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焦り
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「イベリスはまだ見つからないのか!!」
ファーディナンドの怒声が何度響き渡っているかわからない。
直接探しに出たいが、皇帝自ら国中を駆け回って探すわけにはいかない。国はただでさえ混乱に陥っているのだ。そこに皇帝が不安を示す国民を無視して妻を探し回るなどあってはならないとアイゼンから諭され、こうして部屋で報告を待つしかできない自分に苛立っていた。
怒声を張るたびに机に打ちつける手は既に真っ赤になっているが、痛みは感じていない。
「イベリス、どこにいる……!」
今より拒絶されるのが怖くて触れようとしなかったせいだ。拒絶されても触れていれば幻術であることに気付いたのに──押し寄せる後悔に拳を握るたび、爪が食い込んで血が滲む。
騎士団総出で国中を駆け回っているだけでも国民は不安になっているはず。かといって隠密で、などと悠長な指示を出せるはずもなく、混乱の中で更に混乱しながら動いている。
「失礼します!」
飛び込んできたウォルフが獣化を解き、背中から飛び降りたサーシャが手にしていた地図をファーディナンドの机の上に広げた。
「海図?」
どういうことだと表情で訴えるファーディナンドにウォルフがあくまでも可能性であることを前置きとしたが、サーシャが「イベリス様は既に船で移動中です」と確信を持った言い方をした。
「船? イベリスが船に乗った情報があったのか!?」
「いいえ」
「なら──」
「船に乗ったのはイベリス様ではなく聖女です」
おかしな話ではない。船ぐらい乗るだろう。世界中を回っていると聖女は言っていた。陸路で世界横断しているとは言っていない。馬車に乗って港へ向かい、船で次の目的地に行った可能性は考えられない話ではないのに、ファーディナンドの心臓は痛いほど速く動き続けている。
「イベリスの姿はあったのか……?」
「いいえ。ですが、一つだけ任せなかった荷箱があったと人夫から証言を得ました」
港の荷物の多くは人夫に任せることが多い。安い賃金で長時間働かせられる人夫は使い勝手がいいからだ。船で移動する場合、買い込んだ食料や必需品が入った荷箱を人夫たちを使って運び入れるのだが、一つだけ自分たちの手で運んだというのが人夫も引っかかっていたらしい。
割れ物や貴重品であれば多くの者が監視を付けて運ばせる。自ら運び入れるというのは少ない。手のひらサイズであれば話は別だが、荷箱であれば人夫に任せる。
考えられるのはその中に万が一にでも蓋がズレて中身を見られでもしたら大事になるような物が入っていたから。
「その中にイベリスが入っていたと……?」
「あくまでも可能性ですが……」
サーシャの目はそう言ってはいなかった。
「追いかけさせてください」
「どうやって追いかけるつもりだ?」
「私が道を作ります。そのためにはウォルフが必要です」
船を走らせるより凍らせた海の上をウォルフが走ったほうが速いに決まっている。ウォルフだけではダメで、サーシャだけでもダメ。二人で行かなければ見つけられない。
「走れるのか?」
「アイスリンクを磨いたときに走り方は習得済みです」
無駄ではなかったあの長い時間。しっかりと頷くウォルフからサーシャへと視線を移すとファーディナンドも頷いた。迷っている暇はない。一分一秒が惜しい。
「場所はわかっているのか?」
「人夫の話では、聖女はキャラックに乗り込んだと」
「キャラック? キャラベルではなくか?」
「はい」
聖女は贅沢を好まなかった。褒美を与えようとしても拒み、喜びもしなかった。そんな聖女がキャラック船に乗り込んだのは意外だった。
世界中を回っているとは言っていたが、キャラックは長距離航海向き。あちこちの国に行っているのであればキャラベルで充分なはず。何故キャラックを選んだのか。
「聖女の他に何人乗り込んだ?」
「聖女の他に男が五人。あくまでも聖女と共に乗り込んだ男は、と。テロスの人夫たちも同乗しているようです」
怪しまなかったのかと思ったが、聖女の護衛だと思ったのだろうと追求はしなかった。
「キャラックを追います」
一分一秒が惜しいのはサーシャたちも同じ。
「必要な物は全て持っていけ。確認はいらん。俺が許可する」
二人は頭を下げ、獣化したウォルフの背中にサーシャが飛び乗ると部屋を出ようとした二人をファーディナンドが引き留めた。
振り返る二人は目を見開いた。
「イベリスを連れ帰ってくれ」
頭を下げている。あのファーディナンドが。絶対にありえない光景がそこにある驚きに固まるも二人は「必ず」と声を揃え、部屋を出た。
「頼んだぞ」
皇帝とは名ばかりで、何一つ解決することもできない無力な男。だが、何もできないわけではない。このままイベリスが戻ってくるまで頭を抱えているつもりもない。もし、聖女が犯人だとすれば必ず狙いがあるはず。
救世主だと思っていたからタイミングの良さも疑いはしなかったが、犯人となれば見方は変わる。
聖女が滞在する一週間の間で、聖女が発した言葉に幾度か引っかかりを覚えることがあった。完璧な人間はいない。隠しきれないものが出ていたのだ。
もし、何かしら理由を付けて戻ってきたとき、それなりの対応を取らなければならない。テロスは帝国ではあれど、独裁国家ではない。ましてや聖女が犯人だと知らず、今も崇拝している国民は多い。証拠もなく処刑にはできない。城に入ったあと、誰も聖女の姿を見ていないとなれば国民から疑問と不安の声が上がる。
皇帝として対処すべきか、それともイベリスの夫として対処すべきか。
「世継ぎがいれば迷うことはなかったのだがな……」
結婚してすぐに子供ができていれば今頃子供は十歳か十一歳。世継ぎとしての意識を持つには充分すぎる年齢だ。身勝手な考え方ではあるが、任せることもできた。
だが、世継ぎがいない以上は皇帝の座を空けるわけにはいかない。
「あなたがこれからどういう道を歩みたいのか、よく考えた上でご決断ください」
「助言はなしか?」
「テロスの皇帝陛下に一介の使用人が何を助言できることがありましょう」
「あれだけ喧しかったくせに」
「答えは出ているはずです」
「またパフォーマンス呼ばわりか?」
「はい」
自分のしたいことがあればとことんやる。昔からそういう性格だ。
ロベリアを生き返らせるために演技までしてイベリスを嫁に迎えた。彼女の気持ちなど欠片ほども考えず、ただ己の願いを叶えるために行動した。今回も同じだ。
もし聖女が犯人だとしたら国民に一言も反論させないだけの証拠を集めてやる。その上で公開処刑とする。
「あの名前は本名か?」
「本名です。シハーラという砂漠地帯の国出身です」
アイゼンの情報収集能力にはいつも驚かされる。聖女が現れたその日に既に動いていたのだろう。一週間の滞在を良しとしなかったのも『身元がわからない人間を聖女と扱うのは早計かと』と危惧していたほどだ。
ふふッと突然ファーディナンドが笑う。
「部下が優秀なほど君主は無能だと言うが、まさにそのとおりだ」
「誰もがそうです。私にも部下がいて、助けられているのです。それに気付けただけでも進歩です」
アイゼンと自分は全く違う。アイゼンは優秀だからこそ優秀な人材を育て上げている。自分の場合はそうじゃない。部下が優秀だったからその恩恵を受けて皇帝として威厳を見せることができていただけ。
ファーディナンドは勘違いしていたことにようやく気付いた。
「アイゼン」
「はい」
「俺は、イベリスが無事帰ってきたら、イベリスと離婚するつもりだ」
小さくだが、目に力が入ったアイゼンはすぐに目を閉じた。ロベリアのことはいいのか、などと聞くほど野暮ではない。
