上 下
10 / 71

父と娘の攻防戦

しおりを挟む
 その日もいつもと変わらない日になるはずだった。
 使用人に起こされ、飽きるほどブラッシングを受け、ヘアセットにメイク、着替えさせてもらったらいつも通りのクラリッサの完成。
 クラリッサは完成された自分よりも寝起きでボサついた頭でぼんやりしている自分の顔のほうが好きだった。人間らしい顔をしていると思うから。
 だが、それはクラリッサが好むクラリッサであってクラリッサ王女ではない。王女は完璧でなければならないのだから。

「ねえ、あなたは恋人に手紙を書いたりするの?」

 クラリッサの唐突な問いかけに使用人は戸惑いを見せない。そして迷うことなくノーと答える。
 これは使用人全員に言い渡されている絶対に守らなければならない国王の命令。

『クラリッサが何かに興味を持っても何も知らないフリをしろ。全てにおいてノーと答えろ』と。

 手紙は書く。書き方だって知っている。なかなか会えない恋人に毎月手紙を送っているが、使用人は表情を変えないまま即答した。

「いいえ、書きません」
「手紙を書くと返事がもらえるんでしょう?」
「必ずとは限りません。返事が来ないことのほうが多いですよ。郵便事故はとても多いんです。出した手紙のほとんどが相手に届かない時代ですから」
「そうなの? それじゃあ手紙を書く意味はないのね? 皆そうなの?」
「はい。手紙のやりとりという時代は終わりました」

 淡々と答えられるとそれが真実なのだと信じてしまう。彼女たちは父親とは違う。尽くしてくれているからこそ信用に値すると信じていた。
 手紙の時代が終わったのなら紙とペンを強請るのは怪しまれる。字を知らない人間が紙とペンを用意してくれなどと言えば父親への報告は待ったなし。
 残念だという言葉は心にしまっておこうとため息を堪えて立ちあがろうとしたクラリッサの耳に届いたノックの音。

「私だ」
「どうぞ」

 クラリッサが立ち上がると同時に椅子が引かれ、横に避けられる。使用人がドアを開けに行き、そこから入ってきた父親を不思議そうな顔で見つめると笑顔が向けられた。

「今日も完璧だな、クラリッサ。お前は本当に美しい。女神カロンの生まれ変わりだな」
「ありがとうございます」

 聞き飽きた言葉に言い飽きた言葉。これも“うんざり”だった。

「支度はできてるみたいだな」

 なんの話かわからないと無言で首を傾げるクラリッサに父親は立てた人差し指を軽く揺らす。

「ほら、レイニアの王子と会う約束だ」

 まるで前々から楽しみにしていた約束であるかのような言い方だが、内容に思わず思いきり眉を寄せた。

「断ってくださいと言ったはずですが?」
「こ、断ろうと思ったんだが時間がなくて断れなかったんだ! いやはや、もう少し時間があれば断れたんだがな!」

 白々しい。十歳のロニーでさえそれが嘘だと見破れるほどの下手くそな演技には嫌悪さえ感じる。
 断れと言ったのは一週間前。充分に時間はあったはず。それなのに父親は断らなかった。あえて。

「……今からでもお断りしてください」
「無茶を言うな! 向こうは遠路遥々やってきてくれるんだぞ! それも船で!」
「私には関係ありません」
「おもてなしぐらいするべきだ!」
「ではお父様だけでどうぞご自由に、精一杯のおもてなしをしてください」

 頑として受け入れようとしない娘に父親の表情が固くなる。
 クラリッサはきょうだいの中で誰よりも理解ある子だと思っていた。渋々だとわかっているが、パーティーに出れば嫌な顔も疲れた顔も見せることなく役目を果たしてくれる優しい子だと。
 その娘がこれほどハッキリとした拒否を見せるのには理由があるとわかっていても、今回ばかりは引くわけはいかないと父親は最終手段に出た。

「クラリッサ、頼む。ここは私の顔を立ててくれ。断ってもいい。いや、断ってくれ。お前の口からズバッと断ってくれていい。結婚する気はないと言うだけでいいんだ! 頼む! 頼むクラリッサ!」

 親が子供に頭を下げるなどあってはならない。貴族は頭を下げない生き物だ。伸びた背中は見せても曲がった背中は見せない。だが、今の父親の背中は怯えた猫のように床の上で丸まっている。頭を下げるどころか、土下座だ。

「……お父様、そのようなことは親がすべきことではありません。お父様のお気持ちは分かりましたから」
「おお、では……ッ!?」

 顔を上げてクラリッサの顔を見て蒼白になった父親にクラリッサは言い放つ。

「土下座をすれば娘は聞かざるを得ないとわかっていて、そういう行動に出たということが」
「ちがっ、これは誠意だよ、クラリッサ! 私なりの誠意なんだ! 断れと言われて断らなかったことを悪いと思っているからするんだ! けして父親がここまでしたのだから娘が聞かないはずがないと思ってしたわけじゃないぞ!」

