恐喝されている女の子を助けたら学校で有名な学園三大姫の一人でした

恋狸

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71話

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「寒いな……」

 薄く草や土に霜が張っていて、その寒さが窺い知れる。11月の下旬に差し掛かりそろそろ初雪が降るだろうと思う。
 早い時には10月に降るはずの雪だが、今年は少し遅いようだ。
 その冬の知らせに今年の終わりも見えて、なんだか色々あったなあと思い返す。

 前当主を救出したのが二週間前で、あれから『若草組』は取り潰されて、平和が訪れていた。
 組員をどういう処遇にしたかは……聞きたくないな。とはいっても、前当主が残虐だというのは噂でしかなかったようなので、そこまで酷いことはしてないだろう。
 まあ、五回くらいボコってる……かも?       

 戦闘狂ってキャラがジジイとも被ってるし、この界隈にはそういう人しかいないんじゃないかって思ってきた。いや、まあ《そういう》界隈なんだから当然ではあるが。
 案外ジジイと前当主って仲良くできるんじゃね……? あの二人が組んだら最強そうだけど。
 ……そんなことにはならないか。

 あり得ないに決まってる。……多分。

 そんなフラグめいたことを考えていると、後ろから肩をトンと軽く叩かれた。

「おはよ」

「おはよう。なんか最近よく会うな」

「そ、そうだね。ぐ、偶然にしては多いね」

 何故か落ち着かない様子で答えたのは花ちゃんだ。
 ここ最近、通学路で会うのだが時間をずらした時でも会うのは奇跡だ。きっとたまたまだろう。

「にしても寒いな」

 会った時は、一緒に学校に行くことが決まってるので、隣で歩く花ちゃんとの話題を作る。

「そうだね~。でも、私は冬好きだから楽しみなんだ」

「へぇ。なんで好きなの?」

 北海道民は例外なく冬が嫌いかと思ってたけど。 
 雪に憧れる内地の諸君。地獄見るぞ……。雪なんて良いものじゃないんだよ。寒いし、寒すぎると顔が痛くなるし、電車とか止まるし。

「いや、だってさ。クリスマスと正月あるじゃん! プレゼントとお年玉貰えるじゃん! おまけに誕生日もあるし」

「物目的かよ!」

 思ったより俗っぽい理由にビックリだよ。
 いや、まあわからんでもないけど。高校生だし、遊ぶお金も必要だからな。

「女の子はね。服とか化粧とかにお金使うものなの!」

「そ、そうですね」

 ここら辺が男女の違いだろうけど、花ちゃんが化粧してるのは見たことないな。

「というか、誕生日冬だったな。えーと……12月15日だったっけ?」

 記憶を頼りになんとか思い出して言う。花ちゃんは嬉しそうに笑顔になって、うんうん、と頷いた。

「そう! 憶えててくれたんだ……」

「まあ、憶えやすいしな」

「一言余計だよ」

 ブスッとした表情で釘を刺された。すみません。
 まあ、誕生日を知ったし、盛大に……は無理かもしれないけど祝おう。本当は日夏とか瞳さんとも仲良くなってくれれば嬉しいんだけど、これはエゴかな……。
 一度紹介するのも良いかもな。というか、もうするつもりなんだよな。

「なあ会って欲しい人が────」

「嫌」

「え?」

 全部言う前に断られたんだけど。え、気のせいだよな。

「だって、それって春風さんでしょ?」

「そ、そうだけど」

 なんでか言い立てられたけど、知ってて嫌って言ったってことは、普通に日夏に会うのが嫌ってことか!?

「私が嫌って言ったのはもう春風さんとは知り合いだからだよ」

「あ、そういうことね」

 ビビったわ……。なんか因縁あるのかと思った……。
 いや、でもそれなら嫌って言わなくね? もう、知り合いだよ、って言うんじゃね……?

 やっぱりなんかありそうだな……。

「で、でも知り合いならちょうどいいし、三人でお茶でも────」

「嫌」

「え?」

「嫌っていったの!」

 少し怒った様子で勢いよく言われた。……早計だったかな。
 無理矢理はよくないか。仕方ない諦め……るわけないんだよな。

「わかったよ。じゃあ、の会わせたい人と日夏の三人で行くよ」

「え……」

 意地悪だとは思うが仕方ない。どのみち断られたらそうするつもりだったし、そうすれば、色々解決することがあるかもしれないのだ!

 一つは、瞳さんの許嫁問題。 
 女の子同士で仲良くなったら、許嫁のことなんて忘れるかもしれない。
 あとは、日夏の勉強問題。
 一度引き受けたからには最後までするつもりだけど、俺と同じくらい勉強のできる瞳さんがいればもっと成績を伸ばすことが可能になる。
 どのみち一人で教えることが不安だった。それも解決できれば日夏のためになる。


「ちょ、ちょっと待ってよ! なら行く!」

「あれ、嫌なんじゃなかったっけ?」

 俺が意趣返しにニヤニヤしながら言うと、むぅ、と唸って上目遣いに言った。

「……意地悪」

 グハッ! 破壊力高い……。

 そうして、三人との……なんて言うんだろう。顔合わせ? が決まった。

 ちなみに他二人にはもう許可を取っている。



☆☆☆


「初めまして。ワタシは六道瞳よ。のお友達として気軽に瞳って呼んで」 
「……初めまして、春風日夏です(呼ぶわけないでしょ、ぽっと出の泥棒猫)」
「白海花です……(誰が呼ぶの。いきなり現れてなぎくんを誑かした女狐を)」


 なんか三人の後ろにそれぞれ鬼がいるような気がするんだけど気のせいだよね?
 気のせいだと言ってくれ!

 にこやかに、とは程遠いほどピリピリしている空気感。
 最初から仲良くはできないとは思ってたけど、さすがにこれは予想外なんだけど。

 あと、この三人に挟まれた俺の肩身が狭い!!

 誰か助けて救ってこの現状!
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