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解を求めて
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「こ、皇帝陛下!」
数名の騎士を連れてフローラリアに向かったアルフローレンス。
到着すると兵士たちは慌てて駆け寄り、目の前で膝をついた。
向かうという連絡は誰も受けていない。誰か何かしでかしたのかと焦る兵士たちにアルフローレンスは目もくれず、城へと向かう。
「へ?」
なんの命令も問いかけもないことに拍子抜けした兵士が顔を上げるとアルフローレンスは誰にも声をかけず一直線に向かっていた。
「なんだ?」
「さあ?」
肩を竦める兵士たちだが、自分たちに害がないならそれでいいと安堵したように息を吐き出して自分たちの立ち位置へと戻っていく。
「さすがフローラリアといったところか」
フローラリアの民を新たに城の管理人としており、一人を書庫へと案内させるとグラキエスの書庫の半分以下ではあったものの並んでいる本のほとんどが植物関連の物だった。
ここで働いていた使用人は全て殺してしまったため主に誰が出入りしていたのか知る人間はいないが、堂々と麻薬関連の本を並べているということは王であるアイザックが主だったのかもしれないと推測しながらそれらの本を全て床に捨て「燃やせ」と指示を出す。
「皇帝陛下、何をお探しですか? 我々は植物についてはどの国よりも知識を持っている自信があります。もしお力になれるのであれば──」
「イヌサフランの毒を解毒したい」
「ああ……陛下……それは……」
その反応だけで解毒薬などないのだとわかる。
この大陸のどこの国よりも知識があると自負している者ですら知らないのであれば書庫でいくら探しても無駄かもしれないと一度手を止めた。
「この書庫にある本に載る全ての植物について答えることはできるか?」
「おおよその植物については」
「全てではないのだな?」
「はい」
「わかった。下がれ」
知らないことがあるのなら探すことは無駄ではないと隅から順に本を開き始めた。
「皇帝陛下、何かお飲み物かお食事をお持ちいたしましょうか?」
空が黄昏に染まる頃、アルフローレンスたちはまだ本を読み漁っていた。
もくじを確認しては開いて捨てての繰り返し。それでも終わらない。
飲まず食わずの状態で時間が過ぎていることに管理人が様子を見に中へと入り、声をかけた。
「余に気を使うな。必要ない」
「陛下、シェスター殿が必ず食事をと」
「……そうだったな。食事を頼む」
「はい!」
嬉しそうに走って出ていく管理人。
アルフローレンスは開いていた本を閉じて床へと落とす。
改めて周りを見て気付いた騎士たちの姿。
「お前たち、その格好は暑くないのか?」
「平気です、陛下」
「グラキエスの騎士はこれぐらいで根を上げるような軟弱者ではありませんから」
兵士と違い、鎧を身につけている騎士の顔からは汗が流れている。当然だ、何時間も重い鎧を身につけながら立ちっぱなしだったのだ。
笑顔を見せてはいるが、疲れていないはずがない。
『あなたが怖くて逆らえないっていうのは変えていかなきゃダメよ。皆の声をちゃんと聞いてあげて』
本当は優しい人だと皆に知ってほしいと何度も訴えていたミュゲットの言葉。
この笑顔もその言葉も自分への忠誠ではなく恐怖心からくる強がりなのだろうと思い、口を開いた。
「その鎧の音が耳障りだ。脱げ」
「はっ!」
慌てて脱ぎ始める騎士たちはそれこそ耳障りだと言われかねない大きな音を立てながら脱いでいく。
鎧の下が汗だくだったことは見ればわかる。噴水にでも落ちたのかと思うほど全身ずぶ濡れで、それが全て汗だと思うとアルフローレンスは思わず眉を寄せた。
「お見苦しい姿で申し訳ございません」
「あとで風呂を借りろ」
「はっ!」
どんな場所であろうとどんな人間が相手であろうと感情は乱さず冷静な判断を心がけ結果を残すのがグラキエスの騎士。
しかし、ここは戦場ではない。皇帝が外に出るから護衛役として同行した騎士たちに負荷をかけることは間違っている。
ミュゲットならきっとそう言うだろうと思った。
だが、どんな言葉をかけていいのかわからないアルフローレンスの言い方に騎士たちは緊張の面持ちで返事を返す。
正しい皇帝の在り方ではないとわかっていても、やり方がわからないのではどうしようもない。
「お前たちは先に風呂と飯を済ませろ」
