隣人がうるさいのが悪い

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 隣人の部屋がうるさい。

「あああっーーやっばいわ、これ……来る来る来るっああっ、あっ、だめだ。も、イっていいよな? な? 」

 俺の部屋には聞きたくもない男の喘ぎ声が薄い壁越しに結構な音量でだだ漏れしてくる。毎日でない事だけが救いだが、いつまた聞こえてくるのかと思うと自分の家だというのにちっとも気が休まらない。

「うわ見て、チンコの先くぱくぱしてんの……っは、漏れちゃいそーーは? ふざけんな! もう勝手にイくし」
  
 喘ぎに怒号が混じる。隣の声はいつもそうだ。喘いで怒って、また喘ぎだした所で俺も自分の陰茎を握った。男の声なんかに振り回される苛立ちをぶつけるように初っぱなから強く陰茎を擦る。

「ああ、あ、いいいいっ! だめっ腰止まんね、下からっあっ苦情くるっ……んっ、ぅああああーーあっ」

 ギシギシ鳴る椅子の音が一際ガタンっと大きくなった時、喘ぎ声もピークになった。やっと達したのだろう。イった後も「んっんっ」と甘えたような声がする。

「お前らも抜けた? 抜けなくってももう終わり。俺にぶちこむ夢でも見てろ。んじゃまたな、クロでした」

 もう聞き慣れた台詞口調の声を区切りに部屋が静まる。自分の掌にはねっとりした精液が残っていた。男の喘ぎ声で抜きたくなんてないのに、隣人がうるさいのが悪い。下じゃなく隣を気にしろ。



 就職を機に引っ越してきたのが約一年前。仕事始めでなにかと家を空ける事の方が多かった俺が隣との壁だけ異常に薄い事に気づいたのが半年前になる。

 思えば立地や設備が良いわりに安かった。他の住人層を見るに、元は家族向けの分譲だった部屋を後から二つに分けたんじゃないかと思う。音漏れ込みでの低価格だとしても他の条件が良すぎて転居するには惜しいのが正直なところで、隣人さえまともな奴ならまだマシだった。

 隣には若い男が住んでいる。たぶん俺とそう年は変わらない。最初に見かけた時はホストかと思った。肩にかかる長い髪が白に近い金髪だったのと、身に纏う雰囲気が完全に夜だったからだ。しかし予想に反して隣人はほぼ家で過ごしている。引きこもりと言っていい。

 喘ぎ声を聞いた当初は女を連れ込んだのかと思ったものの隣の部屋に隣人以外の気配はない。それに気づいてちょっと引いた。自慰であの声量は普通に引く。

「ーーはいはい、どーも。今日も迷子のクロでーす。お金もせーしもスッキリして帰ってねーはじめるよー」

 どうも配信してるようだと気づいたのは自慰ではなくテレフォンセックスかと疑いはじめたすぐ後だった。毎度誰かに話しかけながら喘いでいるようだったから、それが妄想でなかったことに少しだけ安堵した。

「あ……おはようゴザイマス」
「……ども」

 ゴミ出しの時くらいしか顔を合わす事はなかったが、見かければつい「こいつが喘いでて、それを喜んで視聴してる男が居るんだよなぁ」とマジマジ見てしまう。隣人はいつも気だるげだが何度か挨拶するうちに薄っすら愛想笑いを浮かべてくるようになった。

 そのあたりから、聞きたくもなかった男の喘ぎ声に段々と下半身が反応するようになってきたように思う。一度抜いてしまったら後は泥沼だった。

 向こうはこっちの都合なんかお構いなしにおっ始める。飯食ってる最中だろうが隣人の声が耳に届けば否応なしに勃起してしまい、箸を置いて陰茎を握る。そんな苛立つ虚しい日々を数ヶ月続けた。

「今日は新作ディルド入れちゃいます。頂き物です、どーも……ってこれさすがに太すぎだろ、入んのか? えっ、マジちょっと待って……んっんん、きつっ」

 あの怠そうな隣人はどんな顔して尻にディルドを突っ込んでるんだろうか。配信してる最中にも視聴者に媚びたりはしないらしく、いつだって隣人は隣人のまま。自由に怒鳴って自由に喘ぐ。

「あー無理っ! 半分が限界っ……もうギチギチなの、見りゃわかんだろ。え、動かす? このまま?ーーっああ待ってまっ、あっ、あっも、勝手に入ってっんんん」

 音と声が壁を隔ててリアルに届いてくる。想像するのはディルドに串刺しにされ涙と涎に塗れた隣人の姿。真っ赤な顔で息を乱して壁にーー俺に手を伸ばして……。

「っだめこれ、あ、あっスイッチどこっ、ああっも止まれってぇぇ……いっやだやだやだ止めて、あ、イくっ」

 声が途切れ、規則的に蠢く機械音が小さく響く。はっはっと餓えた犬のような息遣いが聞こえたと思ったら自分だった。それが隣にまで聞こえてしまいそうで慌てて腕で口を覆う。苦しい。息が、はち切れそうな陰茎が。

「っは、はは……もう、イっちゃった。恥ずかしいから今日は終わりな。後は勝手に画面の俺にぶっかけて」

 それきり隣が沈黙してしまったから、今どんな姿を晒しているのか全く分からなくなった。部屋で一人ぐったりと項垂れる自分の精液に塗れた隣人から蠢き続けるバイブを引っこ抜き、俺の陰茎を奥の奥まで一気に突き挿してやったら……止まらない妄想に掻き立てられ無心に陰茎を扱く。息を殺そうとするせいで血管が切れそうなほど興奮した。

「ーーんじゃまたな、クロでした」

 締めだけは忘れなかったらしい、とぼんやり思う。


 熱が引くとタブレットで隣人の事を検索した。特定するのは思ったより簡単で、アダルトサイトの中でも大手なのが幸いして「クロ」という配信者に行き当たる。最初の配信は二年前。俺が越してくるよりだいぶ前だ。

 過去の配信を観るには有料会員になる必要があったが躊躇したのは一瞬で、次のライブ配信を待ちきれずにその場で登録した。かなり頭がおかしくなってる自覚はある。けれどどうしても初めから観たかった。

「……あ、どーも。迷子のクロです。ホモバレして親に家追い出されたんでアナニー始めようと思います。え? おかしい? うん、だから迷子だって言ってんの」

 開始とともに若干緊張した隣人が現れた。マスクで遮ってもないそのままの顔だ。怠そうなのは変わらずだが好き勝手に囃し立てるコメントには皮肉そうな笑みを浮かべる。

「先に言っとくけど俺したくない事するつもりねーから。全くのアナル処女だし……勝手にやるからお前らも勝手に抜いとけ」

 経験がなかったのは本当なんだろう。証明するようにカメラに近づけた指一本さえきつそうな後孔はどこか健全で、小さなアナルパールを入れるのにも苦労していた。

 配信を重ねる毎にただの孔が柔らかな唇のようになっていく。隣人はーークロは気持ち良くないと感じたらすぐに止め、気持ち良い事だけ選んで貪欲に求めた。そのせいで視聴者ともよく衝突する。

「あ? 文句あるなら見んなって言ってんだろ! うっ、いやまぁこないだは確かに気持ち良かったけど……お前らが騙すからイキっぱなしになったんだろーが!」

 媚びずに対等に言い合うのを視聴者も楽しんでいるようで、その珍しさもあって順調に視聴数を稼いでいる。観ていると、どこか小馬鹿にしたような眼で見てくるクロが最後までは堕ちきらない事への歯がゆさがある。気づけば堕ちろ堕ちろと呪いのように念じていた。



 そして過去の動画を全て見終わった日、隣の家のインターフォンを押した。

「はい……え、隣の人?」
「そ、隣です。騒音の件で。こっちに音漏れしてんの、気づいてますよね」
「ーーあ、開ける! ちょっと待ってて」

 思った通りクロは俺に聞こえてるのを承知で配信をしていたらしい。そりゃそうだ、俺の部屋の音も向こうにだだ漏れなんだからな。生活していれば気づく。

「えーと苦情? 中入る? 怒ってる?」

 配信の印象からてっきり開きなおるかと思っていたが、扉を開けたクロは気まずげに目を泳がせていた。一応の罪悪感はあるようだ。

 何の危機感もなく部屋に招き入れられたので、ありがたく上がらせてもらった。質素なクロの部屋には淫靡な雰囲気はなかったが動画で見ていた家具を実際目にすると記憶に引っ張られてしまいそうで目を逸らす。

「とりあえず、ごめん! 最初はお兄さんが居ない時を狙ってたんだけど……昼中心だとちょっと都合悪くて」
「……はぁ」
「あーやっぱ怒ってる? 顔合わせても何にも言わないから意外と気にしてないのかと……ごめん、ね?」

 机を挟んだ向かい側に座るクロは顔の前で両手を合わせた。こちらを窺うように僅かに首を傾げるせいで、長い前髪が顔にかかっている。普通に……話しているだけだ。なのにクロが妙な雰囲気を醸し出しているように感じるのは動画を観たからではなく、元々備わっているものなんだろう。

「……俺は謝ってもらいに来たんじゃないです」
「え? あ、そうなの? んじゃなに?」

 手っ取り早く話を進めようと持ち込んだタブレットで配信動画を再生する。もちろんクロのものだ。一番新しい、クロが極太ディルドに翻弄されてイかされてたやつを選んだ。一番嫌がりそうな悪意を込めたチョイスだ。

「これ、見せてください。特等席で」

 クロは黙って画面の中の自分を見つめる。俺もクロも喋らないから画面のクロの喘ぎ声だけが部屋に響く。

「あー確認だけど……」
「断るなら今すぐブチ犯しますね」
「だよねー。まさか隣がリスナーとか最悪……」
「ここ越してくるまでドノーマルでしたけどね」
「うわ、俺のせいか……つか敬語やめて圧がすごい」

 正確に伝わったようだ。まだ悩んでるようだが部屋にあげた時点でどのみちクロの辿る道は決まっている。だけど出来ればクロはクロのまま欲しい。

「わかった。いいよ、どうせ今日ライブやる予定だったし。黙ってるなら勝手に見てって」

 投げやりに許可を貰い、いつも配信に使ってるらしいパソコンデスクの前に移動した。そこから半歩ほど距離をとった所にある社長椅子がクロの定位置。俺はカメラの死角になるデスク下に潜り込まされた。

 クロが手慣れた様子で準備していくのを興味深く見つつ、俺もタブレットでライブ画面を表示させる。特等席だが一視聴者としてどう映ってるかも観てみたい。

「お兄さんも物好きだねー。抜いていーけど静かにね」

 声をかけながら椅子にドカリと座ったクロは配信でいつも着ている大きめのTシャツにノーパン姿だった。色んな衣装を提案されようが鼻で嗤って着ようとしないのだ。女装なんて言おうものなら高確率でキレる。

「なんか……クロだ」
「わかってて来たんだろ、何だよ今さら」
「なんだろ、ファン心理かな」
「うわぁーお兄さんだいぶキてるね」

 片眉を上げて挑発するように言われるが、それが誰でもなく自分に対して言われているのだと思うと背筋がぞくぞくした。クロに何と言われようと否定は出来ない。

「あ、時間だ。もう始めるよーーはいはい、どーも。迷子のクロでーす。お金もせーしもスッキリして帰ってね」

 配信が始まり、タブレットを見ればいつもと何も変わらない画面の中にクロが映っている。コメントだって普段通りで誰も違和感なんて持ってない。

「今日はねー電動コックリングが届いたんでそれ使おうかな……これ、最新式だって。見たことある? 高性能すぎてパッケージ読むだけでやばい」

 クロが取り出したのはごちゃごちゃした形のシリコンだった。俺の知っているコックリングとは違う。惜しげもなくペロンとTシャツを捲り、露になった陰茎にクロが苦労しながら装着するのを見て変に感心した。

 萎えた陰茎の根元にバングル状の環が巻き付き、その下では丸い輪が陰嚢を縛っている。見るからに窮屈そうだ。

「ん、見た目ほどきつくはない……けど勃つときついのかな。おい、別に規格外ほどチンコ小さくねーから! よく見ろ、萎えてるだけだし」

 コメントに反応したクロが片足を椅子に上げて画面に見えやすいよう陰茎を持ち上げる。俺の目の前で。まだ芯のなさそうな柔らかそうな陰茎がふるふる揺れている。

「後ろは……何にしよっかな。こないだのディルド……は単体でもヤバかったし、今日はエネマ! 電動なし!」

 傍にあったディルドをチラ見する時、さりげなくこっちを見ていた。前回のような姿を直接俺に見られたくないらしく、コメントが必死にディルドを推してようが勝手なクロはスルーを決め込む。

 ローションを手に絡ませ、エネマと後孔にも塗りつけて椅子の肘掛けに足を乗せる。俺の位置からだと影になることもなく本当に何もかもが露だった。何もつけてない素肌にコックリングの黒が映える。

 クロが指の先を挿し込むと咀嚼するように蠢く後孔が卑猥だった。少しぽってりして見えるから俺が来る前は準備をしていたのかもしれない。中まで濡らし終えるとエネマをすぐに呑み込んだ。

「ん、おっけー。じゃあコックリングの電動入れるよ……うわ強さ十段階あるし。どの位にするべき?」

 従う気はない癖にクロが聞くからコメントも好き勝手言っている。十ばかり並ぶのを見てクロが笑う。数字ばかり並ぶコメントの中、悪戯心で「もっとTシャツ捲れ」と書いてみた。一瞬こっちを見てクロがまた嗤った。

「乳首見たいの? いいけど。強さは三にする、異論は聞かない……聞かないって言ってんだろ。ちょっと勃ってきたからリング締まってきてんだよ、察しろ」

 Tシャツを首まで上げて凭れた背中で押さえる。クロの乳首は小さかった。配信でも何度か乳首を晒したり開発したりしていたが最近見ないのは大きさを気にしてるのかもしれない。感度は良さそうだったのに勿体ない。

 見せつけるように指先で撫でながらも「……小さい」と呟いていた。唇を尖らせ気味なのが少しだけ可愛い。

「んじゃスイッチ入れまーす。えいっ……あ、ああこれ結構くるな。根っこから奥に響く感じ……うん、いい。ちょっと苦しいけどっ、ん、いい」

 椅子にゆったり身体を預け、腰を卑猥にくねらせて、少し物足りないのか亀頭だけ指で摘まんで転がす。クロのふーふーと艶めいた息遣いと、壁越しには聞こえなかった小さな水音が欲情を煽ってくる。

 勃起して締め付けが強くなった陰茎が赤く色づいていく。ぎゅっぎゅっと後孔が窄まると堪らなそうに腰を揺らし、陰茎の先から粘っこい雫が溢れた。

「っこれさ、俺イけんのかな……っん、きつくて。チンコめっちゃ熱くなってんのに、っ……うん。強くする、ちょっとだけなーーあっ、だっあああエネマにくるっ」

 振動を弄った瞬間、腰が跳ねた。前に押し出すようにガクガクさせながらカウパーだけを垂れ流すクロは汗だくだった。何の汁か分からないものがこっちにも飛んでくるともう我慢の限界で、クロの喘ぎに合わせて静かにズボンから陰茎を取り出した。ガチガチすぎて擦ってしまえばすぐイキそうで根元をきつく握る。

