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守銭奴と美人と写真
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「えェー?本当に、その恰好で来て恥ずかしくなかったのォ?」
ケラケラ笑い転げる美人を横にさっきまで商品を説明していた店員さんが困ったような顔をしている。
彼に私は一瞥して、フロアを後にした。
さて、私とお母さんがいつものカフェに行くまで少し彼女について説明しよう。
甘井 慶来、45歳。
元アイドルで現スイーツ専門の料理研究家だ。
彼女はアイドル時代、「お菓子の国のお姫様!あまァい、スイーツ慶来ちゃん☆」という不思議キャラで売れっ子だったという。
それが、24年前。
舞台は華々しい芸能界。
父が出演するヒーロー戦隊ものの主題歌を彼女がうたったことがきっかけで急接近したらしい。
母がこっそり猛アタックしたのではという疑惑もあったらしいが、その時二人は人気アイドルとイケメン俳優。
二人はごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をした。(※諸説あり)
そんな中彼女は関係者にこんな言葉を残したという。
「まあ、あんなキャラもう潮時だし、そろそろ身を固めないとね・・・。」
けれど、どんな伝説を残しても、もしかしてクズでも私のお母さんだ。
結婚でアイドルを引退した後も、この美貌であの時のキャラを活かしスイーツ専門料理研究家としてテレビの世界に舞い戻った。
自分の武器は金にする。
あのバカとは大違い。
守銭奴として私がお母さんを尊敬する理由だ。
3が付く日は特売日みたいにお父さんに内緒で二人こっそり密会を続けている。
「はァ、もうこんなにあっついのねェ。まだ、五月だっていうのにィ。」
カフェの一番奥の席に座りお母さんはため息交じりに言った。
「本当にそうだね。
ねえ、お母さん私が5歳の時の事件覚えてる?」
「もォ、覚えてるにきまってるじゃないのォ!」
私が聞いたことにお母さんは、無邪気に答えた。
「確かァ、慶ちゃんが初めてのお使いに八百屋さんに行った時でしょォ?
あの時ねェ、誠さんがどうしてもッて不安がるから二人でセグウェイで後をつけたのよねェ。」
「そうそう!結局途中、近所の人に不審がられて通報されたよね。」
「そうなのよォ、あの日そのせいで夜中まで取り調べで帰れなかったんだからァ!」
「いい大人が平日に子供つけ回してるからね!」
和やかな親子の話は尽きることがない。
ふと、お母さんは遠い眼をして聞いた。
「あの人は元気なのォ?」
あの人、とはお父さんの事だ。
お母さんは私と会うたび決まってこの質問をする。
お母さんとお父さんが何で別れたのかは私はよく知らない。
周りの大人に聞いてみても
お父さんは、「守り切れなかった男のふがいなさたるや・・・。」
お母さんは、「よく見たらハゲそうな毛の生え方してるなァって!」
誠さんは、「男と女だからなあ。分からないことだらけよ。それより嬢ちゃん、パンツみえてるぜ。」
不確かな答えとセクハラまでされ、もう聞こうとはしなかった。
「うん、元気だよ!でも相変わらず、フリーター。
やっぱり、誰かしっかりしてる人がいないとダメみたい。」
私が毎回のお母さんの質問に少し期待するのは年相応の事だろう。
しっかりしない大人に囲まれ、頼る人はいなかった。
たまに会うお母さんに日ごろの辛さを聞いてもらっても、本当に思う望みは言えず、彼女が切り出すのを委ねていた。
そっとお母さんが鞄から写真を取り出し、机の上に置いた。
見たことある外人が一人映っている。
「ええっと、誰だっけそれ・・・。」
「ニコラス・佳二っていうのよォ。」
「ああ、あの市長の・・・。」
私が住んでいる市の市長でお父さんと同い年。
同僚がおじさんばかりの中、キラキラしたハーフのイケメンでテレビにも雑誌にも取り上げられている。
「ええっと、これが何か・・・。」
「うーん?一年前に仕事の関係であったんだけどねェ・・・。」
何だか嫌な予感がした。
耳がツンと遠くなる。
