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33話 始まりの場所
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翌朝、十二月二十三日。
私と真空はお出かけすることにした。
黒のバケットハットを深く被り、包帯をできるだけ隠すようマスクまでした。
今日の目的は、下見というか……思い出の地を確認することだ。
「じゃあ、行ってきます」
「気をつけてね」
母にお出かけの挨拶をして、真空と一緒に家を出る。
氷室も加え、須崎の運転で四人で移動。二十分ほどで目的の地へ到着。
車のドアを開け、私達は一緒に降りる。
「変わってない……」
公園の入口から中を見渡す。
四年前のあの頃のままだった。公園は改修されることがよくある。なくなったりもする。しかしこの公園は変わっていなかった。それを嬉しく感じた。
「ここなんだね。ルーシーの始まりの場所は……」
「うん……」
真空はここにどんな思い出があるのか、ある程度知っている。
私もあの頃の記憶を思い出しながら、公園の中に足を踏み入れる。
ドーム型の遊具。光流が声をかけてくれた場所。
穴がいくつか空いていて、中は少しだけ広い空間が広がっている。
ただ、成長した体では遊具は少し小さく感じた。
「公園は変わってないけど、私は変わったみたい」
「大きくなったもんね」
ペタペタと遊具の外装に触れる。十二月の冷たい空気で遊具は冷え切っていた。
「ついに明日か……」
どうなるのか、想像もつかない。光流はどんな顔をしているのか。私のことをどう見てくれるのか。
本当に来てくれたら、私の素顔を見て、どう言ってくれるのか。
わからない。
でも会いに行くと言ってくれた。
私は待つだけだ。
滞在時間は五分ほど。ずっと公園にいてもしょうがないので、私達は車に戻った。
その後は、真空と一緒に久しぶりの日本の商業施設に立ち寄って、クリスマス限定の化粧品を見て回ったりした。
◇ ◇ ◇
ルーシー達が公園を去った十分後。
アスファルトの上をパタパタと足音を鳴らして歩く二人が公園に近づいてくる。
「明日、本当に来るんだよな」
「うん。必ず来る。……約束したんだから」
二人の男性が公園の入口に立ち、白い息を吐きながら、公園の中のある遊具を眺める。
「冬矢、付き合ってもらって悪いね」
「気にすんな。俺たち何年の付き合いだと思ってんだ」
仲良さそうに会話する二人。
一人は、男性にしては少し長めの髪で茶髪。一件チャラいようにも見える容姿だが顔は悪くない。
もう一人は、黒髪でミディアムヘア。首元には白いヘッドホンがかけられていた。
「ルーシー。必ず行くからね……」
◇ ◇ ◇
家に戻ると、また家族揃っての夕食。
「ルーシー。俺から言えることは、期待しすぎるなってことだ」
「兄さんの言い方は悪いけど、リラックスしなよってことだと思うよ」
「お前は俺の翻訳機かよ」
アーサーの言葉を翻訳してくれるジュード。口はちょっと悪いが、アーサーも心配してくれてるらしい。
「俺達はあいつをずっと見てきた。……まぁ、悪いようにはならないだろ」
「ルーシー。うまくいくといいね」
「ありがとう……」
二人は私に優しい言葉を贈ってくれた。
もう今からドキドキしっぱなしだ。もう指定した時間まで二十四時間を切っている。
「はい、ルーシーこれ」
母が何かをテーブル越しに渡してきた。
「日本式のお願い事。今日近くの神社に行って買ってきたの」
小さな紙袋を開けると中身はお守りだった。
「縁結び……」
母からもらったお守りには『縁結び』と書かれていた。
「ルーシーの出会いがこの先も良い縁で結ばれていきますように……」
「お母さんっ……本当にありがとう」
気遣いがとても嬉しい。母はイギリス人だが、もうどっぷりと日本文化に浸かっている。
日本で行われる行事には毎年気合を入れていたし、着物や浴衣などの日本の服も大好きだ。
私はこのお守りを誕生日プレゼントで父からもらった財布に入れた。
夕食を終えると、また真空と一緒にお風呂に入った。
「もう明日だね……」
「心の余裕がなくなってきた……」
「それね、私も」
真空も同じく緊張してきたようだ。
それもそうだ。何度も光流の話を聞かせてきたし、わざわざその為に真空を連れてきたのもある。
ちゃんと光流に真空も紹介できたらいいんだけど。
「絶対うまくいくよ、ルーシー」
「真空、ありがとう」
お風呂から上がったあと、ベッドの中でぎゅっと私を抱き締めてくれる真空。私も同じく真空を抱き締め返した。
◇ ◇ ◇
十二月二十四日。
ついに光流との約束の日がやってきた。
「真空っ! 見て……」
「わぁ……凄い。予報通りだ……」
朝起きると、窓のカーテンを開けてみた。
すると窓の外には、これでもかというほど雪が降り積もっていた。今年、東京での初雪だそうだ。
「ホワイトクリスマス……」
東京は雪に弱い。電車もすぐに止まったりする。
少し交通状況も気になる。
ちゃんと光流、これるよね……?
心配してもしょうがない。私は私で約束の時間通り行くだけだ。
――もう、光流を待たせない。
私は約束の時間になるまで、家で過ごした。
ー☆ー☆ー☆ー
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私と真空はお出かけすることにした。
黒のバケットハットを深く被り、包帯をできるだけ隠すようマスクまでした。
今日の目的は、下見というか……思い出の地を確認することだ。
「じゃあ、行ってきます」
「気をつけてね」
母にお出かけの挨拶をして、真空と一緒に家を出る。
氷室も加え、須崎の運転で四人で移動。二十分ほどで目的の地へ到着。
車のドアを開け、私達は一緒に降りる。
「変わってない……」
公園の入口から中を見渡す。
四年前のあの頃のままだった。公園は改修されることがよくある。なくなったりもする。しかしこの公園は変わっていなかった。それを嬉しく感じた。
「ここなんだね。ルーシーの始まりの場所は……」
「うん……」
真空はここにどんな思い出があるのか、ある程度知っている。
私もあの頃の記憶を思い出しながら、公園の中に足を踏み入れる。
ドーム型の遊具。光流が声をかけてくれた場所。
穴がいくつか空いていて、中は少しだけ広い空間が広がっている。
ただ、成長した体では遊具は少し小さく感じた。
「公園は変わってないけど、私は変わったみたい」
「大きくなったもんね」
ペタペタと遊具の外装に触れる。十二月の冷たい空気で遊具は冷え切っていた。
「ついに明日か……」
どうなるのか、想像もつかない。光流はどんな顔をしているのか。私のことをどう見てくれるのか。
本当に来てくれたら、私の素顔を見て、どう言ってくれるのか。
わからない。
でも会いに行くと言ってくれた。
私は待つだけだ。
滞在時間は五分ほど。ずっと公園にいてもしょうがないので、私達は車に戻った。
その後は、真空と一緒に久しぶりの日本の商業施設に立ち寄って、クリスマス限定の化粧品を見て回ったりした。
◇ ◇ ◇
ルーシー達が公園を去った十分後。
アスファルトの上をパタパタと足音を鳴らして歩く二人が公園に近づいてくる。
「明日、本当に来るんだよな」
「うん。必ず来る。……約束したんだから」
二人の男性が公園の入口に立ち、白い息を吐きながら、公園の中のある遊具を眺める。
「冬矢、付き合ってもらって悪いね」
「気にすんな。俺たち何年の付き合いだと思ってんだ」
仲良さそうに会話する二人。
一人は、男性にしては少し長めの髪で茶髪。一件チャラいようにも見える容姿だが顔は悪くない。
もう一人は、黒髪でミディアムヘア。首元には白いヘッドホンがかけられていた。
「ルーシー。必ず行くからね……」
◇ ◇ ◇
家に戻ると、また家族揃っての夕食。
「ルーシー。俺から言えることは、期待しすぎるなってことだ」
「兄さんの言い方は悪いけど、リラックスしなよってことだと思うよ」
「お前は俺の翻訳機かよ」
アーサーの言葉を翻訳してくれるジュード。口はちょっと悪いが、アーサーも心配してくれてるらしい。
「俺達はあいつをずっと見てきた。……まぁ、悪いようにはならないだろ」
「ルーシー。うまくいくといいね」
「ありがとう……」
二人は私に優しい言葉を贈ってくれた。
もう今からドキドキしっぱなしだ。もう指定した時間まで二十四時間を切っている。
「はい、ルーシーこれ」
母が何かをテーブル越しに渡してきた。
「日本式のお願い事。今日近くの神社に行って買ってきたの」
小さな紙袋を開けると中身はお守りだった。
「縁結び……」
母からもらったお守りには『縁結び』と書かれていた。
「ルーシーの出会いがこの先も良い縁で結ばれていきますように……」
「お母さんっ……本当にありがとう」
気遣いがとても嬉しい。母はイギリス人だが、もうどっぷりと日本文化に浸かっている。
日本で行われる行事には毎年気合を入れていたし、着物や浴衣などの日本の服も大好きだ。
私はこのお守りを誕生日プレゼントで父からもらった財布に入れた。
夕食を終えると、また真空と一緒にお風呂に入った。
「もう明日だね……」
「心の余裕がなくなってきた……」
「それね、私も」
真空も同じく緊張してきたようだ。
それもそうだ。何度も光流の話を聞かせてきたし、わざわざその為に真空を連れてきたのもある。
ちゃんと光流に真空も紹介できたらいいんだけど。
「絶対うまくいくよ、ルーシー」
「真空、ありがとう」
お風呂から上がったあと、ベッドの中でぎゅっと私を抱き締めてくれる真空。私も同じく真空を抱き締め返した。
◇ ◇ ◇
十二月二十四日。
ついに光流との約束の日がやってきた。
「真空っ! 見て……」
「わぁ……凄い。予報通りだ……」
朝起きると、窓のカーテンを開けてみた。
すると窓の外には、これでもかというほど雪が降り積もっていた。今年、東京での初雪だそうだ。
「ホワイトクリスマス……」
東京は雪に弱い。電車もすぐに止まったりする。
少し交通状況も気になる。
ちゃんと光流、これるよね……?
心配してもしょうがない。私は私で約束の時間通り行くだけだ。
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