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後片づけ【7】
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「さっきはありがとな。俺たちは本に詳しくないから助かったよ!」
男が差し出して来た手を、ユズは握り返す。
大きくて、温かくて、がっしりとした手だった。
「こちらこそ、部外者なのに勝手に口を出してすみません」
「気にすんな。アズールスから話は聞いてたんだ。本に詳しい異国人と同居してるってな」
「私の事をご存知だったんですか!」
柚子が目を見開くと、男は豪快に笑った。
「ああ。アズールスが毎日の様に話していたし、この前、公文書館に来た時に見かけたからすぐにわかったさ。俺はカルセドニー。この公文書館の責任者だ」
男、カルセドニーは、自らを刺すと片目を瞑ってみせた。
柚子はクスッと笑ったのだった。
「私の名前は、柚子と言います。橘井柚子《きついゆず》です。アズールスさんにお世話になっています」
そうして、柚子は気になっていた事を訊ねたのだった。
「足は大丈夫ですか? 引きずって歩いているようだったので、心配で……」
もしかして、火事の際に怪我をしたのかもしれない。と柚子が心配そうにしていると、カルセドニーは「大丈夫」と片手を振ったのだった。
「こいつは、軍にいた時に落馬して負った怪我だ。もう治らない一生ものの怪我だ」
カルセドニーによると、軍人として前線に出ていた頃、落馬した際に負った怪我らしい。
治療をしたが、歩ける程にしか怪我は回復しなかった。
もう馬に乗るどころか、走るのも困難になった事で、軍を辞めるか悩んでいたところ、この公文書館の責任者の話をされたらしい。
「一応は、まだ軍人だが、公文書館の責任者なんて命のやり取りが無い分、気楽なものさ。その代わり、軍の手伝いで駆り出される事もしょっちゅうだが」
一昨日の火事といい、柚子も被害に遭った誘拐事件といい、カルセドニーも軍から手伝いに駆り出されたらしい。
「そうだったんですね……」
「そうそう。頼りになるアズールスは、最近、異国人の恋人だか、嫁さんだかが出来たとかで、付き合いが悪いし、他の連中じゃ不安が残るしな……」
おそらく、柚子の事だろう。柚子は苦笑する事しか出来なかった。
「恋人でも無ければ、嫁でも無いんですが……。ところで、先程から色んな人に異国人って言われるんですが、皆さんは一目でわかるんですか?」
アズールスや屋敷の者達を始め、これまで会った人達は、それほど柚子と顔立ちが違うという事は無かった。
目や髪、肌の色こそは違うが、顔立ちや造りは大差無いと思っていたのだった。
「この辺りーーおそらく国中探してもだが。黒髪は珍しいんだ。更に黒目もとなるともっと珍しい」
カルセドニー曰く、この地方ーーアルストロメリア地方の住民の大半は、赤茶系の髪や金髪が多いらしい。肌の色も白色が大半を占める。
それ以外の髪や肌の色は、周辺国からやって来た異国人の血が流れている者になるらしい。
特に黒髪は、この国の遥か遠い国にしか住んでいない少数民族しか持っておらず、更に黒目になると、この国にも柚子以外に居るかどうかわからない、というくらい限られてしまうらしい。
男が差し出して来た手を、ユズは握り返す。
大きくて、温かくて、がっしりとした手だった。
「こちらこそ、部外者なのに勝手に口を出してすみません」
「気にすんな。アズールスから話は聞いてたんだ。本に詳しい異国人と同居してるってな」
「私の事をご存知だったんですか!」
柚子が目を見開くと、男は豪快に笑った。
「ああ。アズールスが毎日の様に話していたし、この前、公文書館に来た時に見かけたからすぐにわかったさ。俺はカルセドニー。この公文書館の責任者だ」
男、カルセドニーは、自らを刺すと片目を瞑ってみせた。
柚子はクスッと笑ったのだった。
「私の名前は、柚子と言います。橘井柚子《きついゆず》です。アズールスさんにお世話になっています」
そうして、柚子は気になっていた事を訊ねたのだった。
「足は大丈夫ですか? 引きずって歩いているようだったので、心配で……」
もしかして、火事の際に怪我をしたのかもしれない。と柚子が心配そうにしていると、カルセドニーは「大丈夫」と片手を振ったのだった。
「こいつは、軍にいた時に落馬して負った怪我だ。もう治らない一生ものの怪我だ」
カルセドニーによると、軍人として前線に出ていた頃、落馬した際に負った怪我らしい。
治療をしたが、歩ける程にしか怪我は回復しなかった。
もう馬に乗るどころか、走るのも困難になった事で、軍を辞めるか悩んでいたところ、この公文書館の責任者の話をされたらしい。
「一応は、まだ軍人だが、公文書館の責任者なんて命のやり取りが無い分、気楽なものさ。その代わり、軍の手伝いで駆り出される事もしょっちゅうだが」
一昨日の火事といい、柚子も被害に遭った誘拐事件といい、カルセドニーも軍から手伝いに駆り出されたらしい。
「そうだったんですね……」
「そうそう。頼りになるアズールスは、最近、異国人の恋人だか、嫁さんだかが出来たとかで、付き合いが悪いし、他の連中じゃ不安が残るしな……」
おそらく、柚子の事だろう。柚子は苦笑する事しか出来なかった。
「恋人でも無ければ、嫁でも無いんですが……。ところで、先程から色んな人に異国人って言われるんですが、皆さんは一目でわかるんですか?」
アズールスや屋敷の者達を始め、これまで会った人達は、それほど柚子と顔立ちが違うという事は無かった。
目や髪、肌の色こそは違うが、顔立ちや造りは大差無いと思っていたのだった。
「この辺りーーおそらく国中探してもだが。黒髪は珍しいんだ。更に黒目もとなるともっと珍しい」
カルセドニー曰く、この地方ーーアルストロメリア地方の住民の大半は、赤茶系の髪や金髪が多いらしい。肌の色も白色が大半を占める。
それ以外の髪や肌の色は、周辺国からやって来た異国人の血が流れている者になるらしい。
特に黒髪は、この国の遥か遠い国にしか住んでいない少数民族しか持っておらず、更に黒目になると、この国にも柚子以外に居るかどうかわからない、というくらい限られてしまうらしい。
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