上 下
40 / 73

40話

しおりを挟む
 Side 日夏

 私は猛烈に緊張していた。
 これに失敗してしまうと、せっかく仲良くなった渚くんと離れてしまう。

 周りの目を気にする彼にとって、私が群衆の目のなか、話しかけられるのは迷惑だろう。

 うぅ~! 緊張する……。
 せっかく仲が急接近したのだ。
 現れたライバルにも負けるわけにはいかない。

 ふと私は、最大のライバル、白海花を見る。

 女の私から見ても綺麗で整った顔をしている。
 まさに大和撫子……。
 私が勝ってるとこなんて……一つあった。

 ふふん! 私の胸部装甲の方が厚いもんね!
 おっと静まれ黒い私。
 いくら男にとって重要な部分が勝っていても性格だもんね! 男にとって重要でもね!

 あら、また黒い私が。
 

 そんなことを考えていてもやっぱり緊張していていた。

 緊張と同時に失敗してしまったら……という最悪な未来を考えてしまい、恐怖に体が動かなくなってしまう。

 そのタイミングで、私の机に白い紙が置かれていた。

 緊張で震える手でそれを手に取り、二重折りされていたその紙を開く。
 すると、そこには

 『頑張れ! って言われると緊張するよね』

 というふざけた一文だった。
 名前は書かれていないけど、こんなことする人なんて一人しかしらない。
 
 でも、そんな言葉に救われた自分もいて。
 
 「ふふっ」

 微かな笑い声とともに、私の緊張はどこかにいってしまった。


 
 そして、模試が始まった。

 一時間目、国語。

 評論文では、張り巡らされる文章の罠を掻い潜り、正解を導き出す。
 物語では、張られた伏線の意味を正しく読み、書き手の心情で考える。

 様々な問題を通りすぎ、私の手は止まることを知らないように、スラスラと書く。

 こんなにも自信のある、手応えのあるテストは初めて。
 だって、渚くんが教えてくれるんだから!
 恋は女の子を強くするの!

 そして、選択問題の難問も、難なく答えた。


 二時間目、数学。


 頭に叩き込んだ公式で、小問集合を解く。
 一番簡単なこの大問では悩むことなく、解くことができた。

 二次関数も特に苦労せずに解くことができた。
 勢いそのままで書いて、解く。

 しかし、国語の時から止まらなかった手は、最後の問題。

 三角比の図形で止まった。

 ぬぐっ、私の苦手な問題だっ。

 見れば見るほど図形というものはわからなくなる。
 
 どうしよう……!
 刻一刻と時間が迫るなか、私は焦りで頭がぐちゃぐちゃになってしまった。

 その時、私の頭の中で渚くんの声が再生される。
 いつだったか、休憩の間に話してくれたこと。

 『焦ったら負けって言葉あるけど、人間は全員焦るものだから。大事なのはいかに焦った状況で、そこから平静を取り戻す……わけじゃなくて、その問題に深く集中できるかだから』

 さあ、問題の真理に行こう、と声が聞こえた気がした。

 そして私はペンを動かした。


 三時間目、英語。

 最初に行われたリスニングは完璧に聞き取ることができた。
 
 そして、サラサラとペンをまるで答えをなぞるかのように書いていく。

 そして動かし続け、また最終問題でペンが止まった。

 そう、ライティングである。
 
 ライティングは例えば、『あなたは制服があることについてどう思いますか。あなたの意見で書きなさい』的な問題だ。

 決まった答えが無いため、難しさは頭一つ飛び抜けている。

 それに精一杯、書いていく。
 目標のもとに、私は確かな自信とともに書いていく。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。 日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。 ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。 人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。 そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。 太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。 青春インターネットラブコメ! ここに開幕! ※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺の家には学校一の美少女がいる!

ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。 今年、入学したばかりの4月。 両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。 そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。 その美少女は学校一のモテる女の子。 この先、どうなってしまうのか!?

処理中です...