お母さんは不安な私を置いて無邪気に続けた。
「あのねェ、私今その人に求婚されてるのォ。」
ケラケラ笑い転げる美人を横にさっきまで商品を説明していた店員さんが困ったような顔をしている。
彼に私は一瞥して、フロアを後にした。
さて、私とお母さんがいつものカフェに行くまで少し彼女について説明しよう。
甘井 慶来、45歳。
元アイドルで現スイーツ専門の料理研究家だ。
彼女はアイドル時代、「お菓子の国のお姫様!あまァい、スイーツ慶来ちゃん☆」という不思議キャラで売れっ子だったという。
それが、24年前。
舞台は華々しい芸能界。
父が出演するヒーロー戦隊ものの主題歌を彼女がうたったことがきっかけで急接近したらしい。
母がこっそり猛アタックしたのではという疑惑もあったらしいが、その時二人は人気アイドルとイケメン俳優。
二人はごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をした。(※諸説あり)
そんな中彼女は関係者にこんな言葉を残したという。
「まあ、あんなキャラもう潮時だし、そろそろ身を固めないとね・・・。」
けれど、どんな伝説を残しても、もしかしてクズでも私のお母さんだ。
結婚でアイドルを引退した後も、この美貌であの時のキャラを活かしスイーツ専門料理研究家としてテレビの世界に舞い戻った。
自分の武器は金にする。
あのバカとは大違い。
守銭奴として私がお母さんを尊敬する理由だ。
3が付く日は特売日みたいにお父さんに内緒で二人こっそり密会を続けている。
「はァ、もうこんなにあっついのねェ。まだ、五月だっていうのにィ。」
カフェの一番奥の席に座りお母さんはため息交じりに言った。
「本当にそうだね。
ねえ、お母さん私が5歳の時の事件覚えてる?」
「もォ、覚えてるにきまってるじゃないのォ!」
私が聞いたことにお母さんは、無邪気に答えた。
「確かァ、慶ちゃんが初めてのお使いに八百屋さんに行った時でしょォ?
あの時ねェ、誠さんがどうしてもッて不安がるから二人でセグウェイで後をつけたのよねェ。」
「そうそう!結局途中、近所の人に不審がられて通報されたよね。」
「そうなのよォ、あの日そのせいで夜中まで取り調べで帰れなかったんだからァ!」
「いい大人が平日に子供つけ回してるからね!」
和やかな親子の話は尽きることがない。
ふと、お母さんは遠い眼をして聞いた。
「あの人は元気なのォ?」
あの人、とはお父さんの事だ。
お母さんは私と会うたび決まってこの質問をする。
お母さんとお父さんが何で別れたのかは私はよく知らない。
周りの大人に聞いてみても
お父さんは、「守り切れなかった男のふがいなさたるや・・・。」
お母さんは、「よく見たらハゲそうな毛の生え方してるなァって!」
誠さんは、「男と女だからなあ。分からないことだらけよ。それより嬢ちゃん、パンツみえてるぜ。」
不確かな答えとセクハラまでされ、もう聞こうとはしなかった。
「うん、元気だよ!でも相変わらず、フリーター。
やっぱり、誰かしっかりしてる人がいないとダメみたい。」
私が毎回のお母さんの質問に少し期待するのは年相応の事だろう。
しっかりしない大人に囲まれ、頼る人はいなかった。
たまに会うお母さんに日ごろの辛さを聞いてもらっても、本当に思う望みは言えず、彼女が切り出すのを委ねていた。
そっとお母さんが鞄から写真を取り出し、机の上に置いた。
見たことある外人が一人映っている。
「ええっと、誰だっけそれ・・・。」
「ニコラス・佳二っていうのよォ。」
「ああ、あの市長の・・・。」
私が住んでいる市の市長でお父さんと同い年。
同僚がおじさんばかりの中、キラキラしたハーフのイケメンでテレビにも雑誌にも取り上げられている。
「ええっと、これが何か・・・。」
「うーん?一年前に仕事の関係であったんだけどねェ・・・。」
何だか嫌な予感がした。
耳がツンと遠くなる。
お母さんは不安な私を置いて無邪気に続けた。
「あのねェ、私今その人に求婚されてるのォ。」
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