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一方その日を境に女性は今まで以上に札束を出産することに躍起になった。
婦人の言葉がきっかけで、「札束出産」という言葉が、巷で普通に交わされた。
婦人の本はますます売れた。
あの日を境に彼女の本は通販サイトも書店からも忽然と姿を消していた。
ついにはインターネットで出回った本物よりも高価な物も、売り切れていく程だった。
番組直後、婦人はまた、新しく本を出版した。
彼女が、札束を生むために、妊娠するまでの行動を全て記録した物だった。
発売発表直後、世間は瞬く間に大騒ぎになった。予約販売は直ぐに売り切れ。
発売初日の前日から本屋の前に夜通し人が開店を待つほどだった。
けれど、待ちに待った本の中身は、どこでお昼を食べたとか、どんなパートをしていたかなど、あまりに普通の内容だった。
出産のために、と婦人の通りいざ行動に移しても、クリーニングでパートをし、お昼にカレーを食べる女性が、ただただ増えただけだった。
そして、家族の形すら、少しずつ変わることとなった。
この年、離婚する者が、爆発的に増えていた。
「私が札束を生んだのは夫婦仲が悪かったため。」
彼女の言葉がヒントとなって、人が実行したためだ。
出産のためと割り切って笑顔で離婚する者も、形ばかりが口論になり、けんか別れする者もいた。
婦人の言葉や行動に、こうして人は左右された。
こんな流れが功をなしたか、札束を生んだ二人目がほどなくして現れた。
しかも、二度目の札束は婦人よりも2、3枚紙幣が多く含まれていた。
この時から次第に人は札束を出産する事よりも、どれほど多く枚数を生むかばかり考えた。
どうやら、夜に薬を飲むと多く生まれて来るらしい。
いやいや、朝にさんさんライトを浴びればスクスク育っていくらしい。
嘘か真か噂は飛び交い、それを全部鵜呑みにして人々は実行した。
三人目、四人目は立て続けにたいそうな額を出産した。
けれど、もう婦人の時より人はそこまで驚かなかった。
それ以上に、どうやって自分か、近しい人に出産させるか、人は必死になっていた。
ポコポコ人が金を生み、暮らしはどんどん裕福になる。
ついには、札束の枚数が、地球上の人の数を追い越そうとするほどだった。
こんな世の状況に、しかめ面をしていたのは、シワの深い政治家だった。
かつて、金はごく一部にしか、集まらないものだった。
それが、どうだ。
金は無ければ産めばいい。
人がやりたがらない仕事も、安い金でもまいとけばこれまで、誰かがやってきた。
けれど金が増えればそんな仕事、人はどんどんやらなくなった。
ついにはふんぞり返った政治家たちが、渋々するほどだった。
せめて、お金が無くなれば人は困って働くだろう。
そう彼らは考えて、高い税金を今まで以上に、うんと高く引き上げた。
けれど、そんな税率どこ吹く風。人はどんどん金を生んで、高い税金も払っていった。
婦人の言葉がきっかけで、「札束出産」という言葉が、巷で普通に交わされた。
婦人の本はますます売れた。
あの日を境に彼女の本は通販サイトも書店からも忽然と姿を消していた。
ついにはインターネットで出回った本物よりも高価な物も、売り切れていく程だった。
番組直後、婦人はまた、新しく本を出版した。
彼女が、札束を生むために、妊娠するまでの行動を全て記録した物だった。
発売発表直後、世間は瞬く間に大騒ぎになった。予約販売は直ぐに売り切れ。
発売初日の前日から本屋の前に夜通し人が開店を待つほどだった。
けれど、待ちに待った本の中身は、どこでお昼を食べたとか、どんなパートをしていたかなど、あまりに普通の内容だった。
出産のために、と婦人の通りいざ行動に移しても、クリーニングでパートをし、お昼にカレーを食べる女性が、ただただ増えただけだった。
そして、家族の形すら、少しずつ変わることとなった。
この年、離婚する者が、爆発的に増えていた。
「私が札束を生んだのは夫婦仲が悪かったため。」
彼女の言葉がヒントとなって、人が実行したためだ。
出産のためと割り切って笑顔で離婚する者も、形ばかりが口論になり、けんか別れする者もいた。
婦人の言葉や行動に、こうして人は左右された。
こんな流れが功をなしたか、札束を生んだ二人目がほどなくして現れた。
しかも、二度目の札束は婦人よりも2、3枚紙幣が多く含まれていた。
この時から次第に人は札束を出産する事よりも、どれほど多く枚数を生むかばかり考えた。
どうやら、夜に薬を飲むと多く生まれて来るらしい。
いやいや、朝にさんさんライトを浴びればスクスク育っていくらしい。
嘘か真か噂は飛び交い、それを全部鵜呑みにして人々は実行した。
三人目、四人目は立て続けにたいそうな額を出産した。
けれど、もう婦人の時より人はそこまで驚かなかった。
それ以上に、どうやって自分か、近しい人に出産させるか、人は必死になっていた。
ポコポコ人が金を生み、暮らしはどんどん裕福になる。
ついには、札束の枚数が、地球上の人の数を追い越そうとするほどだった。
こんな世の状況に、しかめ面をしていたのは、シワの深い政治家だった。
かつて、金はごく一部にしか、集まらないものだった。
それが、どうだ。
金は無ければ産めばいい。
人がやりたがらない仕事も、安い金でもまいとけばこれまで、誰かがやってきた。
けれど金が増えればそんな仕事、人はどんどんやらなくなった。
ついにはふんぞり返った政治家たちが、渋々するほどだった。
せめて、お金が無くなれば人は困って働くだろう。
そう彼らは考えて、高い税金を今まで以上に、うんと高く引き上げた。
けれど、そんな税率どこ吹く風。人はどんどん金を生んで、高い税金も払っていった。
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