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妻と恋人、どっちがいい?・6

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即答したアリーシャに、今度はオルキデアが面食らってしまう番だった。

「そうか。それなら、契約成立だな」

まさか、こうもあっさり承諾してくれるとは思わなかった。余程、国に帰りたくないのだろうか。

「書類は後ほど用意しよう。妻となったからには、今まで以上に君を守ろう。これからもよろしく頼む」

オルキデアが水を飲んでいると、「あの!」とアリーシャが緊張の面持ちで話し出す。

「私は何をしたらいいでしょうか? 契約とはいえ、オルキデア様の奥さん……妻となりましたが」

テーブルにコップを置くと、「そうだな……」とオルキデアは考える。

「母上がやって来るまで、これといってやる事は無いな。
だが、そろそろ君を他の場所に移そうと思う。さすがに他の兵が怪しんできてな。この部屋に君を置き続けるのも、そろそろ限界だ」

「ひとまずは」と、オルキデアは付け加える。オルキデア一人ではアリーシャを外に連れ出すのは容易ではない。部下たちの力を借りても、人不足という点で心許ない。
やはりクシャースラとセシリアの協力が必要になりそうだった。

「他の場所……。病院ですか? 郊外にあるという」

オルキデアは苦笑する。どうやら、その話をアリーシャも聞いていたらしい。

「あれは、母上の追求を免れる為の嘘だ。本当に連れて行くつもりはないさ」

もしアリーシャが普通のシュタルクヘルト人であり、未だに記憶を取り戻さなければ、その病院に入院させていただろう。
だが、アリーシャはシュタルクヘルトと関わりの深い人物だ。
正体を隠して入院させても、いずれは病院を通じて軍や国にバレてしまうだろう。

「入院させるつもりは無いから安心しろ。……その話は忘れてくれ」

こくりとアリーシャは頷く。不安そうに息を詰めていたアリーシャの肩から力が抜けた様に見えたのだった。

「記憶が戻らなければ、そのまま君を国に帰すつもりだった。その為の協力をクシャースラに頼んだ。
だが記憶を取り戻し、俺と契約結婚した以上、別の協力が必要になるな」
「別の協力?」
「ああ。ただ単に、ここから出すわけには行かないからな」

母上が縁談を諦めるには、母上を納得させられるだけの出自や背景がアリーシャには必要だろう。「アリーシャ」としての出自と背景ーー身分や経歴が。まさか、シュタルクヘルト家の人間とそのまま言う訳にもいかない。
その代わりとなるものを用意する必要がある。

「忙しくなるな」

まだ一日は始まったばかり。
アリーシャとの契約結婚が始まった朝だった。
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