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移送作戦【準備】・4
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「その代わりと言いますか、妻も、妻の両親も、貴女に会いたがっていました。特に妻はアリーシャ嬢と同年代なので、きっと良き友人になれると思います」
言われてみれば、セシリアは今年で二十三になるはずだ。
アリーシャの年齢は聞いていなかったが、おそらくセシリアと同い年くらいだろう。
「その妻の両親は、産まれた頃から世話を焼いてきたオーキッド坊ちゃんの結婚相手に興味があるそうです。アリーシャ嬢さえ良ければ、会ってやって下さい」
クシャースラの聞き捨てならない言葉に、オルキデアは口を挟む。
「おい、ちょっと待て。その『産まれた頃から世話を焼いてきたオーキッド坊ちゃん』って、まさか俺のことじゃないよな?」
「まさに、お前さんのことだよ。オーキッド坊ちゃん……いや、オルキデア・アシャ・ラナンキュラス少将」
「全く……」
面白そうに話すクシャースラに、オルキデアは掌で額を押さえて溜め息を吐いたのだった。
セシリアの母親のマルテは、結婚するまではラナンキュラス家で働くメイドであった。
父のエラフに会いに屋敷に訪問した後のセシリアの父親であるメイソン・コーンウォールに惚れられ、度重なる求婚の末に結婚した。
結婚する際にマルテはメイドを辞めてしまったが、マルテの結婚後もエラフとメイソンの関係が良好なこともあり、オルキデアが産まれる際やエラフの葬儀の際には手伝いに来てくれたのだった。
そういった縁もあり、マルテとメイソンの娘であるセシリアとは子供の頃から付き合いがあった。セシリアの歳の離れた弟たちとはあまり縁は無いが、セシリアが幼い頃は遊び相手になったものだった。
セシリアが子供の頃は「オーキッドさま」と言って、何かとオルキデアの後をついて来て、オルキデアの真似ばかりしていた。
血の繋がりはないものの、セシリアはオルキデアにとって実の妹の様に大切な存在であった。
そんなセシリアが選んだ相手が、驕っているだけのどこぞのぼんくら貴族ではなく、信頼の置ける実直な親友で良かったと密かに安心している。
二人の様子を見ていたアリーシャは、「是非、お会いしたいです」と微笑む。
「私、学校に通っていなかったんです。だから、友人がいなくて……」
「そうなのか?」
これにはクシャースラだけではなく、オルキデアも目を丸くした。
「はい。だから、オルキデア様とクシャースラ様を見ていると、すっごく羨ましくて……。いつか、同年代のお友達が欲しいと思っていたんです」
いつもの様に微笑を浮かべるアリーシャの顔に、どこか陰りが差していた。
それに気づいているのかいないのか、本人は「奥様のご両親にもお会いしたいです」と続けたのだった。
「オルキデア様が産まれた頃から知っている、ということは、私たちが知らない話も沢山知っていますよね? 子供の頃のオルキデア様や、私と出会う前のオルキデア様を」
「……聞いても面白いものは何も無いと思うぞ」
それどころか、オルキデア自身も忘れているような恥ずかしい話まで覚えていて、アリーシャに話してしまうかもしれない。
アリーシャに会わせる前に、コーンウォール夫妻に言い含める必要があるだろう。
二人の話しを聞きながらコーヒーを飲んでいたクシャースラは、「まあまあ」と止めたのだった。
「その話は置いといて。それで、いつだって?」
「調べたら、丁度四日後、軍で大きな演習がある。今回の演習では、王都に駐在している部隊のうち、約三分の二以上が参加するらしいな」
「ああ。そうだったな」
「その日に、アリーシャをここから移送させようと思う」
言われてみれば、セシリアは今年で二十三になるはずだ。
アリーシャの年齢は聞いていなかったが、おそらくセシリアと同い年くらいだろう。
「その妻の両親は、産まれた頃から世話を焼いてきたオーキッド坊ちゃんの結婚相手に興味があるそうです。アリーシャ嬢さえ良ければ、会ってやって下さい」
クシャースラの聞き捨てならない言葉に、オルキデアは口を挟む。
「おい、ちょっと待て。その『産まれた頃から世話を焼いてきたオーキッド坊ちゃん』って、まさか俺のことじゃないよな?」
「まさに、お前さんのことだよ。オーキッド坊ちゃん……いや、オルキデア・アシャ・ラナンキュラス少将」
「全く……」
面白そうに話すクシャースラに、オルキデアは掌で額を押さえて溜め息を吐いたのだった。
セシリアの母親のマルテは、結婚するまではラナンキュラス家で働くメイドであった。
父のエラフに会いに屋敷に訪問した後のセシリアの父親であるメイソン・コーンウォールに惚れられ、度重なる求婚の末に結婚した。
結婚する際にマルテはメイドを辞めてしまったが、マルテの結婚後もエラフとメイソンの関係が良好なこともあり、オルキデアが産まれる際やエラフの葬儀の際には手伝いに来てくれたのだった。
そういった縁もあり、マルテとメイソンの娘であるセシリアとは子供の頃から付き合いがあった。セシリアの歳の離れた弟たちとはあまり縁は無いが、セシリアが幼い頃は遊び相手になったものだった。
セシリアが子供の頃は「オーキッドさま」と言って、何かとオルキデアの後をついて来て、オルキデアの真似ばかりしていた。
血の繋がりはないものの、セシリアはオルキデアにとって実の妹の様に大切な存在であった。
そんなセシリアが選んだ相手が、驕っているだけのどこぞのぼんくら貴族ではなく、信頼の置ける実直な親友で良かったと密かに安心している。
二人の様子を見ていたアリーシャは、「是非、お会いしたいです」と微笑む。
「私、学校に通っていなかったんです。だから、友人がいなくて……」
「そうなのか?」
これにはクシャースラだけではなく、オルキデアも目を丸くした。
「はい。だから、オルキデア様とクシャースラ様を見ていると、すっごく羨ましくて……。いつか、同年代のお友達が欲しいと思っていたんです」
いつもの様に微笑を浮かべるアリーシャの顔に、どこか陰りが差していた。
それに気づいているのかいないのか、本人は「奥様のご両親にもお会いしたいです」と続けたのだった。
「オルキデア様が産まれた頃から知っている、ということは、私たちが知らない話も沢山知っていますよね? 子供の頃のオルキデア様や、私と出会う前のオルキデア様を」
「……聞いても面白いものは何も無いと思うぞ」
それどころか、オルキデア自身も忘れているような恥ずかしい話まで覚えていて、アリーシャに話してしまうかもしれない。
アリーシャに会わせる前に、コーンウォール夫妻に言い含める必要があるだろう。
二人の話しを聞きながらコーヒーを飲んでいたクシャースラは、「まあまあ」と止めたのだった。
「その話は置いといて。それで、いつだって?」
「調べたら、丁度四日後、軍で大きな演習がある。今回の演習では、王都に駐在している部隊のうち、約三分の二以上が参加するらしいな」
「ああ。そうだったな」
「その日に、アリーシャをここから移送させようと思う」
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