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変化を楽しむこと
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「セシル……どうしてここにいる──ッ!」
まさか入ってくるのがセシルとは思っていなかったため、反射的に身体を起こそうとして走る痛みに顔を歪める。背中に手を当てて支えながら寝ているよう手のひらを見せるセシルに苦笑を見せる。
「無理を言って泊まらせてもらってたんだ」
カイルと同じでひどく安心した表情を見せるが、やはり少し痩せたように見える。
「ご飯、食べてなかったの?」
「食べてたよ。目が覚めたとき、僕が痩せてたらアリスが心配すると思ったから食べた。でも、全然味がしなくて……あんまり入らなかったんだ」
苦笑するセシルの頬に手を伸ばすとセシルのほうから頬を寄せてきた。
触り心地が少し違う。食べることが好きで大食漢のセシルが食べなかったなど信じられないことが、それほど心配をかけてしまったのだとアリスは眉を下げる。
「ごめんなさい」
「謝罪なんていいよ。こうして目を覚ましてくれただけで、それだけでいいんだ」
手を握って額に当てて祈るようなポーズを取るセシルが床に膝をつく。
「あの事故の音、家まで聞こえてたんだ。トランペットの大きな音と衝撃音と悲鳴。まさかと思って駆けつけたら……ベンフィールド家の紋章が入った馬車がひっくり返ってた」
「うん、お兄様から聞いた」
「周りにいた人たちに手伝ってもらってアリスを救出しようとしたんだけど、アリス……頭から血を流してたから動かせないってなって……救急隊が来るのを待ってたんだ。そしたらカイルが来てさ、すごい悲鳴だった」
「お兄様が悲鳴?」
「悲鳴って言ってもアリスの名前と何があったって叫んでただけなんだけど、喉が枯れるぐらい叫び続けてた。すごい震えだったし」
「私が頭から血を流すのはお兄様のトラウマなの」
「リオのせい?」
「せい、なんて言わないで。リオちゃんのことがあったからなだけ」
リオのことを庇われるのは面白くないが、こうして普通に話せるだけでセシルは安心する。
記憶を失っていたり声が出なかったりしたらどうしようと思っていたから。
「犯人、捕まるかな……」
捕まらなければ不安でならない。またあんなことがあったらどうしようと考えずにはいられない。
「もう捕まってるみたいだよ」
「え? でも、お兄様は逮捕したって言わなかった」
「逮捕しても誰に頼まれたのかはわかってないんじゃない? すぐに逃げたってことは金品狙いじゃなかったわけだし」
「……金品じゃなかったら……」
失言だったとセシルはすぐに後悔した。
馬は繊細な生き物で、予想外の出来事に対処できない。大きな音や危険に反応して逃げてしまうこともある。それをわかっていて犯人はトランペットを吹いたのだ。
一人で馬車に乗っているアリスを誘拐するのならトランペットを拭く必要はない。穏やかに走っている馬車の前を計算して通るなりして止めればよかった。しかしそうはしなかった。男は限界まで吸い込んだ息を思いきりトランペットにぶつけた。はじめから事故を起こさせるつもりだったとしか思えない行動だ。
それは誰が見てもアリス・ベンフィールドの命を狙ったのだと思うだろう。
「黒幕はカイルが見つけてくれるよ」
「黒幕って……ふふっ、変な言い方」
アリスが笑ったのを見るとホッとする。
「やっぱり送ればよかった。ごめんね」
「セシルが事故に巻き込まれたらご両親が倒れちゃう。一人だから助かったんだよ」
「あんなに頑丈なのに紙みたいに潰れてた」
「じゃあ尚更一人でよかった」
誘拐事件の話のあとに事故に巻き込まれれば両親はそれこそ本当に心臓が止まってしまうだろうと思った。
もう二回も心臓が止まるような思いをしているのだからと笑うアリスにセシルは立ち上がって唇を重ねる。
「……君が好きだ。君がいない人生なんて考えられない。君が焼く美味しいパンを食べて、君の笑顔があって、セシルって呼ぶ君の声がする世界で僕は生きていたい。祈るしかできない自分が無力で……悔しかった。この手を握って、君にキスをして、笑う君を見てることが幸せなんだ。僕はそれだけで充分なんだって思った」
安堵から今にも泣き出しそうな笑顔を見せるセシルにアリスも泣きそうになりながら手を強く握る。それだけで肩にかけて痛みが走るが、それでもアリスは手の力を弱めないことにセシルが心配そうに見つめる。
その顔を見ながらアリスが口を開いた。
「事故に遭って、死んじゃうかもしれないと思ったとき、あなたにまだちゃんと気持ちを伝えられていないことを後悔したの。あなたに伝えたい言葉があるのに伝えられないまま死にたくないって。正しい言葉をあなたに伝えたかったから、胸にある想いとその言葉が合致してるのかお父様に聞いてもらおうと思ってた。それで間違いなかったら、ちゃんとあなたに伝えようって。でも、それがそもそもの間違いだった。自分の気持ちを誰かに聞いてもらって確かめるなんてバカみたい。答えはとっくに出てたのに、臆病風に吹かれて伝えることを先延ばしにし続けた。あなたが待ってくれるって過信して」
「いつまでだって待つよ。君の傍にいたいんだもん」
「ちゃんと伝えなきゃって」
とめどなく溢れる涙を拭いながらセシルは首を振る。
食事会のあと、両親から『紳士なら黙って待っていなさい』と言われた。その通りだったとセシルは唇を噛み締める。
こんな状態になっている相手から告白の返事が欲しいわけじゃない。想いを伝えたくて伝えていただけでも相手にとっては催促となったかもしれない。言われるばかりで答えを出していないと。
そんなことさえ考えずに想いを伝えることで満足していた自分が恥ずかしかった。
「今はいいよ。目が覚めたばかりなんだからゆっくり休んで。僕はどこにも行かないから元気になったあとでも──」
「愛してる」
響いたように聞こえたアリスの告白にセシルが目を見開く。
確かに聞こえた。ハッキリと聞こえた。それはセシルが望む以上の言葉だった。
「私があなたに抱いてる気持ちを表すたった一つの言葉はそれ以外見つからなかったの。あなたに触れられて、キスをして、手を繋いで……いつもドキドキしてた。誘拐されて怯えるあなたを見て、守りたいって思った。俯く私を引っ張り出してくれた人を守りたいって心から思ったの」
「僕だって君を守りたいよ。カイルみたいに権力はないし、拳だって振るえないけど……」
「いつも笑わせてくれるでしょ。セシルに出会ってから学校に行くのが楽しみになったの。セシルに会えるから」
「僕だよ。学校なんて退屈で鬱陶しいだけだって思ってたのに、アリスに会うのが楽しみにでサボらなくなった」
「かっこいいって言ってくれた」
「僕は可愛いって言われ続けた」
いつも通りのセシルの返しに笑うアリスにセシルがもう一度キスをした。
「あー……」
キスにはにかむアリスにセシルが頭を掻いて困ったように笑いながらポケットに手を突っ込んだ。
「まいったな……。本当はもっとカッコよくロマンチックにするつもりだったのに」
「今更?」
「今更だよ。前に言ってた湖畔の近くの別荘に招待して、夜に星を見上げながらするつもりだった」
「そんなこと考えてる人が学校のカフェテリアで──……」
もう何回キスしていると思ってるんだと笑うアリスだが、ポケットから取り出された小箱に言葉が止まった。
「ま、待って、セシル。それ……」
「急ぎすぎなのはわかってる。君は目覚めたばかりだし、待てない男は紳士的じゃないのもわかってる。だけど、君に言っておきたいんだ」
震える手でゆっくりと開いた箱の中に入っていた指輪を見せて再び膝をついたセシルがアリスの目を真っ直ぐ見つめて告げた。
「アリス、僕と結婚してくれる?」
答えに迷いはない。あるはずがない。
この胸にある確かな想いの名前はもう知っている。
他人だから眺めていられた。友達だから楽しかった。夫婦だから支え合える。幸せだと笑い合える。
そこに絶対はなくとも、アリスの中にはもう先を考えて不安が込み上げてくるということはなかった。
むしろ楽しみでさえある。
「はい」
アリスの細い指に金色のシンプルな指輪が達る。
「僕も愛してる」
包み込むだけの優しい抱擁にアリスも腕を回して気持ちを返す。
アリスは今ようやく、変化を楽しむ一歩を踏み出した。
まさか入ってくるのがセシルとは思っていなかったため、反射的に身体を起こそうとして走る痛みに顔を歪める。背中に手を当てて支えながら寝ているよう手のひらを見せるセシルに苦笑を見せる。
「無理を言って泊まらせてもらってたんだ」
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「ご飯、食べてなかったの?」
「食べてたよ。目が覚めたとき、僕が痩せてたらアリスが心配すると思ったから食べた。でも、全然味がしなくて……あんまり入らなかったんだ」
苦笑するセシルの頬に手を伸ばすとセシルのほうから頬を寄せてきた。
触り心地が少し違う。食べることが好きで大食漢のセシルが食べなかったなど信じられないことが、それほど心配をかけてしまったのだとアリスは眉を下げる。
「ごめんなさい」
「謝罪なんていいよ。こうして目を覚ましてくれただけで、それだけでいいんだ」
手を握って額に当てて祈るようなポーズを取るセシルが床に膝をつく。
「あの事故の音、家まで聞こえてたんだ。トランペットの大きな音と衝撃音と悲鳴。まさかと思って駆けつけたら……ベンフィールド家の紋章が入った馬車がひっくり返ってた」
「うん、お兄様から聞いた」
「周りにいた人たちに手伝ってもらってアリスを救出しようとしたんだけど、アリス……頭から血を流してたから動かせないってなって……救急隊が来るのを待ってたんだ。そしたらカイルが来てさ、すごい悲鳴だった」
「お兄様が悲鳴?」
「悲鳴って言ってもアリスの名前と何があったって叫んでただけなんだけど、喉が枯れるぐらい叫び続けてた。すごい震えだったし」
「私が頭から血を流すのはお兄様のトラウマなの」
「リオのせい?」
「せい、なんて言わないで。リオちゃんのことがあったからなだけ」
リオのことを庇われるのは面白くないが、こうして普通に話せるだけでセシルは安心する。
記憶を失っていたり声が出なかったりしたらどうしようと思っていたから。
「犯人、捕まるかな……」
捕まらなければ不安でならない。またあんなことがあったらどうしようと考えずにはいられない。
「もう捕まってるみたいだよ」
「え? でも、お兄様は逮捕したって言わなかった」
「逮捕しても誰に頼まれたのかはわかってないんじゃない? すぐに逃げたってことは金品狙いじゃなかったわけだし」
「……金品じゃなかったら……」
失言だったとセシルはすぐに後悔した。
馬は繊細な生き物で、予想外の出来事に対処できない。大きな音や危険に反応して逃げてしまうこともある。それをわかっていて犯人はトランペットを吹いたのだ。
一人で馬車に乗っているアリスを誘拐するのならトランペットを拭く必要はない。穏やかに走っている馬車の前を計算して通るなりして止めればよかった。しかしそうはしなかった。男は限界まで吸い込んだ息を思いきりトランペットにぶつけた。はじめから事故を起こさせるつもりだったとしか思えない行動だ。
それは誰が見てもアリス・ベンフィールドの命を狙ったのだと思うだろう。
「黒幕はカイルが見つけてくれるよ」
「黒幕って……ふふっ、変な言い方」
アリスが笑ったのを見るとホッとする。
「やっぱり送ればよかった。ごめんね」
「セシルが事故に巻き込まれたらご両親が倒れちゃう。一人だから助かったんだよ」
「あんなに頑丈なのに紙みたいに潰れてた」
「じゃあ尚更一人でよかった」
誘拐事件の話のあとに事故に巻き込まれれば両親はそれこそ本当に心臓が止まってしまうだろうと思った。
もう二回も心臓が止まるような思いをしているのだからと笑うアリスにセシルは立ち上がって唇を重ねる。
「……君が好きだ。君がいない人生なんて考えられない。君が焼く美味しいパンを食べて、君の笑顔があって、セシルって呼ぶ君の声がする世界で僕は生きていたい。祈るしかできない自分が無力で……悔しかった。この手を握って、君にキスをして、笑う君を見てることが幸せなんだ。僕はそれだけで充分なんだって思った」
安堵から今にも泣き出しそうな笑顔を見せるセシルにアリスも泣きそうになりながら手を強く握る。それだけで肩にかけて痛みが走るが、それでもアリスは手の力を弱めないことにセシルが心配そうに見つめる。
その顔を見ながらアリスが口を開いた。
「事故に遭って、死んじゃうかもしれないと思ったとき、あなたにまだちゃんと気持ちを伝えられていないことを後悔したの。あなたに伝えたい言葉があるのに伝えられないまま死にたくないって。正しい言葉をあなたに伝えたかったから、胸にある想いとその言葉が合致してるのかお父様に聞いてもらおうと思ってた。それで間違いなかったら、ちゃんとあなたに伝えようって。でも、それがそもそもの間違いだった。自分の気持ちを誰かに聞いてもらって確かめるなんてバカみたい。答えはとっくに出てたのに、臆病風に吹かれて伝えることを先延ばしにし続けた。あなたが待ってくれるって過信して」
「いつまでだって待つよ。君の傍にいたいんだもん」
「ちゃんと伝えなきゃって」
とめどなく溢れる涙を拭いながらセシルは首を振る。
食事会のあと、両親から『紳士なら黙って待っていなさい』と言われた。その通りだったとセシルは唇を噛み締める。
こんな状態になっている相手から告白の返事が欲しいわけじゃない。想いを伝えたくて伝えていただけでも相手にとっては催促となったかもしれない。言われるばかりで答えを出していないと。
そんなことさえ考えずに想いを伝えることで満足していた自分が恥ずかしかった。
「今はいいよ。目が覚めたばかりなんだからゆっくり休んで。僕はどこにも行かないから元気になったあとでも──」
「愛してる」
響いたように聞こえたアリスの告白にセシルが目を見開く。
確かに聞こえた。ハッキリと聞こえた。それはセシルが望む以上の言葉だった。
「私があなたに抱いてる気持ちを表すたった一つの言葉はそれ以外見つからなかったの。あなたに触れられて、キスをして、手を繋いで……いつもドキドキしてた。誘拐されて怯えるあなたを見て、守りたいって思った。俯く私を引っ張り出してくれた人を守りたいって心から思ったの」
「僕だって君を守りたいよ。カイルみたいに権力はないし、拳だって振るえないけど……」
「いつも笑わせてくれるでしょ。セシルに出会ってから学校に行くのが楽しみになったの。セシルに会えるから」
「僕だよ。学校なんて退屈で鬱陶しいだけだって思ってたのに、アリスに会うのが楽しみにでサボらなくなった」
「かっこいいって言ってくれた」
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いつも通りのセシルの返しに笑うアリスにセシルがもう一度キスをした。
「あー……」
キスにはにかむアリスにセシルが頭を掻いて困ったように笑いながらポケットに手を突っ込んだ。
「まいったな……。本当はもっとカッコよくロマンチックにするつもりだったのに」
「今更?」
「今更だよ。前に言ってた湖畔の近くの別荘に招待して、夜に星を見上げながらするつもりだった」
「そんなこと考えてる人が学校のカフェテリアで──……」
もう何回キスしていると思ってるんだと笑うアリスだが、ポケットから取り出された小箱に言葉が止まった。
「ま、待って、セシル。それ……」
「急ぎすぎなのはわかってる。君は目覚めたばかりだし、待てない男は紳士的じゃないのもわかってる。だけど、君に言っておきたいんだ」
震える手でゆっくりと開いた箱の中に入っていた指輪を見せて再び膝をついたセシルがアリスの目を真っ直ぐ見つめて告げた。
「アリス、僕と結婚してくれる?」
答えに迷いはない。あるはずがない。
この胸にある確かな想いの名前はもう知っている。
他人だから眺めていられた。友達だから楽しかった。夫婦だから支え合える。幸せだと笑い合える。
そこに絶対はなくとも、アリスの中にはもう先を考えて不安が込み上げてくるということはなかった。
むしろ楽しみでさえある。
「はい」
アリスの細い指に金色のシンプルな指輪が達る。
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