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跨げぬ敷居
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昼食が終わり、広大な庭を一緒に散歩した後に待っていたのはティータイム。
当たり前のように両親揃って着席していたが、セシルが受け入れていたためアリスも何も言わなかった。
盛り上がっていたのは主にネイサンとセシルで、アリスは母親と話していた。
「少しぐらいなら部屋に行ってもいいのよ?」
「いえ、やめておきます。あまり突っ込んだことはしたくないんです。大事なのは僕の気持ちではなく、アリスの気持ちですから」
「まあ、紳士ね」
母親からの許可が出たということは公認も同然。ネイサンも頷きこそしないものの反対もしなかった。
セシルにとって願ってもない言葉だが、アリスの部屋に入ると当然色々したくなってしまう。キスも、もう少し先も。
だが、それをアリスが受け入れるかどうかわからない。それこそ戸惑って拒絶する可能性のほうがまだ高い。
ヴィンセルのように急いて事を仕損じることだけは避けたいと断ったセシルをシンディーは高く評価していた。
「ヴィンセル王子も紳士だったけど、あなたも負けないぐらい紳士よ」
「ヴィンセルにお会いしたのですか?」
「この子が手首を捻挫したときに謝りに来てくださったの。捻挫ぐらい誰でもするし、王子に頭を下げられるのは困るって言ったんだけど、ずっと頭を下げて自分の責任だって言い続けてね」
「学校でもずっとアリスを気にかけてましたから」
「この子もまんざらじゃなかったみたいだし」
「お母様やめてっ」
「あらどうして? いつも念入りに髪を梳かしてたし、ずーっと鏡を見てチェックしてたじゃない」
「やめてってたら!」
アリスが声を張るとシンディーが驚いた顔をする。アリスは親に反抗することはないし、嘘もつかない。
ヴィンセルに迎えに来てもらっていた一ヶ月、アリスは乙女の顔をしていた。ようやく蕾が咲くかもしれないと喜んでいた二人だが、アリスはそれを良い思い出としていなかった。
「ヴィンセル様に迷惑かけただけなんだから」
「そんなことないわよ。あれは事故だったんでしょ?」
「ヴィンセル様が通る道だってわかってたのに、あんな場所で立ち止まった私が悪いの。それを彼が自分の責任にしてくれただけよ」
「でも親しくなれたんでしょ?」
「違う。そんなのじゃない。彼は誰にでも優しいの。お父様もそれはご存じでしょう?」
「あ、ああ、そうだね。彼は皆に平等に優しいよ」
そこまで否定する必要はないのにと両親は驚いていた。
「学校ではどう? アリスはヴィンセル様と仲良くしてるかしら?」
「あー……いえ、ヴィンセルは多忙なので話す機会がないみたいです。アリスはアリスでアボット姉妹と仲良くしていますし」
「ああ、彼女たちか。明るい良い子だね」
アリスは学校でのことをあまり話さないのだろうかとセシルが視線を向けるもアリスはそれを見ようとしなかった。
「……一つ、質問があるのですが……」
「なんだい?」
するべきか迷っていたことだが、今しかないとセシルは二人を見た。
「ティーナ・ベルフォルンのことです」
「ああ……」
「あの子、また何かしたの?」
名前を聞くだけで二人の表情が変わる。名前さえ聞きたくないと言わんばかりの表情にセシルは自分が思っている以上にティーナはベンフィールド家に受け入れられていないのかもしれないと思った。
爵位の問題ではなく人間性の問題で。
「カイルからある程度の報告は聞いているよ。虚偽の報告をしたんだろう?」
その“ある程度”がどこまでなのかわからないためセシルは自ら真実を話そうとはしなかった。
「そうですね。それをアリスとヴィンセルが嘘だと証言してくれたんです」
頷くネイサンの目はどこかセシルを試しているようで、セシルは身体が緊張を感じているような感覚に陥り、テーブルの下で拳を握る。
「銃は嫌なら皆が子供に持たせたいだろうね。私たち貴族は狙われやすい。そのときに銃があれば充分な抵抗力にはなるだろうから」
「そうですね」
「だが、ルールはルールだ。いかなる理由があろうとも国が決めた法律は守らなければならない。どんな理不尽な法律であろうともね」
「わかります」
