スノウ・ホワイト

ねおきてる

文字の大きさ
上 下
6 / 31

6.

しおりを挟む
笑顔から崩れるように表情が抜け落ちました。


「誰がいるの!」


彼女の言葉に弾けるように、一目散に逃げだしました。


バタバタとかけるような音が後ろから響きます。


夜の廊下は光すらなく、暗闇に飛び込むようにしてわたくしは必死に逃げました。


走っても走っても、背後から音は伸びてきて窓から刺す月明りを頼りに出鱈目に走ります。


ようやく音が遠くなり、こちらもはたと、進むのを止めて息も絶え絶えになりながら後ろをゆっくり振り返りました。


彼女はわたくしを追う事をめっきり諦めたようで、暗闇に目を凝らして見ても、人影は見えませんでした。


恐怖とある種の罪悪感に、クラクラ頭がかき乱され、廊下の絨毯に一歩一歩、身を沈ませるようにして自分の部屋へと歩きました。


先ほど見たあの笑顔と、彼女が袖を通したドレスが交互に頭をよぎります。


あのドレスをわたくしが最後に身に着けたのは、王室の式典が開かれた数日前の事でした。


わたくしの祖母が若い頃、身に着けたものらしく、真っ赤な生地に付けられた金の装飾を眺めながら、式典に参加するには派手ではないでしょうか、と召使に聞きました。


「大丈夫ですよ、お姫様。少し煌びやかではございますが、お若いからよく映えてお似合いですよ。」


そのように言われた時、後ろから強い視線を感じました。


思わず振り返ってみると、継母があの刺すような目でじっとわたくしを見つめていました。


顔は牡丹のように満開の化粧をたっぷり施し、胸元が開いた黒いドレスを身に着け式典には不釣り合いな装いをして佇んでおりました。


隣にいた召使は、彼女のそのを、頭のてっぺんからつま先まで視線をずらして見た後にわたくしに一瞥だけをして、どこかに走っていきました。


彼女と二人残されてわたくしも居心地が悪くなり先ほど召使がしたように、継母にそっとお辞儀だけして、何か忘れものをしたように自分の部屋に戻りました。


その間も彼女はずっと、お辞儀をするわたくしに特に表情を変えるわけでもなく、鋭い視線で横を通り過ぎていくわたくしを見ているだけでした。


あの日彼女が投げた視線は今まで以上に鋭く、表情もない顔の中ギラギラ目だけが雄弁に何かを語ろうとしていました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...