微妙なプロポーズ

微妙なプロポーズ

クリスマスイブの夜。
最上階の一流フレンチレストランの窓外には、降り出した雪が輝く夜景に華を添えていた。
テーブルにはキャンドルの焔がゆらめき、白いテーブルクロスに銀の食器の影を動かしていた。
彼女の美しい瞳を、彼は真剣に見つめていた。
静寂だけがふたりを包んでいた。
BGMのJAZZさえ、ふたりには遠く感じられていた。
彼女は、彼が切り出すのを待っていた。
彼は、ジャケットの内ポケットからリボンのかけられた小箱を取り出し、解きほどいて蓋を開け、ダイヤのリングを手にすると、彼女の左手の薬指にそっと、やわらかく通した。
プラチナの硬い感触が、ひんやりとした。
彼は彼女の両手をやさしく握り、凛として言った。
「大切にするよ」
彼女の瞳から泪が溢れ、熱く頬をつたった。
雪を絡めた夜景が滲んで、忘れられなくなった。
(この輝きが続く限り、添い遂げよう)
彼女はそう決意した。
彼女の血潮を映すかのように、ワイングラスのRougeが赤みを増した。
「僕の内縁の妻になってくれ」
彼が続けた。
「は……？」