自分が銃を持っていたという発言をしたことまで聞いているのだとセシルは確信する。でなければわざわざそんな言い方はしないはずだと。
射抜くように真っ直ぐ見つめる瞳の奥には天秤があり、そこに信頼と裏切りの文字が見えた気がした。
「あれは玩具ではない。刃物よりずっと鋭利な凶器だ。距離をとったまま一発で生き物を殺してしまう。それを日常的に所持している人間など化け物にも等しい。皆が守っているルールを破ってまでそうする理由など存在しない。もし護身のためだとしても護身用として持てる物は他にもあるのだからね。それなのにわざわざ銃を選ぶ人間がいるなら何を考えているのか聞きたいものだ」
理解してもらおうとは思っていない。理解されるとも思ってはいない。だから正直に話すつもりはない。問題を抱えていると知りながら説き伏せるような言い方をするネイサンにセシルはあえて笑顔を見せた。
「同感です。ルールとは何があろうと守らなければならないもの。個人の都合で破ることは許されないのですから」
セシルは誰よりも嘘をつき慣れている。
上手くいけば家族になるかもしれない相手にでもセシルは平気な顔で嘘をつく。
「ベンフィールド公爵はティーナ・ベルフォルンの発言を信じておられるのですか?」
「はっはっはっは! ありえんよ。あの子は天性の嘘つきだ。虚言癖持ちで、見栄っ張り。現実が見えていない子供の話を誰が信じるものか」
おかしそうに笑うネイサンにセシルは笑顔で頷くが、心の中は違う。疑われているのは間違いないとわかっている。シンディーはどうかわからないが、ネイサンはセシルの言葉を丸々信じてはいないだろう。
「ヴィンセル様は家名をかけて誓ったの。嘘じゃないわ」
「ああ、それも聞いたよ。彼は立派だね」
その笑顔はセシルもよく知る笑顔。彼も天性の嘘つきだと感じたセシルはまるで鏡を見ている気分だった。
「アッシュバートン伯爵はとても真面目な人だ。いくら息子が心配でも銃の所持を許可することはないだろう。持たせるには代償が大きすぎるからな」
「そうですね」
「私も持てるなら持ちたいものだ」
「ベンフィールド公爵ならお似合いになるでしょうね」
「そうかい? お気に入りの銃があるんだ。だが持つ機会もなくてね」
「銃好きにとっては辛いですよね」
「そうなんだ! わかってくれるか! シンディーやアリスに話しても理解してもらえないんだ」
「物騒な物を好むあなたを理解する日は一生こないわ」
呆れたように言い放つシンディーに笑いながらセシルはアリスを見た。なんだろうかと首を傾げるアリスに首を振ってからネイサンに顔を戻す。
「アリスは狩りに行かないんですよね」
「十歳までは行っていたんだが、自分で獲物を仕留めた日から行かなくなってしまったんだよ」
「命を奪うことを競技にするのは悪趣味です」
「崇高な趣味だよ」
「悪趣味です」
「十歳で獲物を仕留めたの? すごいな」
「それも一発でだ」
「すごい! アリスすごいよ!」
喜べる話ではないとアリスは首を振る。
アリスにとって狩りは崇高なものではなく悪趣味なものでしかない。
狩りをして生きている部族の話ならわかる。そうすることで命を繋いでいるのなら食物連鎖として成り立っているから。
だが、貴族がしているのは生きるためではなく自分の虚栄心を満たすため。そこで生きている動物に向けて銃を構え、放った一発で命を奪うか怪我をさせる。恐怖に怯えて逃げる獲物を追いかけて仕留める。
もし自分が同じ目に遭ったらと考えないのだろうかと幾度となく疑問に思うが、考えないから狩猟大会など開催するのだと呆れている。
アリスにとって狩りは嫌悪する行為でしかなく、命を奪ったあの日からもう二度としないと決めたのだ。
「セシル様、お時間でございます」
「え、もうそんな時間? うわっ、本当だ」
ポケットから懐中時計を取り出して時間を確認すると約束の時間になっていた。
ティーナについて聞きたいことがあったが、サロンで聞いたほうがいいかとゆっくり立ち上がった。
「本日はお招きいただきありがとうございました。とても有意義な一日となりました」
「君なら大歓迎だよ」
「そうね。今後もアリスと仲良くしてあげて」
「ありがとうございます」
二人に感謝の意を唱えるとセシルは馬車に向かう。
あんなに青々としていた空がいつの間にか黄昏に染まり、自宅へと向かう間に闇に染まりそうだとセシルは空を見上げる。
「ん?」
馬車の向こうの門の所で誰かがこちらを覗き込んでいることに気付いたセシルはそれが誰なのかすぐにわかった。
「リオ・アンダーソンじゃないか」
「……セシル・アッシュバートン」
セシルの存在には気付いていたのか、顔を見ると驚きはせず、眉を寄せて睨みつける。
「そんな所で何してるの? ストーカーみたいだけど、まさかアリスを待ち伏せしてたとか?」
「ちげーよ! なんで俺がアリスのストーカーしなきゃいけねんだよ!」
「そうだよね、アリスとは真逆のタイプが好きなんだもんね」
「そうだよ! だったらなんだよ! つーかテメーはいつまで居座ってんだ! 迷惑だろうが!」
「それは僕の勝手だろ」
「勝手じゃねーよ!」
「たとえ勝手じゃなかったとしても君には関係ないことだ」
「ぐぅッ!」
アリスとセシルは仲が良い。セシルはアリスに好意があるし、アリスはセシルにランチを作る。それだけでも家に呼ぶ理由としては充分だ。
リオは幼馴染といえどカイルに敷居を跨ぐなと言われている。だから門からこっちには入ることもできない。
この時点で優劣は決まっていると勝ち誇った顔を見せるセシルにリオは更に不快感を強めた表情を見せる。
「リオ君?」
一緒に見送りに来たネイサンがリオに気付いて声をかけた。ビクッと肩を跳ねさせてネイサンに視線をやると顔だけ出していたのを身体ごと出して頭を下げる。
「お久しぶりです、ベンフィールド公爵」
「立派になったね。こんなに大きくなるとは、アンダーソン子爵も驚いているだろう」
「背ばかり成長しても意味がないと言ってます」
「はっはっはっ! 彼らしいね。だが大きくなるのは良いことだ。うちのカイルより大きくなってるじゃないか」
「いやでも、カイルとは全然、ホントに背だけ伸びただけなんで」
腰の低いリオを見るのは初めてで、セシルは目を疑った。
転入してきてから横柄な態度しか見せなかったリオはネイサン相手だとこうなるのかと驚きを隠せない。
苦笑しながら頭を掻くリオはセシルがいることなど忘れてネイサンを見ていた。
「アンダーソン夫人のことは残念だったね」
「覚悟はしてたんで」
「え……?」
驚いた声を漏らすアリスに「ああ」と呟いてからネイサンがアリスの髪を撫でる。
「言ってなかったか。アンダーソン夫人は一ヶ月前、病に倒れて亡くなったんだ」
「そんな……どうして……」
「半年ぐらい前から悪くなってたんだ──」
「違う! どうして言わなかったの!?」
「え? あ、いや、だって、言っても仕方ないだろ」
そっちかと怒っている理由に納得するも、リオは寂しげな表情を浮かべるでもなく眉を下げて答えるだけ。
「仕方なくない!」
大声を出すアリスにリオが瞬きを繰り返す。
「仕方なくないんだよ、リオちゃん」
少しも寂しさや悲しさなど見せなかったため気付かなかった。
アリスはリオの母親のことは好きだった。
ある日、リオの母親は『アリスちゃんのことが大好きで、本当はちゃんと話しかけたいのに恥ずかしくて素直になれないの。もう二度としないようにキツく言い聞かせておくから』と言って困った顔を見せた。その翌日、リオは頬がりんごのようにに真っ赤に腫れていた。理由を聞くと『お前がチクったせいでこんな目に遭った』と。言い聞かせるだけでは済まなかったことに思わず笑った日もあった。
エレメンタリースクールの卒業式、初めて彼女が泣いた姿を見た。アリスは捻挫をしたわけではないし、頭を打ったわけでもない。酷い目に遭ったのはリオのほうなのに彼女は夫と共にその場で土下座して何十回も謝り続けた。それは貴族としては正しい行為で、親としては間違っているように見えた。
何が正しいのかアリスにはわからなかったが、それからアンダーソン一家は国外へ行ってしまったため会うことはなかった。
あの笑顔にもう二度と会えないのだと思うとアリスの目に涙が滲む。
「私に言ったところで時間は戻せないし、リオちゃんの辛さを全部取ってあげることはできないかもしれないけど、言ってよ……。帰ってきた理由ぐらい、ちゃんと言って」
両手を伸ばして高い位置にあるリオの頬を挟むとリオがその手に触れる。
きっと寂しいとか悲しいとか、リオは言わない。言えと言っても言わないだろう。だから強要したりはしない。それでも、彼が一人で抱えているだろう辛さを共有することはできる。
リオを許すつもりだとカイルからは聞いていなかったのに帰ってきた時点で何かあると気付くべきだったとアリスはギュッと目を閉じた。
「泣き虫のくせに」
「はあ? いつの話してんだよ!」
「変わったの?」
「当たり前だろ! 泣いたりしねぇよ! つーか別に泣き虫じゃねぇし!」
「嘘ばっかり。リオちゃんの泣き虫が変わるわけないもの」
「変わったんだよ! つか、泣き虫じゃねぇって言ってんだろ!」
二人の言い合いにネイサンとシンディーが笑う。それをセシルは表情にこそ出さないものの、つまらなく感じていた。
今日のゲストは自分で、シンディーからはアリス攻略の許可ももらった。
ヴィンセルはアリスのほうが距離を取っているし、カイルさえ邪魔をしなければアリスを狙うのは自分だけだと思っていたのに、リオの存在に危惧する。
リオがいると新参者は自分になってしまう。
二人はカイルほどリオを嫌ってはいないらしく、アリスが触れても何も言わない。それが一番厄介だと思った。
爵位こそ自分のほうが上でもシンディーは爵位など気にしないと言った。それは伯爵ではなく子爵でもいいということ。
(邪魔だな)
心の中で呟いたセシルはここで悪あがきはせずに良い印象を残して帰ることにした。
「では僕はこれで失礼させていただきます」
「狩猟大会、楽しみにしているよ」
振り向いたネイサンが馬車に寄って手を差し出す。その手をしっかり握って「会場でお会いできるのを楽しみにしています」と言葉を返すと馬車に乗り込んだ。
「アリス、また明日」
「お気をつけて」
微笑みながら手を振ると馬車はアッシュバートン邸へと走り出した。
「リオ君、上がっていくかい?」
「あー……いや、帰ります。あんま遅くなると親父が心配するから」
「そうだね。今は傍にいてあげるといい。また二人を食事に招待するよ」
「ありがとうございます」
頭を下げるリオから手を離そうとしたアリスを逃さないように細い腕を握ったままアリスを見下ろす。
「リオちゃん?」
「お前今日、オシャレしたのか?」
「え? あ、う、うん。だってお客様来るから」
「毎日学校で会ってる奴だろ。オシャレする必要あんのかよ」
「一応だもの」
「ふーん。セシル・アッシュバートンなんかのためにする必要なんかねぇだろうによ。大体お前がオシャレなんかしたって──」
不必要な言葉ばかり飛び出していることに気付いたのはアリスの表情が変わったから。
「似合ってない?」
アリスが自分の容姿に自信がないことは知っている。それはブスだと言い続けた自分のせいだとリオは思っている。
成長したのは背だけと父親に言われる度に悔しかったが、今していることはあの頃と何も変わっていない。
リオは一度唇を結んでからゆっくりと口を開いた。
「か……かわ……か、わ……」
「川?」
どんどん赤くなっていくリオの顔にネイサンとシンディーが横を向いて肩を揺らす。
「か、かわ、かわ……変わってねぇなぁ!」
「え?」
「体型とか背とか全部! 俺はこんなに背が伸びたのにお前はエレメンタリースクールから全然成長してねぇじゃん! 笑うわ! はっはっはっはっはっはっ!」
飛び出した言葉は言おうと覚悟を決めたものとは正反対のもので、リオはワザとらしい笑い声を上げながら心の中で泣いていた。
「リオちゃん」
「あ? んだよ。事実だ──」
「耳まで真っ赤──キャッ!」
掴まれたままの手を少し動かして耳に触れるとビビビビビッと電気が走ったように身体を震わせたリオがアリスを突き飛ばし、真っ赤な顔で耳を押さえる。
「いたた……突き飛ばすことないじゃない!」
「お、おおおおおお前が急に触るからだろ! このヘンタイ!」
「ヘ、ヘンタイって……」
「お、女が自分から男に触るってヘンタイだろ!」
両親がそこに揃っていることに忘れ、アリスを変態呼ばわりするリオの顔は空を染める夕日よりも真っ赤に染まっている。
「リオちゃん嫌い!」
「そ、そうかよ! 俺だってお前なんかきら、好きじゃねぇし! ヘンタイに触られたから耳洗いに帰る!」
逃げるようにして走り去ったリオにネイサンとシンディーは堪えきれず声を上げて笑う。
何も面白いことなんてなかったと拗ねるアリスは差し出されたネイサンの手を取って立ち上がり、土埃を払った。
「なんにも変わってないのはリオちゃんのほうよ」
「ふふふふふっ、そうね」
「さ、中に入ろうか」
カイルが見ていなくてよかったと両親は安堵し、変わっていない愛らしさを微笑ましく思っていた。
当たり前のように両親揃って着席していたが、セシルが受け入れていたためアリスも何も言わなかった。
盛り上がっていたのは主にネイサンとセシルで、アリスは母親と話していた。
「少しぐらいなら部屋に行ってもいいのよ?」
「いえ、やめておきます。あまり突っ込んだことはしたくないんです。大事なのは僕の気持ちではなく、アリスの気持ちですから」
「まあ、紳士ね」
母親からの許可が出たということは公認も同然。ネイサンも頷きこそしないものの反対もしなかった。
セシルにとって願ってもない言葉だが、アリスの部屋に入ると当然色々したくなってしまう。キスも、もう少し先も。
だが、それをアリスが受け入れるかどうかわからない。それこそ戸惑って拒絶する可能性のほうがまだ高い。
ヴィンセルのように急いて事を仕損じることだけは避けたいと断ったセシルをシンディーは高く評価していた。
「ヴィンセル王子も紳士だったけど、あなたも負けないぐらい紳士よ」
「ヴィンセルにお会いしたのですか?」
「この子が手首を捻挫したときに謝りに来てくださったの。捻挫ぐらい誰でもするし、王子に頭を下げられるのは困るって言ったんだけど、ずっと頭を下げて自分の責任だって言い続けてね」
「学校でもずっとアリスを気にかけてましたから」
「この子もまんざらじゃなかったみたいだし」
「お母様やめてっ」
「あらどうして? いつも念入りに髪を梳かしてたし、ずーっと鏡を見てチェックしてたじゃない」
「やめてってたら!」
アリスが声を張るとシンディーが驚いた顔をする。アリスは親に反抗することはないし、嘘もつかない。
ヴィンセルに迎えに来てもらっていた一ヶ月、アリスは乙女の顔をしていた。ようやく蕾が咲くかもしれないと喜んでいた二人だが、アリスはそれを良い思い出としていなかった。
「ヴィンセル様に迷惑かけただけなんだから」
「そんなことないわよ。あれは事故だったんでしょ?」
「ヴィンセル様が通る道だってわかってたのに、あんな場所で立ち止まった私が悪いの。それを彼が自分の責任にしてくれただけよ」
「でも親しくなれたんでしょ?」
「違う。そんなのじゃない。彼は誰にでも優しいの。お父様もそれはご存じでしょう?」
「あ、ああ、そうだね。彼は皆に平等に優しいよ」
そこまで否定する必要はないのにと両親は驚いていた。
「学校ではどう? アリスはヴィンセル様と仲良くしてるかしら?」
「あー……いえ、ヴィンセルは多忙なので話す機会がないみたいです。アリスはアリスでアボット姉妹と仲良くしていますし」
「ああ、彼女たちか。明るい良い子だね」
アリスは学校でのことをあまり話さないのだろうかとセシルが視線を向けるもアリスはそれを見ようとしなかった。
「……一つ、質問があるのですが……」
「なんだい?」
するべきか迷っていたことだが、今しかないとセシルは二人を見た。
「ティーナ・ベルフォルンのことです」
「ああ……」
「あの子、また何かしたの?」
名前を聞くだけで二人の表情が変わる。名前さえ聞きたくないと言わんばかりの表情にセシルは自分が思っている以上にティーナはベンフィールド家に受け入れられていないのかもしれないと思った。
爵位の問題ではなく人間性の問題で。
「カイルからある程度の報告は聞いているよ。虚偽の報告をしたんだろう?」
その“ある程度”がどこまでなのかわからないためセシルは自ら真実を話そうとはしなかった。
「そうですね。それをアリスとヴィンセルが嘘だと証言してくれたんです」
頷くネイサンの目はどこかセシルを試しているようで、セシルは身体が緊張を感じているような感覚に陥り、テーブルの下で拳を握る。
「銃は嫌なら皆が子供に持たせたいだろうね。私たち貴族は狙われやすい。そのときに銃があれば充分な抵抗力にはなるだろうから」
「そうですね」
「だが、ルールはルールだ。いかなる理由があろうとも国が決めた法律は守らなければならない。どんな理不尽な法律であろうともね」
「わかります」
自分が銃を持っていたという発言をしたことまで聞いているのだとセシルは確信する。でなければわざわざそんな言い方はしないはずだと。
射抜くように真っ直ぐ見つめる瞳の奥には天秤があり、そこに信頼と裏切りの文字が見えた気がした。
