9 / 97
第1章 番(つがい)になるまで
8、混乱の中での求愛
しおりを挟む
っっ……テオぉぉぉッッッ~~
僕の身体にやっと血が駆け巡り、テオの元へ行こうとするが、逆に遠ざかってしまう。
なんで!?
そこでやっと、シルヴィス様が後ろから僕を抱き寄せて、ライの襲撃から庇ってくださったことを理解したが、今はそれどころではない。
「シルヴィス様、離してください!!」
「ダメだ!!
そなたを失うわけにはいかぬのだ!!」
テオのもとに駆けつけたい僕は暴れまくる。
「やだ!離せよ!!離せ!!
テオがっ!!テオがぁ~!!
テオぉぉぉ~~っ!!」
僕はピクリとも動かなくなったテオに向かって必死に手を伸ばしたが、容赦なくシルヴィス様に引きずられて、どんどんテオから遠ざかっていく。
同時にライも、僕と反対方向へ兵士に拘束され連れて行かれるのが見えた。
かなり離れていたが、ライは僕と目が合うなり、怒りが再発したようで、罵り始めた。
「なんで欠陥オメガのお前がシルヴィス様に選ばれるんだ!
僕は絶対に認めないからな!
シルヴィス様を支えようと努力してきた、僕のこの5年間は何だったんだ?
今日はこれまでの人生の中で一番幸せな日になるはずだったのに、こんな惨めな思いをされられるなんて!
不細工なお前なんて、すぐに捨てられるぞ!
忘れるな!」
酷い興奮状態のライは、頑強な兵士たちでさえも手を焼き、最後は鳩尾を殴られ、気絶させられてから部屋を出ていった。
美しい顔立ちをしているライは、小さな頃から、いつでもどこでも特別扱いを受けていたため、気位が高い。
僕たちは二卵性の双子なので、容姿はあまり似ていなかった。
髪の色は、ライは艶やかな蜂蜜色だが、僕は焦茶色。
瞳の色は、ライは透き通ったエメラルドグリーンに対して、僕はダークグリーン。
性格も、社交的なライに、引っ込み思案な僕。
見事に対照的な僕たちだったので、周囲からは、よく「光」と「影」に例えられた。
もちろん「光」はライだ。
第一の性である男女とは別の観点で、子を産めるか産まないかで分けられる第二の性であるバース性。
第一次性で男性体であるが、第二次性で唯一産むことが出来るオメガ性であるライと僕。
でも僕だけ、オメガ性でありながら、子宮がないために産むことができない。
だからだろうか、オメガ性として完璧なライは、僕を見下すことが多かった。
唯一両親と姉だけは、『レンはとっても綺麗なの、だから自信を持って』と言ってくれたけど、容姿も性格も地味なうえ、産むことができない自分に、どうしようもない痛みと引け目を感じていた僕は、ライの態度を甘んじて受け入れ、反論したことはなかった。
ただこんな人前で、罵倒されるのはさすがにキツいけど……。
衝撃的な出来事が重なり、現実逃避であれこれ考え込んでいた僕は、シルヴィス様が声を出されたため、はっと我に返った。
「タナー、いるか?」
「はい、シルヴィス将軍、ここに」
「悪いが、オレはこれから番うために自室にこもる。
全権をお前に委任するから、ここからは副官であるお前が指揮しろ」
「かしこまりました」
今、シルヴィス様は何て言った?
確か……つがうとか何とか……
えっ?番うって?
「いやです、行きたくないです!シルヴィス様」
僕は抗議の意味を込めて、さらに力の限り暴れたが、シルヴィス様はビクともしない。
自分の指示通り動き出す副官らを見届けてから、もがく僕の身体をヒョイっと抱き上げて、シルヴィス様は無言で歩き出した。
止まることなく歩き続けて、少し豪華な装飾が施された大きな扉を開け、中に入る。
さらに奥にある寝台へと近づくと、そっとその上に僕を横たえた。
あまりの体格差ゆえに、体重をかけ過ぎないように気をつけながら、シルヴィス様はそのまま僕の上へ覆いかぶさった。
未だ、もがき続ける僕を、大きな四肢全体を使い、押さえつける。
僕が感じる恐怖と混乱は、極限状態を迎えた。
「暴れるな、傷つけたくない」
そうシルヴィス様は言うけれど、僕だって必死だ。
抵抗をやめるわけにはいかない。
シルヴィス様は、僕に対して、これ以上力で押さえつけるのは危険と判断したのか、今度はアルファだけが使うことができる、威圧を発動した。
うぅっ……空気が重い。
ものすごい圧力に、自然と身体の動きが鈍くなり、やがて僕はピクリとも自力で動かすことが出来なくなった。
僕の身体にやっと血が駆け巡り、テオの元へ行こうとするが、逆に遠ざかってしまう。
なんで!?
そこでやっと、シルヴィス様が後ろから僕を抱き寄せて、ライの襲撃から庇ってくださったことを理解したが、今はそれどころではない。
「シルヴィス様、離してください!!」
「ダメだ!!
そなたを失うわけにはいかぬのだ!!」
テオのもとに駆けつけたい僕は暴れまくる。
「やだ!離せよ!!離せ!!
テオがっ!!テオがぁ~!!
テオぉぉぉ~~っ!!」
僕はピクリとも動かなくなったテオに向かって必死に手を伸ばしたが、容赦なくシルヴィス様に引きずられて、どんどんテオから遠ざかっていく。
同時にライも、僕と反対方向へ兵士に拘束され連れて行かれるのが見えた。
かなり離れていたが、ライは僕と目が合うなり、怒りが再発したようで、罵り始めた。
「なんで欠陥オメガのお前がシルヴィス様に選ばれるんだ!
僕は絶対に認めないからな!
シルヴィス様を支えようと努力してきた、僕のこの5年間は何だったんだ?
今日はこれまでの人生の中で一番幸せな日になるはずだったのに、こんな惨めな思いをされられるなんて!
不細工なお前なんて、すぐに捨てられるぞ!
忘れるな!」
酷い興奮状態のライは、頑強な兵士たちでさえも手を焼き、最後は鳩尾を殴られ、気絶させられてから部屋を出ていった。
美しい顔立ちをしているライは、小さな頃から、いつでもどこでも特別扱いを受けていたため、気位が高い。
僕たちは二卵性の双子なので、容姿はあまり似ていなかった。
髪の色は、ライは艶やかな蜂蜜色だが、僕は焦茶色。
瞳の色は、ライは透き通ったエメラルドグリーンに対して、僕はダークグリーン。
性格も、社交的なライに、引っ込み思案な僕。
見事に対照的な僕たちだったので、周囲からは、よく「光」と「影」に例えられた。
もちろん「光」はライだ。
第一の性である男女とは別の観点で、子を産めるか産まないかで分けられる第二の性であるバース性。
第一次性で男性体であるが、第二次性で唯一産むことが出来るオメガ性であるライと僕。
でも僕だけ、オメガ性でありながら、子宮がないために産むことができない。
だからだろうか、オメガ性として完璧なライは、僕を見下すことが多かった。
唯一両親と姉だけは、『レンはとっても綺麗なの、だから自信を持って』と言ってくれたけど、容姿も性格も地味なうえ、産むことができない自分に、どうしようもない痛みと引け目を感じていた僕は、ライの態度を甘んじて受け入れ、反論したことはなかった。
ただこんな人前で、罵倒されるのはさすがにキツいけど……。
衝撃的な出来事が重なり、現実逃避であれこれ考え込んでいた僕は、シルヴィス様が声を出されたため、はっと我に返った。
「タナー、いるか?」
「はい、シルヴィス将軍、ここに」
「悪いが、オレはこれから番うために自室にこもる。
全権をお前に委任するから、ここからは副官であるお前が指揮しろ」
「かしこまりました」
今、シルヴィス様は何て言った?
確か……つがうとか何とか……
えっ?番うって?
「いやです、行きたくないです!シルヴィス様」
僕は抗議の意味を込めて、さらに力の限り暴れたが、シルヴィス様はビクともしない。
自分の指示通り動き出す副官らを見届けてから、もがく僕の身体をヒョイっと抱き上げて、シルヴィス様は無言で歩き出した。
止まることなく歩き続けて、少し豪華な装飾が施された大きな扉を開け、中に入る。
さらに奥にある寝台へと近づくと、そっとその上に僕を横たえた。
あまりの体格差ゆえに、体重をかけ過ぎないように気をつけながら、シルヴィス様はそのまま僕の上へ覆いかぶさった。
未だ、もがき続ける僕を、大きな四肢全体を使い、押さえつける。
僕が感じる恐怖と混乱は、極限状態を迎えた。
「暴れるな、傷つけたくない」
そうシルヴィス様は言うけれど、僕だって必死だ。
抵抗をやめるわけにはいかない。
シルヴィス様は、僕に対して、これ以上力で押さえつけるのは危険と判断したのか、今度はアルファだけが使うことができる、威圧を発動した。
うぅっ……空気が重い。
ものすごい圧力に、自然と身体の動きが鈍くなり、やがて僕はピクリとも自力で動かすことが出来なくなった。
184
お気に入りに追加
1,089
あなたにおすすめの小説
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど?
お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない
天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。
ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。
運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった――――
※他サイトにも掲載中
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
が、レジーナブックスさまより発売中です。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m
【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。
白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。
僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。
けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。
どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。
「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」
神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。
これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。
本編は三人称です。
R−18に該当するページには※を付けます。
毎日20時更新
登場人物
ラファエル・ローデン
金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。
ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。
首筋で脈を取るのがクセ。
アルフレッド
茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。
剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。
神様
ガラが悪い大男。
5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる