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敵と味方

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 父親に続いて中に入ってドアを閉じればまだ何も始まっていないのに重く嫌な空気が部屋中に漂っている。

「さっきのはコンラッド王子だな?」
「ええ」

 隠そうとは思わなかった。見ていたからこそ確信した上での確認をする意地の悪さに誤魔化しをして見せたところでムダだとわかっている。
 父親の怒りに満ちた目は雷さえ起こせそうだと思いながら今朝したばかりのネイルに視線を移した。

「お前は何を考えているんだ!」

 時間などおかまいなしに怒鳴り声を散らす父親にそれしか知らないのかと溜息をつく娘がまた気に入らなかった。

「私の今までの努力を台無しにするつもりか!」

 コンラッドには貴族が生き残る大変さを語ったが、父親の努力は認める気にはならなかった。努力してきたのは自分であって父親ではないと無言で睨み付けるティファニーに眉を寄せて手を上げる様子にハッとあえて大きな声で笑った。

「王子はわたくしを気に入ってくださってますの」

 父親の手が止まる。

「わたくしの頬が赤く腫れているのを見れば王子は驚かれるでしょうね」
「お前……」
「誰にやられたと聞かれた時、わたくしの頭の中には二人の人物の名が浮かぶでしょう。お父様か、マリエットか」
「父親を脅すつもりか!」

 どっちの名を出されても父親にとって不利にしかならないのはティファニーもわかっている。
 マリエットに言えばマリエットの父親から叱責を受け、父親の名を出されれば没落だってありえる。
 あのティファニーが自ら「気に入られている」と言うのだから嘘ではない。王子直々に送ってきたのがそれを決定的なものにしている。
 怒りと焦りを滲ませる父親にティファニーは笑みを浮かべる。

「脅す? 何か勘違いされているようですわね、お父様。このヘザリントン家が上がるも下がるもわたくしの努力次第ですの。わたくしの言動一つで決まるのだとご理解いただけますこと?」

 父親はグッと唇を噛みしめる。
 マリエットの父親であるバージルに気に入られるためにアルバートは娘を悪役令嬢になるよう強要してきた。
我が子の個性を奪って、押し付けたものが今、まさか自分にこんな形で返ってくるとは思ってもいなかっただけに、どうすべきか瞬時に判断できなかった。

「お前は父に……」
「お父様、わたくしの努力次第だと言いましたわよね? まだ何かおっしゃるつもりですの?」

 娘の言葉はまるで「お前の努力には何の意味もない」と言っているようなもので、怒りに手が震える。しかし、公爵に気に入られるより王族に気に入られる方が将来性があるのは間違いない。
 このまま上手く行けば娘は王子と婚約し、ゆくゆくは妻となるかもしれない。そうなれば自分は王族の仲間入りでバージルに頭を下げさせることだって出来る。
 我慢だと自分に言い聞かせ、怒りを静めようと大きく息を吐き出した。

「戻りなさい」

 静かな声にティファニーは返事をせず部屋を出ていった。
 そして生まれて初めてガッツポーズをする。

「やりましたわやりましたわやりましたわ! やってやりましたわー!」

 王子の言ったことは正しかった。あの癇癪持ちの父親を黙らせることが出来たのは王子の助言のおかげ。
自分では絶対に思いつかなかった言葉があんなにも効果があるとは。
ティファニーは部屋でバレエダンサーのように回って上機嫌に歌でも歌おうかと思うぐらい気分が良かった。

「ティフィー、入るわよ?」
「アビーお姉様!」
「どうしたの? 今日は機嫌がいいわね。怒られてたんじゃなかったの?」

 長女のアビゲイルがティファニーの大声を聞きつけてやってきた。
 普通のネグリジェであるはずなのに色気が駄々洩れのアビゲイルは妹でさえ視線に困るもので、いつもなら上を羽織るように言うのだが、今回はそんな事はどうでもよかった。今はその豊満な胸に飛び込みたい気持ちにさえなっていた。

「そうなんですの!」
「何があったの? 褒められた?」

 幼子を相手にするように優しく頭を撫でながら聞いてくれるアビゲイル。ティファニーは嬉しさのあまり何度も飛び跳ねながら笑顔を向けた。

「あなたが笑うなんて珍しいわね」
「だって今すごく嬉しいんですの! あのお父様を黙らせてやりましたのよ!」
「あら、すごいじゃない」
「うふふっ、そうでしょう!? 今日初めてお父様に勝ったのですわ!」
「おめでとう」
「ありがとうございます! 今日から連戦連勝でいきますわ!」

