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7話 ウィルスでお仕事

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 学校に行くと、皇がいなかった。
 豚どもによると、昨日から熱が出たとかで休んでいるらしい。
 私が一昨日仕込んだウィルスの効果が出たようだ。
 頭痛、喉痛、咳、鼻水鼻づまり、腹痛等、全ての症状が死ぬほど強く、三日三晩高熱が続く、私特製の最強ウィルス。
 これで死なないはずがない。
 
 そうであるなら、学校にいる必要はない。
 私はさっさと後にした。

 ハデスに成果を報告するため、魂を持ち帰る必要がある。
 私は皇の家の屋根に降り立った。

 ――なんて素晴らしい和風建築!
 白い塀が取り囲む広大な敷地、つややかで重厚感のある瓦屋根、池にはジャパニーズ・錦鯉が泳いでいる。
 ジャパニーズ・旅館のような大豪邸だ。
 この仕事が終わったら、ジャパニーズ・温泉旅館に泊まりに行こう。

 ひとまず、皇の気配を探す。
 本館らしき大きな棟の右隣にある一棟の建物の中にいるようだ。
 すっと中に入ると、大きな部屋の真ん中で、布団にくるまっている皇の姿があった。
 ゲホゴホと激しく咳き込み、顔は真っ赤だった。氷枕を敷きながら、額にも濡れタオルを乗せている。
 皇の横に、膝をついた。ぬるい濡れタオルを捲ると、苦しそうな皇の顔が顕になった。

 ――やっぱり、顔、好き……。

 あんなに輝く緋王様のご尊顔を見たばかりなのに、心臓がきゅうんとする。
 ハアハアと苦しそうな浅い吐息を繰り返すのも、額に玉のような汗が浮かんでいるのも、なんだかえっちだ……。
 というかこの襟……ジャパニーズ・浴衣を着ている……?
 ――ゴクリ。
 み、見たい。
 そっと、掛け布団をずらした。

 !!!!!!

 や、やっぱり!! ジャパニーズ・浴衣!!
 ににににに、似合いすぎる! 飾りたい! 部屋に! ポスターを!!
 そうだ、写真を撮っておこう。
 パシャリ。運命写真を撮った。帰ったら引き延ばして、緋王様の浴衣姿ポスターの隣に並べよう……。
 浴衣姿の皇が、緋王様のようにいろいろなことをしてくれたら……!
 うううぅ……! ありがたい……! ありがたすぎて拝んでしまう!
 だが、それは叶うまい。
 皇は、標的。魂を狩らねばならない相手……。
 私は手に鎌を宿した。
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