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33話 セシリア様
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コードの世界から戻り、僕は初めて王宮に来たときにルーカスさんに案内してもらった、王宮の頂上付近にある景色の良いバルコニーに来ていた。
ここはほとんど人も来ないし、何か考えるときにうってつけの場所だ。
なんとかしてコードを編集出来たら良いんだけどな。
でもあの感じだと、難しいだろうな。
そういえば、僕ら人物の設定を見てなかったな。
やり方は大体分かったから、1人でもコードを見に行けるはず。
僕は、近くの壁にもたれかかるように座り、コードの世界に入る。
無事に入ることが出来た。さっそく人物の設定を見に行く。
設定を見ると、名前、性別から始まり、数え切れないほど多くの項目があるようだった。
魔物にもあった強さを表す総合値や魔力量などの項目や、ゲームで強さの指標だったレベルの項目も、もちろんあった。
そんな項目を見ていく中で、気になる項目があった。
それは、人物分類という項目だ。
もしかしてこの項目が、その人の人生をある程度決めてしまっているのではないだろうか。
人物分類にどんな種類があるか一覧を見てみると、管理者、聖女、勇者、賢者、騎士団長、貴族、等と並ぶ中、下の方に一般人(上)、一般人(中)、一般人(下)といったものがあった。
「これか。」
この一般人(下)に設定された人がホームレスのような生活を送っている人なんだろうな。
この設定を消せれば良いんだけど、やっぱり消せそうな雰囲気はないな。
とりあえず、一旦戻ることにした。
目を開けると、僕の目の前に聖女のセシリア様がいた。
あれ?セシリア様に会いたいがばかり、僕は幻術を生み出したのだろうか。
いや、違う。これは現実だ。
「わぁっ!」
目を開いてから結構な時間差で、声を上げてしまった。まさかこんなところで会えるとは思っていなかった。
「おはよう。起こしちゃった?」
「いえっ。あの、どうしてここに?」
どうしよう。落ち着け。僕。
「この場所、ルーカスさんに教えてもらってからちょくちょく来るんだよね。」
「僕も、同じです。」
「そうなの?今までよく会わなかったね。」
「本当ですね。」
セシリア様が僕の隣に座る。
どうしよう。心臓がバクバク言ってる。聞こえちゃうよ。
「そう言えば、もう身体は大丈夫?」
「はい。きちんとお礼も言えていなくてすみません。あの時は助けて頂いてありがとうございました。」
「それが私に任された役だからね……。」
何だろう。少し含みのある言い方な気がする。
「役……。もしかして、何かありました?」
「ん?いや、特に何かあったって事は無いよ。」
「あの、僕に話して貰えませんか?」
「え?」
「いやっ。なんて言うか、話が聞きたいです。今セシリア様が思っている事とか。」
やばい。こんな聞き方じゃ変な人だと思われる。
「ふふ。面白いね。フランツ君は。うん。そうだな。私、不安なんだ。」
「えっ?」
セシリア様は、あくまで笑顔で答える。
「ほら、小さいときから選ばれし者って言われ続けて、弱音を吐く事なんて許されなかったからさ。でも、魔王が復活するかもって話が出てきて、私に出来るのかなって。」
「そうだったんですか。話してくれてありがとうございます。僕から言えることは、不安と期待は表裏一体だと言うことです。不安はあって当然です。」
「そうだよね。それを背負っていかないといけないんだよね。」
「いえ、セシリア様1人には背負わせません。僕がもっと強くなって、その不安を少しでも軽減出来るようにします。なので僕にもその不安分けてください。」
「ありがとう。」
「僕でよければ、いつでもなんでも聞きます。むしろ話してください。」
「そうだなー。アルバートも、シリルさんもすごいんだよね。それぞれの天才って感じで、自分の芯がきちんと通ってて。」
「アルバートさんはあまり接点はありませんが、シリルさんは僕もすごいなって思います。」
「私も、あんな風になれるのかな?」
「なれますよ。大丈夫です。」
「言い切れちゃうんだ。」
「はい。自分を信じてあげてください。今までの努力は決して無駄になることはありません。」
「そうだよね。ありがとう。なんかフランツ君の前だと、つい本音が出ちゃうね。なんて言うか、親近感があるのかな?」
「そう言って頂けるとうれしいです。」
「なんか元気出てきたかも。」
セシリア様は立ち上がり、王都を眺める。
僕もそれに続く。
「僕はセシリア様の全てを受け止めます。でも、かといって僕を頼ってくれとは言いません。いつでも待っているので、気軽に話しかけて貰えると嬉しいです。」
セシリア様は僕の方を振り向くと、天使のような笑顔だった。
「ありがと。」
「はい。溜めすぎず、たまには吐き出してみてください。」
「そうする。じゃそろそろ行くね。」
「はい。」
……うわぁー緊張した。絶対言わなくて良いことも言っちゃっただろうな。ちょっと上から過ぎたかもー。
あーめんどくさいやつって思われたらどうしよう。
頭が真っ白になりすぎて、もう自分が何を言ったのか覚えてないや……。
どうか嫌われてませんように。
ここはほとんど人も来ないし、何か考えるときにうってつけの場所だ。
なんとかしてコードを編集出来たら良いんだけどな。
でもあの感じだと、難しいだろうな。
そういえば、僕ら人物の設定を見てなかったな。
やり方は大体分かったから、1人でもコードを見に行けるはず。
僕は、近くの壁にもたれかかるように座り、コードの世界に入る。
無事に入ることが出来た。さっそく人物の設定を見に行く。
設定を見ると、名前、性別から始まり、数え切れないほど多くの項目があるようだった。
魔物にもあった強さを表す総合値や魔力量などの項目や、ゲームで強さの指標だったレベルの項目も、もちろんあった。
そんな項目を見ていく中で、気になる項目があった。
それは、人物分類という項目だ。
もしかしてこの項目が、その人の人生をある程度決めてしまっているのではないだろうか。
人物分類にどんな種類があるか一覧を見てみると、管理者、聖女、勇者、賢者、騎士団長、貴族、等と並ぶ中、下の方に一般人(上)、一般人(中)、一般人(下)といったものがあった。
「これか。」
この一般人(下)に設定された人がホームレスのような生活を送っている人なんだろうな。
この設定を消せれば良いんだけど、やっぱり消せそうな雰囲気はないな。
とりあえず、一旦戻ることにした。
目を開けると、僕の目の前に聖女のセシリア様がいた。
あれ?セシリア様に会いたいがばかり、僕は幻術を生み出したのだろうか。
いや、違う。これは現実だ。
「わぁっ!」
目を開いてから結構な時間差で、声を上げてしまった。まさかこんなところで会えるとは思っていなかった。
「おはよう。起こしちゃった?」
「いえっ。あの、どうしてここに?」
どうしよう。落ち着け。僕。
「この場所、ルーカスさんに教えてもらってからちょくちょく来るんだよね。」
「僕も、同じです。」
「そうなの?今までよく会わなかったね。」
「本当ですね。」
セシリア様が僕の隣に座る。
どうしよう。心臓がバクバク言ってる。聞こえちゃうよ。
「そう言えば、もう身体は大丈夫?」
「はい。きちんとお礼も言えていなくてすみません。あの時は助けて頂いてありがとうございました。」
「それが私に任された役だからね……。」
何だろう。少し含みのある言い方な気がする。
「役……。もしかして、何かありました?」
「ん?いや、特に何かあったって事は無いよ。」
「あの、僕に話して貰えませんか?」
「え?」
「いやっ。なんて言うか、話が聞きたいです。今セシリア様が思っている事とか。」
やばい。こんな聞き方じゃ変な人だと思われる。
「ふふ。面白いね。フランツ君は。うん。そうだな。私、不安なんだ。」
「えっ?」
セシリア様は、あくまで笑顔で答える。
「ほら、小さいときから選ばれし者って言われ続けて、弱音を吐く事なんて許されなかったからさ。でも、魔王が復活するかもって話が出てきて、私に出来るのかなって。」
「そうだったんですか。話してくれてありがとうございます。僕から言えることは、不安と期待は表裏一体だと言うことです。不安はあって当然です。」
「そうだよね。それを背負っていかないといけないんだよね。」
「いえ、セシリア様1人には背負わせません。僕がもっと強くなって、その不安を少しでも軽減出来るようにします。なので僕にもその不安分けてください。」
「ありがとう。」
「僕でよければ、いつでもなんでも聞きます。むしろ話してください。」
「そうだなー。アルバートも、シリルさんもすごいんだよね。それぞれの天才って感じで、自分の芯がきちんと通ってて。」
「アルバートさんはあまり接点はありませんが、シリルさんは僕もすごいなって思います。」
「私も、あんな風になれるのかな?」
「なれますよ。大丈夫です。」
「言い切れちゃうんだ。」
「はい。自分を信じてあげてください。今までの努力は決して無駄になることはありません。」
「そうだよね。ありがとう。なんかフランツ君の前だと、つい本音が出ちゃうね。なんて言うか、親近感があるのかな?」
「そう言って頂けるとうれしいです。」
「なんか元気出てきたかも。」
セシリア様は立ち上がり、王都を眺める。
僕もそれに続く。
「僕はセシリア様の全てを受け止めます。でも、かといって僕を頼ってくれとは言いません。いつでも待っているので、気軽に話しかけて貰えると嬉しいです。」
セシリア様は僕の方を振り向くと、天使のような笑顔だった。
「ありがと。」
「はい。溜めすぎず、たまには吐き出してみてください。」
「そうする。じゃそろそろ行くね。」
「はい。」
……うわぁー緊張した。絶対言わなくて良いことも言っちゃっただろうな。ちょっと上から過ぎたかもー。
あーめんどくさいやつって思われたらどうしよう。
頭が真っ白になりすぎて、もう自分が何を言ったのか覚えてないや……。
どうか嫌われてませんように。
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