 ボロボロと本音がこぼれ落ちるのを白い目で見ながらクラリッサは鬼の形相をやめて完璧な笑顔を見せた。

「わかりました」
「おおっ、わかってくれるか! さすがはクラリッサだ! お前は本当に女神だな!」
「いえ、わかったのはお父様が反省しているということです。私はその謝罪を受け入れますと言っているだけですよ、お父様」
「……で、では、出てもらえるな?」
「いいえ、まさか。私には関係ないと言ったはずです」
「クラリッサ、これは大事な食事会なんだ──ヒッ!」

 目の前に落ちたヒールは絨毯のせいで音は鳴りこそしなかったが、勢いだけでもクラリッサの怒りは伝わった。
 ドレスであるためしゃがむことはできない。だからクラリッサは立ったまま父親を見下ろす。機嫌を伺うように視線だけで上目遣いで見てくる父親に言い放った。

「約束はパーティーへの出席だけのはずです。それを違えるとおっしゃるのですね?」
「……わかっているよ、クラリッサ。全ては私の不徳の致すところだ」
「そうですね。では、おもてなしお願いします」

 聞く耳を持たない娘の頑固さに妻の血を強く引いたと父親の顔が歪む。
 ここで諦めるわけにはいかない。相手は王子だけではなく父親である国王もついてくると手紙に書いてあった。他国の王が顔を合わせれば条約について話をすることは避けられないだろう。それにはまずクラリッサの同席がなければ話にならない。二人はモレノスの王に会いに来るのではなく、娘のクラリッサに会いに来るのが目的なのだから。
 そのためには手段を選んではいられない。覚悟を決めた目でクラリッサを見上げた父親も最後の手段に打って出る。

「お前がどうしてもと拒むのなら私はここで床に頭を打ち付けて頭から血を流すぞ」
「……お父様、そういうことはお母様の前でお願いします」

 母親は以前、クラリッサの部屋にやってきて気持ちを話したことがあった。

『子供もたくさん産んだし、エヴァンは跡継ぎとして立派に育ったわ。だからあの人がいつ死のうとどうだっていいの。でも死ぬときの顔は見たいわね。私を子供を産む道具としてしか扱わなかった男が苦しむ最期の姿を見て笑ってやりたいの。できればこの手で首を絞め殺してやりたいけど』

 酔っ払っていたせいで過激な言葉を使ってはいたが、酔っ払っていたからこそ飛び出した本音だろうと思っていた。
 床に頭を打ち付けただけでは人を死なない。それも額を打ち付けただけでは。
 父親は病的なまでに痛みに弱いことを知っている。だから血が出るほど頭を打ち付けるなどできるはずがない。

「お気に入りのカーペットなんです」
「父親が血が流れるほど頭を打ち付けると言っているのにお前が心配するのはカーペットの汚れか!」
「お父様が買ってくださった物ですから大事にしたいんです」

 少し憂いのある表情を作ったクラリッサに父親の表情が心動かされたように変わる。親さえも騙されてしまうのを見ているとクラリッサもなんだか複雑な心境だった。
 
「お母様を呼んできてくれる?」
「呼ぶんじゃない! お前の母親の甲高い笑い声を聞くと頭が痛くなる!」

 夫の失敗ほど愉快なものはないと言いたげに大笑いする姿を何度も見ている。嬉々とした表情を隠そうともしないのだ。淑女にあるまじき「ハッハー!」という甲高い笑い声は屋敷中どこにいても母親だとわかるほど特徴的で、父親はあの笑い声が大嫌いだと知っている。

「私は他国の王子と国王に会った日の夜にパーティーに出席することはしたくありません」
「それは王女の義務だ」
「……なるほど。なるほどなるほど。なるほどなるほどなるほど」
「あああああああああ、違う違う違う違う! 違うぞクラリッサ! 義務ではない! 間違えた!」

 クラリッサが「なるほど」を連呼するときは非常に厄介な感情を抱えているとき。
 三年前の冬、クラリッサの誕生日パーティーの日に父親は上機嫌になりすぎて口を滑らせてしまったことがあった。

『クラリッサ、お前がいれば我が国は安泰だ。大国のブスな王女たちではこれほどのプレゼントは集められないだろう! これは全て私の功績だ! 娘をブスに産んだことを後悔しているだろうな! お前の誕生日は私を喜ばせるためにあるようなものだ!』と。

 会場では気取っていたが、屋敷に戻れば大笑いし始めた父親の発言にクラリッサが言い始めた「なるほど」という単語。そこから質問責めに遭い、完璧な笑顔ではなく嫌な笑顔で固定し、何を話しかけてもその笑顔を崩すことはなかった。やめなさいと言っても、すまなかったと謝っても解除はされず、明確な反省の意を口にするまでまともに会話してすらもらえなかったのだ。
 クラリッサは理解あるいい子。それは変わっていないが、厄介な面も持ち合わせているのだと三年前に知ってから気をつけていたのに焦りで失敗した。

「お前はこの父親の願いを叶えるためにパーティーに出席してくれているんだ。嫌な顔も見せずに大役を果たしてくれること、日々どれだけ感謝しても足りないぐらいお前には感謝しているよ。本当にありがとう」