「あれは玩具ではない。刃物よりずっと鋭利な凶器だ。距離をとったまま一発で生き物を殺してしまう。それを日常的に所持している人間など化け物にも等しい。皆が守っているルールを破ってまでそうする理由など存在しない。もし護身のためだとしても護身用として持てる物は他にもあるのだからね。それなのにわざわざ銃を選ぶ人間がいるなら何を考えているのか聞きたいものだ」
理解してもらおうとは思っていない。理解されるとも思ってはいない。だから正直に話すつもりはない。問題を抱えていると知りながら説き伏せるような言い方をするネイサンにセシルはあえて笑顔を見せた。
「同感です。ルールとは何があろうと守らなければならないもの。個人の都合で破ることは許されないのですから」
セシルは誰よりも嘘をつき慣れている。
上手くいけば家族になるかもしれない相手にでもセシルは平気な顔で嘘をつく。
「ベンフィールド公爵はティーナ・ベルフォルンの発言を信じておられるのですか?」
「はっはっはっは! ありえんよ。あの子は天性の嘘つきだ。虚言癖持ちで、見栄っ張り。現実が見えていない子供の話を誰が信じるものか」
おかしそうに笑うネイサンにセシルは笑顔で頷くが、心の中は違う。疑われているのは間違いないとわかっている。シンディーはどうかわからないが、ネイサンはセシルの言葉を丸々信じてはいないだろう。
「ヴィンセル様は家名をかけて誓ったの。嘘じゃないわ」
「ああ、それも聞いたよ。彼は立派だね」
その笑顔はセシルもよく知る笑顔。彼も天性の嘘つきだと感じたセシルはまるで鏡を見ている気分だった。
「アッシュバートン伯爵はとても真面目な人だ。いくら息子が心配でも銃の所持を許可することはないだろう。持たせるには代償が大きすぎるからな」
「そうですね」
「私も持てるなら持ちたいものだ」
「ベンフィールド公爵ならお似合いになるでしょうね」
「そうかい? お気に入りの銃があるんだ。だが持つ機会もなくてね」
「銃好きにとっては辛いですよね」
「そうなんだ! わかってくれるか! シンディーやアリスに話しても理解してもらえないんだ」
「物騒な物を好むあなたを理解する日は一生こないわ」
呆れたように言い放つシンディーに笑いながらセシルはアリスを見た。なんだろうかと首を傾げるアリスに首を振ってからネイサンに顔を戻す。
「アリスは狩りに行かないんですよね」
「十歳までは行っていたんだが、自分で獲物を仕留めた日から行かなくなってしまったんだよ」
「命を奪うことを競技にするのは悪趣味です」
「崇高な趣味だよ」
「悪趣味です」
「十歳で獲物を仕留めたの? すごいな」
「それも一発でだ」
「すごい! アリスすごいよ!」
喜べる話ではないとアリスは首を振る。
アリスにとって狩りは崇高なものではなく悪趣味なものでしかない。
狩りをして生きている部族の話ならわかる。そうすることで命を繋いでいるのなら食物連鎖として成り立っているから。
だが、貴族がしているのは生きるためではなく自分の虚栄心を満たすため。そこで生きている動物に向けて銃を構え、放った一発で命を奪うか怪我をさせる。恐怖に怯えて逃げる獲物を追いかけて仕留める。
もし自分が同じ目に遭ったらと考えないのだろうかと幾度となく疑問に思うが、考えないから狩猟大会など開催するのだと呆れている。
アリスにとって狩りは嫌悪する行為でしかなく、命を奪ったあの日からもう二度としないと決めたのだ。
「セシル様、お時間でございます」
「え、もうそんな時間? うわっ、本当だ」
ポケットから懐中時計を取り出して時間を確認すると約束の時間になっていた。
ティーナについて聞きたいことがあったが、サロンで聞いたほうがいいかとゆっくり立ち上がった。
「本日はお招きいただきありがとうございました。とても有意義な一日となりました」
「君なら大歓迎だよ」
「そうね。今後もアリスと仲良くしてあげて」
「ありがとうございます」
二人に感謝の意を唱えるとセシルは馬車に向かう。
あんなに青々としていた空がいつの間にか黄昏に染まり、自宅へと向かう間に闇に染まりそうだとセシルは空を見上げる。
「ん?」
馬車の向こうの門の所で誰かがこちらを覗き込んでいることに気付いたセシルはそれが誰なのかすぐにわかった。
「リオ・アンダーソンじゃないか」
「……セシル・アッシュバートン」
セシルの存在には気付いていたのか、顔を見ると驚きはせず、眉を寄せて睨みつける。
「そんな所で何してるの? ストーカーみたいだけど、まさかアリスを待ち伏せしてたとか?」
「ちげーよ! なんで俺がアリスのストーカーしなきゃいけねんだよ!」
「そうだよね、アリスとは真逆のタイプが好きなんだもんね」
「そうだよ! だったらなんだよ! つーかテメーはいつまで居座ってんだ! 迷惑だろうが!」
「それは僕の勝手だろ」
「勝手じゃねーよ!」
「たとえ勝手じゃなかったとしても君には関係ないことだ」
「ぐぅッ!」
アリスとセシルは仲が良い。セシルはアリスに好意があるし、アリスはセシルにランチを作る。それだけでも家に呼ぶ理由としては充分だ。
リオは幼馴染といえどカイルに敷居を跨ぐなと言われている。だから門からこっちには入ることもできない。
この時点で優劣は決まっていると勝ち誇った顔を見せるセシルにリオは更に不快感を強めた表情を見せる。
「リオ君?」
一緒に見送りに来たネイサンがリオに気付いて声をかけた。ビクッと肩を跳ねさせてネイサンに視線をやると顔だけ出していたのを身体ごと出して頭を下げる。
「お久しぶりです、ベンフィールド公爵」
「立派になったね。こんなに大きくなるとは、アンダーソン子爵も驚いているだろう」
「背ばかり成長しても意味がないと言ってます」
「はっはっはっ! 彼らしいね。だが大きくなるのは良いことだ。うちのカイルより大きくなってるじゃないか」
「いやでも、カイルとは全然、ホントに背だけ伸びただけなんで」
腰の低いリオを見るのは初めてで、セシルは目を疑った。
転入してきてから横柄な態度しか見せなかったリオはネイサン相手だとこうなるのかと驚きを隠せない。
苦笑しながら頭を掻くリオはセシルがいることなど忘れてネイサンを見ていた。
「アンダーソン夫人のことは残念だったね」
「覚悟はしてたんで」
「え……?」
驚いた声を漏らすアリスに「ああ」と呟いてからネイサンがアリスの髪を撫でる。
「言ってなかったか。アンダーソン夫人は一ヶ月前、病に倒れて亡くなったんだ」
「そんな……どうして……」
「半年ぐらい前から悪くなってたんだ──」
「違う! どうして言わなかったの!?」
「え? あ、いや、だって、言っても仕方ないだろ」
そっちかと怒っている理由に納得するも、リオは寂しげな表情を浮かべるでもなく眉を下げて答えるだけ。
「仕方なくない!」
大声を出すアリスにリオが瞬きを繰り返す。
「仕方なくないんだよ、リオちゃん」
少しも寂しさや悲しさなど見せなかったため気付かなかった。
アリスはリオの母親のことは好きだった。
ある日、リオの母親は『アリスちゃんのことが大好きで、本当はちゃんと話しかけたいのに恥ずかしくて素直になれないの。もう二度としないようにキツく言い聞かせておくから』と言って困った顔を見せた。その翌日、リオは頬がりんごのようにに真っ赤に腫れていた。理由を聞くと『お前がチクったせいでこんな目に遭った』と。言い聞かせるだけでは済まなかったことに思わず笑った日もあった。
エレメンタリースクールの卒業式、初めて彼女が泣いた姿を見た。アリスは捻挫をしたわけではないし、頭を打ったわけでもない。酷い目に遭ったのはリオのほうなのに彼女は夫と共にその場で土下座して何十回も謝り続けた。それは貴族としては正しい行為で、親としては間違っているように見えた。
何が正しいのかアリスにはわからなかったが、それからアンダーソン一家は国外へ行ってしまったため会うことはなかった。
あの笑顔にもう二度と会えないのだと思うとアリスの目に涙が滲む。
「私に言ったところで時間は戻せないし、リオちゃんの辛さを全部取ってあげることはできないかもしれないけど、言ってよ……。帰ってきた理由ぐらい、ちゃんと言って」
両手を伸ばして高い位置にあるリオの頬を挟むとリオがその手に触れる。
きっと寂しいとか悲しいとか、リオは言わない。言えと言っても言わないだろう。だから強要したりはしない。それでも、彼が一人で抱えているだろう辛さを共有することはできる。
リオを許すつもりだとカイルからは聞いていなかったのに帰ってきた時点で何かあると気付くべきだったとアリスはギュッと目を閉じた。
「泣き虫のくせに」
「はあ? いつの話してんだよ!」
「変わったの?」
「当たり前だろ! 泣いたりしねぇよ! つーか別に泣き虫じゃねぇし!」
「嘘ばっかり。リオちゃんの泣き虫が変わるわけないもの」
「変わったんだよ! つか、泣き虫じゃねぇって言ってんだろ!」
二人の言い合いにネイサンとシンディーが笑う。それをセシルは表情にこそ出さないものの、つまらなく感じていた。
今日のゲストは自分で、シンディーからはアリス攻略の許可ももらった。
ヴィンセルはアリスのほうが距離を取っているし、カイルさえ邪魔をしなければアリスを狙うのは自分だけだと思っていたのに、リオの存在に危惧する。
リオがいると新参者は自分になってしまう。
二人はカイルほどリオを嫌ってはいないらしく、アリスが触れても何も言わない。それが一番厄介だと思った。
爵位こそ自分のほうが上でもシンディーは爵位など気にしないと言った。それは伯爵ではなく子爵でもいいということ。
(邪魔だな)
心の中で呟いたセシルはここで悪あがきはせずに良い印象を残して帰ることにした。
「では僕はこれで失礼させていただきます」
「狩猟大会、楽しみにしているよ」
振り向いたネイサンが馬車に寄って手を差し出す。その手をしっかり握って「会場でお会いできるのを楽しみにしています」と言葉を返すと馬車に乗り込んだ。
「アリス、また明日」
「お気をつけて」
微笑みながら手を振ると馬車はアッシュバートン邸へと走り出した。
「リオ君、上がっていくかい?」
「あー……いや、帰ります。あんま遅くなると親父が心配するから」
「そうだね。今は傍にいてあげるといい。また二人を食事に招待するよ」
「ありがとうございます」
頭を下げるリオから手を離そうとしたアリスを逃さないように細い腕を握ったままアリスを見下ろす。
「リオちゃん?」
「お前今日、オシャレしたのか?」
「え? あ、う、うん。だってお客様来るから」
「毎日学校で会ってる奴だろ。オシャレする必要あんのかよ」
「一応だもの」
「ふーん。セシル・アッシュバートンなんかのためにする必要なんかねぇだろうによ。大体お前がオシャレなんかしたって──」
不必要な言葉ばかり飛び出していることに気付いたのはアリスの表情が変わったから。
「似合ってない?」
アリスが自分の容姿に自信がないことは知っている。それはブスだと言い続けた自分のせいだとリオは思っている。
成長したのは背だけと父親に言われる度に悔しかったが、今していることはあの頃と何も変わっていない。
リオは一度唇を結んでからゆっくりと口を開いた。
「か……かわ……か、わ……」
「川?」
どんどん赤くなっていくリオの顔にネイサンとシンディーが横を向いて肩を揺らす。
「か、かわ、かわ……変わってねぇなぁ!」
「え?」
「体型とか背とか全部! 俺はこんなに背が伸びたのにお前はエレメンタリースクールから全然成長してねぇじゃん! 笑うわ! はっはっはっはっはっはっ!」
飛び出した言葉は言おうと覚悟を決めたものとは正反対のもので、リオはワザとらしい笑い声を上げながら心の中で泣いていた。
「リオちゃん」
「あ? んだよ。事実だ──」
「耳まで真っ赤──キャッ!」
掴まれたままの手を少し動かして耳に触れるとビビビビビッと電気が走ったように身体を震わせたリオがアリスを突き飛ばし、真っ赤な顔で耳を押さえる。
「いたた……突き飛ばすことないじゃない!」
「お、おおおおおお前が急に触るからだろ! このヘンタイ!」
「ヘ、ヘンタイって……」
「お、女が自分から男に触るってヘンタイだろ!」
両親がそこに揃っていることに忘れ、アリスを変態呼ばわりするリオの顔は空を染める夕日よりも真っ赤に染まっている。
「リオちゃん嫌い!」
「そ、そうかよ! 俺だってお前なんかきら、好きじゃねぇし! ヘンタイに触られたから耳洗いに帰る!」
逃げるようにして走り去ったリオにネイサンとシンディーは堪えきれず声を上げて笑う。
何も面白いことなんてなかったと拗ねるアリスは差し出されたネイサンの手を取って立ち上がり、土埃を払った。
「なんにも変わってないのはリオちゃんのほうよ」
「ふふふふふっ、そうね」
「さ、中に入ろうか」
カイルが見ていなくてよかったと両親は安堵し、変わっていない愛らしさを微笑ましく思っていた。
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