7 / 17
失踪者の探し方
しおりを挟む
「失踪者の探し方」
ここから読み始めた方、心配しないで頂きたい。
JCが授業中、隠れてこんな事ノートに書いたら何事かと思うだろう。
けれど、あくまで本作はコメディ。
後の内容を見てほしい。
「 「失踪者の探し方」
1、ダウンジング(もったいないからストローで)
2、ヒーローがいそうなところを探す
(どこだろう)
3、変態がいそうなところを探す
(紛れないか心配)」
お分かりいただけただろうか。
もう、最後は親族ということを忘れていた。
迷い犬を探す方が高尚な方法をとるだろう。
けれど、警察も頼った今為すべき方法は限られている。
もう、正攻法は無理か、とため息をついた時だった。
視界の端で何かがめくれた。
ふと、斜め後ろを盗み見れば、黒いカードが机一面を覆うのが見えた。
木蓮を思わせる白い手が、凄まじいスピードでカードをめくり手の動きに色とりどりに机は彩られていく。
カードをめくる横顔は儚くて、長い睫毛が光を浴びて羽ばたいている。
矢採 三灯
まごう事なき美少年。
アシメトリーな前髪で片目は隠れているものの露わになった灰色の目は冬の海のように静かで形のいい鼻が添えられている。
絵の具で垂らしたような唇も真っ白な肌に映え美しくたゆたう。
けれど、忘れてはいけない。
この小説の美形のお約束。
彼もどこかおかしいのだ。
そのまま、服に目を向けよう。
リボン付きフリルブラウス。
コ○ンくんのような半ズボン。
カメオのカフス。
どこの全寮制お金持ち学校かとお思いだろうが、安心して下さい。
彼だけですよ。
周りは冴えない白シャツ、ズボンで登校している。
こんなのまだマシな方だ。
入学当時からこの美貌で脚光を浴びるも、勢いはすぐ終息した。
ある日、どこも痛くないのに眼帯をつけてきた。
これまで、懸命に話しかけ無視された女子も、妬み喧嘩をふっかけ無視された男子も全てを理解した。
彼は、違う国の王子様だった。
眼帯は注意されても、やめることなく、学年主任も巻き込む騒動となったため絶滅したが、ブラウスとズボンであればよしという校則をくぐり彼のご趣味は未だ続く。
たまに、痛むのか疼くのか右手を懸命に抑えている時もある。
それからというものの厨二の王子様はうちのクラスでよく言えば孤高な存在として扱われているのだ。
不意に彼が顔を上げた。
灰色の目がばっちり合う。
思わず吸い込まれそうな綺麗な目。
何だか、ぼうっと見とれてしまって、すぐにはたと正気に戻った。
こんなに意味もなく見つめられたら、あっちも気味が悪いだろう。
ヤバイ、と前を向こうとした時、彼が、カードの一枚を取り自分の手の甲に乗せた。
パチリと指を鳴らし、カードが宙を舞う。
風もないのに、ひらりと私の机の上にそれは着地した。
驚いてカードに目をやる。
目をつぶり手を広げる美しい天使。
振り返ると、彼は、私にカードをめくれとジェスチャーで伝えた。
素直に、裏を見る。
「今日、放課後視聴覚室に来られたし。」
時計の音が大きく響いた。
舞い散るチャイム。
6時間目、今日の授業はこれで終わり。
彼は、私の全てを見通し、これを投げたのか、はたまた偶然か。
息をのみ、また振り返る。
が、彼はまた、右手が疼くのか懸命に手を押さえつけ歯を食いしばっていた。
どうか、そのまま、つってしまえ。
ムードを壊され、私はひっそりそう願った。
ここから読み始めた方、心配しないで頂きたい。
JCが授業中、隠れてこんな事ノートに書いたら何事かと思うだろう。
けれど、あくまで本作はコメディ。
後の内容を見てほしい。
「 「失踪者の探し方」
1、ダウンジング(もったいないからストローで)
2、ヒーローがいそうなところを探す
(どこだろう)
3、変態がいそうなところを探す
(紛れないか心配)」
お分かりいただけただろうか。
もう、最後は親族ということを忘れていた。
迷い犬を探す方が高尚な方法をとるだろう。
けれど、警察も頼った今為すべき方法は限られている。
もう、正攻法は無理か、とため息をついた時だった。
視界の端で何かがめくれた。
ふと、斜め後ろを盗み見れば、黒いカードが机一面を覆うのが見えた。
木蓮を思わせる白い手が、凄まじいスピードでカードをめくり手の動きに色とりどりに机は彩られていく。
カードをめくる横顔は儚くて、長い睫毛が光を浴びて羽ばたいている。
矢採 三灯
まごう事なき美少年。