「一目惚れと嘘をついてまで求婚し、偽りの愛すら注がず、不快な思いをさせ続けた。いや、今もか。詫びて済むことではない問題で傷つけ続けている。此度の誘拐はリンベルにいれば巻き込まれることはなかった。リンウッドも彼女が実家にいればあそこまでおかしくなることはなかった。全ては俺の身勝手さが招いた結果だ」
「陛下……」
「今も俺はイベリスのために何もできていない。せいぜいが聖女への処遇と聖女が犯人であることをこれから調べるぐらいだ。情けない。大事な者の一大事に部下に任せることしかできんような男の妻として生きていい女ではない。もっと幸せになるべきだ」
「よろしいのですか? 愛しているのでしょう?」
「……俺の気持ちなどどうでもいい。今更になって愛しているなどと、どの口が伝える? そんな資格すらないのに。身勝手な人間がイベリスを愛してはならない。だろう?」
あっという間だった八ヶ月。イベリスは苦しみのほうが多かっただろう。希望を見出して結婚した先で愛を受けることなく生きてきた。何故求婚されたのか、すぐに理解したはず。釣った魚に餌は与えないと言い放つぐらいにはひどい扱いをしていた。それでもイベリスは明るかった。笑顔で接してきた。感謝を伝えてくれることもあった。叶えてもらって当たり前というスタンスのない性格と明るさに惹かれたことに気付いたのは遅く、自ら寄れば既に信用を失ったあとだったと気付いた。
だからこそ解放が必要だと思った。失った信用を取り戻すまで努力することは相手を苦しめることになる。
無事にイベリスが戻ればそれでいい。それだけが願いだ。ロベリアを生き返らせる必要はない。イベリスから愛される必要もない。ただ、無事で戻ってほしい。
「シハーラのサルメンハーラ家に手紙を出す。魔法士に届けさせろ」
「かしこまりました」
できることをやろう。イベリスが無事に戻ってきたときのために。
筆を取るファーディナンドを見て、アイゼンは廊下で待機する騎士に魔法士に準備するよう伝えた。
(間に合ってくれ)
海の上を駆けているだろうウォルフとサーシャに向け、神頼みが如く祈っていた。
ファーディナンドの怒声が何度響き渡っているかわからない。
直接探しに出たいが、皇帝自ら国中を駆け回って探すわけにはいかない。国はただでさえ混乱に陥っているのだ。そこに皇帝が不安を示す国民を無視して妻を探し回るなどあってはならないとアイゼンから諭され、こうして部屋で報告を待つしかできない自分に苛立っていた。
怒声を張るたびに机に打ちつける手は既に真っ赤になっているが、痛みは感じていない。
「イベリス、どこにいる……!」
今より拒絶されるのが怖くて触れようとしなかったせいだ。拒絶されても触れていれば幻術であることに気付いたのに──押し寄せる後悔に拳を握るたび、爪が食い込んで血が滲む。
騎士団総出で国中を駆け回っているだけでも国民は不安になっているはず。かといって隠密で、などと悠長な指示を出せるはずもなく、混乱の中で更に混乱しながら動いている。
「失礼します!」
飛び込んできたウォルフが獣化を解き、背中から飛び降りたサーシャが手にしていた地図をファーディナンドの机の上に広げた。
「海図?」
どういうことだと表情で訴えるファーディナンドにウォルフがあくまでも可能性であることを前置きとしたが、サーシャが「イベリス様は既に船で移動中です」と確信を持った言い方をした。
「船? イベリスが船に乗った情報があったのか!?」
「いいえ」
「なら──」
「船に乗ったのはイベリス様ではなく聖女です」
おかしな話ではない。船ぐらい乗るだろう。世界中を回っていると聖女は言っていた。陸路で世界横断しているとは言っていない。馬車に乗って港へ向かい、船で次の目的地に行った可能性は考えられない話ではないのに、ファーディナンドの心臓は痛いほど速く動き続けている。
「イベリスの姿はあったのか……?」
「いいえ。ですが、一つだけ任せなかった荷箱があったと人夫から証言を得ました」
