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弁当・6
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いつもなら、支度を終えたアリーシャが先に待っている自室のソファーで、珍しく先に支度を終えたオルキデアが待っていると、ようやくアリーシャはやって来たのだった。
「あ、すみません。遅くなって……」
「いや。相手はセシリアだったんだろう。何かあったのか?」
「いえ、聞きたいことがあって、私からお願いしたんです」
「お前から?」
「でも、セシリアさんは夕方まで出掛けていたそうで……。それでさっき電話をかけてくれたんです」
「そうか……」
オルキデアが帰宅した頃よりは、まだ普段通りのアリーシャに安心しつつも、先程までの何か言いたげな態度は何だったのか気になってしまう。
「せっかく、一人で留守番していたんだ。今日は何をしていたか教えてくれないか?」
さりげなく、今日の話を聞きながら、自分が何をしたのか聞き出そうとする。
飲み物を用意しようと壁際のコーヒーメーカーに近づくと、「私が!」と後ろからアリーシャがやってくる。
「私がやります」
「そうか」
本当の夫婦になってから、毎晩、寝る前に一緒に紅茶を飲んでいるだけあって、アリーシャの手つきは手慣れたものだった。
先にソファーに座って待っていると、二人分の紅茶をペアマグカップに淹れて持ってきたのだった。
「どうぞ」
「ありがとう」
礼を言ってマグカップを受け取ると、隣に座ったアリーシャが「あの……」と口を開く。
「どうした?」
「お弁当……」
「弁当?」
か細い声で話し出した傍らの愛妻にじっと耳を傾ける。
「お弁当、作ったら、食べて頂けますか……?」
「無論、食べるが……」
何故、改めて聞いてくるのかと不思議に思うが、アリーシャは安心したように小さく笑ったかと思うと、それ以上は何も言わずに、ただマグカップに口をつけただけだった。
けれども、その横顔は何かを決意した様に見えなくもない。
その後、アリーシャから今日一日の話を聞いたが、特に収穫はないまま、いつもの様にオルキデアのベッドで共に寝たのだった。
次の日の朝、部屋で支度を終えたオルキデアは、見送りに出て来てくれたアリーシャと共に門前に向かう。
「今日もなるべく早く帰ってくる」
「あの、オルキデア様。これを……」
アリーシャは腕の中に抱えていた黒の布包みをそっと差し出してきたのだった。
「これは?」
「お弁当です」
「弁当……。それで、昨晩食べるか聞いてきたのか?」
アリーシャは目を伏せたまま、こくりと頷くと、また口を開いて小声で話し出す。
「昨日の朝、結婚されている軍人はお弁当を持って行く人が多いと、セシリアさんに聞きました。
でも、私、お弁当を作ったことがなくて……。それでセシリアさんに作り方を聞いたんです」
「セシリアに?」
「昨日の朝、クシャースラ様が忘れたお弁当を届けるように、セシリアさんに頼まれていましたよね? その後に……」
瞬きを繰り返していたオルキデアだったが、合点がいって「ああ」と声を上げる。
昨日の朝、屋敷を出たオルキデアをセシリアが追いかけてきた。
クシャースラが弁当を忘れて家を出てしまったと言って、弁当を届けるように頼まれたのだった。
クシャースラに弁当を届けるようにセシリアに頼まれた後、軍部に向かっている際に、弁当の話をアリーシャにしていないことを思い出した。
だが、その日の仕事をしている内に、弁当の話をすっかり忘れてしまったのだった。
「あ、すみません。遅くなって……」
「いや。相手はセシリアだったんだろう。何かあったのか?」
「いえ、聞きたいことがあって、私からお願いしたんです」
「お前から?」
「でも、セシリアさんは夕方まで出掛けていたそうで……。それでさっき電話をかけてくれたんです」
「そうか……」
オルキデアが帰宅した頃よりは、まだ普段通りのアリーシャに安心しつつも、先程までの何か言いたげな態度は何だったのか気になってしまう。
「せっかく、一人で留守番していたんだ。今日は何をしていたか教えてくれないか?」
さりげなく、今日の話を聞きながら、自分が何をしたのか聞き出そうとする。
飲み物を用意しようと壁際のコーヒーメーカーに近づくと、「私が!」と後ろからアリーシャがやってくる。
「私がやります」
「そうか」
本当の夫婦になってから、毎晩、寝る前に一緒に紅茶を飲んでいるだけあって、アリーシャの手つきは手慣れたものだった。
先にソファーに座って待っていると、二人分の紅茶をペアマグカップに淹れて持ってきたのだった。
「どうぞ」
「ありがとう」
礼を言ってマグカップを受け取ると、隣に座ったアリーシャが「あの……」と口を開く。
「どうした?」
「お弁当……」
「弁当?」
か細い声で話し出した傍らの愛妻にじっと耳を傾ける。
「お弁当、作ったら、食べて頂けますか……?」
「無論、食べるが……」
何故、改めて聞いてくるのかと不思議に思うが、アリーシャは安心したように小さく笑ったかと思うと、それ以上は何も言わずに、ただマグカップに口をつけただけだった。
けれども、その横顔は何かを決意した様に見えなくもない。
その後、アリーシャから今日一日の話を聞いたが、特に収穫はないまま、いつもの様にオルキデアのベッドで共に寝たのだった。
次の日の朝、部屋で支度を終えたオルキデアは、見送りに出て来てくれたアリーシャと共に門前に向かう。
「今日もなるべく早く帰ってくる」
「あの、オルキデア様。これを……」
アリーシャは腕の中に抱えていた黒の布包みをそっと差し出してきたのだった。
「これは?」
「お弁当です」
「弁当……。それで、昨晩食べるか聞いてきたのか?」
アリーシャは目を伏せたまま、こくりと頷くと、また口を開いて小声で話し出す。
「昨日の朝、結婚されている軍人はお弁当を持って行く人が多いと、セシリアさんに聞きました。
でも、私、お弁当を作ったことがなくて……。それでセシリアさんに作り方を聞いたんです」
「セシリアに?」
「昨日の朝、クシャースラ様が忘れたお弁当を届けるように、セシリアさんに頼まれていましたよね? その後に……」
瞬きを繰り返していたオルキデアだったが、合点がいって「ああ」と声を上げる。
昨日の朝、屋敷を出たオルキデアをセシリアが追いかけてきた。
クシャースラが弁当を忘れて家を出てしまったと言って、弁当を届けるように頼まれたのだった。
クシャースラに弁当を届けるようにセシリアに頼まれた後、軍部に向かっている際に、弁当の話をアリーシャにしていないことを思い出した。
だが、その日の仕事をしている内に、弁当の話をすっかり忘れてしまったのだった。
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