空色のクレヨン

みどり

文字の大きさ
上 下
8 / 8

ソラ 準備する

しおりを挟む
学校でみーちゃんと別れた和歌とソラはお寺に帰りました。


お寺が見える所まで帰った時、箒と塵取りを持った

哲宗(てっしゅう)がふたりの方を見ていました。


和歌は哲宗のもとへ走って行きました。


「哲さん、ごめんね!」

「ふたりで散歩に行ってたのかな?

 なかなか帰って来ないから見に来てみたら

 箒と塵取が置いてあるだけだったから。 

 まだ外は暑いから、中に入ってお茶でも飲むといいよ。」


涼しい部屋の中へ入ったソラは

カバンの中から出ると大きな伸びをしました。


和歌は冷たいお茶を飲みながら哲宗に

みーちゃんと校長先生の話をしました。


「みーちゃんは頑張り屋さんだね。でも、工事の間だけとはいえ
 
 怖い思いをしたままなのはなのはよくないね。」

「そうなの。ママが勉強頑張っているからって
 
 遊園地に連れて行ってくれるからって
 
 怖いのをひとりで我慢してるのよ。」


「和歌さん、また力入っちゃってるけどどうしたの?」

ネコのお母さん雪が哲宗と和歌の様子を見ながら言いました。


「和歌さん、みーちゃんの力になりたいみたいなんだ。」

ソラは学校へ行ったことを雪に話しました。


「それにしても、和歌さんは少し落ち着かないとね。」

お茶のおかわりをしている和歌を見ながら雪は言いました。


「みんな、人間と関わるとロクなことがないから、ここから外へ出るんじゃないよ。」

雪は四匹の子供たちに向けて言いました。


「お母さん、ここだって人間の住む所じゃない。」

とソラは言いました。

「ここは特別さ。結界が張ってある。」

「けっかい?」

「まぁ、いいさ。ソラみたいな子どもにはまだわからないだろうからね。」

「お母さんはここが特別だからここに来たの?」

ソラは雪に聞いてみました。

「そうだね。それもあるかもね。ソラだってそうなんでしょ?」

ネコの兄弟たちは雪のもとを離れて

もうその辺で遊んでいました。


「ボクがここへ来たのはどうしてかって?

 ボクはあの日、門の所から中を見ていたんだ。」


ソラはここに来た日のことは覚えているのですが

どこからどうしてここに来たのかは

思い出せませんでした。


「どうして来たのか?なんてどうでもいいじゃない。

 今私たちはここで平和に暮らしているのだから。」


雪は自分の前足のお手入れをしながら言いました。



「ソラ、みーちゃんの家に泊まりに行きましょう!」

突然、和歌が言い出しました。

哲宗と和歌の話を聞いていなかった雪とソラは

びっくりしてふたりの方を見ました。


「そのためには準備をしないとね。」

哲宗は墨と半紙の用意をし始めました。

「ソラもみーちゃんのお部屋に泊まる準備をしないとね。」

和歌もなんだか楽しそうです。


「準備って言ったって、ソラはオバケなんだから
 
 準備なんかいらないわよ。」

雪は前足のお手入れを念入りにしながら言いました。


ソラは何のことかわかりませんでした。


しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

佐吉と観音像

光野朝風
児童書・童話
むかしむかしのある村に佐吉という酒好きで遊ぶのが大好きな一人息子がいました。 佐吉は両親から怒られ続けます。両親は何故佐吉が畑仕事をしないのか理解できませんでした。 そのうち働きもしない佐吉のことを村人たちも悪く言うようになりました。 佐吉は「自分などいない方がいい」と思い川へと身を投げてしまったのです。 その後高名なお坊さんが村を訪れます。 そして佐吉が亡くなったことを嘆くのでした。

とげとげウィリー

一花八華
児童書・童話
誰かを傷付けてばかりのハリネズミの男の子のお話。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

シンデレラ バリエーション

冲田
児童書・童話
童話「シンデレラ」を題材にした もしも 物語です。

現実の世界

チルカワ桜那
児童書・童話
時は争いの時代。1人の少女がいた。

宝石の召喚師

Kanzashi
児童書・童話
石を探す旅に出ました。こどものころに読んだ「宝石の錬金術師」を思い出して・・・

まくちゃんとなかまたち

こぐまじゅんこ
児童書・童話
くまのまくちゃんと森の仲間たちのお話です。 短編集です。 よかったら、読んでみてください。 挿し絵もあります。

処理中です...