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移送作戦【終了】・1

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その日の夕方遅く。空が薄紫になった頃に、オルキデアはセシリアを伴って屋敷に戻って来た。

「ご苦労だった。アルフェラッツ」
「いえ。何事もなく安心しました」

オルキデアとセシリアが乗った車の後ろには、万が一に備えて待機させていたラカイユの車が続いていた。

病院に行った二人だったが、特に追跡する車も無ければ、尾行する者もいなかった。
オルキデアはアリーシャに扮したセシリアを病院に送った後、そのまま何食わぬ顔をして着替えて出てきたセシリアを拾って、二人はアルフェラッツの車で屋敷に戻ってきたのだった。

屋敷の門前で車から降りると、着替えが入ったカバンを持つセシリアに手を貸して、車から降ろす。

「今日は助かった。ありがとう」
「いえ。アリーシャ嬢とオウェングス少将にもよろしくお伝え下さい」
「会わなくていいのか?」
「もう時間も遅いですし、私共は軍部に車を戻したら、そのまま帰宅します」
「そうか……。明日からしばらく休暇で不在にするが、何かあれば連絡してくれ」

返事の代わりに敬礼をすると、アルフェラッツは軍部に向けて去って行く。
後から来たラカイユにも同じ話を繰り返すと、同じように去って行ったのだった。

「セシリアも今日はありがとう。助かった」
「気にしないで下さい。それより、クシャ様は屋敷にいますか?」
「ああ。セシリアと一緒に帰ると言っていたからまだ居ると思う」

二人が門をくぐって屋敷の中に入ると、屋敷の前にコーンウォール家の車が停まっていた。
すると、内側から扉が開かれたのだった。

「あら。オーキッド坊ちゃん」

屋敷から出て来たのは、セシリアの母親のマルテと父親のメイソンだった。

「お母さん、お父さん。もう帰るの?」

セシリアが近寄って声を掛けると、「ええ」と娘に頷く。

「そろそろ、うちの夕食の用意もしないと、あの子たちが帰ってきちゃうわ」

「あの子たち」と言うのは、セシリアの弟たちであり、コーンウォール夫妻の息子たちだろう。
二人は実家であるコーンウォール家から学校に通っている。

「そっか。二人にもよろしくね」
「貴女もたまにはクシャさんと一緒に帰ってきてね。勿論、オーキッド坊ちゃんも」
「その坊ちゃん呼びは、そろそろ止めてくれ」
「あら。いいじゃないですか。アリーシャさんと一緒に遊びに来て下さい」
「ああ。そうだな。あのアリーシャって娘、いい子じゃないか。オーキッド坊ちゃん」
「メイソン氏まで……」

四人が話していると、屋敷の中から夫妻を見送りに来たクシャースラが出て来たのだった。

「おれが送りますよ。お義父さん、お義母さん……って、オルキデアにセシリア! もう戻って来たのか!?」
「今さっき戻って来ました。クシャ様」

嬉しそうにセシリアを抱きしめたクシャースラは、「無事で良かった」と何度も繰り返す。

「もう、クシャ様。大袈裟です。ねぇ、オーキッド様?」
「ああ。ちなみに俺とセシリアには追跡は無かった」
「そうか。こっちも追跡は無かった。アリーシャ嬢共々、無事だ」

セシリアから身体を離しながら、クシャースラはオルキデアに微笑む。

「ところで、アリーシャは?」
「庭に居ると思うぞ。お義父さんに勧められて、庭を見るって言っていたからな」

クシャースラと共に買い物から戻ってきたメイソンに、アリーシャが庭を気に入ったと話すと、メイソンがアリーシャを庭に連れ出して、嬉々として庭に咲く花や木々の解説を始めたらしい。
それは夕方まで続き、さっきまでメイソンと共に庭を散策していたようだった。

「全く。お父さんってば……」

呆れるセシリアに、オルキデアは「あまり目くじらを立てないでやってくれ」と宥める。
すると、庭の方から足音が聞こえてきたと思うと、アリーシャが顔を出したのだった。

「お帰りなさい! オルキデア様!」

そうして、ロングスカートの両端を摘んで走って来たのだった。
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