 明確に言葉にしなければ許されないとわかってからはこうして口にするようになったが、感謝しても足りないと言いながら普段から感謝の言葉は一度もされたことがなく、ありがとうと言われたのはこれが初めてだった。
 だが、クラリッサは許すことにした。父親の失言はもはや天性のものであり、今更直るとは思っていない。

「もういいですよ、お父様。謝ってくださってありがとうございます」
「じゃあ……」
「それとこれとは話が別です」

 父親の期待を空まで蹴り飛ばしたクラリッサは無慈悲にも背を向けた。

「……お前がそこまで頑なに拒否するなら仕方ない……」
「わかっていただけて嬉しいです」
「頭をぶつけて寝込む。遠路遥々やってきてくれるレイニア国の王族に国王も王女も対応しなかったことでモレノスは全てを失うかもしれんが、仕方ない。これもこの国の運命だと民も受け入れてくれるだろう」

 卑怯な言動をさせれば右に出る者はいない。民の名を口にする父親に唇を噛み締めて目を閉じ、ゆっくりと長い息を吐き出してからクラリッサがゆっくりと振り向くと父親は勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
 デイジーが言ったようにパーティーに出る以外、能がないと言えどクラリッサもモレノスの王女。民が犠牲になる可能性があると言われてまで無情にはなれない。

「……お父様……」
「ん? どうした? 私は今から寝込むんだ。お前は出たくないし、それを責めつもりはない。誰も悪くないんだから仕方ないだろう?」

 クラリッサの頭の中では刃物のように鋭い蹴りで何かを飛ばし、それを掴んで思いきり投げて空へと飛ばす。残りは焼却炉に放り込んで燃やしてしまう映像が浮かんでいた。頭の中でもモザイクはかかっているが、全てクラリッサの願望だ。
 実際そうすることはできないため、クラリッサは拳を握りしめて笑顔を作った。

「ではお父様、これからおもてなしに行きますので気絶しない程度に頭を床に思いきり、強く、血が出るぐらい、ぶつけてください。それが終わったら一緒に行きましょうか」

 今は屋敷の中。鑑賞用でいる必要などない。だからクラリッサはあえて挑発を返した。やれるものならやってみろと。
 頬を引き攣らせる父親と余裕の笑みを浮かべるクラリッサ。引くに引けない状態となった二人は、しばらくの間、対峙し続けていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ずっと色黒だと思っていた幼なじみの彼女はダークエルフだと告白された! でもそれがなにか問題あるのかと思っていたら……

ぱぴっぷ
恋愛
幼なじみのエリザとずっと親友以上恋人未満だったシュウ。 そんなある日、シュウの自宅で2人きりになった時にお互いの想いを告白して、晴れて恋人同士になったシュウとエリザ。 だが、ずっと色黒だな~と思っていたエリザはなんと、実はダークエルフだった! エリザはずっとその事を気にしていたみたいだが…… えっ? ダークエルフだから何?と思っていたシュウだが、付き合い始めてからだんだんとその理由に気づき始め…… どんどん暴走するエリザに、タジタジながらもエリザを受け止めるシュウ。 そんな2人のちょっぴりHな甘々イチャラブコメディ! ※1話1500~2000文字でサクサク読めるようにしています。 ※小説家になろうでも投稿しています

人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。 やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。 お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。 初めて投稿します。 書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。 初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 小説家になろう様にも掲載しております。 読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。 新○文庫風に作ったそうです。 気に入っています(╹◡╹)

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

捨てられて視力を失いました。でも安心してください、幸せになりますから!

ミィタソ
恋愛
14歳になったとき、親から話があると言われた。ずっと憧れていたヒイロ・レンブリッツ伯爵と婚約が決まったのだ。 彼に相応しい女性になる。彼の輝くような容姿に並び立つために、自分を磨く。彼を温かく迎えてあげるために、花嫁修行にも力を入れた。 そして、結婚式当日―― 「君と幸せになる未来が見えない。そもそも、僕はこの結婚に反対だったんだ。僕には好きな人がいる。その人となら幸せになれると思う。すまないが、婚約を解消して欲しい」 優しい笑顔を浮かべる彼の横には知らない女性。私なんかよりもずっと可愛く……綺麗で……。 婚約破棄なんて受け入れたくない。でも、理解しなければ。 頭がおかしくなりそうなほどの衝撃で気を失ってしまった私は、目を覚ますと目が見えなくなっていた。 私は婚約破棄されて、盲目になってしまった女。他の貴族の笑い者だ。 そんな私を気遣って、家族は教会で働けるように声をかけてくれた。 貴族社会から離れた私は、目が見えないながらも頑張っていたら――

俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛

ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎 潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。 大学卒業後、海外に留学した。 過去の恋愛にトラウマを抱えていた。 そんな時、気になる女性社員と巡り会う。 八神あやか 村藤コーポレーション社員の四十歳。 過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。 恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。 そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に...... 八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...