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第一部
流星群と明かされた過去・下【9】
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立ち上がって、マキウスにハンカチを返すと、マキウスが差し出した手を躊躇いなく掴む。
来た道に向かって歩いていると、マキウスが心配そうな声色で尋ねてくる。
「もし何らかの方法で元の世界に戻れるとしたら、貴女はどうしますか?」
「元の世界にですか?」
「もしもの話ですよ。貴女は私たちを置いて戻ってしまうのか。それとも……」
「どうって……。私は帰りません。あの世界には、マキウス様もニコラも……私が愛して、愛されたいと思った人たちがいないから……」
不安そうな顔をしたマキウスを遮るようにして、モニカが答える。
「そうですか……。安心しました。私はもう貴女とニコラなくしては、生きていけそうにありません」
マキウスは一度「モニカ」を喪っている。だからこそ、不安になってしまうのだろう。
ーーいつの日か、モニカまでもが、自分の前から消えてしまうのではないかと。
「マキウス様が不安になる気持ちも分かります。好きな人がまた自分の前から消えてしまったらと思うと……辛いですよね」
「辛いどころではありません。今度こそ、生きている意味を見失います。貴女が元の世界に帰るだけならまだしも、万が一、死に別れたとなれば……貴女の後を追いそうです」
「それは駄目ですよ! 遺されたニコラが可哀想です。マキウス様がニコラを守らなければ、誰がニコラを……私たちの娘を育てるんですか?」
モニカの言葉に、マキウスはハッとした様な顔をする。そうして「そうですね……」と、モニカにだけ聞こえるような小声で答えたのだった。
「私だって、もう二人がいなければ生きていけそうにないです。元の世界に帰るとしても、その時はマキウス様とニコラが一緒じゃなきゃ嫌です」
「嬉しいことを言ってくれますね。貴女が元の世界に帰る時に限らず、どこ遠いところに行く時は、私とニコラを連れて行って下さい。……どこまでも一緒に行きます」
「はい。二人から離れません! ずっと、一緒にいます……」
マキウスが安堵の笑みを浮かべ、モニカはマキウスの腕にしがみつく。そうして二人がまた笑い合っていた時だった。
正面から草を踏みつけて、二人に近づいて来る足音が聞こえてきたのだった。
「誰ですか?」
マキウスはモニカを後ろに庇うと、警戒する様に声を低くして、足音の主に問いかける。
するとーー。
「元の世界?また死ぬ? 一体、どういうことなんだ……?」
やって来たのは、モニカによく似た金髪の男性と、マキウスによく似た女性という、二人がよく知る人たちであった。
この時まで、モニカはマキウスが最初に話していた内容を、すっかり忘れていた。確かに、マキウスは言っていた。
「この場所は私『たち』のお気に入りの場所なんです」と。
「お、お兄ちゃん……?」
「あ、姉上……?」
そこに呆然と立っていたのは、二人にとって大切な家族。
モニカの兄のリュドヴィックと、マキウスの姉のヴィオーラだった。
「どういうことなんだ……。モニカ、マキウス殿」
「お兄ちゃん、お姉様も……」
呆然とした顔のリュドヴィックの後ろからは、眉間に皺を寄せて険しい顔をしたヴィオーラが現れたのだった。
来た道に向かって歩いていると、マキウスが心配そうな声色で尋ねてくる。
「もし何らかの方法で元の世界に戻れるとしたら、貴女はどうしますか?」
「元の世界にですか?」
「もしもの話ですよ。貴女は私たちを置いて戻ってしまうのか。それとも……」
「どうって……。私は帰りません。あの世界には、マキウス様もニコラも……私が愛して、愛されたいと思った人たちがいないから……」
不安そうな顔をしたマキウスを遮るようにして、モニカが答える。
「そうですか……。安心しました。私はもう貴女とニコラなくしては、生きていけそうにありません」
マキウスは一度「モニカ」を喪っている。だからこそ、不安になってしまうのだろう。
ーーいつの日か、モニカまでもが、自分の前から消えてしまうのではないかと。
「マキウス様が不安になる気持ちも分かります。好きな人がまた自分の前から消えてしまったらと思うと……辛いですよね」
「辛いどころではありません。今度こそ、生きている意味を見失います。貴女が元の世界に帰るだけならまだしも、万が一、死に別れたとなれば……貴女の後を追いそうです」
「それは駄目ですよ! 遺されたニコラが可哀想です。マキウス様がニコラを守らなければ、誰がニコラを……私たちの娘を育てるんですか?」
モニカの言葉に、マキウスはハッとした様な顔をする。そうして「そうですね……」と、モニカにだけ聞こえるような小声で答えたのだった。
「私だって、もう二人がいなければ生きていけそうにないです。元の世界に帰るとしても、その時はマキウス様とニコラが一緒じゃなきゃ嫌です」
「嬉しいことを言ってくれますね。貴女が元の世界に帰る時に限らず、どこ遠いところに行く時は、私とニコラを連れて行って下さい。……どこまでも一緒に行きます」
「はい。二人から離れません! ずっと、一緒にいます……」
マキウスが安堵の笑みを浮かべ、モニカはマキウスの腕にしがみつく。そうして二人がまた笑い合っていた時だった。
正面から草を踏みつけて、二人に近づいて来る足音が聞こえてきたのだった。
「誰ですか?」
マキウスはモニカを後ろに庇うと、警戒する様に声を低くして、足音の主に問いかける。
するとーー。
「元の世界?また死ぬ? 一体、どういうことなんだ……?」
やって来たのは、モニカによく似た金髪の男性と、マキウスによく似た女性という、二人がよく知る人たちであった。
この時まで、モニカはマキウスが最初に話していた内容を、すっかり忘れていた。確かに、マキウスは言っていた。
「この場所は私『たち』のお気に入りの場所なんです」と。
「お、お兄ちゃん……?」
「あ、姉上……?」
そこに呆然と立っていたのは、二人にとって大切な家族。
モニカの兄のリュドヴィックと、マキウスの姉のヴィオーラだった。
「どういうことなんだ……。モニカ、マキウス殿」
「お兄ちゃん、お姉様も……」
呆然とした顔のリュドヴィックの後ろからは、眉間に皺を寄せて険しい顔をしたヴィオーラが現れたのだった。
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