 父親に「勝った」「黙らせた」と喜ぶティファニーの本音がそこにある事にアビゲイルは思わず抱きしめた。

「お姉様?」

 アビゲイルはずっとティファニーを可哀相だと思っていた。まだまだ遊びたい盛りの、これから夢を見つけて成長していくであろう年頃にいきなり押し付けられた望まない人生を父親の言う通りに歩いてきた。
 父親が怖いという恐怖があったのはもちろんのこと、家の事を考えて犠牲になってきた。
 本来であれば姉である自分が代わってやらなければならないのにマリエットが望んだのは同じ年頃であるティファニーだった。
 貴族として媚びなくていいと答えていたティファニーだが、そんなはずないとアビゲイルはいつも心の中で否定していた。
 嫌われて平気な者などいるはずがない。自ら望んで一人になっているのならまだしも、やらなければならない事のせいで一人ぼっちになってしまう人生を辛く思わない人間はいない。
 年頃の女の子のように花が咲いたように笑う姿など見た事がなかったアビゲイルにとってこの瞬間は純粋に嬉しくもあり。切なくもあった。
 喜んでいる理由が〝憧れの人と喋った〟とかではなく〝父親を黙らせた〟という異例のものでなのだから。

「ガツンッと言ってやったのね! やるじゃない!」
「これからはお父様にガツンと言ってやるつもりですの!」
「イイ子ね」

 父親は調子の機嫌に左右される人間で、機嫌が悪い時は子供にだって当たり散らし、機嫌が良い時は溺愛のように甘くなる。それに振り回されてきたのはアビゲイルも同じで、父親の事はあまり好いてはいなかった。
 だが逆らうと面倒だったために逆らわなくなっただけで、実際は「うるさい!」と大声で怒鳴ってやりたくなる時も多かった。
 誰よりも父親の性格の犠牲になってきたティファニーが喜ぶのは本当に嬉しかったからだと今の笑顔を見ればわかる。
 つられて嬉しくなってしまう笑顔に頬にキスをするともう一度抱きしめた。

「あ、もしかしてわたくし起こしてしまいました?」
「いいえ、本を読んでいたから大丈夫よ」
「ふふふっ、今日はとっても良い日で追われそうですわ」
「パーティー楽しかったの?」

 姉が髪を撫でる優しい手つきに目を細めるも、パーティーの事を思い出すと表情が死んだ。

「あら、もしかしてイイ男いなかったの?」
「いましたけど……」
「いたの!? どんな子!? 聞かせて聞かせて!」

 アビゲイルにとってパーティーは男を探す場であって社交を楽しむ場ではない。
 父親が見たら卒倒するようなドレスを着てその日の男を探す。外で連れ歩いている男は毎日違い、今思えばコンラッドのようだとティファニーは思った。

「名前は聞いていません」
「名前なんてどうでもいいものね。わかるわ。顔と身体が大事よ」
「顔は爽やかでした」
「爽やかいいわね! 私最近爽やかな人と会ってないの」

 先日見た姉の隣を歩いていた男は大柄で野獣をイメージさせる雰囲気があった。

「どこの人?」
「わかりません」
「あら、ダメよ? 王子だったかもしれないのに」
「自分の友人がマリエットをダンスに誘ったらこっぴどくフられたって聞いてマリエットがどんな性悪女なのか見に来る王子が存在すると?」
「よほど暇ならね」

 第十三王子とかならありえそうだと思いながらも王子の正装ではなかった気がすると服装を思い出そうとするも思い出すのは爽やかな笑顔で、ティファニーの顔が少し赤らむ。

「あらあらあらあら?」
「何ですの?」
「お顔が赤くなってるわよ、子猫ちゃん」
「ッ!? お、お姉様の体温が移ったのですわ!」
「そういう事にしといてあげる」
「本当ですのよ!」

 悪役令嬢というバカげた者になるのに必死で恋どころではなかったティファニー。父親からもマリエットが結婚するまで恋をしてはならないと厳しく言われていたせいで恋を知らないティファニーにとって今回の出会いはそう悪くなかったようでアビゲイルは良い報告をしてもらったと笑顔を見せる。
 何故自分の妹がアビゲイルの犠牲にならなければならないのか、ずっと不満に思ってきたが、恋は一度始まると誰にも止められない。
 全てマリエットと父親の思い通りになるはずがないと小さくガッツポーズをする。

「もし次会えたらお茶に誘いなさい」
「……いいえ、いいんですの」
「三度目はないかもしれないわよ?」
「ええ。でもいいんですの」

 理由はわかっていた。

「寝ちゃうから?」

 返事の代わりに苦笑が返ってくる。何でもない、仕方ないと開き直っているように見えても強がっているだけでコンプレックスなのだと伝わってくる。
 二人きりで恋を紡ぐ始まりとなるお茶会で急に眠ってしまうかもしれないという不安がティファニーを恋から遠ざける。
 父親はティファニーのためではなく、ティファニーが大きな失態を犯す前に直したくて何人もの医者に診せて様々な検査を受けさせてきたが効果はなかった。
 せっかく恋が始まろうとしているのに積極的になれない可哀相な妹にこんな病を与えた神をアビゲイルは恨めしく思った。

「あなたが寝ても目覚めるまで傍に居てくれる王子様がきっと現れるわ」
「……そう、ですわね……」

 アビゲイルが慰めと希望で口にした言葉はコンラッドを思い出させた。ピッタリ当てはまるコンラッドはティファニーが起きるまでいつも傍に居てくれる。キスで目覚めさせられる時もあるが、短かろうと長かろうとコンラッドだけは呆れず嫌味も言わず傍にいてくれている事を思い出し、ティファニーは引き笑いを浮かべる。
 王子は王子だが、遊び人の王子が自分の王子様は嫌だった。

「お姉様は結婚なさらないの?」
「行き遅れって言われても結婚はしないの。女性が男を何人囲ってもふしだらにならないって法律が出来るまではね」

 ———それはきっと一生出来ませんわ、お姉様……。

「右を見ても左を見ても男がいる世界でどうして一人に決めなければいけないのかしら?」
「最愛の人を作るため?」
「全愛でいいじゃない。全員愛してるって感じで」
「相手にしきれないと思いますけど」
「日替わりでいくわ」
「食事じゃないんですのよ?」
「食事よ。ある意味ね」

 綺麗な指が触るぽってりとした色っぽい唇に一体何人の男が蜜に誘われる蜂のように吸い込まれて行ったのだろうかと気になりながらも妹でさえ釘付けになる姉曰くチャームポイントがリップ音を鳴らすと奪われていた意識が現実に引き戻される。

「あなたもいつか大輪を咲かせる日が来るわ」
「わたくしは……眠ってばかりなのでいつまでも蕾でいそうです」
「大丈夫」

 アビゲイルの言葉に迷いはなかった。

「あなたを好きだって言ってくれる王子様が現れたらあなたの病気はきっと良くなる。太陽みたいな王子様があなたを照らして花を咲かせてくれる。笑顔よ。あなたの笑顔とっても可愛いんだから皆好きになるわ」

 自分に自信のないティファニーはそれを素直に受け入れらず苦笑してしまう。
 むせ返りそうな色気を持つ姉は化粧を落としてもこんなに美しいのに、自分は化粧を落としたら平凡な顔つきで、きっと誰もティファニー・ヘザリントンだと気付かないだろう。
 姉達はいつだって輝いているのに自分だけ何故こんなに恵まれなかったのだろうと神を恨んでいるぐらいだ。

「このアビゲイル・ヘザリントンの妹が可愛くないわけないでしょ。あなたが誰よりも優しくて可愛い子だって事は私もパティもよく知ってる。だからあなたを可愛いって言ってくれる王子様は絶対に現れる。大丈夫。自信持ってなんて言わない。勝手に断言するから」

 満面の笑みで両手の親指を立てるアビゲイルにティファニーは何度も救われてきた。
 姉が周りからどういう目で見られているか、何を言われているかを知っていてもティファニーにとっては最高の姉で文句を言う者には必ず制裁を与えてきた。
 この美しい姉を自分のコンプレックスにしてしまう自分がいかに愚かなのか、優しくされていつも思う。

「いつか王子様が現れたら———」

 ポスッと胸に顔を落としたティファニーに目を瞬かせるもアビゲイルはすぐに微笑んで髪を撫でる。

「しょうがないからお化粧落としてあげる」

 化粧も落とさずに寝てしまうなど犯罪だと起こしたいが、無理には起こさない。小さな身体を抱き上げてベッドに運んで寝かせると化粧落としを取りに行く。

「こんなに可愛いのにそれに気付かない男なんて存在してないも同然なんだから気にしなくていいのよ。あなたを受け入れてくれる人だけ全力で大事にすればいいだけ」

 自分がどこでも眠ってしまう病気であったら自信を持てていただろうかとアビゲイルは何度も自問してきた。その度に首を振る。
 生活スタイルが違うというのはもちろんあるが、自分はティファニーよりずっと自由に生きている。
 伯爵令嬢でありながら日々違う男と一緒に過ごすのは貴族内でも批判が多い。

『長女があれじゃあね』
『だから妹もあれなのよ』
『男なら誰でもいいんだって』

 そんな陰口はまるで挨拶のように毎日聞こえてくるが、それは自業自得だからと受け止めている。無関係の人間に何を言われようと自分の生き方を変えるつもりはないと決めている。
 だが、ティファニーは違う。自分の意思に反して眠ってしまうのだから誰かに文句を言われる筋合いなどない。見守ってやるべきなのだ。
 同じ学校にいれば守ってやれるのに、アビゲイルはもう二十歳で学校で守ってやることは出来ない。
 いつだって一人で戦ってきたのだ。
 外で嫌な思いをして、家に帰って父親に叱られ、どこで癒されるのか心配だった。

「必ず王子様が現れるからね」

 穏やかに眠る妹の顔からコットンを離すとおまじないをかけるように額に口付け、優しい声を残して部屋を静かに出ていった。

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