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40話 隣国
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キメラ討伐から帰った次の日の朝、僕はお父さんに呼び出されていた。
「フランツ。討伐のこと聞いたよ。大活躍だったんだって?」
一瞬なんで知っているの?とは思ったが、昨日帰ってきた時点でお父さんにはシリルさんから正式な報告が上がっていたのだろう。
「あっうん。とっさのことだったから自分でも驚いてるよ。」
「王宮中にもフランツがキメラを一撃で倒したという噂が広まっているらしいよ。あとアルバートとのこともね。」
「あっアルバートさんの事も知ってたんだ。みんな昨日の今日で話が早いね……。」
どっちの話題でかは分からないけど、なんかここまで来る間にいろんな人の視線が気になったのはそのせいか。
「うん。討伐以外のことも一応報告は上がってくるからね。それで、話は変わるんだけど、ちょっとフランツの耳に入れておきたいことがあって。」
「どうしたの?」
「フランツの家が国境付近にあるのは知っているよね?」
「うん。知ってるよ。小さいとき、国境の方には、行っちゃだめって言ってたよね。」
「そうそう。そこの国の話なんだけど、何か知ってることある?」
それってゲームでってことだよね?
「いや、僕の知ってる限りでは、他の国に関しては出てこなかったと思う。」
「そっか。実はフランツ達が遠征に行っている間に、その国の偉い人と、うちの国の偉い人達の話し合いがあって、それがどうもうまくいかなかったらしいんだ。」
「話し合いって?」
「それが聖女様に関係する話らしい。魔物の出没はどの国でも増加傾向にあるからね。」
「なるほど。」
「だけど、どの国にも聖女様がいるとは限らない。その国には聖女様がいないから、聖女様の力が欲しいっていう話だと思うんだ。」
「もしかして、それを僕らの国は断ったってこと?」
「うん。きちんとは聞かされてないけど、大方そんなとこだろうと思ってる。」
「それで、僕の耳に入れておきたい事って?」
「うん。可能性は低いとは思うんだけど、その国が聖女様の力欲しさに攻めてくる可能性がある事を言っておきたかったんだ。」
そんな戦争みたいなことが起こるってこと?
「えっ!てことは、もし攻めてきたら、お母さんとジュリアンが巻き込まれるかも知れないって事?早く教えて王都に避難してもらおうよ。」
「心配になるのは分かるけど、おそらくそれはまだ大丈夫だと思うんだ。」
「えっ、どうして?」
「国境付近には騎士が派遣されているからね。何か動きがあれば報告が来るから、報告が来てからでも遅くはないと思うんだ。」
「え?騎士なんていたの?僕会ったことないよ。」
「そうか?普段は普通に生活しているだけだから、分からないだけだと思うよ。」
「まぁ確かに言われないと分からないかも。」
「それよりお父さんが心配してるのは、先日のキメラ討伐の件でフランツのことが上層部に知られたって事なんだ。」
「僕?」
「うん。もしかしたら、声が掛かるかもしれない。お父さん的には国同士のいざこざに巻き込まれないように最善を尽くすつもりだけど、国から命令が出た場合は絶対だからね。一応その辺のことは知っておいてもらいたいと思って。」
「うん。分かった。」
確かに政治的ないざこざに巻き込まれるのは面倒くさそうだな。
でも、セシリア様を守る為だったら、何だってする覚悟はある。
それ以前に、僕はお母さんとジュリアンのことが心配だな。
でも僕の知っている限りゲームには出てきてないわけだから、イベントだったとしても、大したことはないのかな?
