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15話 恋愛証明でお仕事

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皇家の車に揺られ辿り着いたのは、スカイツリーだった。日本のシンボルの一つ……! 
 せっかく日本に来ていたのに、まだ足を運んでいなかったのだ。ナイスチョイス、皇!

「あの人、かっこよくない⁉」
「っていうか、緋王くんに似てない⁉」
「似てる似てる! もしかして、本物⁉」

 えっ⁉ 緋王様⁉
 慌ててあたりを見ると、皇の声が聞こえた。

「キルコさん」

 声の方を見て、はっとした。
 前髪を、緋王様のように真ん中に分け、美しい顔をあらわにした皇……! 白いシャツに、黒いテーラードジャケットで、いつもより大人びて見える……。
 美しさ、マシマシ……! 輝いて見える……! 美…………っ!
 そんな尊い美しき男が、微笑を浮かべながら私の方に近づいてくるのを、周りの人間たちは呆然と眺めていた。

「今日は遅い時間にありがとうございます。それと、今日も綺麗にしてきていただき、ありがとうございます」

 私は何も考えず、黒のミニワンピースをさっと着てきただけだった。髪のセットなりなんなりで時間をかけたのは、皇の方だっただろう。
 皇が、すっと手を差し伸べてきた。

「よければ」

 きゅ――――――ん!
 手の差し伸べ方、微笑み、きゅ――――ん!
 萌え……っ!
 手をつないで歩きだすと、周囲がひそひそ囁き合った。

「あぁ、やっぱり彼女さんかぁ……」
「彼女さんも綺麗~……。モデルかなんか?」
「もしかして、撮影?」
「似てるけどやっぱ緋王くんじゃないっぽいね」
「でも、めっちゃかっこいい~!」

 緋王様のようだと噂されていたのは、皇だったのか。たしかに、髪型が同じだからか、いつもよりいっそう似ているように見える。皆、そう思うのだな。

「今日は、メガネではないんですね」

「大切な日なので。コンタクトにしてきました」

「持っているんですか?」

「武道の稽古の時は基本的にコンタクトなので」

 武道の稽古をしている皇……⁉ 見たい! 道着姿、絶対にかっこいい! 想像するだけで萌える……!
 
 エレベーターに乗り込み、上層階のレストランに通された。夜景の見えるソファ席に並んで座る。
 いつもの昼休みと同じようだけど、少し違う。皇が美しすぎるからだろうか。少し暗くて、ムードがあるからだろうか……。
 目の前に広がる東京の景色にも感動した。これが、日本の夜景……。先進的で整っていて、美しい。

「ここでの食事が終わったら、最上階に行きましょう。その方が、もっといろいろな地域が見えますので」

「はい」

 話題が途切れた。景色を眺めながら、ふと、今日の仕事について考えなければ……と思った。
 運命写真機で、皇を撮る。
 美…………!

 ぶわりと文字が浮き出す。
 今日は私の手でどうにかつくりだすしかなさそうだ。
 ここにある凶器となりそうなものといったら――。
 
 あれを使うか。

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