52 / 73
52話
しおりを挟む
「って感じだった……。心配かけてごめん……」
「いや、大丈夫だよー。それよりも大事に至らなくてよかったね~」
翌日の学校の朝、俺は日夏に昨日の謝罪と事のあらましを説明していた。
俺が頭を下げると日夏は、笑顔で許してくれ、なおかつ心配もしてくれた。
さすが大天使。心が浄化していくようだ……。
ただ……気のせいかもしれないけど、日夏の表情に影が射していたような気がした。
俺はその取り繕っているような表情に少しだけ不安を覚えた。
☆☆☆
「い、いよいよだね」
朝の笑顔とは打って変わって緊張したような表情になる日夏。
そう、現在は7時間目のLHR|《ロングホームルーム》の前の休み時間。
ついに模試の結果が返ってくる日なのだ。
「だ、だ、大丈夫さ。そそそそんな緊張するなよ」
あぁ、何でだ……。
日夏より緊張している気がする。
それもそのはず。この結果によって様々な事が起こる。
もちろん、それは日夏自身も、俺も関係があること。
緊張するのも仕方ないかもしれない。
日夏が手足を震わせた俺の様子にクスッと笑う。
緊張は完全には解けていないが、少しは気が楽になったのだろう。
案外、自分よりも人が緊張していたら楽になるものだ。
つまり計画通りということで…………嘘です、素で緊張してます。
だって仕方ないじゃん! 結果出てなかったら俺のせいだし、何より努力は報われるって信じてる日夏が可哀想だろ。
でもやれることはやったんだ。
信じるしかない。
「狭山渚」
不安を抱えていた俺の葛藤から現実に戻したのは、かなり威圧感たっぷりと担任の声だった。
気付けば模試を返却してる最中だった。
俺の出番が回ってきたのだろう。
少し急いで先生のもとへ向かう。
自己採点してもミスしている部分は無かった。
ゆえに満点なのだろうが、どうしても結果を見るまでは少し緊張してしまう。
結果を見るまではそれが満点なのか、そうじゃないかはわからない。
シュレティンガーの猫理論だ。
俺が先生の目の前に立つと、ふいにため息を吐かれた。
なんか気の触ることでもしただろうか。
疑問を感じて表情を見ると、呆れているような感心しているような顔だった。
見た感じ、落胆のため息ではなく感嘆なのだろう。
ということは……
「また満点、だな。相変わらず化け物だな」
他の生徒には聞こえぬようにボソッと囁く先生。
「生徒を化け物扱いしていいんですかね?」
俺が先生の言葉に苦笑すると、先生も微笑む。
「お前に関してはスペックが異常だからな。化け物でいいさ。褒め言葉だからな。
それにしても、一体どういうことをしたら満点なんか取れるんだか……」
男言葉で粗雑な態度だが不思議と嫌な気持ちはしない。
それは生徒を信頼し慈しむ温かい言葉だからだ。
ただ俺に関しては本当に雑な態度が多い……。
何やってもできるっていう信頼があるからなのだろうが。
「まあ、努力の賜物ですよ」
本当の話だ。
少なくとも勉強が趣味の人はいないだろからな。
でも、もったいない。
知識が身に付き、それを試験《テスト》で実践し、結果が出る。
これほど単純で奥の深いものはない。
深みに嵌まると戻れなくなりそうな魅力がある。
もっとも、これをケイヤに言ってみたところ、
『うわっ、変態じゃん』
と言われた。
解せぬ。
「まあ、だろうな」
俺が努力と答えると、妙に実感の篭った声が、踵を返した俺の後ろから聞こえた。
「春風日夏」
「は、はい」
そして、遂に日夏が呼ばれた。
誰から見ても緊張してる様子が丸分かりだ。
手足が同じ動きをしている。暗殺者かよ。
ふと、周りを見ると、そんな日夏の様子にほっこりしている人が多くいた。
そのほとんどはファンクラブの会員だが。
さあ、テストの結果はどうだったのだろうか。
「いや、大丈夫だよー。それよりも大事に至らなくてよかったね~」
翌日の学校の朝、俺は日夏に昨日の謝罪と事のあらましを説明していた。
俺が頭を下げると日夏は、笑顔で許してくれ、なおかつ心配もしてくれた。
さすが大天使。心が浄化していくようだ……。
ただ……気のせいかもしれないけど、日夏の表情に影が射していたような気がした。
俺はその取り繕っているような表情に少しだけ不安を覚えた。
☆☆☆
「い、いよいよだね」
