぎで、透明ガラスから神の祝福のような日光が、座り心地の良さそうなソファに降り注いでいる。
その光が寝転んでいる人の金髪に跳ね返って、キラキラと輝いていた。
あまりの美しさに、またしても僕は感嘆の声をあげそうになったが、自身の手で自分の口を塞ぐことにより、その歓声を押し殺すことに成功した。
なぜなら、遠目から見ても、金髪のその方は……すごく気持ち良さそうに眠っていたからだ。
大抵は、僕が先に来て祈りを捧げており、終わって振り返ると、僕の後ろでセリム様が跪いて祈りをささげているという、大変僕の心臓によろしくない、登場方法をされる。
僕は来ていただいたら、遠慮なく声をかけてくださいとお願いしているが、セリム様が聞き入れることもない。
それに祈りを終えられると、これまたサッサと帰られるので、僕とセリム様の交流は全くなかった。
セリム様がどういうお方なのか気にはなるが、本人に僕と話す意思がない以上、僕からはどうしようもなく……諦めてその状況を受け入れるしかない。
祈ることに特に固執している訳ではないが、何しろ今の僕はやることも、会う人もなく……要するに暇過ぎた。
それに、番であるシルヴィス様に長期間お会いできない状況は、やっぱり何だかゾワゾワして僕は落ち着かない。
時折忍び寄る、何とも言えない、得体の知れない不安感に呑み込まれそうになり……ぐっすり眠れない夜もある。
だから僕は、雨の日以外は、せっせとこの教会に通い詰めた。
それに祈ると、セリム様に語ったように心も身体もスッキリするため……僕にとって今や祈りは、大事な気分転換の一つになっていた。
さあ今日もいつものように祈ろうかと、この隠れ家みたいな教会の扉を開けると、いつもと何だか雰囲気が違った。
何だろう?と僕なりに警戒体制を取りながら、室内へ足を踏み入れる。
誰かいる?
セリム様の透明感とは違う……ここにいますよ!と主張する、意図的な迫力ある存在感を、僕はピリリとした皮膚体感で受け止めた。
自分なりに警戒しながら、さらに室内に進むと、例の全面ガラス張りの横にあるソファに、誰かが寝転んでいるのが見てとれる。
今の時刻は昼過ぎで、透明ガラスから神の祝福のような日光が、座り心地の良さそうなソファに降り注いでいる。
その光が寝転んでいる人の金髪に跳ね返って、キラキラと輝いていた。
あまりの美しさに、またしても僕は感嘆の声をあげそうになったが、自身の手で自分の口を塞ぐことにより、その歓声を押し殺すことに成功した。
なぜなら、遠目から見ても、金髪のその方は……すごく気持ち良さそうに眠っていたからだ。
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