「陛下より先にいただくことはできません」
「余の名に従えぬと?」
「そ、そうではありません! ただ、ミュゲット王女より仰せつかっているお言葉がございます」
「ミュゲットがなんだと?」
ミュゲットと交流などないはずだと思いながらも自由に歩いていいと言っていた以上、自分の職務中に会ったのか、それともシェスターを伝言役としたのかはわからないが、何を言ったのかと少し声色が低くなるアルフローレンスに騎士たちの緊張が強くなる。
「もし、遠征とかにいくことがあって彼が食事をしなかったりしたら食べるように言ってほしい。先に食べてもらわないと自分たちは罪悪感で食べにくいからと」
「……余計なことを……」
ミュゲットはいつも『好かれなくてもいいけど嫌われないようにすることも大事なの』と言っていた。
アルフローレンスは父親の下にしかついたことがないため気遣いというものがわからない。
彼らがどう感じているのか察することもできないのだ。
「余が先に食べねば食べにくいのか?」
「陛下がお食べになっていないのに我らだけが食べているというのは気が引けます」
聞かなければわからないことはたくさんある。
それをアルフローレンスはミュゲットと過ごすことで初めて知った。
騎士たちも同じなのだと頷き
「余は別の部屋で食べる。お前たちは用意された部屋で食事をとれ。そして風呂だ」
「はっ!」
騎士たちにとってこれは驚きではない。スズランの花を庭に植える手伝いをしたときからアルフローレンスの変化を感じていた。
ミュゲットが言ったから従う。これも立派な変化だとむしろ喜びさえあった。
「では行くか」
アルフローレンスの後をついていく騎士たちは顔を見合わせて嬉しそうに笑っている。
騎士たちは食堂に、アルフローレンスはミュゲットの部屋へと向かった。
「皇帝陛下、お食事はこちらでよろしいでしょうか?」
「ああ。騎士たちの食事が終わる頃、余は既に風呂に入ったと言っておけ」
「よろしいのですか?」
「ああ」
「かしこまりました」
置かれた食事は立派な物だった。だが食べる気にならない。食べるという約束だが、戦場で生きてきたアルフローレンスにとって食事は必ずしも三食必要な物ではなく、数日食べずともそれほど苦しい思いはしない。
「何度か連れて帰ってやればよかったか……」
この景色が好きだと言っていた。暇はあったのだから何度か連れ帰れば喜んだろうに、そんな簡単なことさえしてやろうとはしなかった。
何をすれば喜ぶのか、何をすれば笑うのかまだよくわかっていない。注意されることのほうが多い。
守ってやりたいのに何一つ守れてはいない。
これでは守るためにフローラリアから連れ出したというのがただの建前になってしまう。
「これほど己を情けなく思う日が来るとはな……」
呟きながらテラスの階段から外へと出ていく。
少し歩いてビーチの砂を踏むと小さく音が鳴った。
静かな夜。
ここはミュゲットと出会った場所。小さな身体をそこの茂みに突っ込んでリスを眺めていた。
「シーポティリ、だったか」
浜辺に落ちている石を拾い上げると甦る思い出。
それを月にかざすだけでまるでここで何年も何重にも重ねた思い出があるように色濃く思い出せる。
たった一度、会っただけなのにアルフローレンスはここが忘れられなかった。ここで出会った幼い少女を恋しく思っていた。
ずっと気にかけていたが、会いに行くことさえできず、アイザックからの婚約話にイエスと返答もできなかった臆病な自分。
あのときイエスと答えていればミュゲットはちゃんと向き合おうとしてくれただろう。フローラリアを支配せずに済んだはず。
だが、それと同時にフローラリアは腐敗し続ける。いつか用済みだと言われる日が来たかもしれない。
物事には死ぬことでしか止められないこともあることをあるフローレンスは知っている。
血に染まった手で触れることに怯え続けるのならいっそ恨まれようと思った。救い出せるのであれば恨まれてもかまわないと。
恨まれている嫌われていると分かっていても愛することをやめられなかったアルフローレンスにとって、どんな形であれミュゲットが傍にいることは喜びだった。
フランにちゃんとした待遇をしていれば姉を恨まずに済んだのかと考えても無駄で、こうなることを止めるためには自分が許可しなければ済んだ話。
絶望するほどの後悔にアルフローレンスは怒りさえ感じなくなっていた。
「よお、これはこれはお偉い皇帝陛下様じゃねぇか」
