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番外編
アイザック・フォン・ランベリーローズ3
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「デイミアン皇帝陛下、またお会いできる日を楽しみにしております」
「そうだな」
フッと笑ったデイミアンが視線を向けた先にいるのはアイザックではなくノーラ。
ノーラは夫が横にいるからか、特別な反応は見せず伏せ目がちで微笑んでいるだけ。
「おい、愚息はどうした」
「馬車の中におられます」
「呼べ」
「それが、陛下がお戻りになられる前にお呼びしたのですが拒否されまして……」
「可愛げのないクソガキが」
舌打ちをして暴言を吐く皇帝に付き添いの騎士は怯えている。
自分たちは一応呼んだというスタンスを見せておくことで自分が役立たずではないことをアピールしたのだ。
「また来る」
頭を下げようとするノーラの頬に手を伸ばして撫でると軽く耳の形をなぞるように指先を這わせてはそのまま顔の輪郭に滑らせて手を離した。
アイザックには何も言わないまま帰っていくその背中をアイザックは忌々しげに睨みつける。
「随分と楽しげだったな。お前の下品な嬌声が国中に響き渡っていたぞ」
「やめてください」
「知り合いか」
「昔の知り合いです」
部屋に戻った途端に見せる表情からアイザックが怒っていることはノーラにもわかっていた。
国中というあまりにもオーバーな言い方をするアイザックに淡々とした答え方をするノーラがアイザックは気に入らない。
「アイツを愛しているのか? そうなんだろ?」
「私が愛しているのはあなただけです」
カッとなったアイザックがノーラの頬を片手で掴んで力を入れる。
今まで一度だってされたことのない行為が与える痛みにノーラの顔が歪む。
「やめてください!」
「本当のことを言え!」
「違います! あなたは勘違いしています! 私が愛しているのは──キャッ!」
否定するノーラがアイザックの手を掴んで離させようともがいている。
それを乱暴に離すとノーラが顔を上げた瞬間、思いきり頬へと平手打ちをした。
強烈な音と共に感じた衝撃にノーラは耳が鳴らすキーンッという音に支配される。
他の音が聞こえない。聞こえるのは甲高いその音だけ。
目の前でアイザックが何か叫んでいるように見えるが何を言っているのかわからない。
「聞いているのか!」
「ッ! やめてくださいッ! あなたッ! 落ち着いてくださいッ!」
ようやく聞こえるようになった直後、もはや叫び声に近い音量で怒鳴っていたアイザックが返事をしないノーラの髪を掴んだ。
自分が平手打ちをしたせいで床に倒れていたというのにアイザックはそれを見て我に戻ることはなく、怒りに支配されたまま怒鳴り続ける。
「いい歳してまだ男に媚びるのか! いつまで娼婦気分でいるつもりだ! 娼婦に戻りたいのか!? 今更お前のような年増を拾ってくれる男がどこにいるッ! 今のお前に女としての価値はもうないんだよ! どいつもこいつも恥を知れ!!」
アイザックの怒りは頂点に達していた。
結婚してから今までずっとノーラの愛情を感じていた。それは間違いない。
だが、今日わかってしまった。ノーラが愛しているのは自分ではなくデイミアン皇帝なのだと。
デイアミンが向けていた瞳に込められた感情。ノーラは王妃として接していたつもりだろうが、その瞳に宿る感情だけは隠しきれていなかった。
そこにあったのは愛だった。愛し合う者同士が見つめ合うその空間に立ち会ったアイザックはまるで自分が邪魔者であるかのように感じてしまった。
それがまたアイザックを苛立たせている。
「お前がミュゲットにばかり愛を注ぐのはそれが理由か。ミュゲットを見ているとアイツを思い出すんだろうからだろう!」
「違います! 私はミュゲットのこともフランのことも平等に愛しているつもりです!」
「平等だと? ハッ、笑わせるな! お前はミュゲットしか見ていないんだよ! ミュゲットだけを愛しているんだよ!」
「違います!」
「黙れッ!」
アイザックはミュゲットを引き取ってからなぜだかわからない苛立ちに苛まれていた。
ノーラがミュゲットを『色白で可愛い』と褒めると決まって苛立ちが込み上げてくる。
ずっと、自分の妹を娘として育てなければならないことへの苛立ちかと思っていた。母親が身勝手に妊娠した子を自分の娘として育てなければならないことへの苛立ちだと。
だが違った。ミュゲットのあの肌の白さは北国独特のもの。
グラキエス出身の母親とグラキエス出身の男との間にできた子供なのだから色白で当然なのだが、これでようやくわかった。
ミュゲットを見つめるノーラの瞳には自分との子であるフランを見つめるよりずっと慈愛に満ちていた理由──
その肌の白さを見ているとデイミアンを思い出すからだと。
ノーラはミュゲットを通してデイミアンを見ていた。この五年間ずっと。
「だからフローラリアの女はアバズレだというんだ。数多の男に股を開き続けてきたせいで一途になれなくなる。夫がいても満足しないどうしようもないクズ女」
「アイザック聞いて……」
二度叩かれた頬は赤くなっており、口の端は切れて血が滲んでいる。
それでもノーラは説明しようとアイザックのズボンを掴むも乱暴に振り払われてしまう。
「なんだ? 皇帝の次は俺に縋り付くつもりか? お前のたるんだ身体に今更価値なんてない。俺を誘惑しようとしても無駄だぞ。お前の汚れきった身体には二度と触れるつもりはない。お前を抱くぐらいなら外に出て若い女を抱いたほうがマシだ」
アイザックの中で愛情が冷めた瞬間だった。
「お前や母さんの血を引く娘二人もいずれお前たちと同じ道を辿ることになるんだろうな。この腐った国のルールに染まって汚れた女になる。ハッハッハッ! 全く、男が産まなかったお前は王妃としても価値がない。役立たずのアバズレだ」
あまりにも酷い言葉をぶつけるアイザックにノーラは涙を流すこともできなかった。
張り裂けそうなほど心は傷ついているが、それはアイザックも同じなのだとわかっているから言い返せなかった。
腫れてきた頬が痛い。だが、拳で殴られなかっただけまだマシなのかもしれないと変に冷静だった。
アイザックは昔から少しヒステリーな部分があった。
何かあれば大声を出して暴れる。
エレノアが妊娠したことも何も恥ずかしいことではない。不倫の末にできた子供ではなく、夫が死んでから六年も経ってからできた子だ。
それをアイザックは恥を知れと罵り、追放した。
この国の母を廃妃にしてしまったのだ。
アイザックは一度怒ると手がつけられないと知っていた。だからこの暴力もノーラは驚かなかった。
「私のことはもう愛してくださらなくて結構です。でも、子供たちの前でだけは仮面をかぶってでも子供たちが笑顔でいられる仲の良い夫婦でいてください」
「ならその顔は転んでぶつけたということにしておけ」
それから二人は子供たちがいるとき以外、一緒に過ごすことはなくなった。
子供たちの前では笑顔の仮面をかぶってまるで台本でもあるかのように嘘の愛を囁き合い、仲良しの夫婦を演じた。
それは子供たちが成長しても続いた。
「パパとママっていつも仲良しね。子供の前で恥ずかしくないの?」
「愛し合うってこういうことなんだよ。見てみろ、ママは美人だろ? フローラリアで一番、いや、大陸一の美女だぞ。愛さないでいられると思うか?」
「やだもうパパったら。パパだってこの大陸で一番の男前よ。顔も良くて賢くて優しい王様なんてどこを探してもいないわ。家族を一番に考えてくれるパパには誰も勝てないんだから」
「あーもうはいはい。イチャつくなら奥のベッドでドーゾ」
呆れたように手を振るフランを見て二人は笑顔の仮面を向かい合わせて抱き合う。
そこには微塵の愛もなく、あるのは子供たちのために作られた嘘の関係。
「……そういうことか……」
娘たちが十四歳になった頃、アイザックは一枚の紙を見つめながら肩を揺らして笑いだす。
外にまで響くほどの高笑いを発し、それがあまりにも大きく長いことを使用人たちは心配していた。
これを境にアイザックは更に変わっていく。