いや、知らないだけって可能性もあるんだよな。
僕はお父さんの部屋を後にし、魔法士団の研究棟に向かうことにした。
団員として、僕にも部屋が与えられたからだ。
今はまだ机と椅子くらいしかないけど、そこでどんな研究をするか考えようかなって思ってる。
外を歩いているとルーカスさんにばったり会った。
「あっ!ルーカスさん。お久しぶりです。」
「おぉ!フランツ!お帰り!話は聞いてるぞー!」
「お耳が早いですね。」
「みんな知ってるぞ!いや、成長したな。俺、嬉しくて嬉しくて。」
「ありがとうございます。ルーカスさんのおかげですよ。」
「いや、フランツが日々頑張った成果だ。自分を褒めてやれ。」
「はい。」
ルーカスさんが自分事のように喜んでくれるのって、少し恥ずかしいけど嬉しいな。
「あっそうだ。ルーカスさんに聞いてみたかったんですけど、国境付近に騎士団の人っているんですか?」
「あっ、もしかして聞いちゃった?」
「え?聞いちゃったっていうのは?」
「国境付近にいるエリート騎士の話。」
「え?そんな人がいるんですか?」
「あぁ、いくつもの偉業を成し遂げた伝説的なお方だ。」
なんか、本当なのか嘘なのかよく分からない話し方だな。冗談のようにも聞こえるけど……。
「な、なるほど。てことはやっぱり派遣してるって事ですか?」
「まぁ何人かは派遣されてるな。ただ、それが誰なのかは誰も知らない。」
「騎士団長のルーカスさんでもですか?」
「さすがに俺は知っているけどさ、一応極秘なんだ。そういう噂があれば襲おうと思わないだろ?」
「そういうことだったんですね。」
「まぁでも、本当に最強なんだけどな。俺も新人の頃は散々お世話になったんだ。」
「ルーカスさんが言うなら本当に強い方なんですね。」
「まぁな。フランツは家の事が心配なんだろ?」
「ルーカスさんも聞いてますか?」
「まぁこう見えて騎士団長だからな。一応耳には入ってくるさ。」
「そうですよね。すみません。」
「いやぁいいって。さっき言ってたエリート騎士はフランツの家がある地域を担当しているから安泰だ。」
「それは、よかったです……。」
「まぁ、不安だよな。何か動きがあれば話は行くと思うから、今から構えなくても大丈夫だ。そもそも隣国が攻めてくる可能性は高くないだろうしな。」
確かに、話し合いがうまくいかなかったからって、攻めてくるとは限らないもんね。
「フランツ。討伐のこと聞いたよ。大活躍だったんだって?」
一瞬なんで知っているの?とは思ったが、昨日帰ってきた時点でお父さんにはシリルさんから正式な報告が上がっていたのだろう。
「あっうん。とっさのことだったから自分でも驚いてるよ。」
「王宮中にもフランツがキメラを一撃で倒したという噂が広まっているらしいよ。あとアルバートとのこともね。」
「あっアルバートさんの事も知ってたんだ。みんな昨日の今日で話が早いね……。」
どっちの話題でかは分からないけど、なんかここまで来る間にいろんな人の視線が気になったのはそのせいか。
「うん。討伐以外のことも一応報告は上がってくるからね。それで、話は変わるんだけど、ちょっとフランツの耳に入れておきたいことがあって。」
「どうしたの?」
「フランツの家が国境付近にあるのは知っているよね?」
「うん。知ってるよ。小さいとき、国境の方には、行っちゃだめって言ってたよね。」
「そうそう。そこの国の話なんだけど、何か知ってることある?」
それってゲームでってことだよね?
「いや、僕の知ってる限りでは、他の国に関しては出てこなかったと思う。」
「そっか。実はフランツ達が遠征に行っている間に、その国の偉い人と、うちの国の偉い人達の話し合いがあって、それがどうもうまくいかなかったらしいんだ。」
「話し合いって?」
「それが聖女様に関係する話らしい。魔物の出没はどの国でも増加傾向にあるからね。」
「なるほど。」
「だけど、どの国にも聖女様がいるとは限らない。その国には聖女様がいないから、聖女様の力が欲しいっていう話だと思うんだ。」
「もしかして、それを僕らの国は断ったってこと?」
「うん。きちんとは聞かされてないけど、大方そんなとこだろうと思ってる。」
「それで、僕の耳に入れておきたい事って?」
「うん。可能性は低いとは思うんだけど、その国が聖女様の力欲しさに攻めてくる可能性がある事を言っておきたかったんだ。」
そんな戦争みたいなことが起こるってこと?
