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不審な手紙と不穏な影・2
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「そうです! それよりも話したいことがたくさんあったんです。でも……その前に、着替えますか?」
「そうだな。楽な格好になってもいいか?」
絶えなく胸を突き刺してくる痛みを我慢しつつ、オルキデアは軍服の襟元を緩める。
オルキデアの心中に様子に気づいていないアリーシャは、腕を絡ませるとそっと頬を寄せてきたのだった。
「勿論です。その代わり、私も部屋まで一緒に行きます。駄目ですか?」
「駄目なわけないだろう。一緒に行くか」
やはり、今日のアリーシャは熱でもあるのか体温が高い気がする。
本人は元気そうだが、やはり風邪を引いた身体は、まだ本調子じゃないのかもしれない。
いつもより頬に赤みを帯びたアリーシャに小さく頷くと、共に階段を登ってオルキデアの部屋へと向かう。
「ところで、カーテンを閉め切っているが何かあったのか?」
「気のせいかもしれませんが……」と前置きしてから、アリーシャは困り顔で見上げてきたのだった。
「なんだか、最近、屋敷の周りを軍人さんたちがたくさん出歩いている気がして……」
「軍の兵が?」
「何かあったのでしょうか? 買い物に行こうとすると、遠くからずっと後を着いてきて、行く先々にもいるんです。気になってしまって……」
やはり、治安部隊はオルキデアの奥方ーーアリーシャを怪しみ、監視しているのだろうか。
どうも、奴らはアリーシャならオルキデアの謀叛について何か知っていると思い込んでいる節だった。
オルキデアが元高級士官や謀叛について知らないのに、アリーシャが知るわけがない。
「怖い思いをさせたな」
「いいえ。時折、セシリアさんや、プロキオンさんの奥様が様子を見に来てくれたんです。
クシャースラ様は急に出兵命令が出て、その用意で忙しいようです。プロキオンさんはお仕事が忙しいそうで……」
やはり、不審な動きをされないように、クシャースラやプロキオンといったオルキデアの身近な人物には会わせない様に治安部隊が仕向けているらしい。
よほど、警戒されているようだと、オルキデアが眉を顰めたところで部屋に辿り着く。
五日ぶりの自室ではあったが、アリーシャが掃除をしてくれていたようで、出掛ける前と同じ清潔感を保っていた。
「その、カーテンを閉め切っている話ですが、実は昨日、窓ガラスを外から割られたんです」
「何だと!?」
急に声を荒げたからだろうか。
アリーシャは菫色の瞳で瞬きを繰り返すと、慌てて謝罪の言葉を口にしたのだった。
「す、すみません……! たった五日間しか留守番していないのに、屋敷の管理も出来なくて……」
「そんなのはどうだっていい!! 怪我は? 割れたガラスでどこか切ったり、傷ついたりしていないか!?」
両肩を掴んで早口で捲し立てると、圧倒された愛妻は無言で何度も頷いたのだった。
「だ、大丈夫です……。自室で横になっている時だったので……。割られたのは、一階の廊下の窓で、外側から石を投げ入れられました。
どうしたらいいか分からなくて、セシリアさんに電話したら、メイソンさんやマルテさんも一緒に来ました。メイソンさんが警察を呼んでくださって、窓ガラスも直してくださって……。昨日はメイソンさんとマルテさんが、この屋敷に泊まってくださったんです」
仕事や家事があるからと、二人は朝早くに帰って行ったが、一人屋敷に残されることになるアリーシャを、何度も気遣ってくれたらしい。
「マルテさんに、コーンウォール家か、セシリアさんの家に避難しないかと言われましたが、もしかしたら、今日こそはオルキデア様が帰ってくるような気がして、この屋敷に残ったんです。
だって、夫の帰りを待つのも、妻の役目だと聞いているので!」
「そうだな。楽な格好になってもいいか?」
絶えなく胸を突き刺してくる痛みを我慢しつつ、オルキデアは軍服の襟元を緩める。
オルキデアの心中に様子に気づいていないアリーシャは、腕を絡ませるとそっと頬を寄せてきたのだった。
「勿論です。その代わり、私も部屋まで一緒に行きます。駄目ですか?」
「駄目なわけないだろう。一緒に行くか」
やはり、今日のアリーシャは熱でもあるのか体温が高い気がする。
本人は元気そうだが、やはり風邪を引いた身体は、まだ本調子じゃないのかもしれない。
いつもより頬に赤みを帯びたアリーシャに小さく頷くと、共に階段を登ってオルキデアの部屋へと向かう。
「ところで、カーテンを閉め切っているが何かあったのか?」
「気のせいかもしれませんが……」と前置きしてから、アリーシャは困り顔で見上げてきたのだった。
「なんだか、最近、屋敷の周りを軍人さんたちがたくさん出歩いている気がして……」
「軍の兵が?」
「何かあったのでしょうか? 買い物に行こうとすると、遠くからずっと後を着いてきて、行く先々にもいるんです。気になってしまって……」
やはり、治安部隊はオルキデアの奥方ーーアリーシャを怪しみ、監視しているのだろうか。
どうも、奴らはアリーシャならオルキデアの謀叛について何か知っていると思い込んでいる節だった。
オルキデアが元高級士官や謀叛について知らないのに、アリーシャが知るわけがない。
「怖い思いをさせたな」
「いいえ。時折、セシリアさんや、プロキオンさんの奥様が様子を見に来てくれたんです。
クシャースラ様は急に出兵命令が出て、その用意で忙しいようです。プロキオンさんはお仕事が忙しいそうで……」
やはり、不審な動きをされないように、クシャースラやプロキオンといったオルキデアの身近な人物には会わせない様に治安部隊が仕向けているらしい。
よほど、警戒されているようだと、オルキデアが眉を顰めたところで部屋に辿り着く。
五日ぶりの自室ではあったが、アリーシャが掃除をしてくれていたようで、出掛ける前と同じ清潔感を保っていた。
「その、カーテンを閉め切っている話ですが、実は昨日、窓ガラスを外から割られたんです」
「何だと!?」
急に声を荒げたからだろうか。
アリーシャは菫色の瞳で瞬きを繰り返すと、慌てて謝罪の言葉を口にしたのだった。
「す、すみません……! たった五日間しか留守番していないのに、屋敷の管理も出来なくて……」
「そんなのはどうだっていい!! 怪我は? 割れたガラスでどこか切ったり、傷ついたりしていないか!?」
両肩を掴んで早口で捲し立てると、圧倒された愛妻は無言で何度も頷いたのだった。
「だ、大丈夫です……。自室で横になっている時だったので……。割られたのは、一階の廊下の窓で、外側から石を投げ入れられました。
どうしたらいいか分からなくて、セシリアさんに電話したら、メイソンさんやマルテさんも一緒に来ました。メイソンさんが警察を呼んでくださって、窓ガラスも直してくださって……。昨日はメイソンさんとマルテさんが、この屋敷に泊まってくださったんです」
仕事や家事があるからと、二人は朝早くに帰って行ったが、一人屋敷に残されることになるアリーシャを、何度も気遣ってくれたらしい。
「マルテさんに、コーンウォール家か、セシリアさんの家に避難しないかと言われましたが、もしかしたら、今日こそはオルキデア様が帰ってくるような気がして、この屋敷に残ったんです。
だって、夫の帰りを待つのも、妻の役目だと聞いているので!」
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