砂が鳴る音、近付いてくる足音に顔を向けると見覚えのある顔の男が立っていた。
数名の騎士を連れてフローラリアに向かったアルフローレンス。
到着すると兵士たちは慌てて駆け寄り、目の前で膝をついた。
向かうという連絡は誰も受けていない。誰か何かしでかしたのかと焦る兵士たちにアルフローレンスは目もくれず、城へと向かう。
「へ?」
なんの命令も問いかけもないことに拍子抜けした兵士が顔を上げるとアルフローレンスは誰にも声をかけず一直線に向かっていた。
「なんだ?」
「さあ?」
肩を竦める兵士たちだが、自分たちに害がないならそれでいいと安堵したように息を吐き出して自分たちの立ち位置へと戻っていく。
「さすがフローラリアといったところか」
フローラリアの民を新たに城の管理人としており、一人を書庫へと案内させるとグラキエスの書庫の半分以下ではあったものの並んでいる本のほとんどが植物関連の物だった。
ここで働いていた使用人は全て殺してしまったため主に誰が出入りしていたのか知る人間はいないが、堂々と麻薬関連の本を並べているということは王であるアイザックが主だったのかもしれないと推測しながらそれらの本を全て床に捨て「燃やせ」と指示を出す。
「皇帝陛下、何をお探しですか? 我々は植物についてはどの国よりも知識を持っている自信があります。もしお力になれるのであれば──」
「イヌサフランの毒を解毒したい」
「ああ……陛下……それは……」
その反応だけで解毒薬などないのだとわかる。
この大陸のどこの国よりも知識があると自負している者ですら知らないのであれば書庫でいくら探しても無駄かもしれないと一度手を止めた。
「この書庫にある本に載る全ての植物について答えることはできるか?」
「おおよその植物については」
「全てではないのだな?」
「はい」
「わかった。下がれ」
知らないことがあるのなら探すことは無駄ではないと隅から順に本を開き始めた。
「皇帝陛下、何かお飲み物かお食事をお持ちいたしましょうか?」
空が黄昏に染まる頃、アルフローレンスたちはまだ本を読み漁っていた。
もくじを確認しては開いて捨てての繰り返し。それでも終わらない。
飲まず食わずの状態で時間が過ぎていることに管理人が様子を見に中へと入り、声をかけた。
「余に気を使うな。必要ない」
「陛下、シェスター殿が必ず食事をと」
「……そうだったな。食事を頼む」
「はい!」
嬉しそうに走って出ていく管理人。
アルフローレンスは開いていた本を閉じて床へと落とす。
改めて周りを見て気付いた騎士たちの姿。
「お前たち、その格好は暑くないのか?」
「平気です、陛下」
「グラキエスの騎士はこれぐらいで根を上げるような軟弱者ではありませんから」
兵士と違い、鎧を身につけている騎士の顔からは汗が流れている。当然だ、何時間も重い鎧を身につけながら立ちっぱなしだったのだ。
笑顔を見せてはいるが、疲れていないはずがない。
『あなたが怖くて逆らえないっていうのは変えていかなきゃダメよ。皆の声をちゃんと聞いてあげて』
本当は優しい人だと皆に知ってほしいと何度も訴えていたミュゲットの言葉。
この笑顔もその言葉も自分への忠誠ではなく恐怖心からくる強がりなのだろうと思い、口を開いた。
「その鎧の音が耳障りだ。脱げ」
「はっ!」
慌てて脱ぎ始める騎士たちはそれこそ耳障りだと言われかねない大きな音を立てながら脱いでいく。
鎧の下が汗だくだったことは見ればわかる。噴水にでも落ちたのかと思うほど全身ずぶ濡れで、それが全て汗だと思うとアルフローレンスは思わず眉を寄せた。
「お見苦しい姿で申し訳ございません」
「あとで風呂を借りろ」
「はっ!」
どんな場所であろうとどんな人間が相手であろうと感情は乱さず冷静な判断を心がけ結果を残すのがグラキエスの騎士。
しかし、ここは戦場ではない。皇帝が外に出るから護衛役として同行した騎士たちに負荷をかけることは間違っている。
ミュゲットならきっとそう言うだろうと思った。
だが、どんな言葉をかけていいのかわからないアルフローレンスの言い方に騎士たちは緊張の面持ちで返事を返す。
正しい皇帝の在り方ではないとわかっていても、やり方がわからないのではどうしようもない。
「お前たちは先に風呂と飯を済ませろ」
「陛下より先にいただくことはできません」
「余の名に従えぬと?」
「そ、そうではありません! ただ、ミュゲット王女より仰せつかっているお言葉がございます」