朝の笑顔とは打って変わって緊張したような表情になる日夏。
そう、現在は7時間目のLHR|《ロングホームルーム》の前の休み時間。
ついに模試の結果が返ってくる日なのだ。
「だ、だ、大丈夫さ。そそそそんな緊張するなよ」
あぁ、何でだ……。
日夏より緊張している気がする。
それもそのはず。この結果によって様々な事が起こる。
もちろん、それは日夏自身も、俺も関係があること。
緊張するのも仕方ないかもしれない。
日夏が手足を震わせた俺の様子にクスッと笑う。
緊張は完全には解けていないが、少しは気が楽になったのだろう。
案外、自分よりも人が緊張していたら楽になるものだ。
つまり計画通りということで…………嘘です、素で緊張してます。
だって仕方ないじゃん! 結果出てなかったら俺のせいだし、何より努力は報われるって信じてる日夏が可哀想だろ。
でもやれることはやったんだ。
信じるしかない。
「狭山渚」
不安を抱えていた俺の葛藤から現実に戻したのは、かなり威圧感たっぷりと担任の声だった。
気付けば模試を返却してる最中だった。
俺の出番が回ってきたのだろう。
少し急いで先生のもとへ向かう。
自己採点してもミスしている部分は無かった。
ゆえに満点なのだろうが、どうしても結果を見るまでは少し緊張してしまう。
結果を見るまではそれが満点なのか、そうじゃないかはわからない。
シュレティンガーの猫理論だ。
俺が先生の目の前に立つと、ふいにため息を吐かれた。
なんか気の触ることでもしただろうか。
疑問を感じて表情を見ると、呆れているような感心しているような顔だった。
見た感じ、落胆のため息ではなく感嘆なのだろう。
ということは……
「また満点、だな。相変わらず化け物だな」
他の生徒には聞こえぬようにボソッと囁く先生。
「生徒を化け物扱いしていいんですかね?」
俺が先生の言葉に苦笑すると、先生も微笑む。
「お前に関してはスペックが異常だからな。化け物でいいさ。褒め言葉だからな。
それにしても、一体どういうことをしたら満点なんか取れるんだか……」
男言葉で粗雑な態度だが不思議と嫌な気持ちはしない。
それは生徒を信頼し慈しむ温かい言葉だからだ。
ただ俺に関しては本当に雑な態度が多い……。
何やってもできるっていう信頼があるからなのだろうが。
「まあ、努力の賜物ですよ」
本当の話だ。
少なくとも勉強が趣味の人はいないだろからな。
でも、もったいない。
知識が身に付き、それを試験《テスト》で実践し、結果が出る。
これほど単純で奥の深いものはない。
深みに嵌まると戻れなくなりそうな魅力がある。
もっとも、これをケイヤに言ってみたところ、
『うわっ、変態じゃん』
と言われた。
解せぬ。
「まあ、だろうな」
俺が努力と答えると、妙に実感の篭った声が、踵を返した俺の後ろから聞こえた。
「春風日夏」
「は、はい」
そして、遂に日夏が呼ばれた。
誰から見ても緊張してる様子が丸分かりだ。
手足が同じ動きをしている。暗殺者かよ。
ふと、周りを見ると、そんな日夏の様子にほっこりしている人が多くいた。
そのほとんどはファンクラブの会員だが。
さあ、テストの結果はどうだったのだろうか。
1
お気に入りに追加
210
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした
黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。
日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。
ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。
人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。
そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。
太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。
青春インターネットラブコメ! ここに開幕!
※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる