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第2章 朝チュンの混乱

5、泥酔(でいすい)の果(は)てに

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 なんだか全身がとっても暖かい。
 それになぜか、圧倒的あっとうてきな安心感を覚える。

 完全に目覚める一歩手前てまえの穏やかな微睡まどろみの時が、マーガレットの1番の幸せだ。

 いつもは、このままゆっくりと覚醒かくせいに向かい、やがてスッキリとした気分で目が覚める。

 でも、今日はなんだか違った。
 なんでだろう?

 マーガレットは、今、身体からだにとてつもない異常いじょうを感じていた。

 ううっ……あっ、頭が……ズキズキする
 身体からだ全体が……ズッシリと重たい
 でも……気分は……スッキリしている
 
 なんとか目を開けて状況を確認しようとするけれど、目蓋まぶたがまるでおもりを乗せているかのようで、すぐには開けられない。

 ただ今の自分に、敵意てきいを向ける存在がそばにはいないということだけ、マーガレットは本能的ほんのうてき判断はんだんした。

 となったら……まずは昨日の出来事から思い出すしかないか……

 目は開けられないが、段々だんだんえてくる意識いしきの中で、マーガレットはそう考えた。

 それにしても、全身を包み込んでいる、この暖かさは、なんて居心地いごこちがいいんだろう

 意識いしき覚醒かくせいに向かうにつれ、少し肌寒はださむさを感じたので、無意識むいしきにマーガレットはかたわらのぬくもりに身体からだごと近づけた。

 ギュッ

 背中に暖かい何かが回され、マーガレットのほおに、少しかたさが残るが、ムチっとしたやわらかで暖かなものが押し付けられる。

 なんだろう、コレ?
 クッション……にしては、ちょっと湿しめっているなぁ
 だけど、イイ匂いがする!

 本能ほんのうしたがい、マーガレットは思いっきり、息をんだ。

 スーハァー
 うんうん、なるほどね、なかなかイイ香りではないの
 コレは……結構けっこうな高級品を使っているわ
 廉価版れんかばんの甘ったるい香油こうゆとは、大違い!

 寝ぼけたまま、マーガレットは勝手に香油こうゆ鑑定かんていを行い、その結果に一人満足する。

 そして息を大きくんだことで、脳に酸素さんそが回ったせいか、ようやくマーガレットの思考しこうが働きだした。

 えーと、昨日は……

 昨日の予定を思い出したことで、マーガレットは、目を閉じたまま、顔をしかめた。

 それは……何年かぶりに、父親と会ったからだ。

 何……言われたっけ?
 ??
 ダメだ……今は思い出せない

 だけど、マーガレットにとって、何か、とてつもない嫌な事を言われ、ひどく憤慨ふんがいしたことは覚えていた。

 それから……喧嘩けんかする形で父親と別れ……まだ怒りがおさまらなかったマーガレットは、行きつけの酒場バーへ行き、マスターに散々さんざん父親の愚痴ぐちを聞いてもらいながら、ハイペースでお酒を飲んで……いた気がする。

 う~ん、このあたりから……記憶が曖昧あいまいなのよね

 そう思い出しながら、マーガレットは目をこすった。

 それから……それから……えーと……うーんと……久々に天使の夢を見て……

 今でもマーガレットにとって、大切な宝物のような思い出だ。

 それにしても、あんな美少年、成人した今、どんな顔しているのか、少し気になるなぁ……

 もう一度、目をこすったところで、マーガレットの目は、やっとひらいた。

 まず、ぼんやりと目の前にあらわれたのは、彫刻ちょうこくみたいな胸筋きょうきんだった。

 一目ひとめきたえられていると理解できたものの、肌が白いせいか、なんだかなまめかしい

 ナニコレ、けしからんほどの、立派なっぱいじゃないの!
 しかも……におい立つほどの色気いろけ!!
 合格じゃ!!!

 きびしいベテラン審査員しんさいんの目線で、目の前の胸筋きょうきん堪能たんのうしたマーガレットは、次に自分の右手を持ち上げると、人差し指でっぱいの乳首付近ふきんをフニフニと押した。

 力強く人差し指に返ってくる皮膚ひふ弾力だんりょくが、これまた、たまらない。

 よし、これも合格!!

 2つ目の合格を出したところで、目の前の胸筋きょうきんが、かすかにれた。

 えっ?何?と疑問に感じながら、マーガレットは、ふと目線を上に向けた。

 あの天使だった美少年が、その美をそこなわずに大きくなったら、こんな感じになるだろう……というような顔が、そこにはあった。

 目は、かたくつぶられている。

 うんうん、顔も合格!!!

 うん?ちょっと待って、顔も合格って何?とマーガレットは、一旦いったん、思考を停止した。
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