「ううーっ……イく! ああっ出したいい、いっや、ケツイキやだっ……前がいいっ、んんん……あああーっむりイくっ、あ、あっ」

 必死に陰茎を扱くのに塞き止められ泣き声みたく叫ぶ。後孔ばかり食い締めるせいで後ろでばかり刺激を拾ってしまうのだろう。嫌だ嫌だと言いながら達した。

 クロが暴れるせいで椅子が壊れそうなほど大きく揺れて、同時にガシャンと不自然な音がした。

 見れば足元に小さなリモコンが落ちている。何の、とは思わない。クロが大事に持っていたコックリングのリモコンだ。思わず手に取るとクロと目が合う。

 辛そうに呼吸をしながらイったばかりだと言うのにもどかしそうに腰を小刻みに揺らし続けている。快感が止まないんだろう。熱に浮かされた眸が何か訴えている気がしたが、視点が定まらないのかクロはすぐにきつく目を瞑った。

「ーーっくそ、これ外れないし。も、なんでだよ……あああ、あ、もうエネマっ抜けねー! っううう……んんん……もっ、きつい、あああまたイく、っあああーー」

 必死になって拘束され続けて真っ赤に膨れた陰茎からコックリングを外そうと弄るが、完全に勃起した今の状態では無理だろう。エネマを抜くのにすら苦戦して、またクロはガクガク腰を振ってカウパーを撒き散らす。

 周期がどんどん短くなっていく雌イキを眺めながら、俺も陰茎を扱く。イキっぱなしのクロと同じくらい汗だくになりながら興奮に脳が霞む。妄想より動画よりクロは何倍もエロい。クロの匂いも温度もすぐ目の前にある。

 出そうだ、というタイミングでクロが俺に言った。

「たす、たすけてっ、もうーーーっあああああああ 」

 なら助けてやろうと迷うことなくリモコンで振動を最大に引き上げ、一緒に達した。気持ちよく射精した俺とは違い、クロはこれだけしても射精できないようだったが。

 振動を止めてやらないせいでクロは延々と凶器のような快感に暴れているが、タブレットを見ればライブ配信も終了間際の時間になっていた。

「お、おわっおわりっ! う、あああおわりにして」

 強さを下げてやるとクロが締めっぽい言葉を吐いていた。クロの普段と違う様子を不審に思ったようなコメントもあったが配信は終わり、コメントも消えた。



「ーークロ、終わった」

 狭い机の下から抜け出てクロにリモコンを手渡すが、そんな余裕はなさそうで受け取ってもらえない。傍で見下ろす角度になると、全身どろっどろのクロが少しばかり可哀想に見えた。

「っ、イきたい……出したい、とって、」
「注文が多い。つかまだイってるだろ、クロ」

 ひくつき続ける後孔に刺さるエネマをピンと弾くと、クロが大袈裟に跳ねた。途切れ途切れに訴えるのは「助けてって言ったのに!」って抗議らしい。

「なら止めてってちゃんと言ってくんないと」
「と、とめてっ、あっ、いま」
「いーよ」
「エネマも! とって」
「うん……おい、クロちょっと弛めろって」

 エネマを抜けば少しは楽そうにするかと思ったのに、物足りなさそうに後孔が蠢くので、仕方なく入り口だけ中指で浅くぬぷぬぷ抜き差してやる。クロの中は火傷しそうなほど蕩けていて、舐められてるみたいに挿しこむ指ですら気持ち良い。

「ああ、あ、なんでっ、」
「萎えなそうだし、出した方が早い。長いこと締めすぎてもう赤黒くなってきてんじゃん」
「あっん触んなっ、でないから」
「クロ、こっち。ちょっと下に座って」

 半べそかいてるクロを椅子から下ろし、自分の膝に乗せても嫌がりはしなかったが予想よりクロがぐったりしていたので、そのまま床に寝かせた。

 さてどうしてやろう。まな板の鯉は何もないのにぴくぴく動いている。こうなればいいなーと思った通りの道を自ら進んで歩いてきてくれた事に笑みが溢れる。

「出したい? どうやったら出そう?」

 聞いてもクロは「わかんねーよ」と首を振るだけ。抵抗しないので、半ば覆い被さりながら以前から気になっていた小さな乳首に舌を這わせた。

「んんっ」
「気持ち良い? 自分で扱いたらイけそう?」
「あっ、むりっ……んん」

 無理と言いつつも、ねちっこく舌で嬲るともどかしそうに俺の腹に陰茎を擦り付けてくる。

「な……舐めて、おねがいっ」
「ん? 乳首?」
「ちがっ……んっ、フェラして、吸って」
「ーーいいよ」

 ちょっと驚いた。堪え性がないとは思っていたが……ってか軽々しく了承したけどフェラ出来んのか? 俺。いざ直視した陰茎はとにかく痛々しくて口をつけるのを躊躇した。ひくつく後孔になら全く抵抗がないのに。

 握って恐る恐る舌をつけると、クロが甘い息を漏らす。目さえ閉じてしまえば良いのだと気づくと、深く咥え込んでも平気だった。

「っはぁぁ、きもちいっ……チンコ溶けそ、熱っ、うう出そう、あっ、そんな吸っ、ちゃ……あっあっ」

 隣の部屋で聞いてるみたいなクロの声。想像じゃなく現実だ。咥えたまま目だけで窺えば、白金のような髪をぐしゃぐしゃに掴んで快感に耐えている。わざとらしくジュルジュル音を鳴らすと両手で顔を覆ってしまった。

 後孔の入り口に浅く親指をかけて引っ張ってやると陰茎がぴくぴく反応するので、押したり引いたりしながら強く口で扱く。

「いっいきそ、出るからっ……出してい? くちっ、吸ってて、あ、おねがいっーーあ、っでる、あっあ」

 口のなかにドクドクと音が聞こえるような勢いで精液が流れ込んでくる。味はあまり感じないが鼻に抜ける青臭さがあった。勢いで飲み込んでやれる自信まではない。ひとまず掌に吐き出してクロの腹に塗りつける。

 まだ放心しているようだから代わりに少し萎えた陰茎から慎重にコックリングを外す。血流が戻ると色味もピンクになりホッと息を吐いた。

 吐いた息がまだ青臭かったのに苛ついて、クロの半開きの口に舌ごと滑りこませると初めてクロが嫌がった。

「……う、やめて、まずい」
「人に吸わせといてよく言うな」
「それは……ほんとごめん」

 当たり前みたいに、もう一度キスしてもクロはもう嫌がらない。舌を絡めて唾液に混じると味なんてすぐに分からなくなった。鼻に残ってしまった厭らしい匂いに煽られて馬鹿みたいにキスをして、クロを潰さないよう支えについた腕をクロが掴むから余計に止まらなくなる。

「クロ、セックスしない?」

 ガチガチに勃起した陰茎を擦り付けながら聞く。

「しないしない。もう嫌だ、お腹いっぱい」
「クロが勝手にイきまくってただけだろ。なぁ……お願いしたら良いのか? さっきみたいに」

 最初に塗ったローションとかクロや俺が出したものでぬるぬるの後孔に陰茎を滑らせながら、クロが先にお願いしたのを揶揄するとクロの目が泳いだ。

 このまま少し力を入れれば挿入ってしまいそうだが、後孔を押すばかりで滑って逃げてしまう。もどかしいのはクロも同じだろう。

「クロ? ディルドも気持ち良かっただろ? 俺は機械じゃないから加減もするし……あ、なんか入っちゃいそう」
「うあっだめ、って……入ってくる、ううっ」
「いやもう半ばクロに食われた雰囲気だったけど」

 我慢できずに後孔から吸い付いてきたように感じた。クロは首振ってるけど。細かく前後に揺らすと中へ中へ引き込まれる。入り口の抵抗すら甘噛み程度だ。

 段々動きを大きくしても柔軟に受け入れるのは今までの配信で開発していたお陰なんだろう。下拵えは十分。美味しくいただこうと腰を動かす。

「ーーああっそこ駄目なとこっ……うあっ、そこ来る! ぐりぐりしたら、またイっちゃ、あああだめっ」
「ここ膨らんでる。エネマのせいかな……堪んない?」

 上向きに擦ると反応が良い。クロの前立腺は腫れてるのか厚みがあるから確認を兼ねて重点的に抉る。エネマを思い出して後孔のすぐ近くの会陰も押してみたら、クロの腰がガクガク震えだした。

 クロが気持ち良いと後孔が痛いくらい締まるから、そこを強引に引き抜くたびに陰茎を搾りあげられる。その癖、中はとろっとろだから円を描くようにかき回すと包み込まれるようで気持ち良い。

「お兄さん……気持ちい、どうしよ、っこわい」
「雌イキするのが嫌なの? まだ出したい?」
「なんっか、漏れそうで、どっちも怖くてっ……」

 言われてクロの陰茎を見るが、緩く勃ったまま先っぽが出したそうに開閉しているだけで射精しそうにはない。まぁ何を出されても今さらだった。もうクロも俺も全身が汁っぽい。

 むずがって頭を振ったり踵を床に擦りつけるクロの姿はむしろ興奮を煽って、激しく抽挿してしまう。逃げるクロが腰を浮かせるから片手で押さえて身体をぶつける。

「いいから。イって出して。配信みてた時からクロが堕ちれば良いってずっと思ってた」
「なんっ、それ、あっあっも……もう無理っ、イくっうああ、んんっあああーーあっ、駄目だめだめっ」

 解放を求めてパクパクしてるクロの陰茎の先を抉りながら、膨れた前立腺を押し出すように叩きつけた。クロがギュッと力いっぱい締め付けてくるから、抜く暇さえなく中に吐き出してしまった。

 身体を引き攣らせて達したクロは陰茎からブシュブシュと透明な液を撒き散らしていた。止めたいのに止まらないのか「あっああっ」と甘ったるい声が止まない。

 それでも気持ち良いのだろう。恍惚とした顔は今まで見た中で一番……綺麗だとかそうゆう形容詞は微妙に違う気はするが、一番グッときた。

 俺の掌はビショビショで身体も同じでクロの顔だって 涙と涎で酷いもんだが、引き寄せられるようにキスをした。舌を吸って絡ませて、唇を吸いながら離れたらクロと目が合った。何故だか胸がいっぱいになって眦の涙を吸う。

「ーー今さらだけど。たぶん俺……クロが好きだわ」

 俺の中に渦巻いてるのはそんな単純なものだけでもない気がしたが、とりあえず伝えるとクロが固まった。ものすごく複雑そうな顔だった。



 配信から一週間。まだクロは次の配信はしていない。

 あの配信の後は大変だった。部屋の惨状もだがゴムつけ忘れた挙げ句の中出しにクロはご立腹で、今までの騒音被害を帳消しにする約束で何とか許してもらった。

 何気にクロがギリギリ未成年だったのもあり、こちらの分が悪い。場合によっては強姦するつもりだったとは口が割けても言えないだろう。

 毎夜仕事が終わるとお詫びと称した食事に誘い、クロと話をして大学を休学中なのを知った。家を追い出されて自棄になって、配信で生活費を稼いでいたようだ。つまり非行に走ったんだなと言ったらキレられた。 

「もう貯金があるならそろそろ配信やめて大学戻ったら? 身体で払うなら食費と家賃くらい出してやる」

 配信はやめて俺だけのクロになって、と言いたいのがついネジ曲がってしまうがクロには何となく本音の方が伝わったらしく、苛つく顔で嗤われた。

 流されたので返事はない。けど配信もない。

 メールすることもなく壁に向かって食事に呼びつけたクロが、バツが悪そうに随分と落ち着いた印象のくすんだ茶髪で現れたのはその一週間後だった。


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みんなの感想(1件)

いん
2023.11.02 いん

クロくんがとてもエロかわいいです。
攻めさんのゲスいところも含めてとても良かったです!

exact
2023.11.02 exact

いんさん、感想ありがとうございます!

クロにエロ可愛いは最高の褒め言葉です。攻めのお兄さんは普段はいたって真面目なフリをしたゲス野郎ですが、クロを放し飼いは危険なので良い感じに手綱を握ってくれると思います。
読んでくださってありがとうございました!!

解除

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