アシメトリーな前髪で片目は隠れているものの露わになった灰色の目は冬の海のように静かで形のいい鼻が添えられている。
絵の具で垂らしたような唇も真っ白な肌に映え美しくたゆたう。
けれど、忘れてはいけない。
この小説の美形のお約束。
彼もどこかおかしいのだ。
そのまま、服に目を向けよう。
リボン付きフリルブラウス。
コ○ンくんのような半ズボン。
カメオのカフス。
どこの全寮制お金持ち学校かとお思いだろうが、安心して下さい。
彼だけですよ。
周りは冴えない白シャツ、ズボンで登校している。
こんなのまだマシな方だ。
入学当時からこの美貌で脚光を浴びるも、勢いはすぐ終息した。
ある日、どこも痛くないのに眼帯をつけてきた。
これまで、懸命に話しかけ無視された女子も、妬み喧嘩をふっかけ無視された男子も全てを理解した。
彼は、違う国の王子様だった。
眼帯は注意されても、やめることなく、学年主任も巻き込む騒動となったため絶滅したが、ブラウスとズボンであればよしという校則をくぐり彼のご趣味は未だ続く。
たまに、痛むのか疼くのか右手を懸命に抑えている時もある。
それからというものの厨二の王子様はうちのクラスでよく言えば孤高な存在として扱われているのだ。
不意に彼が顔を上げた。
灰色の目がばっちり合う。
思わず吸い込まれそうな綺麗な目。
何だか、ぼうっと見とれてしまって、すぐにはたと正気に戻った。
こんなに意味もなく見つめられたら、あっちも気味が悪いだろう。
ヤバイ、と前を向こうとした時、彼が、カードの一枚を取り自分の手の甲に乗せた。
パチリと指を鳴らし、カードが宙を舞う。
風もないのに、ひらりと私の机の上にそれは着地した。
驚いてカードに目をやる。
目をつぶり手を広げる美しい天使。
振り返ると、彼は、私にカードをめくれとジェスチャーで伝えた。
素直に、裏を見る。
「今日、放課後視聴覚室に来られたし。」
時計の音が大きく響いた。
舞い散るチャイム。
6時間目、今日の授業はこれで終わり。
彼は、私の全てを見通し、これを投げたのか、はたまた偶然か。
息をのみ、また振り返る。
が、彼はまた、右手が疼くのか懸命に手を押さえつけ歯を食いしばっていた。
どうか、そのまま、つってしまえ。
ムードを壊され、私はひっそりそう願った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
隣の家の幼馴染は学園一の美少女だが、ぼっちの僕が好きらしい
四乃森ゆいな
ライト文芸
『この感情は、幼馴染としての感情か。それとも……親友以上の感情だろうか──。』
孤独な読書家《凪宮晴斗》には、いわゆる『幼馴染』という者が存在する。それが、クラスは愚か学校中からも注目を集める才色兼備の美少女《一之瀬渚》である。
しかし、学校での直接的な接触は無く、あってもメッセージのやり取りのみ。せいぜい、誰もいなくなった教室で一緒に勉強するか読書をするぐらいだった。
ところが今年の春休み──晴斗は渚から……、
「──私、ハル君のことが好きなの!」と、告白をされてしまう。
この告白を機に、二人の関係性に変化が起き始めることとなる。
他愛のないメッセージのやり取り、部室でのお昼、放課後の教室。そして、お泊まり。今までにも送ってきた『いつもの日常』が、少しずつ〝特別〟なものへと変わっていく。
だが幼馴染からの僅かな関係の変化に、晴斗達は戸惑うばかり……。
更には過去のトラウマが引っかかり、相手には迷惑をかけまいと中々本音を言い出せず、悩みが生まれてしまい──。
親友以上恋人未満。
これはそんな曖昧な関係性の幼馴染たちが、本当の恋人となるまでの“一年間”を描く青春ラブコメである。
パワハラ女上司からのラッキースケベが止まらない
セカイ
ライト文芸
新入社員の『俺』草野新一は入社して半年以上の間、上司である椿原麗香からの執拗なパワハラに苦しめられていた。
しかしそんな屈辱的な時間の中で毎回発生するラッキースケベな展開が、パワハラによる苦しみを相殺させている。
高身長でスタイルのいい超美人。おまけにすごく巨乳。性格以外は最高に魅力的な美人上司が、パワハラ中に引き起こす無自覚ラッキースケベの数々。
パワハラはしんどくて嫌だけれど、ムフフが美味しすぎて堪らない。そんな彼の日常の中のとある日の物語。
※他サイト(小説家になろう・カクヨム・ノベルアッププラス)でも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる