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フェーンの両親【4】
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「フェーン、それは出来ない。これ以上、迷惑はかけられないだろう」
公爵が説得しようとするが、フェーンは首を振った。
「僕が行きたいなら、連れて行ってくれるんでしょ? なら、僕はアズールスお兄さんやユズお姉さんと一緒に居たい!」
フェーンは立ち上がると、柚子にしがみついた。
「フェーン」
公爵が話しかけるが、フェーンは首を振ったのだった。
「僕、お母さんがいなくなって、おじいちゃんとおばあちゃんがいなくなって、お家がなくなって、ずっと一人だった。
でも、アズールスお兄さんやユズお姉さんやマルゲリタさんやファミリアと一緒にいたら、寂しく無かった……。怖くなかったんだ!」
「フェーン君……」
すると、フェーンは「ごめんなさい」と謝った。
「本当は、少しずつ、思い出してきたんだ。お母さんや、おじいちゃんやおばあちゃん、それから、火事の時も……」
フェーンは屋敷にやって来た日から、徐々に記憶を取り戻して行った。
自分が母親と祖父母と暮らしていたが、ある日母親が居なくなって、祖父母も亡くなった。
一人で住んでいたら、フェーンを養子にしたいという貴族の人がやって来た。
その人が迎えに来る日にうたた寝をしていたら、家やその周りが真っ赤になっていた。
無我夢中で逃げたら荷馬車があって、そこに乗ったらどこかに連れて行かれてしまった。そこが、たまたまアズールスの屋敷近くの市場の外れだった。
フェーンはフラフラと市場や、その周囲を彷徨った。すると、アズールスの屋敷に辿り着いたのだった。
「そうだったの!?」
柚子が声を上げると、フェーンは「でも」と続けた。
「思い出したって言ったら、お家を追い出されちゃうかもって思ったら、言い出せなかった……。黙っていて、ごめんなさい」
フェーンは俯くが、柚子とアズールスは背中を撫でたのだった。
「そうだったんだ……。気づいてあげられなくてごめんね」
「すまない。フェーン。悲しい思いをさせて」
二人が背中を撫でると、フェーンは首を振った。
「ううん。アズールスお兄さんとユズお姉さんは悪くないよ」
俯くフェーンを柚子は優しく抱きしめてあげた。アズールスもフェーンの頭を撫でたのだった。
「……なんか。そうしていると、アズールスとユズちゃんが、フェーン君の親みたいですよね」
「まあ、二人くらいの歳なら結婚していても、おかしくはないな。なんなら、子供が居てもさ」
そんな三人を見つめながら、コースタルとカルセドニーは小声で話していた。
コースタルは、「それで」と話を変えた。
「フェーン君はどうしますか? 連れて帰りますか?」
カルセドニーは少しの間、考え込んでいたが、やがて「いや」と首を振ったのだった。
「アズールスと、じょう……、ユズちゃんなら、安心してフェーンをーー息子を任せられる。うちには俺と使用人しからいないし、昼間にフェーンを一人きりにさせるのもかわいそうだしな」
カルセドニーが働いている昼間は、フェーンにも公文書館を手伝わせようかとも思ったが、まだ子供のフェーンを公文書館に入れるのに、カルセドニーの中で抵抗があった。
それなら、アズールスの屋敷で面倒を見てもらった方がまだ安心だった。
「公爵様にはそのように伝えておこう」
「ああ。俺からも口添えしますよ」
カルセドニーとコースタルはコソコソと打ち合わせをすると、三人の様子を見守っていた公爵に、そっと近寄ったのだった。
公爵が説得しようとするが、フェーンは首を振った。
「僕が行きたいなら、連れて行ってくれるんでしょ? なら、僕はアズールスお兄さんやユズお姉さんと一緒に居たい!」
フェーンは立ち上がると、柚子にしがみついた。
「フェーン」
公爵が話しかけるが、フェーンは首を振ったのだった。
「僕、お母さんがいなくなって、おじいちゃんとおばあちゃんがいなくなって、お家がなくなって、ずっと一人だった。
でも、アズールスお兄さんやユズお姉さんやマルゲリタさんやファミリアと一緒にいたら、寂しく無かった……。怖くなかったんだ!」
「フェーン君……」
すると、フェーンは「ごめんなさい」と謝った。
「本当は、少しずつ、思い出してきたんだ。お母さんや、おじいちゃんやおばあちゃん、それから、火事の時も……」
フェーンは屋敷にやって来た日から、徐々に記憶を取り戻して行った。
自分が母親と祖父母と暮らしていたが、ある日母親が居なくなって、祖父母も亡くなった。
一人で住んでいたら、フェーンを養子にしたいという貴族の人がやって来た。
その人が迎えに来る日にうたた寝をしていたら、家やその周りが真っ赤になっていた。
無我夢中で逃げたら荷馬車があって、そこに乗ったらどこかに連れて行かれてしまった。そこが、たまたまアズールスの屋敷近くの市場の外れだった。
フェーンはフラフラと市場や、その周囲を彷徨った。すると、アズールスの屋敷に辿り着いたのだった。
「そうだったの!?」
柚子が声を上げると、フェーンは「でも」と続けた。
「思い出したって言ったら、お家を追い出されちゃうかもって思ったら、言い出せなかった……。黙っていて、ごめんなさい」
フェーンは俯くが、柚子とアズールスは背中を撫でたのだった。
「そうだったんだ……。気づいてあげられなくてごめんね」
「すまない。フェーン。悲しい思いをさせて」
二人が背中を撫でると、フェーンは首を振った。
「ううん。アズールスお兄さんとユズお姉さんは悪くないよ」
俯くフェーンを柚子は優しく抱きしめてあげた。アズールスもフェーンの頭を撫でたのだった。
「……なんか。そうしていると、アズールスとユズちゃんが、フェーン君の親みたいですよね」
「まあ、二人くらいの歳なら結婚していても、おかしくはないな。なんなら、子供が居てもさ」
そんな三人を見つめながら、コースタルとカルセドニーは小声で話していた。
コースタルは、「それで」と話を変えた。
「フェーン君はどうしますか? 連れて帰りますか?」
カルセドニーは少しの間、考え込んでいたが、やがて「いや」と首を振ったのだった。
「アズールスと、じょう……、ユズちゃんなら、安心してフェーンをーー息子を任せられる。うちには俺と使用人しからいないし、昼間にフェーンを一人きりにさせるのもかわいそうだしな」
カルセドニーが働いている昼間は、フェーンにも公文書館を手伝わせようかとも思ったが、まだ子供のフェーンを公文書館に入れるのに、カルセドニーの中で抵抗があった。
それなら、アズールスの屋敷で面倒を見てもらった方がまだ安心だった。
「公爵様にはそのように伝えておこう」
「ああ。俺からも口添えしますよ」
カルセドニーとコースタルはコソコソと打ち合わせをすると、三人の様子を見守っていた公爵に、そっと近寄ったのだった。
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