上 下
24 / 73

24話

しおりを挟む
 Side 六道

 ワタシはいつだって鳥籠の中の人間。
 自由なんてとうの昔に無いことを知った。
 
 トップクラスの裏社会の組織『六道』の一人娘に生まれたワタシの運命は生まれる前から決まっていたのかもしれない。

 お父様は男の子が欲しかったみたい。
 でも、ワタシしか生まれなかった。

 だったら後継ぎはワタシ……ではない。
 
 簡単に言うと、お父様が決めた相手が後継ぎらしい。
 生まれた瞬間から、半ば刷り込みのように言われてきた言葉。

 「お前は六道の発展のために尽力しなければいけない」

 この言葉のせいで、ワタシは多くの手に入れるはずだったものを失った。

 毎日の厳しい勉強。
 習い事に、教養。
 更には友達付き合いなども制限された。
 当然恋人もだ。
 将来のビジョンにそんな浅はかな関係など無駄でしかない。
 とお父様は言った。

 ワタシはずっとそれに従った。


 ……でも、それが本当に正しいのか。
 そんなことを思い始めたのは中学二年生の頃。
 絶えない争い。
 暴力や犯罪行為の横行。

 こんなことを人間がしていいの? と。
 
 次第にその思いは強くなっていった。
 なぜ、どうして、という疑問から始まり、疑問から疑惑、疑惑から否定の感情へと移った。
 そうして、ワタシは密かに行動をした。

 それは……お父様を当主から引きずり落としてワタシが変えるために。

 人間として正しくありたい。
 そんな当たり前のことができない腐ったやつらをまとめて粛正するために。

 目的のためなら、ワタシは修羅にでもなろう。

 そして、ワタシは日々努力を重ねた。

 遂にお父様に有用さをアピールしたかいがあり、当主を交代させることができた。
 曰く、結婚させることが勿体ないだとか。

 人の価値を推し量るな。
 
 だが、どのみち権力を固めるためには、ワタシだけの武器。
 女という武器を使って結婚するしか道はない。

 最初から相手は決まっていた。

 『六道』と双璧を為す、『天笠』だ。
 暴力を余り好まないことからワタシは目を付けていた。

 そして、当主には孫がいるらしい。
 しかも、ワタシの一個下だ。
 
 だからワタシは試すことにした。
 当主の代替わりは各当主のみに伝えられ、そこから構成員に伝達される、という特性を使い、先に『天笠』の当主に接近。
 条件付きでの和平の提案をし、孫にはワタシが当主だということを伝えるな、と言った。

 ワタシが求めたのは、単に許嫁の破棄だけではない。
 ワタシに縛り付けられている鎖を取っ払えるような人間。

 運命という鎖から脱出できる人が良かった。

 結果は大成功。
 求める人、いや、それ以上だった。

 人を案じ、寄り添え、思考は一般的で正義感が強い。

 狭山 渚という男はそういう少年だった。
 頭もキレるし、能力的にも申し分はない。

 ワタシは試練だったと伝えたあと、冗談のように……半分本気だったが、許嫁の再提案をしたが、やんわり、だが確固たる意思で断られてしまった。

 ワタシは益々彼に興味を抱いてしまった。

 ワタシは絶対に彼を手に入れる。
 ワタシの目的のためには彼が絶対に必要なのだから。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。 日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。 ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。 人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。 そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。 太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。 青春インターネットラブコメ! ここに開幕! ※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺の家には学校一の美少女がいる!

ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。 今年、入学したばかりの4月。 両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。 そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。 その美少女は学校一のモテる女の子。 この先、どうなってしまうのか!?

処理中です...