今世ではあなたと結婚なんてお断りです！

もう恥をかくのは嫌よ！！【ｱﾗﾝ&ﾉｴﾗ】

　食事が始まるとノエラはなるべく愛らしく彼らに接したが、話題が合わずに置いてけぼりを食らうこともあった。
　それに気づいた者たちが気を使って話題をそらしたりしていた。
　離れた席にいる貴族たちはこそこそ話した。

「リエルさまは初対面で全員の名前を間違えなかったぞ」
「趣味趣向も完璧に把握して話題も豊富だったな」

　ノエラは笑顔が引きつっていた。
　食事会は微妙な空気の中でお開きとなった。

　ノエラは食事会のあと不機嫌になり、自室に戻るとアランに苛立ちをぶつけた。

「あんな恥をかくなんて、もう食事会なんていやですわ！」

　アランはなんとかノエラをなだめようとする。

「すまない。まだ君には早かったな」

　ノエラはキッとアランを睨みつける。

「誰かは覚えていないけど、あたくしとリエルを比較したのです！　よりによってリエルなんかと！」
「落ち着くんだ、ノエラ。覚えるのが難しいなら、これからは笑っているだけでいいから」

　ノエラは苛立ちから泣き顔になり、ぐすんっと鼻をすすった。
　アランはばつの悪そうな顔をする。

「殿下、取り乱したりしてごめんなさい。あたくし、妃になるために頑張りますわ」
「ノエラ、君が前向きな人でよかった」

　ノエラのご機嫌が直ったようで、アランはほっと安堵する。

「君のために教育係をつけようか。妃の仕事について学ぶといい」
「でも、でも……あたくし、叱られるのはいやですわ。なるべくお優しい人をお願いしますね」

　きゅるんっと顔を傾げながら、ノエラは上目遣いでアランを見つめた。
　ノエラのその表情を見て、アランは頬を赤らめる。

「本当に、君はなんて可愛いんだ。大丈夫だ。君をいじめる奴は俺が許さない」

　アランの言葉にノエラは泣き顔から満面の笑みに変わった。

「うふふ、殿下はあたくしのことが大好きなのですね」
「当たり前じゃないか。でなければ、君ひとりを愛したりしないよ」
「もう、殿下ったら！」

　ふたりがきゃぴきゃぴしているあいだ、侍従は部屋の外で待機していた。

「困った。いい加減、殿下に仕事をしてもらわないと……」

　侍従は困惑の表情でため息をついた。
　その様子を遠くから見ていたのはユリウスだ。
　
（兄上はノエラさまの部屋にいてばかりだ。王国議会の会議も迫っているのに、どうされるおつもりだろう？）

　アランの周囲はみな、先が見えずに困っていた。