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冗談
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「……冗談、だろ?」
ありえない。十歳が妹のために男を一人殺すなど。
だがカイルならやりかねない。妹が突き飛ばされて怪我をしたからと半殺しにするような男だ。
もし殺したのだとしたらそれこそ大騒ぎになっているはず。カイルの父親が揉み消したとは考えにくい。
緊張の面持ちでカイルの言葉を待つヴィンセルはカイルが口を開くまでの数秒間が何十分にも感じた。
「冗談だ」
笑顔で告げられた言葉に感じた安堵と共に襲いくる脱力感にヴィンセルは椅子の上でだらりと四肢を投げ出し天井を見上げる。
「お前の言い方には恐怖しかない」
「俺が人を殺すと思ってるのか?」
「殺しかねんとは思っている。リオ・アンダーソンへの行動の異常性から充分に考えられることだ」
「半殺しで止めただろ」
「周りの大人の手によってな」
周りの大人たちが止めていなければ今頃カイルは本当の人殺しになっていたかもしれないとヴィンセルは容易に想像がつくことに苦笑さえ浮かばない。
「お前が病的なまでに過保護なのはそのせいか?」
「生まれてすぐアリスを見て俺が兄なのだから守らなければと思った。毎日毎日可愛がって、誰の子かわからんと両親が言うほどにな。だが、俺がこうしてアリスのために生きているのはあの事件がキッカケかもしれん。この手に取り戻したとき、やはり俺が守らなければと再認識したんだ。アリスがもう二度とあんな恐ろしい目に遭わないようにと思っていたんだが……疫病神が傍にいるせいでアリスが危険な目に遭った」
羽根ペンを放り投げてゴミ箱に入れると新しい羽根ペンを取って止めていた書類へのサインを再開させるカイルの声の冷たさにヴィンセルは心の中でセシルにお悔やみを言った。
「セシルにアリスを幸せにできるはずがないと今回のことで確信した」
「アリスを守ったんだろ?」
ヴィンセルの言葉にカイルの大笑いが生徒会室に響き渡る。
「守ったのはアリスだ。セシルは恐怖に怯えて丸まっていただけだ」
「本当か?」
「嘘をつく理由がどこにある」
「アリスが守った?」
「言っただろ、あの子は冷静な部分があると」
信じられなかった。ヴィンセルの頭の中では怯えるアリスをセシルが守っている映像しか浮かんでいなかったが実際は逆で、怯えるセシルをアリスが守っていた。
セシルは一年半誘拐されていたが、アリスは未遂に終わった。しかし、アリスとて泣くほどの恐怖を感じていたのにその恐怖が甦らずセシルを守ることに徹したことに驚きを隠せないヴィンセルにカイルはふふっと笑う。
「お前もセシルもアリスの魅力を知らないんだ。少し話をしたぐらいでアリスを知った気になってもらっては困る。あの子は狩りも上手いし、ピアノも上手い。少し話下手ではあるが、そこもいじらしくていいだろう。する必要がないことでもアリスは掃除も料理もお菓子も作る。そんな優秀な子に合う男がどこにいると言うんだ。全く、あの両親は見る目がないどころか想像力さえもないんだ。アリスの幸せについて考えているのは俺だけだぞ、まったく」
妹の幸せについてどれだけ真剣に考えていようとも邪魔をしていれば意味がないと心の中でだけ意見したヴィンセルは質問があると手を上げた。
「お前は、その……アリスに……恋を、しているわけでは……ない、よな?」
兄として、だけであるはずだと思っているが、異常な愛情を持つその感情がどこから湧き上がってくるものなのかずっと疑問だった。
アリスはカイルを当然兄としてしか見ていない。実際血が繋がった兄なのだから当然だ。
しかし、カイルはどうだろう。アリスに恋をしているから幸せになる邪魔をし続けているのではないかと勘繰ってしまう。
「俺がアリスに邪な想いを抱いていると思ってるのか?」
「す、少しだけそう思った」
怒られるだろうかと不安になったヴィンセルの耳に届いたのは意外な言葉だった。
「恋ではないが、アリスを誰の物にもしたくないという思いはある」
驚くほど静かな声だが、そこに怒りは感じられない。
「恋人のようにキスをしたいだとか、アリスを抱きたいという感情は微塵もない。それは確かだ。だが、アリスが俺の傍から離れていってしまうことは想像もしたくないんだ。ありがとうと言って手を振るアリスを見送る勇気はない。いつまでも隣で笑っていてほしい。お兄様と呼んでいてほしいんだ。あの小さな子を俺以外が守るなんて考えられない」
兄妹で結婚する者は少ないが存在する。特に二人きりの兄妹であれば兄妹愛と愛情がごちゃ混ぜになって勘違いしてしまうと発表している論文をヴィンセルは読んだことがあった。
血を濃くするために血縁者同士で結婚して子供を産む王族貴族もいるが、ベンフィールド家にそんな考えはないだろう。むしろそうしてしまうのではないかと心配しているはず。
恋人のような行為をしたいわけではなく、幼い頃、手を繋いで歩いていたあの幸せがずっと続けばいいと願っているのだ。あの小さな手を握るのが自分だけであればいいと。
だが、ヴィンセルはそれは恋ではないのかと。誰もが当たり前のように口にする恋ではなくとも、それも立派な恋のような気がした。
「アリスが恋をしたらどうするんだ?」
「……どうするだろうな。わからん。想像したくないんだ。恋の相談を受けるなどできんだろうし」
アリスもカイルに恋の相談はしないだろうとヴィンセルは思った。
「きっと、そいつがどういう人間が徹底的に調べ上げて一つでも不備があるようなら邪魔をする」
「アリスが泣いてもか?」
「不備のある人間と結婚すれば泣くのは目に見えている」
「人間は機械じゃない。誰しも不十分な生き物なんだよ」
「それを免罪符にされては困る。アリスの人生に入るのだから不備がある、それが人間だという言い訳は聞き苦しい。そんな言い訳するような奴も絶対に認めない」
まるで釘を打たれたような気分になる。
カイルが認めるのは最低でも公爵であるが、王子は認めない。アリスが苦労するのがわかっているから。
かといってベンフィールド家以上の力を持つ公爵はこの国にはいない。
「そんなに厳しくして、駆け落ちでもされたらどうするんだ?」
「アリスは己の欲のために家族を悲しませるようなことはしない」
「恋は人を変えると言うぞ?」
「アリスはそんな安っぽい人間じゃないんだよ」
「恋で変わった人に失礼だぞ」
「事実だ」
カイルもまだ本物の恋を知らない。いつだって妹を守るためだけに生きてきたのだ。恋をする隙など心の片隅にさえ存在しなかったのだろう。
数年前、カイルに婚約者ができたと聞いた。身分も問題なく、気量良しで美人だと。ヴィンセルもパーティーで一度だけ会ったことがある。美人だと思ったが、やはり匂いがダメだった。
男を立て、一歩後ろを歩き、控えめな女性という印象があったが、カイルはそんなことはどうでもいいと言わんばかりに一方的に婚約解消の手紙を送りつけた。
「アリスはお前に幸せになってほしいと言っていた」
「お前がアリスを泣かせた食事会での話か」
いちいち嫌味を言わなければ死んでしまうのかと聞きたかったが、どうせ「そうだ」と返ってくるのがわかっているため言わなかった。
「俺の幸せはアリスが幸せだと笑っている姿を見ることだ。婚約者など必要ない。結婚して縛られるのはごめんだ。ましてや子供ができて家族にかかりきりになるなんて考えられん」
「お前は今まさに家族にかかりきりだがな」
「妹は血の繋がった家族だ」
「子供もそうだ」
「いいか、存在している者と存在していない者を空論したところでなんの意味もないんだよ。俺にとって大事なのは親が勝手に決めたどこぞのお嬢様じゃない、目に入れても痛くないほど可愛い妹なんだよ」
「わかったわかった。そう熱くなるな。お前の思いはよくわかったから」
カイルをヒートアップさせると面倒なことにしかならないとお手上げ降参ポーズで話題を止めた。
何が悲しくて休みの日にまで学校に赴いて生徒会室でカイルと二人きりの時間を長引かせなければいけないのかと投げ出していた四肢を戻して姿勢を正したヴィンセルも羽根ペンを持って紙に走らせる。
「人の婚約者問題に口を出す前に次期国王の世継ぎ問題を考えたほうがいいんじゃないか?」
「余計なお世話だ」
「お互い様だな」
何を言ってもカイルは黙らない。必ず自分で会話を終わらせなければ気がすまないのだ。
こういうときは肩を竦めて終わらせるのが一番であることをヴィンセルは知っている。
アリスとセシルは大丈夫だろうかと心配ではあるが、個人的に家を訪ねるのは大事になるため学校で様子を伺うことにした。
ありえない。十歳が妹のために男を一人殺すなど。
だがカイルならやりかねない。妹が突き飛ばされて怪我をしたからと半殺しにするような男だ。
もし殺したのだとしたらそれこそ大騒ぎになっているはず。カイルの父親が揉み消したとは考えにくい。
緊張の面持ちでカイルの言葉を待つヴィンセルはカイルが口を開くまでの数秒間が何十分にも感じた。
「冗談だ」
笑顔で告げられた言葉に感じた安堵と共に襲いくる脱力感にヴィンセルは椅子の上でだらりと四肢を投げ出し天井を見上げる。
「お前の言い方には恐怖しかない」
「俺が人を殺すと思ってるのか?」
「殺しかねんとは思っている。リオ・アンダーソンへの行動の異常性から充分に考えられることだ」
「半殺しで止めただろ」
「周りの大人の手によってな」
周りの大人たちが止めていなければ今頃カイルは本当の人殺しになっていたかもしれないとヴィンセルは容易に想像がつくことに苦笑さえ浮かばない。
「お前が病的なまでに過保護なのはそのせいか?」
「生まれてすぐアリスを見て俺が兄なのだから守らなければと思った。毎日毎日可愛がって、誰の子かわからんと両親が言うほどにな。だが、俺がこうしてアリスのために生きているのはあの事件がキッカケかもしれん。この手に取り戻したとき、やはり俺が守らなければと再認識したんだ。アリスがもう二度とあんな恐ろしい目に遭わないようにと思っていたんだが……疫病神が傍にいるせいでアリスが危険な目に遭った」
羽根ペンを放り投げてゴミ箱に入れると新しい羽根ペンを取って止めていた書類へのサインを再開させるカイルの声の冷たさにヴィンセルは心の中でセシルにお悔やみを言った。
「セシルにアリスを幸せにできるはずがないと今回のことで確信した」
「アリスを守ったんだろ?」
ヴィンセルの言葉にカイルの大笑いが生徒会室に響き渡る。
「守ったのはアリスだ。セシルは恐怖に怯えて丸まっていただけだ」
「本当か?」
「嘘をつく理由がどこにある」
「アリスが守った?」
「言っただろ、あの子は冷静な部分があると」
信じられなかった。ヴィンセルの頭の中では怯えるアリスをセシルが守っている映像しか浮かんでいなかったが実際は逆で、怯えるセシルをアリスが守っていた。
セシルは一年半誘拐されていたが、アリスは未遂に終わった。しかし、アリスとて泣くほどの恐怖を感じていたのにその恐怖が甦らずセシルを守ることに徹したことに驚きを隠せないヴィンセルにカイルはふふっと笑う。
「お前もセシルもアリスの魅力を知らないんだ。少し話をしたぐらいでアリスを知った気になってもらっては困る。あの子は狩りも上手いし、ピアノも上手い。少し話下手ではあるが、そこもいじらしくていいだろう。する必要がないことでもアリスは掃除も料理もお菓子も作る。そんな優秀な子に合う男がどこにいると言うんだ。全く、あの両親は見る目がないどころか想像力さえもないんだ。アリスの幸せについて考えているのは俺だけだぞ、まったく」
妹の幸せについてどれだけ真剣に考えていようとも邪魔をしていれば意味がないと心の中でだけ意見したヴィンセルは質問があると手を上げた。
「お前は、その……アリスに……恋を、しているわけでは……ない、よな?」
兄として、だけであるはずだと思っているが、異常な愛情を持つその感情がどこから湧き上がってくるものなのかずっと疑問だった。
アリスはカイルを当然兄としてしか見ていない。実際血が繋がった兄なのだから当然だ。
しかし、カイルはどうだろう。アリスに恋をしているから幸せになる邪魔をし続けているのではないかと勘繰ってしまう。
「俺がアリスに邪な想いを抱いていると思ってるのか?」
「す、少しだけそう思った」
怒られるだろうかと不安になったヴィンセルの耳に届いたのは意外な言葉だった。
「恋ではないが、アリスを誰の物にもしたくないという思いはある」
驚くほど静かな声だが、そこに怒りは感じられない。
「恋人のようにキスをしたいだとか、アリスを抱きたいという感情は微塵もない。それは確かだ。だが、アリスが俺の傍から離れていってしまうことは想像もしたくないんだ。ありがとうと言って手を振るアリスを見送る勇気はない。いつまでも隣で笑っていてほしい。お兄様と呼んでいてほしいんだ。あの小さな子を俺以外が守るなんて考えられない」
兄妹で結婚する者は少ないが存在する。特に二人きりの兄妹であれば兄妹愛と愛情がごちゃ混ぜになって勘違いしてしまうと発表している論文をヴィンセルは読んだことがあった。
血を濃くするために血縁者同士で結婚して子供を産む王族貴族もいるが、ベンフィールド家にそんな考えはないだろう。むしろそうしてしまうのではないかと心配しているはず。
恋人のような行為をしたいわけではなく、幼い頃、手を繋いで歩いていたあの幸せがずっと続けばいいと願っているのだ。あの小さな手を握るのが自分だけであればいいと。
だが、ヴィンセルはそれは恋ではないのかと。誰もが当たり前のように口にする恋ではなくとも、それも立派な恋のような気がした。
「アリスが恋をしたらどうするんだ?」
「……どうするだろうな。わからん。想像したくないんだ。恋の相談を受けるなどできんだろうし」
アリスもカイルに恋の相談はしないだろうとヴィンセルは思った。
「きっと、そいつがどういう人間が徹底的に調べ上げて一つでも不備があるようなら邪魔をする」
「アリスが泣いてもか?」
「不備のある人間と結婚すれば泣くのは目に見えている」
「人間は機械じゃない。誰しも不十分な生き物なんだよ」
「それを免罪符にされては困る。アリスの人生に入るのだから不備がある、それが人間だという言い訳は聞き苦しい。そんな言い訳するような奴も絶対に認めない」
まるで釘を打たれたような気分になる。
カイルが認めるのは最低でも公爵であるが、王子は認めない。アリスが苦労するのがわかっているから。
かといってベンフィールド家以上の力を持つ公爵はこの国にはいない。
「そんなに厳しくして、駆け落ちでもされたらどうするんだ?」
「アリスは己の欲のために家族を悲しませるようなことはしない」
「恋は人を変えると言うぞ?」
「アリスはそんな安っぽい人間じゃないんだよ」
「恋で変わった人に失礼だぞ」
「事実だ」
カイルもまだ本物の恋を知らない。いつだって妹を守るためだけに生きてきたのだ。恋をする隙など心の片隅にさえ存在しなかったのだろう。
数年前、カイルに婚約者ができたと聞いた。身分も問題なく、気量良しで美人だと。ヴィンセルもパーティーで一度だけ会ったことがある。美人だと思ったが、やはり匂いがダメだった。
男を立て、一歩後ろを歩き、控えめな女性という印象があったが、カイルはそんなことはどうでもいいと言わんばかりに一方的に婚約解消の手紙を送りつけた。
「アリスはお前に幸せになってほしいと言っていた」
「お前がアリスを泣かせた食事会での話か」
いちいち嫌味を言わなければ死んでしまうのかと聞きたかったが、どうせ「そうだ」と返ってくるのがわかっているため言わなかった。
「俺の幸せはアリスが幸せだと笑っている姿を見ることだ。婚約者など必要ない。結婚して縛られるのはごめんだ。ましてや子供ができて家族にかかりきりになるなんて考えられん」
「お前は今まさに家族にかかりきりだがな」
「妹は血の繋がった家族だ」
「子供もそうだ」
「いいか、存在している者と存在していない者を空論したところでなんの意味もないんだよ。俺にとって大事なのは親が勝手に決めたどこぞのお嬢様じゃない、目に入れても痛くないほど可愛い妹なんだよ」
「わかったわかった。そう熱くなるな。お前の思いはよくわかったから」
カイルをヒートアップさせると面倒なことにしかならないとお手上げ降参ポーズで話題を止めた。
何が悲しくて休みの日にまで学校に赴いて生徒会室でカイルと二人きりの時間を長引かせなければいけないのかと投げ出していた四肢を戻して姿勢を正したヴィンセルも羽根ペンを持って紙に走らせる。
「人の婚約者問題に口を出す前に次期国王の世継ぎ問題を考えたほうがいいんじゃないか?」
「余計なお世話だ」
「お互い様だな」
何を言ってもカイルは黙らない。必ず自分で会話を終わらせなければ気がすまないのだ。
こういうときは肩を竦めて終わらせるのが一番であることをヴィンセルは知っている。
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