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58話 従姉妹
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鞠也ちゃんを連れてリビングに向かうと、既に扉は空いていて鞠也ちゃんはここから飛び出してきたのだと予想できた。
「あら、久しぶりね光流ちゃん」
「あ、久しぶりです。希咲さん」
リビングには、母とその姉である遠坂希咲さんがいた。つまり鞠也ちゃんの母親だ。
俺をちゃん付けで呼ぶのはこの人くらいだ。小さい頃から呼んでいたそのままの呼び名だ。
「お見舞い行けなくてごめんね。少し大きくなったわねぇ」
「お家遠いですもんね。全然大丈夫です」
九藤家が東京に住んでいるのに対して、遠坂家が住んでいるのは福岡だ。
飛行機代もかかるし簡単にこちらにはこれない。
なのに今回はなぜ一週間もかけて泊まることになったのだろうか。
「実はね、急にうちのパパが転勤になっちゃってね。今は単身赴任でもうこっちに来て仕事してるの」
遠坂家は転勤族らしい。旦那さんのお仕事も多少忙しい話は前に聞いたことがあった気がする。
「それでね。ちゃんと三人で住める場所を探すために今回は来たの」
旦那さんの代わりに希咲さんが家探しをすることになったということだろう。
「そうだったんですね」
「だからその間だけだけどお世話になるわね」
「いえ、僕は全然。こちらこそよろしくお願いします」
この一週間は二人が増えるということだろう。
しかし、この家には空き部屋がない。どうするんだろ。
「光流は自分の部屋で灯莉と一緒に寝てもらって、姉さんと鞠也ちゃんは灯莉の部屋を使ってもらう予定なんだけど大丈夫?」
母が部屋分けを提案した。俺としては姉とはたまに一緒に寝ているので全然問題ない。
「大丈夫だよ」
「ありがとね」
「ひかる! 遊ぼう!」
今日は特に予定はないので、鞠也ちゃんと遊ぶのもいいか。
「わかった。じゃあ俺の部屋行こっか」
「光流ちゃんごめんね。鞠也をお願いね」
「いいえ、僕も遊べて嬉しいです」
◇ ◇ ◇
鞠也ちゃんは俺の一歳年下で今は小学四年生になりたての九歳だ。
なんとなくだけど、俺らよりも子供っぽい感じがする。でも俺も一年前はこんな感じだったのかな。
「鞠也ちゃんスワッチやろうよ」
「うん! やろ! モリオパーティある!?」
「あるよ。じゃあ準備するから待っててね」
俺の部屋に行って二人でゲームを一時間ほどした。鞠也ちゃんは、しずはの家でしずはが俺にしていたように、ぴたっと体をくっつけてきた。何があったのだろう。
その後、俺の部屋に置いてある漫画を俺のベッドの上で読んでいた鞠也ちゃんだったが、いつの間にか寝ていた。
小学生というより、幼稚園児を見ている気分になった。
スースーと俺のベッドで寝息を立てて寝ている鞠也ちゃん。
可愛いなと思ってしまう。子供を見守る気分ってこんな感じなのかな。
子供か……。そういえば、ルーシーの夢はお嫁さんになることだったっけ。お嫁さんになれば、子供も欲しいという夢もあるかもしれない。ルーシーの子供か。もちろん可愛いだろうなぁ。俺だったら構いすぎて嫌われそうな気もする。
俺の姉も今より小さい頃に父に構われすぎた時期があって、一瞬嫌いになった話も聞いた。それ以降父は姉に対して適度な距離感で関わるようになった。距離感って大事だよね。
会って一週間で抱き締め合ってた俺とルーシーって距離感ってどうなんだろう。