フローラリアの王としても、ノーラの夫としても、二人娘の父親としても──……
「そうだな」
フッと笑ったデイミアンが視線を向けた先にいるのはアイザックではなくノーラ。
ノーラは夫が横にいるからか、特別な反応は見せず伏せ目がちで微笑んでいるだけ。
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「それが、陛下がお戻りになられる前にお呼びしたのですが拒否されまして……」
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舌打ちをして暴言を吐く皇帝に付き添いの騎士は怯えている。
自分たちは一応呼んだというスタンスを見せておくことで自分が役立たずではないことをアピールしたのだ。
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頭を下げようとするノーラの頬に手を伸ばして撫でると軽く耳の形をなぞるように指先を這わせてはそのまま顔の輪郭に滑らせて手を離した。
アイザックには何も言わないまま帰っていくその背中をアイザックは忌々しげに睨みつける。
「随分と楽しげだったな。お前の下品な嬌声が国中に響き渡っていたぞ」
「やめてください」
「知り合いか」
「昔の知り合いです」
部屋に戻った途端に見せる表情からアイザックが怒っていることはノーラにもわかっていた。
国中というあまりにもオーバーな言い方をするアイザックに淡々とした答え方をするノーラがアイザックは気に入らない。
「アイツを愛しているのか? そうなんだろ?」
「私が愛しているのはあなただけです」
カッとなったアイザックがノーラの頬を片手で掴んで力を入れる。
今まで一度だってされたことのない行為が与える痛みにノーラの顔が歪む。
「やめてください!」
「本当のことを言え!」
「違います! あなたは勘違いしています! 私が愛しているのは──キャッ!」
否定するノーラがアイザックの手を掴んで離させようともがいている。
それを乱暴に離すとノーラが顔を上げた瞬間、思いきり頬へと平手打ちをした。
強烈な音と共に感じた衝撃にノーラは耳が鳴らすキーンッという音に支配される。
他の音が聞こえない。聞こえるのは甲高いその音だけ。
目の前でアイザックが何か叫んでいるように見えるが何を言っているのかわからない。
「聞いているのか!」
「ッ! やめてくださいッ! あなたッ! 落ち着いてくださいッ!」
ようやく聞こえるようになった直後、もはや叫び声に近い音量で怒鳴っていたアイザックが返事をしないノーラの髪を掴んだ。
自分が平手打ちをしたせいで床に倒れていたというのにアイザックはそれを見て我に戻ることはなく、怒りに支配されたまま怒鳴り続ける。
「いい歳してまだ男に媚びるのか! いつまで娼婦気分でいるつもりだ! 娼婦に戻りたいのか!? 今更お前のような年増を拾ってくれる男がどこにいるッ! 今のお前に女としての価値はもうないんだよ! どいつもこいつも恥を知れ!!」
アイザックの怒りは頂点に達していた。
結婚してから今までずっとノーラの愛情を感じていた。それは間違いない。
だが、今日わかってしまった。ノーラが愛しているのは自分ではなくデイミアン皇帝なのだと。
デイアミンが向けていた瞳に込められた感情。ノーラは王妃として接していたつもりだろうが、その瞳に宿る感情だけは隠しきれていなかった。
そこにあったのは愛だった。愛し合う者同士が見つめ合うその空間に立ち会ったアイザックはまるで自分が邪魔者であるかのように感じてしまった。
それがまたアイザックを苛立たせている。
「お前がミュゲットにばかり愛を注ぐのはそれが理由か。ミュゲットを見ているとアイツを思い出すんだろうからだろう!」
「違います! 私はミュゲットのこともフランのことも平等に愛しているつもりです!」
「平等だと? ハッ、笑わせるな! お前はミュゲットしか見ていないんだよ! ミュゲットだけを愛しているんだよ!」
「違います!」
「黙れッ!」
アイザックはミュゲットを引き取ってからなぜだかわからない苛立ちに苛まれていた。
ノーラがミュゲットを『色白で可愛い』と褒めると決まって苛立ちが込み上げてくる。
ずっと、自分の妹を娘として育てなければならないことへの苛立ちかと思っていた。母親が身勝手に妊娠した子を自分の娘として育てなければならないことへの苛立ちだと。
だが違った。ミュゲットのあの肌の白さは北国独特のもの。
グラキエス出身の母親とグラキエス出身の男との間にできた子供なのだから色白で当然なのだが、これでようやくわかった。
ミュゲットを見つめるノーラの瞳には自分との子であるフランを見つめるよりずっと慈愛に満ちていた理由──
その肌の白さを見ているとデイミアンを思い出すからだと。
ノーラはミュゲットを通してデイミアンを見ていた。この五年間ずっと。
「だからフローラリアの女はアバズレだというんだ。数多の男に股を開き続けてきたせいで一途になれなくなる。夫がいても満足しないどうしようもないクズ女」
「アイザック聞いて……」
二度叩かれた頬は赤くなっており、口の端は切れて血が滲んでいる。
それでもノーラは説明しようとアイザックのズボンを掴むも乱暴に振り払われてしまう。
「なんだ? 皇帝の次は俺に縋り付くつもりか? お前のたるんだ身体に今更価値なんてない。俺を誘惑しようとしても無駄だぞ。お前の汚れきった身体には二度と触れるつもりはない。お前を抱くぐらいなら外に出て若い女を抱いたほうがマシだ」
アイザックの中で愛情が冷めた瞬間だった。
「お前や母さんの血を引く娘二人もいずれお前たちと同じ道を辿ることになるんだろうな。この腐った国のルールに染まって汚れた女になる。ハッハッハッ! 全く、男が産まなかったお前は王妃としても価値がない。役立たずのアバズレだ」
あまりにも酷い言葉をぶつけるアイザックにノーラは涙を流すこともできなかった。
張り裂けそうなほど心は傷ついているが、それはアイザックも同じなのだとわかっているから言い返せなかった。
腫れてきた頬が痛い。だが、拳で殴られなかっただけまだマシなのかもしれないと変に冷静だった。
アイザックは昔から少しヒステリーな部分があった。
何かあれば大声を出して暴れる。
エレノアが妊娠したことも何も恥ずかしいことではない。不倫の末にできた子供ではなく、夫が死んでから六年も経ってからできた子だ。
それをアイザックは恥を知れと罵り、追放した。
この国の母を廃妃にしてしまったのだ。
アイザックは一度怒ると手がつけられないと知っていた。だからこの暴力もノーラは驚かなかった。
「私のことはもう愛してくださらなくて結構です。でも、子供たちの前でだけは仮面をかぶってでも子供たちが笑顔でいられる仲の良い夫婦でいてください」
「ならその顔は転んでぶつけたということにしておけ」
それから二人は子供たちがいるとき以外、一緒に過ごすことはなくなった。
子供たちの前では笑顔の仮面をかぶってまるで台本でもあるかのように嘘の愛を囁き合い、仲良しの夫婦を演じた。
それは子供たちが成長しても続いた。
「パパとママっていつも仲良しね。子供の前で恥ずかしくないの?」
「愛し合うってこういうことなんだよ。見てみろ、ママは美人だろ? フローラリアで一番、いや、大陸一の美女だぞ。愛さないでいられると思うか?」
「やだもうパパったら。パパだってこの大陸で一番の男前よ。顔も良くて賢くて優しい王様なんてどこを探してもいないわ。家族を一番に考えてくれるパパには誰も勝てないんだから」
「あーもうはいはい。イチャつくなら奥のベッドでドーゾ」
呆れたように手を振るフランを見て二人は笑顔の仮面を向かい合わせて抱き合う。
そこには微塵の愛もなく、あるのは子供たちのために作られた嘘の関係。
「……そういうことか……」
娘たちが十四歳になった頃、アイザックは一枚の紙を見つめながら肩を揺らして笑いだす。
外にまで響くほどの高笑いを発し、それがあまりにも大きく長いことを使用人たちは心配していた。
これを境にアイザックは更に変わっていく。
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