港の荷物の多くは人夫に任せることが多い。安い賃金で長時間働かせられる人夫は使い勝手がいいからだ。船で移動する場合、買い込んだ食料や必需品が入った荷箱を人夫たちを使って運び入れるのだが、一つだけ自分たちの手で運んだというのが人夫も引っかかっていたらしい。
割れ物や貴重品であれば多くの者が監視を付けて運ばせる。自ら運び入れるというのは少ない。手のひらサイズであれば話は別だが、荷箱であれば人夫に任せる。
考えられるのはその中に万が一にでも蓋がズレて中身を見られでもしたら大事になるような物が入っていたから。
「その中にイベリスが入っていたと……?」
「あくまでも可能性ですが……」
サーシャの目はそう言ってはいなかった。
「追いかけさせてください」
「どうやって追いかけるつもりだ?」
「私が道を作ります。そのためにはウォルフが必要です」
船を走らせるより凍らせた海の上をウォルフが走ったほうが速いに決まっている。ウォルフだけではダメで、サーシャだけでもダメ。二人で行かなければ見つけられない。
「走れるのか?」
「アイスリンクを磨いたときに走り方は習得済みです」
無駄ではなかったあの長い時間。しっかりと頷くウォルフからサーシャへと視線を移すとファーディナンドも頷いた。迷っている暇はない。一分一秒が惜しい。
「場所はわかっているのか?」
「人夫の話では、聖女はキャラックに乗り込んだと」
「キャラック? キャラベルではなくか?」
「はい」
聖女は贅沢を好まなかった。褒美を与えようとしても拒み、喜びもしなかった。そんな聖女がキャラック船に乗り込んだのは意外だった。
世界中を回っているとは言っていたが、キャラックは長距離航海向き。あちこちの国に行っているのであればキャラベルで充分なはず。何故キャラックを選んだのか。
「聖女の他に何人乗り込んだ?」
「聖女の他に男が五人。あくまでも聖女と共に乗り込んだ男は、と。テロスの人夫たちも同乗しているようです」
怪しまなかったのかと思ったが、聖女の護衛だと思ったのだろうと追求はしなかった。
「キャラックを追います」
一分一秒が惜しいのはサーシャたちも同じ。
「必要な物は全て持っていけ。確認はいらん。俺が許可する」
二人は頭を下げ、獣化したウォルフの背中にサーシャが飛び乗ると部屋を出ようとした二人をファーディナンドが引き留めた。
振り返る二人は目を見開いた。
「イベリスを連れ帰ってくれ」
頭を下げている。あのファーディナンドが。絶対にありえない光景がそこにある驚きに固まるも二人は「必ず」と声を揃え、部屋を出た。
「頼んだぞ」
皇帝とは名ばかりで、何一つ解決することもできない無力な男。だが、何もできないわけではない。このままイベリスが戻ってくるまで頭を抱えているつもりもない。もし、聖女が犯人だとすれば必ず狙いがあるはず。
救世主だと思っていたからタイミングの良さも疑いはしなかったが、犯人となれば見方は変わる。
聖女が滞在する一週間の間で、聖女が発した言葉に幾度か引っかかりを覚えることがあった。完璧な人間はいない。隠しきれないものが出ていたのだ。
もし、何かしら理由を付けて戻ってきたとき、それなりの対応を取らなければならない。テロスは帝国ではあれど、独裁国家ではない。ましてや聖女が犯人だと知らず、今も崇拝している国民は多い。証拠もなく処刑にはできない。城に入ったあと、誰も聖女の姿を見ていないとなれば国民から疑問と不安の声が上がる。
皇帝として対処すべきか、それともイベリスの夫として対処すべきか。
「世継ぎがいれば迷うことはなかったのだがな……」
結婚してすぐに子供ができていれば今頃子供は十歳か十一歳。世継ぎとしての意識を持つには充分すぎる年齢だ。身勝手な考え方ではあるが、任せることもできた。
だが、世継ぎがいない以上は皇帝の座を空けるわけにはいかない。
「あなたがこれからどういう道を歩みたいのか、よく考えた上でご決断ください」
「助言はなしか?」
「テロスの皇帝陛下に一介の使用人が何を助言できることがありましょう」
「あれだけ喧しかったくせに」
「答えは出ているはずです」
「またパフォーマンス呼ばわりか?」
「はい」
自分のしたいことがあればとことんやる。昔からそういう性格だ。
ロベリアを生き返らせるために演技までしてイベリスを嫁に迎えた。彼女の気持ちなど欠片ほども考えず、ただ己の願いを叶えるために行動した。今回も同じだ。
もし聖女が犯人だとしたら国民に一言も反論させないだけの証拠を集めてやる。その上で公開処刑とする。
「あの名前は本名か?」
「本名です。シハーラという砂漠地帯の国出身です」
アイゼンの情報収集能力にはいつも驚かされる。聖女が現れたその日に既に動いていたのだろう。一週間の滞在を良しとしなかったのも『身元がわからない人間を聖女と扱うのは早計かと』と危惧していたほどだ。
ふふッと突然ファーディナンドが笑う。
「部下が優秀なほど君主は無能だと言うが、まさにそのとおりだ」
「誰もがそうです。私にも部下がいて、助けられているのです。それに気付けただけでも進歩です」
アイゼンと自分は全く違う。アイゼンは優秀だからこそ優秀な人材を育て上げている。自分の場合はそうじゃない。部下が優秀だったからその恩恵を受けて皇帝として威厳を見せることができていただけ。
ファーディナンドは勘違いしていたことにようやく気付いた。
「アイゼン」
「はい」
「俺は、イベリスが無事帰ってきたら、イベリスと離婚するつもりだ」
小さくだが、目に力が入ったアイゼンはすぐに目を閉じた。ロベリアのことはいいのか、などと聞くほど野暮ではない。
「一目惚れと嘘をついてまで求婚し、偽りの愛すら注がず、不快な思いをさせ続けた。いや、今もか。詫びて済むことではない問題で傷つけ続けている。此度の誘拐はリンベルにいれば巻き込まれることはなかった。リンウッドも彼女が実家にいればあそこまでおかしくなることはなかった。全ては俺の身勝手さが招いた結果だ」
「陛下……」
「今も俺はイベリスのために何もできていない。せいぜいが聖女への処遇と聖女が犯人であることをこれから調べるぐらいだ。情けない。大事な者の一大事に部下に任せることしかできんような男の妻として生きていい女ではない。もっと幸せになるべきだ」
「よろしいのですか? 愛しているのでしょう?」
「……俺の気持ちなどどうでもいい。今更になって愛しているなどと、どの口が伝える? そんな資格すらないのに。身勝手な人間がイベリスを愛してはならない。だろう?」
あっという間だった八ヶ月。イベリスは苦しみのほうが多かっただろう。希望を見出して結婚した先で愛を受けることなく生きてきた。何故求婚されたのか、すぐに理解したはず。釣った魚に餌は与えないと言い放つぐらいにはひどい扱いをしていた。それでもイベリスは明るかった。笑顔で接してきた。感謝を伝えてくれることもあった。叶えてもらって当たり前というスタンスのない性格と明るさに惹かれたことに気付いたのは遅く、自ら寄れば既に信用を失ったあとだったと気付いた。
だからこそ解放が必要だと思った。失った信用を取り戻すまで努力することは相手を苦しめることになる。
無事にイベリスが戻ればそれでいい。それだけが願いだ。ロベリアを生き返らせる必要はない。イベリスから愛される必要もない。ただ、無事で戻ってほしい。
「シハーラのサルメンハーラ家に手紙を出す。魔法士に届けさせろ」
「かしこまりました」
できることをやろう。イベリスが無事に戻ってきたときのために。
筆を取るファーディナンドを見て、アイゼンは廊下で待機する騎士に魔法士に準備するよう伝えた。
(間に合ってくれ)
海の上を駆けているだろうウォルフとサーシャに向け、神頼みが如く祈っていた。
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