18 / 110
仕組まれた罠②
しおりを挟む
「そういえば、使用人が盗みを働いて解雇されたそうね」
ノエラは目を丸くしてわざとらしく驚いた表情で言った。
リエルは落ち着いて紅茶を飲む。
「噂ではあなたが使用人を唆してアラン殿下の気を引こうとしたっていう話よ」
リエルは紅茶を飲む手を止め、静かにカップを置く。
「噂って怖いわよねえ。リエルがそんなことをするなんてあり得ないから、あたしがみんなに言い返してやったわよ。リエルに限ってそんなことないわよってね」
満面の笑みでそんなことを言うノエラに、リエルは真顔から笑顔になった。
「当たり前じゃない。私がそんなことをするわけがないわ」
「ええ。あたしがリエルの濡れ衣は晴らしておいたわ」
「ありがとう、ノエラ」
(その噂、あなたが広めたのね。わざとらしいわ)
ふたりはお互いに笑顔で見つめ合う。
「ありがとう、ノエラ。あなたはいつも私の味方でいてくれるのね」
「もちろんよ、リエル。だって親友ですもの」
ノエラの口角が不自然に上がる。
リエルはそれに気づいたが、黙って微笑むだけだった。
リエルはおもむろに立ち上がり、にっこりと笑った。
「これから仕事があるの。先に失礼するわね」
「大変ね、王太子妃になるって」
「そう、大変なのよ」
リエルは余裕の表情でそう言って、エマとともに立ち去った。
その場に残されたノエラはしばらく笑っていたが、やがて真顔になった。
しばらくノエラは沈黙のまま突っ立っていたが、やがて周囲に人がいないことを確認すると、テーブルの上のナプキンを引っ掴んだ。
その拍子にカップが落下し、割れてしまった。
ノエラはそんなことにお構いなく、ナプキンを地面に落として足で踏んづけた。
「何よ! 何なのよ、あの余裕は! てっきり泣きついてくると思ったのに!」
ノエラは叫びながらぐしゃぐしゃとナプキンを踏みつける。
「リエルのくせに余裕ぶってんじゃないわよ!」
ギリギリと歯を食いしばりながら宙を睨みつける。
「以前は少し変な噂が出回るだけで落ち込んでいた子が……!」
ノエラは学院時代にもリエルの根も葉もない噂を流しては落ち込む彼女を慰めて、自分は優越感に浸っていた。
王宮となればもっとリエルの苦しむ顔が見られるかと思ったのに、あまりの余裕じみた顔をされてイライラするのだ。
「噂だけじゃ足りないわ。もっと徹底的に痛い目にあわせなきゃ」
そんなことを呟いた瞬間、がさりと音がして人が現れ、ノエラはびくっとした。
誰かに聞かれたと思ったら、その相手が侍女長だったので安堵する。
侍女長はリエルを嫌っている。その点で、ノエラと同じ考えを持っていた。
「いい方法がありますよ」
「侍女長」
にやりと笑う侍女長を見て、ノエラも自然と口角が上がる。
「わたくしにお任せくださればよろしいかと」
「うふふ、話が早くて助かるわ」
侍女長ならリエルに容易に接触することができる。
ノエラは自身の鬱憤を晴らしてもらうため、侍女長と計略を練った。
(見てなさい。余裕ぶっていられるのも今のうちよ)
ノエラは目を丸くしてわざとらしく驚いた表情で言った。
リエルは落ち着いて紅茶を飲む。
「噂ではあなたが使用人を唆してアラン殿下の気を引こうとしたっていう話よ」
リエルは紅茶を飲む手を止め、静かにカップを置く。
「噂って怖いわよねえ。リエルがそんなことをするなんてあり得ないから、あたしがみんなに言い返してやったわよ。リエルに限ってそんなことないわよってね」
満面の笑みでそんなことを言うノエラに、リエルは真顔から笑顔になった。
「当たり前じゃない。私がそんなことをするわけがないわ」
「ええ。あたしがリエルの濡れ衣は晴らしておいたわ」
「ありがとう、ノエラ」
(その噂、あなたが広めたのね。わざとらしいわ)
ふたりはお互いに笑顔で見つめ合う。
「ありがとう、ノエラ。あなたはいつも私の味方でいてくれるのね」
「もちろんよ、リエル。だって親友ですもの」
ノエラの口角が不自然に上がる。
リエルはそれに気づいたが、黙って微笑むだけだった。
リエルはおもむろに立ち上がり、にっこりと笑った。
「これから仕事があるの。先に失礼するわね」
「大変ね、王太子妃になるって」
「そう、大変なのよ」
リエルは余裕の表情でそう言って、エマとともに立ち去った。
その場に残されたノエラはしばらく笑っていたが、やがて真顔になった。
