恐喝されている女の子を助けたら学校で有名な学園三大姫の一人でした

恋狸

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53話

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 真剣な表情で、日夏は先生の元へしっかりとした足取りで歩く。
 依然として緊張が滲み出ていたが、結果をしっかりと受け止めようとする覚悟もあった。

 先生が俺の時と同様に、日夏に呟く姿が見えた。
 それを真剣に聞いている日夏。
 
 そして、先生が日夏へ結果を渡した時、日夏の顔に歓喜の表情が浮かんだ。

 俺はそれを見てホッとする。
 ……おめでとう、日夏。
 努力。
 そう、日夏は強烈な努力をしたのだ。
 毎日の勉強はもちろん、どう勉強すれば効率良く脳内にインプットできるか。

 学習の様子を見ていた俺だからわかるが、最初に勉強会を行ったころとは雲泥の差だ。

 勉強方法は教えたが、それを改良して使いこなしたのは日夏。

 月並みの表現だが、日夏は継続する才能を持っている。
 しかも、やれと言ったことをやるだけでなく、それをどうすれば良いかと思考、実践する。
 勉強という問題においては日夏はもうきっと大丈夫だ。

 日夏は、席に戻るやいなや、俺にガッツポーズを送る。
 それに親指を上げることで応える。

 ちなみに、だいたいの生徒は模試の結果で死亡しているので、今のやり取りは見ていない。よかった。

 
 「今回の結果でダメだった人が大半を占めているだろう。
 君たちの多くは、まだ一年生だから、模試の成績は評価に値しないから、などと考えているだろう?」

 先生の言葉に、多くの人たちは項垂れている。
 耳が痛いだろうな。

 「模試はとても重要だぞ。志望校が決まっている者は、それを指標にする。
 決まっていない者は、少しでも良い点を取り、将来行きたいと思った大学に行けるように準備をする。
 まあ、もちろんこの模試で全てが決まるわけじゃないが、その気持ちで取り組め、ということだ。
 今回良かった者は慢心せずに。
 悪かった者は努力を惜しまずに。
 以上だ」

 そう先生は言った。
 俺はやっぱりこの先生は立派だと思う。
 言う言葉は正論で、刺が無い。
 多分、責めているのではなく期待しているのだ。
 だから、俺たちはこの先生の期待に応える必要があるし、そうしたいと思っている。

 一部の生徒は、そんな態度すら読み取れずにただ怖い先生だと思ってるだろうが。

 俺はそんな先生に、少し憧れている。



☆☆☆


 そして、放課後になる。
 日夏は待ちきれない様子で、俺に報告しようとしていたが、俺の注目されたくないという言葉を思い出してか踏みとどまり、スマホを取り出す。

 そして、操作をし終えたと同時に、電源を入れた俺のスマホからバイブ音が鳴り響く。

 当然、日夏からのメッセージ。
 俺はそれを開き、内容を確認した。

 『学校からちょっと行ったコンビニで待ってるよ~』

 そこにはそう書かれていた。
 俺が校門で待ち合わせるのを止めようと言ったのも覚えていたのだろう。
 気遣いがすごい……さすが大天使。
 略してさす天。

 俺は先に行った日夏を待たせまいと、急いで歩く。

 「あ……!」

 途中、後ろから呼び掛けるような声を聞いたが、俺に関係ないだろうと判断し歩いた。




☆☆☆



 「やったぁぁ!!」

 「うおっ!」

 コンビニにたどり着いたと同時に抱き付いてくる日夏。

 近いっ! なんかいい匂いするし柔らかい……そ、それに胸が当たって……。

 当然抱き付くと、その豊満な胸が俺の体に当たる。
 その柔らかな肌と、日夏の匂いにドキマギしてしまうが、日夏は嬉しさで感極まってといった感じだ。

 俺がそんな邪心にまみれた考えをしているのは失礼といったものだろう。

 ……まあ、だからといってこの考えを止めれないんだけどね!
 だって、男だから!
 わかってくれるよね! 全男子諸君!

 仕方ない、うん、仕方ないのだよ。
 全神経を日夏と触れている箇所に集中してしまうのも。
 キモいって? ……ノーコメントで。

 教室であっち系の動画を見るよりましだと思う。
 おっと、ごめんよケイy……げふんげふん。

 「おめでとう、日夏」

 俺はLHRで思ったことをしっかりと、しみじみと声色に喜色を滲ませながら言った。
 抱き付かれながら。
 冷静冷静……。

 「ありがとう。聞いて! じゃーん!」

 聞いてというより、見てだが、日夏は俺に模試の結果の紙を見せてきた。

 そこには294点という、目標を大幅に越した結果が書かれてあった。
 
 「うおぉ! すごいじゃん! 本当におめでとう!!」

 俺は煩悩を一瞬忘れるほど、驚きと嬉しみが心を覆った。
 一瞬。ここ重要。

 「本当に渚くんのおかげだよ」

 日夏は俺を抱き付きから離して、真剣なトーンで言った。残念。

 「日夏の成果だよ。それは誇って良いと思う。誰のおかげだ、とか誰のせいだ、とかじゃないぜ。
 自分で掴み取った結果だろう?
 それは紛れもなく日夏の努力なんだから」

 俺は本心でそう言った。
 そして、日夏によく頑張ったな、と微笑みかける。

 「……! ありがとう……」

 日夏は、目に涙を浮かべて礼を言った。
 日夏は夢に一歩近付いた。
 いや、自分でその一歩を踏み出した。
 その過程に努力を携えて。

 「じゃあ、あと一つやることあるな」

 「うん!」

 涙を残しながら日夏は元気に頷いた。

 そう、日夏のお父さんへの結果発表である。


☆☆☆……


 「なんで……あの女に抱き付かれてデレデレしてるの?」

 「彼女? いや、あり得ない絶対に」

 「おかしいでしょ」

 「なんでなんで」

 「どうして私じゃないの」

 「聞かなきゃ」

 
 幸せの光景の裏に、微かに灯る闇を知らず。
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