「ミュゲットがなんだと?」
ミュゲットと交流などないはずだと思いながらも自由に歩いていいと言っていた以上、自分の職務中に会ったのか、それともシェスターを伝言役としたのかはわからないが、何を言ったのかと少し声色が低くなるアルフローレンスに騎士たちの緊張が強くなる。
「もし、遠征とかにいくことがあって彼が食事をしなかったりしたら食べるように言ってほしい。先に食べてもらわないと自分たちは罪悪感で食べにくいからと」
「……余計なことを……」
ミュゲットはいつも『好かれなくてもいいけど嫌われないようにすることも大事なの』と言っていた。
アルフローレンスは父親の下にしかついたことがないため気遣いというものがわからない。
彼らがどう感じているのか察することもできないのだ。
「余が先に食べねば食べにくいのか?」
「陛下がお食べになっていないのに我らだけが食べているというのは気が引けます」
聞かなければわからないことはたくさんある。
それをアルフローレンスはミュゲットと過ごすことで初めて知った。
騎士たちも同じなのだと頷き
「余は別の部屋で食べる。お前たちは用意された部屋で食事をとれ。そして風呂だ」
「はっ!」
騎士たちにとってこれは驚きではない。スズランの花を庭に植える手伝いをしたときからアルフローレンスの変化を感じていた。
ミュゲットが言ったから従う。これも立派な変化だとむしろ喜びさえあった。
「では行くか」
アルフローレンスの後をついていく騎士たちは顔を見合わせて嬉しそうに笑っている。
騎士たちは食堂に、アルフローレンスはミュゲットの部屋へと向かった。
「皇帝陛下、お食事はこちらでよろしいでしょうか?」
「ああ。騎士たちの食事が終わる頃、余は既に風呂に入ったと言っておけ」
「よろしいのですか?」
「ああ」
「かしこまりました」
置かれた食事は立派な物だった。だが食べる気にならない。食べるという約束だが、戦場で生きてきたアルフローレンスにとって食事は必ずしも三食必要な物ではなく、数日食べずともそれほど苦しい思いはしない。
「何度か連れて帰ってやればよかったか……」
この景色が好きだと言っていた。暇はあったのだから何度か連れ帰れば喜んだろうに、そんな簡単なことさえしてやろうとはしなかった。
何をすれば喜ぶのか、何をすれば笑うのかまだよくわかっていない。注意されることのほうが多い。
守ってやりたいのに何一つ守れてはいない。
これでは守るためにフローラリアから連れ出したというのがただの建前になってしまう。
「これほど己を情けなく思う日が来るとはな……」
呟きながらテラスの階段から外へと出ていく。
少し歩いてビーチの砂を踏むと小さく音が鳴った。
静かな夜。
ここはミュゲットと出会った場所。小さな身体をそこの茂みに突っ込んでリスを眺めていた。
「シーポティリ、だったか」
浜辺に落ちている石を拾い上げると甦る思い出。
それを月にかざすだけでまるでここで何年も何重にも重ねた思い出があるように色濃く思い出せる。
たった一度、会っただけなのにアルフローレンスはここが忘れられなかった。ここで出会った幼い少女を恋しく思っていた。
ずっと気にかけていたが、会いに行くことさえできず、アイザックからの婚約話にイエスと返答もできなかった臆病な自分。
あのときイエスと答えていればミュゲットはちゃんと向き合おうとしてくれただろう。フローラリアを支配せずに済んだはず。
だが、それと同時にフローラリアは腐敗し続ける。いつか用済みだと言われる日が来たかもしれない。
物事には死ぬことでしか止められないこともあることをあるフローレンスは知っている。
血に染まった手で触れることに怯え続けるのならいっそ恨まれようと思った。救い出せるのであれば恨まれてもかまわないと。
恨まれている嫌われていると分かっていても愛することをやめられなかったアルフローレンスにとって、どんな形であれミュゲットが傍にいることは喜びだった。
フランにちゃんとした待遇をしていれば姉を恨まずに済んだのかと考えても無駄で、こうなることを止めるためには自分が許可しなければ済んだ話。
絶望するほどの後悔にアルフローレンスは怒りさえ感じなくなっていた。
「よお、これはこれはお偉い皇帝陛下様じゃねぇか」
砂が鳴る音、近付いてくる足音に顔を向けると見覚えのある顔の男が立っていた。
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