もしかしておかしいのかな。
ベッドで眠った鞠也ちゃんをそのまま寝かせておいて、俺はリビングに向かった。
希咲さんに鞠也ちゃんが眠ってしまったことを伝えると、ご飯の時間までそうしてあげてと言われたので、眠らせておくことにした。
「光流ちゃん、もう体は大丈夫なの?」
「はい。今は運動もしてますよ。最近は筋トレとかジョギングも」
「あら、運動は良いことね。一年前と比べたら少し顔も引き締まってきてるような気もするし」
「それは入院して痩せた影響もあるかもしれません」
「病院食ばかりなら痩せちゃうよね」
希咲さんは、俺の母よりも少し大人っぽい印象だ。"姉"だからかもしれない。
いつも俺や姉にはお母さんっぽい言動をよくする母も、姉の前では少し妹っぽい話し方になっている気がする。
そういう母を見るのも新鮮だ。
「ただいまー!」
姉が帰宅してきたようだ。姉は俺と同じで特にスポーツなどしていない。中学では帰宅部だそうだ。よく女子会してだべってから帰宅することが多い。
「あれ? 希咲さんだ! どうしたの?」
「灯莉ちゃん。久しぶりね。こっちに引っ越してくることになったから、お家探す為に少し泊まらせてもらうわ」
姉にも母は遠坂家が一週間滞在することは言っていなかったらしい。共有不足過ぎではないかとも思った。
「それって暇は時間あるんですか? それなら一緒にお買い物とか行きましょうよー!」
「早めに物件が決まったらいいわよ」
「やったぁ! てか鞠也ちゃんもいます?」
「今は光流ちゃんのベッドで寝てるらしいわよ」
「光流……ついに手を出してしまったか……」
「ちょ! 希咲さんの前で何言ってるのさ!」
俺がそんな反応をすると、姉も希咲さんも笑った。完全に茶化されたようだ。
「希咲さん、鞠也ちゃんってこの一年で何か変わりました? 抱きついてきたりしたので……」
「あの子もマセてきたんじゃないかしら。女子の友達の間で男子のお話とかもするだろうし」
「それって何か関係あるんですか?」
「男の子を意識し始めるってことよ。そこでせっかく会える異性で従兄弟の光流ちゃんに自分の何かを確かめてるんじゃないかしら」
そういうこともあるのかな。男子だったらいきなり女子に抱きつくなんてことはあまり想像できない。
もしかして親戚だったらありえるのか。……わからない。
そう会話しているうちに夕食の時間になった。
すると、希咲さんの旦那さんが家に挨拶しに来た。ご飯だけ一緒にしたら一人で宿泊しているホテルに戻るそうだ。
その後に俺の父も仕事から帰宅した。俺は鞠也ちゃんを起こしにいって、九藤家四人と遠坂家三人で一緒に食事を取った。
◇ ◇ ◇
食事を取った後に希咲さんの旦那さんはホテルに戻っていった。
そうして、俺は一人でお風呂に入った。
「ひかるぅ~?」
「うおっ!?」
すると突然、お風呂の扉越しに鞠也ちゃんの声が聞こえた。
「ともりちゃんがパジャマ忘れてるから持っていってって言われたからここに置いておくね」
「あ、あぁパジャマか。うん、鞠也ちゃんありがとう!」
びっくりした。お風呂に突入してくるかと思った。さすがに小学校高学年になってまで、異性と一緒にお風呂に入るとか恥ずかしくてできない。
『ガラガラ』
「ーーーー!?」
突然扉が開いた。
「入るね~!」
「ええ!? ちょっと待って!?」
しかし間髪入れずに小さいタオルを持った鞠也ちゃんが風呂場に入ってきた。
タオル持ってるだけで、完全に見えてるんだけど!?
「鞠也ちゃんダメだって!」
「なんで? ちょっと前は一緒に入ってたじゃん」
「あ、あれは……俺も色々気にしてなかったというか……」
色恋のことなんて全くわからず、異性についても特に何も思っていなかった頃だ。俺はいつ頃から異性という存在を意識するようになったのだろう。
そもそも鞠也ちゃんだって、異性を意識し始めているなら、俺となんか入るわけないのに、どういうことなんだろう。
「私も失礼するわね~」
「希咲さん!?」
さらに鞠也ちゃんだけではなく、体にタオルを巻いた状態の希咲さんまでが一緒に風呂場に入ってきた。隠れていてよかった。
風呂場はそんなに大きくないので、三人も一緒にいると手狭だ。
「お、俺上がります!」
「ーー待って」
俺は股間を手で隠しながら二人の間をすり抜けて風呂場を出ようとしたのだが、希咲さんに腕を掴まれた。
「せっかくなんだし、裸の付き合いでもしましょう。そうじゃないと話せないこともあるでしょ?」
「あるかなぁ……」
「ひかる、諦めろ」
もう片方の腕まで掴まれた。そんなに力を入れて引っ張られると手で隠していた股間の位置がずれてしまう。
「わ、わかったから手離して!?」
俺はとにかく目を瞑って、手で股間を隠しながら混浴をやり過ごすことに決めた。
ー☆ー☆ー☆ー
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「あ、久しぶりです。希咲さん」
リビングには、母とその姉である遠坂希咲さんがいた。つまり鞠也ちゃんの母親だ。
俺をちゃん付けで呼ぶのはこの人くらいだ。小さい頃から呼んでいたそのままの呼び名だ。
「お見舞い行けなくてごめんね。少し大きくなったわねぇ」
「お家遠いですもんね。全然大丈夫です」
九藤家が東京に住んでいるのに対して、遠坂家が住んでいるのは福岡だ。
飛行機代もかかるし簡単にこちらにはこれない。
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「実はね、急にうちのパパが転勤になっちゃってね。今は単身赴任でもうこっちに来て仕事してるの」
遠坂家は転勤族らしい。旦那さんのお仕事も多少忙しい話は前に聞いたことがあった気がする。
「それでね。ちゃんと三人で住める場所を探すために今回は来たの」
旦那さんの代わりに希咲さんが家探しをすることになったということだろう。
「そうだったんですね」
「だからその間だけだけどお世話になるわね」
「いえ、僕は全然。こちらこそよろしくお願いします」
この一週間は二人が増えるということだろう。
しかし、この家には空き部屋がない。どうするんだろ。
「光流は自分の部屋で灯莉と一緒に寝てもらって、姉さんと鞠也ちゃんは灯莉の部屋を使ってもらう予定なんだけど大丈夫?」
母が部屋分けを提案した。俺としては姉とはたまに一緒に寝ているので全然問題ない。
「大丈夫だよ」
「ありがとね」
「ひかる! 遊ぼう!」
今日は特に予定はないので、鞠也ちゃんと遊ぶのもいいか。
「わかった。じゃあ俺の部屋行こっか」
「光流ちゃんごめんね。鞠也をお願いね」
「いいえ、僕も遊べて嬉しいです」
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鞠也ちゃんは俺の一歳年下で今は小学四年生になりたての九歳だ。
なんとなくだけど、俺らよりも子供っぽい感じがする。でも俺も一年前はこんな感じだったのかな。
「鞠也ちゃんスワッチやろうよ」
「うん! やろ! モリオパーティある!?」
「あるよ。じゃあ準備するから待っててね」
俺の部屋に行って二人でゲームを一時間ほどした。鞠也ちゃんは、しずはの家でしずはが俺にしていたように、ぴたっと体をくっつけてきた。何があったのだろう。
その後、俺の部屋に置いてある漫画を俺のベッドの上で読んでいた鞠也ちゃんだったが、いつの間にか寝ていた。
小学生というより、幼稚園児を見ている気分になった。
スースーと俺のベッドで寝息を立てて寝ている鞠也ちゃん。
可愛いなと思ってしまう。子供を見守る気分ってこんな感じなのかな。
子供か……。そういえば、ルーシーの夢はお嫁さんになることだったっけ。お嫁さんになれば、子供も欲しいという夢もあるかもしれない。ルーシーの子供か。もちろん可愛いだろうなぁ。俺だったら構いすぎて嫌われそうな気もする。
俺の姉も今より小さい頃に父に構われすぎた時期があって、一瞬嫌いになった話も聞いた。それ以降父は姉に対して適度な距離感で関わるようになった。距離感って大事だよね。
会って一週間で抱き締め合ってた俺とルーシーって距離感ってどうなんだろう。
もしかしておかしいのかな。
ベッドで眠った鞠也ちゃんをそのまま寝かせておいて、俺はリビングに向かった。
希咲さんに鞠也ちゃんが眠ってしまったことを伝えると、ご飯の時間までそうしてあげてと言われたので、眠らせておくことにした。
「光流ちゃん、もう体は大丈夫なの?」
「はい。今は運動もしてますよ。最近は筋トレとかジョギングも」
「あら、運動は良いことね。一年前と比べたら少し顔も引き締まってきてるような気もするし」
「それは入院して痩せた影響もあるかもしれません」
「病院食ばかりなら痩せちゃうよね」
希咲さんは、俺の母よりも少し大人っぽい印象だ。"姉"だからかもしれない。
いつも俺や姉にはお母さんっぽい言動をよくする母も、姉の前では少し妹っぽい話し方になっている気がする。
そういう母を見るのも新鮮だ。
「ただいまー!」
姉が帰宅してきたようだ。姉は俺と同じで特にスポーツなどしていない。中学では帰宅部だそうだ。よく女子会してだべってから帰宅することが多い。
「あれ? 希咲さんだ! どうしたの?」
「灯莉ちゃん。久しぶりね。こっちに引っ越してくることになったから、お家探す為に少し泊まらせてもらうわ」
姉にも母は遠坂家が一週間滞在することは言っていなかったらしい。共有不足過ぎではないかとも思った。
「それって暇は時間あるんですか? それなら一緒にお買い物とか行きましょうよー!」
「早めに物件が決まったらいいわよ」
「やったぁ! てか鞠也ちゃんもいます?」
「今は光流ちゃんのベッドで寝てるらしいわよ」
「光流……ついに手を出してしまったか……」
「ちょ! 希咲さんの前で何言ってるのさ!」
俺がそんな反応をすると、姉も希咲さんも笑った。完全に茶化されたようだ。
「希咲さん、鞠也ちゃんってこの一年で何か変わりました? 抱きついてきたりしたので……」
「あの子もマセてきたんじゃないかしら。女子の友達の間で男子のお話とかもするだろうし」
「それって何か関係あるんですか?」
「男の子を意識し始めるってことよ。そこでせっかく会える異性で従兄弟の光流ちゃんに自分の何かを確かめてるんじゃないかしら」
そういうこともあるのかな。男子だったらいきなり女子に抱きつくなんてことはあまり想像できない。
もしかして親戚だったらありえるのか。……わからない。
そう会話しているうちに夕食の時間になった。
すると、希咲さんの旦那さんが家に挨拶しに来た。ご飯だけ一緒にしたら一人で宿泊しているホテルに戻るそうだ。
その後に俺の父も仕事から帰宅した。俺は鞠也ちゃんを起こしにいって、九藤家四人と遠坂家三人で一緒に食事を取った。
◇ ◇ ◇
食事を取った後に希咲さんの旦那さんはホテルに戻っていった。
そうして、俺は一人でお風呂に入った。
「ひかるぅ~?」
「うおっ!?」
すると突然、お風呂の扉越しに鞠也ちゃんの声が聞こえた。
「ともりちゃんがパジャマ忘れてるから持っていってって言われたからここに置いておくね」
「あ、あぁパジャマか。うん、鞠也ちゃんありがとう!」
びっくりした。お風呂に突入してくるかと思った。さすがに小学校高学年になってまで、異性と一緒にお風呂に入るとか恥ずかしくてできない。
『ガラガラ』
「ーーーー!?」
突然扉が開いた。
「入るね~!」
「ええ!? ちょっと待って!?」
しかし間髪入れずに小さいタオルを持った鞠也ちゃんが風呂場に入ってきた。
タオル持ってるだけで、完全に見えてるんだけど!?
「鞠也ちゃんダメだって!」
「なんで? ちょっと前は一緒に入ってたじゃん」
「あ、あれは……俺も色々気にしてなかったというか……」
色恋のことなんて全くわからず、異性についても特に何も思っていなかった頃だ。俺はいつ頃から異性という存在を意識するようになったのだろう。
そもそも鞠也ちゃんだって、異性を意識し始めているなら、俺となんか入るわけないのに、どういうことなんだろう。
「私も失礼するわね~」
「希咲さん!?」
さらに鞠也ちゃんだけではなく、体にタオルを巻いた状態の希咲さんまでが一緒に風呂場に入ってきた。隠れていてよかった。
風呂場はそんなに大きくないので、三人も一緒にいると手狭だ。
「お、俺上がります!」
「ーー待って」
俺は股間を手で隠しながら二人の間をすり抜けて風呂場を出ようとしたのだが、希咲さんに腕を掴まれた。
「せっかくなんだし、裸の付き合いでもしましょう。そうじゃないと話せないこともあるでしょ?」
「あるかなぁ……」
「ひかる、諦めろ」
もう片方の腕まで掴まれた。そんなに力を入れて引っ張られると手で隠していた股間の位置がずれてしまう。
「わ、わかったから手離して!?」
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