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第一部
兄として、姉として【1】
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モニカも部屋を出て行くと、室内にはリュドヴィックとマキウスの二人が残された。
「リュド殿、話しとは……?」
こうして、マキウスがリュドヴィックと二人きりで話しをするのは始めてであった。
いつもはモニカかヴィオーラが一緒だったので、国の英雄を前に妙に緊張してしまう。
「マキウス殿」
先程までの穏やかな雰囲気はどこに行ったのか、リュドヴィックは険しい顔をすると、怒りを表すように手を強く握りしめていた。
「貴方は大切な妹の旦那でもあり、私の義弟でもあります。けれども、私は妹にーー『モニカ』に辛い想いをさせた貴方を許せないでもいる」
先程はモニカの手前、リュドヴィックは怒らなかったが、本当は妹を追い詰めたマキウスを許せなかったのだろう。
「……申し開きのしようもありません」
「私が貴方の立場なら、決してこんなことはさせなかった。『モニカ』が部屋に籠もるようなことも、階段から落ちるようなことさえも……」
「……全てはリュド殿の言う通りです。『モニカ』に辛い想いをさせたのは、全て私の責任です」
「モニカ」の最も近くにいたマキウスが、もっと「モニカ」を大切にしていたら、「モニカ」は部屋に籠もることも、階段から落ちるようなこともなかっただろう。
階段から落ちた時、モニカは死ななかったが、それは結果論に過ぎない。全てはリュドヴィックの言う通りだった。
「カーネ族は誰より伴侶を大切にする種族と聞いていたからこそ、私は妹が『花嫁』に選ばれたと聞いて心底喜びました。ですが、妹が階段から落ちて瀕死の重症を負い、二度と目を覚さないかもしれないと聞き、私は妹の伴侶である貴方を憎みました。何故、妹を守ってくれなかったのかと……」
「申し訳ありません……」
「この国に来た本当の理由。それは、妹を連れ帰る為でした。貴方に妹を任せておけない。二度と目が覚めないのなら、私が生涯をかけて面倒を見るつもりでした……。それが妹への罪滅ぼしになると思い。ですが……」
テーブルが大きく揺れて、その振動で茶器が音を立てた。
リュドヴィックは握った拳を、テーブルに叩きつけたのだった。
「今のモニカは、貴方と居て幸せだと言う。自分は大丈夫だと……。そんな貴方に、私は引き続き妹を任せていいのか迷っています。またモニカが同じ想いをして苦しむのではないかと……また、瀕死の重症を負うような事態になるのではないかと……」
「リュド殿に恨まれても仕方がないと思っています。ですが……!」
マキウスはテーブルに額がつくまで深く頭を下げた。リュドヴィックが息を飲んだ音が聞こえたような気がした。
「リュド殿、話しとは……?」
こうして、マキウスがリュドヴィックと二人きりで話しをするのは始めてであった。
いつもはモニカかヴィオーラが一緒だったので、国の英雄を前に妙に緊張してしまう。
「マキウス殿」
先程までの穏やかな雰囲気はどこに行ったのか、リュドヴィックは険しい顔をすると、怒りを表すように手を強く握りしめていた。
「貴方は大切な妹の旦那でもあり、私の義弟でもあります。けれども、私は妹にーー『モニカ』に辛い想いをさせた貴方を許せないでもいる」
先程はモニカの手前、リュドヴィックは怒らなかったが、本当は妹を追い詰めたマキウスを許せなかったのだろう。
「……申し開きのしようもありません」
「私が貴方の立場なら、決してこんなことはさせなかった。『モニカ』が部屋に籠もるようなことも、階段から落ちるようなことさえも……」
「……全てはリュド殿の言う通りです。『モニカ』に辛い想いをさせたのは、全て私の責任です」
「モニカ」の最も近くにいたマキウスが、もっと「モニカ」を大切にしていたら、「モニカ」は部屋に籠もることも、階段から落ちるようなこともなかっただろう。
階段から落ちた時、モニカは死ななかったが、それは結果論に過ぎない。全てはリュドヴィックの言う通りだった。
「カーネ族は誰より伴侶を大切にする種族と聞いていたからこそ、私は妹が『花嫁』に選ばれたと聞いて心底喜びました。ですが、妹が階段から落ちて瀕死の重症を負い、二度と目を覚さないかもしれないと聞き、私は妹の伴侶である貴方を憎みました。何故、妹を守ってくれなかったのかと……」
「申し訳ありません……」
「この国に来た本当の理由。それは、妹を連れ帰る為でした。貴方に妹を任せておけない。二度と目が覚めないのなら、私が生涯をかけて面倒を見るつもりでした……。それが妹への罪滅ぼしになると思い。ですが……」
テーブルが大きく揺れて、その振動で茶器が音を立てた。
リュドヴィックは握った拳を、テーブルに叩きつけたのだった。
「今のモニカは、貴方と居て幸せだと言う。自分は大丈夫だと……。そんな貴方に、私は引き続き妹を任せていいのか迷っています。またモニカが同じ想いをして苦しむのではないかと……また、瀕死の重症を負うような事態になるのではないかと……」
「リュド殿に恨まれても仕方がないと思っています。ですが……!」
マキウスはテーブルに額がつくまで深く頭を下げた。リュドヴィックが息を飲んだ音が聞こえたような気がした。
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