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13話

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 Side 春風

 うぎゃぁぁぁ! と布団の中でゴロゴロする私。

 よく恥ずかしいことがあったら布団に籠るって言うけど本当だったみたい。
 だって恥ずかしすぎて外界に出られない……(微中二病)

 「どどどどど、どうしよう……」

 ど、がゲシュタルト崩壊しそうだけど気にしない。

 ほ、頬にキスしちゃった……

 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 とても乙女が出しちゃいけない叫びだけど、私を咎める人は誰もいない。
 防音設備もバッチリだしね。


 「ハァ……どうしてあんなことを……いや! 後悔はしてない! 恥ずかしいけど!」

 ゆるゆるキャラで通ってるけどもはやブレブレ。
 こんな姿、学校の誰にも見せられないや……。


 最初に彼……狭山くんを見たときは何であんなに髪長いんだろう、暗そう、としか思っていなかった。
 偏見は良くないと思うけど実際そうだったと思う。
 今狭山くんに聞いても多分肯定すると思うし。

 でも……ある日事件が起きたの。
 
 ……いや、事件ではないけど、私にとってはそれくらい衝撃的なこと。


 今年のある夏の日。
 教室に風が入ってきて狭山くんの髪が吹かれたの。

 思わず視線を狭山くんに合わせたら……結構イケメン。
 ぶっちゃけ私の好みだった。
 なんで髪で隠すのかわからないよ。

 まあそれだけじゃなくて! 一番良いのがあの目!
 あの細い切れ長な瞳が私に向いた時……恋に落ち……てはいないけど、簡単な話……濡れた。何が、とは言わない。
 ドMじゃないよ?

 私は軽くないし、一般以上の貞操観念を持ってるから。
 別に一目惚れしたわけじゃなかった。
 カッコいいな、とは思ったけど、それだけ。

 でも気にはなった。
 それが第一印象かも。

 それで、少し気になって狭山くんを観察することにした。
 ストーカーじゃないから。

 彼は私が今まで気が付かなかっただけで、すごい熱心で優しかった。

 嫌なことを率先してするし、我慢強い。

 そして決定的な出来事。
 私は完全にこれにやられた。

 実は狭山くんは花壇の手入れを暇な時にしていた。
 しかも楽しそうに。

 ギャップ萌えという感情。
 それが私に芽生えた瞬間だった。

 みんなだって、極端な話、ヤンキーが花の世話をしてたり、雨の中捨て犬を抱いて泣いたりしてたら萌えるじゃん?
 ゲインロス効果って言うらしいけど。
 狭山くんはヤンキーじゃないけど、暗そうだと思ってた人が真面目で優しくて、花を慈しみ世話をしている。

 ほら、やられるでしょ?
 私はやられた。

 最初はファンみたいな感情だったけど、もっと彼のことを知っていくと、それが次第に恋になっていたった。

 別に私は恋くらいしたことある。
 でも好き、だけで終わっちゃって付き合うなんて夢の夢。
 自分に自信が持てなかったり、臆病だったからね。

 そんな自分が嫌だったのもあるから性格を偽ったり、自分を磨く努力を怠らないようにしたんだ。

 もちろん結果は出た。
 勝手に証明されたのかもしれないけど。

 今の私は学園三大姫の一人『陽光の大天使』

 ……ちょっと不本意なあだ名だけどね。


 ……それにしても白海さんと付き合ってるのか、って聞くのは不自然だったかな。
 しかもなんか狭山くんがそれを否定するときに、やけに私を尊敬するような目で見てたのは何でだろう……

 なんかしたっけな、私。

 でも付き合ってないなら良かった……
 まあ、白海さんと狭山くんに関わりがあるとは思ってなかったし……実際関わり無かったからいいけど。

 何にせよ白海さんがライバルじゃなくて良かったよ……

 他の女の子ならともかく、同じ学園三大姫を相手にするのは一苦労だからね……
 まあだからといって負ける私ではないけども!

 いやぁ、少し嫉妬しちゃってキスするのはやり過ぎだったかな。
 
 でも顔赤くしてたし、少なくとも女性としての魅力は感じられてるってことでしょ?

 「ポジティブ! ポジティブ!」

 私はパンパン、っと頬を張り気合いを入れる。
 これから本格的に狭山くんを攻略していくのだ。

 私は絶対に手に入れるのだ。
 こんなにも激しい恋は初めて。

 絶対に、絶対に負けない。

 だから私は仮面いつわりを被るの。
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