「えっ!てことは、もし攻めてきたら、お母さんとジュリアンが巻き込まれるかも知れないって事?早く教えて王都に避難してもらおうよ。」
「心配になるのは分かるけど、おそらくそれはまだ大丈夫だと思うんだ。」
「えっ、どうして?」
「国境付近には騎士が派遣されているからね。何か動きがあれば報告が来るから、報告が来てからでも遅くはないと思うんだ。」
「え?騎士なんていたの?僕会ったことないよ。」
「そうか?普段は普通に生活しているだけだから、分からないだけだと思うよ。」
「まぁ確かに言われないと分からないかも。」
「それよりお父さんが心配してるのは、先日のキメラ討伐の件でフランツのことが上層部に知られたって事なんだ。」
「僕?」
「うん。もしかしたら、声が掛かるかもしれない。お父さん的には国同士のいざこざに巻き込まれないように最善を尽くすつもりだけど、国から命令が出た場合は絶対だからね。一応その辺のことは知っておいてもらいたいと思って。」
「うん。分かった。」
確かに政治的ないざこざに巻き込まれるのは面倒くさそうだな。
でも、セシリア様を守る為だったら、何だってする覚悟はある。
それ以前に、僕はお母さんとジュリアンのことが心配だな。
でも僕の知っている限りゲームには出てきてないわけだから、イベントだったとしても、大したことはないのかな?
いや、知らないだけって可能性もあるんだよな。
僕はお父さんの部屋を後にし、魔法士団の研究棟に向かうことにした。
団員として、僕にも部屋が与えられたからだ。
今はまだ机と椅子くらいしかないけど、そこでどんな研究をするか考えようかなって思ってる。
外を歩いているとルーカスさんにばったり会った。
「あっ!ルーカスさん。お久しぶりです。」
「おぉ!フランツ!お帰り!話は聞いてるぞー!」
「お耳が早いですね。」
「みんな知ってるぞ!いや、成長したな。俺、嬉しくて嬉しくて。」
「ありがとうございます。ルーカスさんのおかげですよ。」
「いや、フランツが日々頑張った成果だ。自分を褒めてやれ。」
「はい。」
ルーカスさんが自分事のように喜んでくれるのって、少し恥ずかしいけど嬉しいな。
「あっそうだ。ルーカスさんに聞いてみたかったんですけど、国境付近に騎士団の人っているんですか?」
「あっ、もしかして聞いちゃった?」
「え?聞いちゃったっていうのは?」
「国境付近にいるエリート騎士の話。」
「え?そんな人がいるんですか?」
「あぁ、いくつもの偉業を成し遂げた伝説的なお方だ。」
なんか、本当なのか嘘なのかよく分からない話し方だな。冗談のようにも聞こえるけど……。
「な、なるほど。てことはやっぱり派遣してるって事ですか?」
「まぁ何人かは派遣されてるな。ただ、それが誰なのかは誰も知らない。」
「騎士団長のルーカスさんでもですか?」
「さすがに俺は知っているけどさ、一応極秘なんだ。そういう噂があれば襲おうと思わないだろ?」
「そういうことだったんですね。」
「まぁでも、本当に最強なんだけどな。俺も新人の頃は散々お世話になったんだ。」
「ルーカスさんが言うなら本当に強い方なんですね。」
「まぁな。フランツは家の事が心配なんだろ?」
「ルーカスさんも聞いてますか?」
「まぁこう見えて騎士団長だからな。一応耳には入ってくるさ。」
「そうですよね。すみません。」
「いやぁいいって。さっき言ってたエリート騎士はフランツの家がある地域を担当しているから安泰だ。」
「それは、よかったです……。」
「まぁ、不安だよな。何か動きがあれば話は行くと思うから、今から構えなくても大丈夫だ。そもそも隣国が攻めてくる可能性は高くないだろうしな。」
確かに、話し合いがうまくいかなかったからって、攻めてくるとは限らないもんね。
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