8 / 73
8話
しおりを挟む
☆☆☆
欠伸をしながら通学路を歩き、予定通り7時5分に到着した。
上履きに履き替え自分の教室がある二階へと階段を上り移動する。
この時間だ。
さすがに誰もいないだろうと、ガラガラと音をたて教室に入ると、そこには先客がいた。
ガラガラという扉を開ける音で、こちらを見て、俺という存在を認識したようだ。
その人物は春風日夏と呼ばれる女子生徒だ。
そして、かなり有名である。
『絶海の残虐姫』とのあだ名を付けられた白海とは対称的に、『陽光の大天使』と呼ばれている。
だから中二病かよ。
誰とでも平等に接し、温かい笑顔を振り撒くその姿は太陽。
ホワホワとした空気にいて、さらには、ゆるふわな髪に制服の上から大きな存在を表している胸。
いつもニコニコしている目鼻立ちが整った顔は、天使を超え大天使。
というのがあだ名というか……二つ名の由来らしい。
俺はいつも隅っこで暮らしている人間なのでいかに大天使と呼ばれていても、二、三回程度しか会話をしたことない。
俺は自慢のコミュ障(演技)を発動させ、会釈で済まそうとしたがそれを遮り、春風が話しかけてきた。
「おはよ~。わっ、珍しく早いね~。なんかあったの?」
「お、おはよう。ちょっと早起きしちゃって……」
いきなり話しかけられたことに驚き、少し声を上擦らせる。
その姿は典型的なオタク陰キャ。
我ながら上手く演技ができたな(嘘)。
「へぇ。そうなんだ~。あ、そうだ。狭山くんはテストどうだった~?」
俺が素早く会話を切り上げ、席に向かい影に徹しようとしたタイミングで、またもや会話を続けてきた。
……さすが陽キャのトップ……!
恐ろしいぜ……!
さすがに話さなければ失礼に当たると分かるため、影になることを諦める。
「あ、うん。まあそこそこかな」
「そこそこってどのくらい? 何位だった~?」
ちなみにテストというのは、三日前に結果が返ってきた全国模試の事だ。
「いやぁ、ちょっと……」
俺は発言を濁す。
なぜなら目立ちたくないからだ。
どういう意味で目立つのかというと、一時期クラスの注目を浴びてしまうほどだ。
「えぇー? べつにどんなに悪くても馬鹿になんかしないよ~? どうしても教えたくないってことなら別にいいけど……どう?」
チラリと上目遣いで提案される。
か、可愛いっ……
その仕草にグッとくるものがある。
さすが大天使……その名はだてじゃないっ!
「うーん、秘密にしてくれるなら」
情報の秘匿を条件にする。
もう一回言うが、目立ちたくないからだ。
「もっちろん!」
もう察せれるだろう。
俺の成績を。
「その……一位」
「え」
フリーズする春風。
「いや、その……一位」
春風は錆びたロボットみたいに動き、口を開く。
「そ、それはすごいね。校内一位ってことは良い大学狙えるんじゃないかな」
あ、言ってなかった。
「いや、その校内だけじゃなくて全国も……その……一位」
「……」
ついには大天使も止まってしまった。
「ソレホントニ?」
辛うじて出した言葉はカタコトだった。
「あ、あぁ」
俺はもちろん真実のことなので肯定する。
ちなみに自慢じゃないが、今までのテストは全て一位を取り続けている。ごめん、自慢だわ、これ。
うちの学校は上位の点数が貼られている、などのシステムはないため、他の人の点数を知るためには聞くしかない。
春風はハッ! と意識を接続させると、驚くべき行動を取った。
「お願いしますっ! 私に勉強教えてくださいっ!」
……なんと土下座したのだ。
綺麗な土下座だった。
いや、急すぎるだろ!
俺は女子の土下座をこの日人生で初めて見た。
そしてそれを向けられているのが俺、という。
「ちょ、ちょっと落ち着けよ! いきなり土下座されても困るしっ!」
「そ、そうだよね。まず誠意を示さないとね。……わ、私の体を好きにしていいので勉強教えてください!」
……わかった。
全然分かってないわ、この人。
早朝の教室に飛び出す爆弾発言。
俺は周りを見渡し、ホッとする。
もしさっきの発言がクラスメートに聞こえていたのならば、『大天使の翼』なるファンクラブ(やつらの自称)に伝わり八つ裂きにあっていただろう。
「な、な、何いってんの!? そんなことしなくていいから!」
俺は慌てて土下座を解除させる。
このシチュと絵面はやばい。
誰かに見つかっても言い逃れできない状況がここにある。
「え、じゃあ受けてくれるの!?」
期待に満ち、目をキラキラさせこちらを見てくる春風。
俺は悩む。
間違いなく目立つだろうし、もし俺が教えて、逆に成績が下がってしまうことがあるかもしれない。
人によって勉強方法は様々だと思うだろうし。
「……ごめん。俺、あんまり目立ちたくないんだ」
「そっか……」
断られて悲しそうに目を伏せる春風。
しかし、
「ん? ってことは目立たなければいいんだよね~? 私の家で教えてよ! 勉強!」
「え、えぇぇ!?」
俺は春風の提案に大きく驚く。
まず、俺がそんな神域みたいなとこ入っていいのか、などがある。
「いや、なんでそんな真剣なんだ? 俺じゃなくても二位の人とかに聞けばいいだろう?」
当然の疑問だ。
頭が良い、という条件に関しては俺でなくても良いはずだ。
俺の問いに、困ったように頬を掻く春風。
「それがね? 実は私東大狙っててさ。相当に頭良い人じゃないとダメなんだよね……」
まじかー。
東大かぁ……自慢になっちゃうけど、俺にとっては楽勝なんだよなぁ……。
今回の模試でオール100点を取っても、実は東大に行くための偏差値は足りない。
もっと上位の模試を受け、点数を取るしかないのだ。
「東大ねぇ……ちなみに今回の点数は?」
「うん、264点」
国語、数字、英語で100点ずつの300点満点。
別に春風の点数が悪いわけではなく、むしろ良い方、なのだが
「うーん……その点数だと東大はちょっと難しいね」
「うっ、だよね」
俺の言葉にずーんと落ち込む。
どうやら学力に伸び悩んでいるらしい。
「別に東大じゃなくてもいいんじゃないか? 別に悪い点数ではないしな」
東大に拘らなくても日本には山のように大学はある。
春風ならば偏差値の高い大学に入るだろう。
「ッッ! ダメなの! 私は……絶対に東大に入らないと」
少し焦りった表情で言う。
そして、ブンブンと頭を振る。
春風の意思は行きたい、というよりな行かなければいけないという使命感に近かった。
しかし、それも春風が行きたいというわけではなさそうだ。
なぜなら悲壮感に満ちた顔をしているからだ。
「……わかった。勉強教えるよ」
詳しくは事情を聞く気はない。
話さなければいけない場面ではないし、春風に頼まれたことは、あくまで勉強を教えて欲しいとのことだけだ。
「……えっ、良いの!?」
まさかオッケーとは思っていなかったようで驚いている。
顔は晴れやかになり、もし春風に尻尾が付いていたならばブンブンと振っていることだろう。
「あぁ。でも教えるだけだし、そこで努力するかしないかは春風自身だからな?」
「うん! もちろん、教えてもらってる立場だからね! あ、でも私に返せるもの無い……」
しゅん、と落ち込む。
「いや、教えることも勉強になるしな。別にいらないよ」
これは嘘ではない。
教えることで、自分の中の知識を再確認し、考えを深めることもできる。
勉強を教える、という行為は意外にも難しいものだ。
どう教えたら理解できるか、伸びるかを意識しなくてはいけない。
「いや、でもさすがにお礼をしないってわけにはいかないよ」
「別に迷惑ってわけじゃないし……」
「私が気にするの!」
なかなか引き下がらない。
どうやら春風の意思は強固なようだ。
「わかったよ……考えとく」
ハァっとため息を吐く。
仕方なく俺は折れた。
だが保留にすることで──
「考えとくままずっと保留ってのは無しだからね」
「も、もちろんだよ」
思わず声が裏返る。
「なんで動揺してんのさ」
「してないしてない」
「ふーん」
ジト目で見てくる。
俺の作戦は筒抜けだったようだ……
「じゃあどこで何時からする?」
「いや、別にどこで……」
どこでも良いと言おうとしたが踏みとどまった。
春風は人気だ。
よって俺みたいな陰キャと勉強なんかしてたら……目立つ!
春風にはファンクラブが存在するからだ。
その名も『大天使の翼』。いや本当に意味わからん。
そいつらの活動理念はただ一つ。
……春風を見守り、近づいてきた下心のある男を闇に葬るという。
物騒な上に怖いわ。
万一にも、そいつらの目に止まるものなら、瞬くも俺の存在が消えるだろう。
例え裏社会と繋がっていようとやつらの前では無力なのだ……。
フリーズした俺を不思議そうに見つめている春風。
こてん、と首を傾げている。
めっちゃ可愛い……と思った瞬間、俺の意識が回復した。
さすが大天使。
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
「それでどこにする?」
「うーん……」
考えてまた無言になった俺に、春風は顔を赤らめながら提案をしてきた。
「そ、そのさ……やっぱり家で勉強……する?」
「え、いいの?」
「う、うん」
「じゃあよろしく!」
ただ人目につかないことだけ考えていた俺は、そこでふと正気に戻る。
え、なんて言った、俺。
家……いエェぇぇぇ!?
春風の家に? 俺が? 偉大なる大天使の居城に俺が!? ……待て待て。俺も中二病になってる。
てか、さっき家で勉強する? って言ってたな! いや、冗談じゃないんかい!
提案をした春風は、耳まで真っ赤だ。
「じゃ、じゃあ学校終わったら一緒に帰って勉強しよ! じゃあね!」
春風はそのまま逃げるように走っていった。
俺はその場でフリーズをする……あ。
「おい! 今から学校だぞ!?」
「あ」
まだ朝だった。
欠伸をしながら通学路を歩き、予定通り7時5分に到着した。
上履きに履き替え自分の教室がある二階へと階段を上り移動する。
この時間だ。
さすがに誰もいないだろうと、ガラガラと音をたて教室に入ると、そこには先客がいた。
ガラガラという扉を開ける音で、こちらを見て、俺という存在を認識したようだ。
その人物は春風日夏と呼ばれる女子生徒だ。
そして、かなり有名である。
『絶海の残虐姫』とのあだ名を付けられた白海とは対称的に、『陽光の大天使』と呼ばれている。
だから中二病かよ。
誰とでも平等に接し、温かい笑顔を振り撒くその姿は太陽。
ホワホワとした空気にいて、さらには、ゆるふわな髪に制服の上から大きな存在を表している胸。
いつもニコニコしている目鼻立ちが整った顔は、天使を超え大天使。
というのがあだ名というか……二つ名の由来らしい。
俺はいつも隅っこで暮らしている人間なのでいかに大天使と呼ばれていても、二、三回程度しか会話をしたことない。
俺は自慢のコミュ障(演技)を発動させ、会釈で済まそうとしたがそれを遮り、春風が話しかけてきた。
「おはよ~。わっ、珍しく早いね~。なんかあったの?」
「お、おはよう。ちょっと早起きしちゃって……」
いきなり話しかけられたことに驚き、少し声を上擦らせる。
その姿は典型的なオタク陰キャ。
我ながら上手く演技ができたな(嘘)。
「へぇ。そうなんだ~。あ、そうだ。狭山くんはテストどうだった~?」
俺が素早く会話を切り上げ、席に向かい影に徹しようとしたタイミングで、またもや会話を続けてきた。
……さすが陽キャのトップ……!
恐ろしいぜ……!
さすがに話さなければ失礼に当たると分かるため、影になることを諦める。
「あ、うん。まあそこそこかな」
「そこそこってどのくらい? 何位だった~?」
ちなみにテストというのは、三日前に結果が返ってきた全国模試の事だ。
「いやぁ、ちょっと……」
俺は発言を濁す。
なぜなら目立ちたくないからだ。
どういう意味で目立つのかというと、一時期クラスの注目を浴びてしまうほどだ。
「えぇー? べつにどんなに悪くても馬鹿になんかしないよ~? どうしても教えたくないってことなら別にいいけど……どう?」
チラリと上目遣いで提案される。
か、可愛いっ……
その仕草にグッとくるものがある。
さすが大天使……その名はだてじゃないっ!
「うーん、秘密にしてくれるなら」
情報の秘匿を条件にする。
もう一回言うが、目立ちたくないからだ。
「もっちろん!」
もう察せれるだろう。
俺の成績を。
「その……一位」
「え」
フリーズする春風。
「いや、その……一位」
春風は錆びたロボットみたいに動き、口を開く。
「そ、それはすごいね。校内一位ってことは良い大学狙えるんじゃないかな」
あ、言ってなかった。
「いや、その校内だけじゃなくて全国も……その……一位」
「……」
ついには大天使も止まってしまった。
「ソレホントニ?」
辛うじて出した言葉はカタコトだった。
「あ、あぁ」
俺はもちろん真実のことなので肯定する。
ちなみに自慢じゃないが、今までのテストは全て一位を取り続けている。ごめん、自慢だわ、これ。
うちの学校は上位の点数が貼られている、などのシステムはないため、他の人の点数を知るためには聞くしかない。
春風はハッ! と意識を接続させると、驚くべき行動を取った。
「お願いしますっ! 私に勉強教えてくださいっ!」
……なんと土下座したのだ。
綺麗な土下座だった。
いや、急すぎるだろ!
俺は女子の土下座をこの日人生で初めて見た。
そしてそれを向けられているのが俺、という。
「ちょ、ちょっと落ち着けよ! いきなり土下座されても困るしっ!」
「そ、そうだよね。まず誠意を示さないとね。……わ、私の体を好きにしていいので勉強教えてください!」
……わかった。
全然分かってないわ、この人。
早朝の教室に飛び出す爆弾発言。
俺は周りを見渡し、ホッとする。
もしさっきの発言がクラスメートに聞こえていたのならば、『大天使の翼』なるファンクラブ(やつらの自称)に伝わり八つ裂きにあっていただろう。
「な、な、何いってんの!? そんなことしなくていいから!」
俺は慌てて土下座を解除させる。
このシチュと絵面はやばい。
誰かに見つかっても言い逃れできない状況がここにある。
「え、じゃあ受けてくれるの!?」
期待に満ち、目をキラキラさせこちらを見てくる春風。
俺は悩む。
間違いなく目立つだろうし、もし俺が教えて、逆に成績が下がってしまうことがあるかもしれない。
人によって勉強方法は様々だと思うだろうし。
「……ごめん。俺、あんまり目立ちたくないんだ」
「そっか……」
断られて悲しそうに目を伏せる春風。
しかし、
「ん? ってことは目立たなければいいんだよね~? 私の家で教えてよ! 勉強!」
「え、えぇぇ!?」
俺は春風の提案に大きく驚く。
まず、俺がそんな神域みたいなとこ入っていいのか、などがある。
「いや、なんでそんな真剣なんだ? 俺じゃなくても二位の人とかに聞けばいいだろう?」
当然の疑問だ。
頭が良い、という条件に関しては俺でなくても良いはずだ。
俺の問いに、困ったように頬を掻く春風。
「それがね? 実は私東大狙っててさ。相当に頭良い人じゃないとダメなんだよね……」
まじかー。
東大かぁ……自慢になっちゃうけど、俺にとっては楽勝なんだよなぁ……。
今回の模試でオール100点を取っても、実は東大に行くための偏差値は足りない。
もっと上位の模試を受け、点数を取るしかないのだ。
「東大ねぇ……ちなみに今回の点数は?」
「うん、264点」
国語、数字、英語で100点ずつの300点満点。
別に春風の点数が悪いわけではなく、むしろ良い方、なのだが
「うーん……その点数だと東大はちょっと難しいね」
「うっ、だよね」
俺の言葉にずーんと落ち込む。
どうやら学力に伸び悩んでいるらしい。
「別に東大じゃなくてもいいんじゃないか? 別に悪い点数ではないしな」
東大に拘らなくても日本には山のように大学はある。
春風ならば偏差値の高い大学に入るだろう。
「ッッ! ダメなの! 私は……絶対に東大に入らないと」
少し焦りった表情で言う。
そして、ブンブンと頭を振る。
春風の意思は行きたい、というよりな行かなければいけないという使命感に近かった。
しかし、それも春風が行きたいというわけではなさそうだ。
なぜなら悲壮感に満ちた顔をしているからだ。
「……わかった。勉強教えるよ」
詳しくは事情を聞く気はない。
話さなければいけない場面ではないし、春風に頼まれたことは、あくまで勉強を教えて欲しいとのことだけだ。
「……えっ、良いの!?」
まさかオッケーとは思っていなかったようで驚いている。
顔は晴れやかになり、もし春風に尻尾が付いていたならばブンブンと振っていることだろう。
「あぁ。でも教えるだけだし、そこで努力するかしないかは春風自身だからな?」
「うん! もちろん、教えてもらってる立場だからね! あ、でも私に返せるもの無い……」
しゅん、と落ち込む。
「いや、教えることも勉強になるしな。別にいらないよ」
これは嘘ではない。
教えることで、自分の中の知識を再確認し、考えを深めることもできる。
勉強を教える、という行為は意外にも難しいものだ。
どう教えたら理解できるか、伸びるかを意識しなくてはいけない。
「いや、でもさすがにお礼をしないってわけにはいかないよ」
「別に迷惑ってわけじゃないし……」
「私が気にするの!」
なかなか引き下がらない。
どうやら春風の意思は強固なようだ。
「わかったよ……考えとく」
ハァっとため息を吐く。
仕方なく俺は折れた。
だが保留にすることで──
「考えとくままずっと保留ってのは無しだからね」
「も、もちろんだよ」
思わず声が裏返る。
「なんで動揺してんのさ」
「してないしてない」
「ふーん」
ジト目で見てくる。
俺の作戦は筒抜けだったようだ……
「じゃあどこで何時からする?」
「いや、別にどこで……」
どこでも良いと言おうとしたが踏みとどまった。
春風は人気だ。
よって俺みたいな陰キャと勉強なんかしてたら……目立つ!
春風にはファンクラブが存在するからだ。
その名も『大天使の翼』。いや本当に意味わからん。
そいつらの活動理念はただ一つ。
……春風を見守り、近づいてきた下心のある男を闇に葬るという。
物騒な上に怖いわ。
万一にも、そいつらの目に止まるものなら、瞬くも俺の存在が消えるだろう。
例え裏社会と繋がっていようとやつらの前では無力なのだ……。
フリーズした俺を不思議そうに見つめている春風。
こてん、と首を傾げている。
めっちゃ可愛い……と思った瞬間、俺の意識が回復した。
さすが大天使。
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
「それでどこにする?」
「うーん……」
考えてまた無言になった俺に、春風は顔を赤らめながら提案をしてきた。
「そ、そのさ……やっぱり家で勉強……する?」
「え、いいの?」
「う、うん」
「じゃあよろしく!」
ただ人目につかないことだけ考えていた俺は、そこでふと正気に戻る。
え、なんて言った、俺。
家……いエェぇぇぇ!?
春風の家に? 俺が? 偉大なる大天使の居城に俺が!? ……待て待て。俺も中二病になってる。
てか、さっき家で勉強する? って言ってたな! いや、冗談じゃないんかい!
提案をした春風は、耳まで真っ赤だ。
「じゃ、じゃあ学校終わったら一緒に帰って勉強しよ! じゃあね!」
春風はそのまま逃げるように走っていった。
俺はその場でフリーズをする……あ。
「おい! 今から学校だぞ!?」
「あ」
まだ朝だった。
23
お気に入りに追加
210
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした
黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。
日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。
ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。
人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。
そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。
太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。
青春インターネットラブコメ! ここに開幕!
※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる