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彼の秘密と過去・4
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「教えて下さい。アズールスさんが私を召喚した本当の理由を」
アズールスはどこか遠くを見つめるような、
静かな目をした。
一瞬だけ、青色の瞳は、悲しげに揺らいだ。
「わかった。ユズは私の過去を夢で見ている。知る権利はあるだろう」
「長くなるから、横になって聞きなさい」と、アズールスに促されて、柚子はベッドに横になった。
アズールスも柚子の隣で毛布に入り、仰向けになると語り始めたのだった。
「我が家は今でこそ、俺と使用人であり俺の乳母のマルゲリタと、その孫娘のファミリアの三人しかいないが、元々は使用人もたくさんいて、もっと大きな屋敷に住んでいたんだ」
アズールスの一族は、子爵の爵位を賜っていた貴族だった。
先祖の代から栄子衰退を繰り返しつつも、子爵の位を維持し続けてきた。
子爵という爵位自体は、爵位の中で下から二番目という事もあり、そう高くはないが、国で子爵の地位を持つ家の中でも、指折りに入るくらい裕福な家庭だった。
その理由として、大きな功績こそは上げてこなかったが、ひとえに代々軍人を多く輩出させてきたからだと考えられている。
アズールスの父親は、一族の直系の血を引く当主でもあった。
アズールスが産まれる前に、子爵であった父親から爵位と土地を譲られたとの事だった。
一夫多妻が主流の貴族社会の中、他の貴族とは違い、アズールスの父親は、生涯たった一人の女性を愛し続けた。
それがアズールスの母親であった。
アズールスの母親が最初に産んだ跡継ぎとなる男の子、それがアズールスであった。
「最初、俺の乳母は別の女性だった。
しかし、途中で乳の出が悪くなってな。その次に乳母になったのがマルゲリタだった。
マルゲリタの家は、代々、我が家に仕えている使用人の家系でな。
マルゲリタも我が家に仕えていたが、さすがに未婚のまま歳を重ねていくのを見かねた父が、『このまま嫁に行き遅れたら、それこそマルゲリタの両親やそのまた両親に失礼だ』と。父は屋敷で働いていた男の使用人を紹介して、マルゲリタと結婚させたんだ。
それでマルゲリタは一人娘となるファミリアの母親を産む。その後、また子供を何人か産むんだが、いずれも長生き出来なかった。やがて、マルゲリタの夫は病を患い、早くに亡くなった。
それもあって、歳を取っていながらも、まだ乳が出たマルゲリタが、俺の乳母になったんだ」
そうして、その数年後に産まれたのが、アズールスの弟と妹となる双子の弟妹だった。
「俺は十歳になるまで家族と共に過ごした。その後、父と同じような軍人になる為に、士官学校に入る事になった。それが全寮制の学校だったんだ」
アズールスの父親は、爵位を受け継ぐまでは軍人として働いていたらしい。
爵位を受け継ぐ時に軍を辞めたが、辞めた後も部下や同僚から信頼され、時には屋敷に相談に来る者さえいたらしい。
父親の死後、葬儀に来た父親の部下は悲しげに「父君は素晴らしい人格者だった」と、アズールスに言ったらしい。
そんな父親に憧れたアズールスは、父親も通った士官学校に入る事にした。
この士官学校では、十歳から入学を許されており、卒業までの八年間を、同じ志を持つ仲間達と共同生活をさせながら、協調性を学ばせようとする方針らしい。
「当然、母と弟達は反対だった。しかし、俺はそんな反対を押し切って、士官学校に入学したんだ」
アズールスは窓に視線を向けた。
「……そこが、俺と家族の運命を分けたな」
アズールスはどこか遠くを見つめるような、
静かな目をした。
一瞬だけ、青色の瞳は、悲しげに揺らいだ。
「わかった。ユズは私の過去を夢で見ている。知る権利はあるだろう」
「長くなるから、横になって聞きなさい」と、アズールスに促されて、柚子はベッドに横になった。
アズールスも柚子の隣で毛布に入り、仰向けになると語り始めたのだった。
「我が家は今でこそ、俺と使用人であり俺の乳母のマルゲリタと、その孫娘のファミリアの三人しかいないが、元々は使用人もたくさんいて、もっと大きな屋敷に住んでいたんだ」
アズールスの一族は、子爵の爵位を賜っていた貴族だった。
先祖の代から栄子衰退を繰り返しつつも、子爵の位を維持し続けてきた。
子爵という爵位自体は、爵位の中で下から二番目という事もあり、そう高くはないが、国で子爵の地位を持つ家の中でも、指折りに入るくらい裕福な家庭だった。
その理由として、大きな功績こそは上げてこなかったが、ひとえに代々軍人を多く輩出させてきたからだと考えられている。
アズールスの父親は、一族の直系の血を引く当主でもあった。
アズールスが産まれる前に、子爵であった父親から爵位と土地を譲られたとの事だった。
一夫多妻が主流の貴族社会の中、他の貴族とは違い、アズールスの父親は、生涯たった一人の女性を愛し続けた。
それがアズールスの母親であった。
アズールスの母親が最初に産んだ跡継ぎとなる男の子、それがアズールスであった。
「最初、俺の乳母は別の女性だった。
しかし、途中で乳の出が悪くなってな。その次に乳母になったのがマルゲリタだった。
マルゲリタの家は、代々、我が家に仕えている使用人の家系でな。
マルゲリタも我が家に仕えていたが、さすがに未婚のまま歳を重ねていくのを見かねた父が、『このまま嫁に行き遅れたら、それこそマルゲリタの両親やそのまた両親に失礼だ』と。父は屋敷で働いていた男の使用人を紹介して、マルゲリタと結婚させたんだ。
それでマルゲリタは一人娘となるファミリアの母親を産む。その後、また子供を何人か産むんだが、いずれも長生き出来なかった。やがて、マルゲリタの夫は病を患い、早くに亡くなった。
それもあって、歳を取っていながらも、まだ乳が出たマルゲリタが、俺の乳母になったんだ」
そうして、その数年後に産まれたのが、アズールスの弟と妹となる双子の弟妹だった。
「俺は十歳になるまで家族と共に過ごした。その後、父と同じような軍人になる為に、士官学校に入る事になった。それが全寮制の学校だったんだ」
アズールスの父親は、爵位を受け継ぐまでは軍人として働いていたらしい。
爵位を受け継ぐ時に軍を辞めたが、辞めた後も部下や同僚から信頼され、時には屋敷に相談に来る者さえいたらしい。
父親の死後、葬儀に来た父親の部下は悲しげに「父君は素晴らしい人格者だった」と、アズールスに言ったらしい。
そんな父親に憧れたアズールスは、父親も通った士官学校に入る事にした。
この士官学校では、十歳から入学を許されており、卒業までの八年間を、同じ志を持つ仲間達と共同生活をさせながら、協調性を学ばせようとする方針らしい。
「当然、母と弟達は反対だった。しかし、俺はそんな反対を押し切って、士官学校に入学したんだ」
アズールスは窓に視線を向けた。
「……そこが、俺と家族の運命を分けたな」
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