しばらくノエラは沈黙のまま突っ立っていたが、やがて周囲に人がいないことを確認すると、テーブルの上のナプキンを引っ掴んだ。
その拍子にカップが落下し、割れてしまった。
ノエラはそんなことにお構いなく、ナプキンを地面に落として足で踏んづけた。
「何よ! 何なのよ、あの余裕は! てっきり泣きついてくると思ったのに!」
ノエラは叫びながらぐしゃぐしゃとナプキンを踏みつける。
「リエルのくせに余裕ぶってんじゃないわよ!」
ギリギリと歯を食いしばりながら宙を睨みつける。
「以前は少し変な噂が出回るだけで落ち込んでいた子が……!」
ノエラは学院時代にもリエルの根も葉もない噂を流しては落ち込む彼女を慰めて、自分は優越感に浸っていた。
王宮となればもっとリエルの苦しむ顔が見られるかと思ったのに、あまりの余裕じみた顔をされてイライラするのだ。
「噂だけじゃ足りないわ。もっと徹底的に痛い目にあわせなきゃ」
そんなことを呟いた瞬間、がさりと音がして人が現れ、ノエラはびくっとした。
誰かに聞かれたと思ったら、その相手が侍女長だったので安堵する。
侍女長はリエルを嫌っている。その点で、ノエラと同じ考えを持っていた。
「いい方法がありますよ」
「侍女長」
にやりと笑う侍女長を見て、ノエラも自然と口角が上がる。
「わたくしにお任せくださればよろしいかと」
「うふふ、話が早くて助かるわ」
侍女長ならリエルに容易に接触することができる。
ノエラは自身の鬱憤を晴らしてもらうため、侍女長と計略を練った。
(見てなさい。余裕ぶっていられるのも今のうちよ)
2,141
お気に入りに追加
5,350
あなたにおすすめの小説
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
【完結】愛していないと王子が言った
miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。
「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」
ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。
※合わない場合はそっ閉じお願いします。
※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに
hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。
二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。
王子様、あなたの不貞を私は知っております
岡暁舟
恋愛
第一王子アンソニーの婚約者、正妻として名高い公爵令嬢のクレアは、アンソニーが自分のことをそこまで本気に愛していないことを知っている。彼が夢中になっているのは、同じ公爵令嬢だが、自分よりも大部下品なソーニャだった。
「私は知っております。王子様の不貞を……」
場合によっては離縁……様々な危険をはらんでいたが、クレアはなぜか余裕で?
本編終了しました。明日以降、続編を新たに書いていきます。
【完結】ありのままのわたしを愛して
彩華(あやはな)
恋愛
私、ノエルは左目に傷があった。
そのため学園では悪意に晒されている。婚約者であるマルス様は庇ってくれないので、図書館に逃げていた。そんな時、外交官である兄が国外視察から帰ってきたことで、王立大図書館に行けることに。そこで、一人の青年に会うー。
私は好きなことをしてはいけないの?傷があってはいけないの?
自分が自分らしくあるために私は動き出すー。ありのままでいいよね?
あなたの姿をもう追う事はありません
彩華(あやはな)
恋愛
幼馴染で二つ年上のカイルと婚約していたわたしは、彼のために頑張っていた。
王立学園に先に入ってカイルは最初は手紙をくれていたのに、次第に少なくなっていった。二年になってからはまったくこなくなる。でも、信じていた。だから、わたしはわたしなりに頑張っていた。
なのに、彼は恋人を作っていた。わたしは婚約を解消したがらない悪役令嬢?どう言うこと?
わたしはカイルの姿を見て追っていく。
ずっと、ずっと・・・。
でも、もういいのかもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる